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1 家族を連れ、ヤコブといっしょにエジプトへ行ったヤコブの息子たちの名前は、次のとおりです。ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、ベニヤミン、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル

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5 一行は総勢七十名でした。ヨセフは皆より先にエジプトへ行っていたので、この数には入りません。

6 やがて、ヨセフも兄弟たちも死に、新しい世代になりました。

7 彼らは子宝に恵まれ、人口は増える一方です。あまりの急激な増加に、ゴシェンの地はイスラエル人であふれ、一つの国と言ってもいいほどの勢力にふくれ上がりました。

8 やがて、新しい王がエジプトの王座につきました。ヨセフの子孫に何の義理も感じない王です。

9 王は国民に言いました。「このままイスラエル人どもを放っておくと危険だ。あまりに数が多すぎる。

10 なんとか、やつらの力を食い止めなければならん。戦争にでもなり、やつらが敵方についたら、それこそ大へんだ。われわれに戦いをいどみ、なんなくこの国から逃げてしまうだろう。」

11 そこで、イスラエル人を奴隷にしてしまおうということになりました。きびしい監督を立て、重労働につかせるのです。こうして建てられたのが、倉庫の町ピトムとラメセスです。

12 ところが、いくらこき使い、締めつけをきびしくしても、いっこうに効果はありません。むしろ、前より激しい勢いで人が増え続けるのです。エジプト人は警戒して、

13 ますますつらい仕事を押しつけました。畑で長時間の重労働をさせたうえに、粘土でれんがを作る激しい仕事もさせる、というぐあいです。

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15 これほどにしても、まだ効き目がありません。とうとう王は、シフラとプアというヘブル人(イスラエル人)の助産婦に、ひそかに命じました。ヘブル人の男の子は生まれたらすぐ殺し、女の子だけを生かしておくようにというのです。

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17 ところが、助産婦たちは神様を恐れていたので、王の命令に従わず、男の子も生かしておきました。

18 王は二人を呼びつけ、問い詰めました。「おまえたちは男の子を生かしておくそうだな。なぜわしの命令に背いたっ!」

19 「陛下はご存じないでしょうが、ヘブルの女はとても丈夫で、簡単に赤ん坊を産んでしまうのです。私たちが駆けつけた時には、もう生まれてしまっているのでございます。エジプトの女と違って出産に手間取らないものですから。」

20 神様は助産婦たちによくされたので、イスラエル人はさらに増え続け、強大な国民になりました。

21 神様を恐れ敬う助産婦たちも、子供に恵まれました。

22 そこで、王は全国民に、「以後、ヘブル人の赤ん坊は、女の子だけを残して、男の子はみなナイル川に投げ込め」と命じたのです。

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1 そのころ、あるヘブル人の若い男女が結婚しました。二人ともレビ部族の出身でした。やがて、二人の間に男の子が生まれました。玉のようにかわいらしい赤ん坊です。どうして、川へなど投げ込めましょう。母親は三か月のあいだ家に隠しておきました。

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3 もうそれ以上は隠しきれません。彼女はパピルス製のかごにタールを塗って防水し、赤ん坊を入れると、ナイル川のほとりの葦のしげみに、そっと置きました。

4 その子の姉が遠くから、弟がどうなるのか見守っていました。

5 さて、それから何が起こったでしょう。王女が、ちょうどそのとき川へ水浴びに来たのです。侍女たちを従えて岸を歩いていると、葦の間に小さなかごがあります。何だろうと思って侍女をやり、それを引いて来させました。

6 開けてみて驚きました。中で赤ん坊が泣いているではありませんか。「まあ、かわいそうに!きっとヘブル人の赤ちゃんだわ。」王女は思わず叫びました。

7 それを見ていた姉が、この時とばかり王女のそばへ駆け寄りました。「王女様、その赤ちゃん、お育てになりますか?だったら、お乳をあげる女がいりますよね。だれかヘブル人の女の人を捜して来ましょうか?」

8 「よく気のつく子だね。そうしておくれ。」王女の返事を聞いて、少女はうれしくてたまりません。家へ飛んで帰り、母親を呼んで来ました。

9 「お礼は十分しますから、この子を連れて行って、私の子として育ててください。」王女は子供の実の母親とも知らず頼みました。もう何の遠慮もいりません。彼女は子供を抱いて家へ帰りました。

10 やがて、その子は大きくなり、養子として正式に、王女のやしきへ引き取られました。王女は彼をモーセ〔「引き出す」の意〕と名づけました。水の中から引き出した子供だからです。

11 それから何年かたちました。モーセはりっぱに成長し、一人前の大人になっていました。ある日、彼は同胞のヘブル人を訪ねようと外出したのです。ところが、目にしたのは、あまりにもひどい有様でした。初めて同胞の苦しみを知ったモーセの血は騒ぎました。ちょうどその時、エジプト人がヘブル人を地べたになぐり倒しているところへ、出くわしたのです。自分と同じヘブル人がやられている。そう思うと見過ごせません。

12 急いであたりを見回し、だれも見ていないのを確かめると、そのエジプト人を殺し、死体を砂の中に隠しました。

13 次の日もまた、ヘブル人を訪ねましたが、今度はヘブル人同士でけんかしています。「同じヘブル人なのに仲間をなぐるとは、いったいどういうつもりだ。」モーセは悪いほうの男を責めました。

14 男も負けてはいません。「ふん、いらぬおせっかいよ。だいたい、そういうおまえこそ何者だい。まるで王様か裁判官みたいな口をきくじゃないか。きのうのエジプト人だけじゃ足りず、おれまで殺そうってのかい。」あんなに用心したのに、きのうの事がばれているのです。モーセは非常に不安になりました。

15 そして心配したとおり、エジプト人殺害の話は、王の耳にも達したのです。王は、「直ちにモーセを逮捕し、処刑せよ」と命じました。絶体絶命です。モーセはミデヤン(アラビヤ半島の北西部、アカバ湾沿岸)の地へ逃げることにしました。こうして、とある井戸のかたわらに座っていると、

16 ミデヤンの祭司の娘が七人、水くみにやって来ました。父親の羊の群れに飲ませるのです。ところが、いよいよ水おけに水をくみ始めると、

17 あとから来た羊飼いたちが、娘たちを追い払いにかかるではありませんか。そこで、モーセは彼女らに手を貸し、群れに水を飲ませました。

18 家へ戻った娘たちに、父親のレウエルが尋ねました。「おや、きょうはばかに早いじゃないか。どうしたんだね。」

19 「いつものように羊飼いたちがじゃましようとしたら、あるエジプト人が助けてくれたの。羊飼いを追い払って、羊に飲ませる水までくんでくれたんです。」

20 「ほほう、親切な人だな。で、その人はどこにいる?ちゃんとお連れしたんだろうね。さ、早く入っていただいて、お食事を差し上げなさい。」

21 レウエルにいっしょに住んでほしいと言われ、モーセも申し出を受け入れることにしました。レウエルは娘の一人チッポラを妻として与えました。

22 やがて子供が生まれ、ゲルショム〔「外国人」の意〕と名づけました。モーセが、「私はこの国では外国人だ」と言ったからです。

23 何年かして、エジプトの王が死にました。しかし、イスラエル人は楽になりません。相変わらず奴隷としてこき使われ、うめき苦しんでいました。あまりの苦しみに耐えかね、泣く泣く神様に助けを求めるのでした。その悲痛な叫びは天まで届き、

24 神様は、〔子孫をカナンの地に連れ戻すという〕アブラハム、イサク、ヤコブへの約束を思い出されたのです。

25 神様は天から一部始終をご覧になり、イスラエル人を救い出す時がいよいよきたと考えました。

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1 ある日モーセは、ミデヤンの祭司、しゅうとイテロ〔別名レウエル〕の羊の群れを番していました。砂漠のはずれにある神の山ホレブ(シナイ山)に近い所です。

2 突然、柴の燃える炎の中に、神様の使いが現われました。よく見ると、柴には火がついているのに、いつまでも燃えています。

3 「いったい、どういうことだろう。」不思議に思いながら、そばへ近寄りました。その時です。神様が呼びかけました。「モーセ、モーセ!」「は、はい。どなたでしょう。」

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5 「それ以上近寄るな!くつを脱げ。おまえが立っている所は聖なる地だ。

6 わたしはおまえの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神だ。」モーセはあわてて顔をおおいました。神様を見るなど、とても恐れ多いことです。

7 神様は続けました。「わたしの国民が、エジプトで非常な苦しみをなめているのを見た。無慈悲な監督のむちを取りのけてほしい、と叫んでいるのを聞いた。

8 彼らをエジプト人の手から救い出そうと思う。エジプトから助け出し、『乳と蜜の流れる』国、広々とした美しい国へ連れて行こう。今、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人が住んでいる地だ。

9 今こそイスラエル人の嘆きがよくわかった。つらい仕事に明け暮れ、エジプト人にこき使われている。

10 そこで、おまえをエジプト王のもとへ遣わそうと思う。わたしの国民をエジプトから助け出すのだ。王にそう言ってやれ。」

11 「そんな大それた仕事など、とても私には。」モーセは思わず叫びました。

12 「心配するな。わたしがついている。おまえを遣わしたのがわたしだという証拠に、必ずおまえといっしょにいよう。人々を無事エジプトから助け出したら、この山の上で、神を礼拝しなければならない。」

13 「ですが神様、イスラエル人のところへ行って、先祖の神様に遣わされて来たと言ったら、きっとこう聞かれます。『なに、先祖の神様だと?いったい何という名の神様だ。』その時どう説明したらよいのでしょう。」

14 「わたしは『生ける神、創造者』だ。『「わたしはある」(イスラエルの神の名、主のもともとの意味)という方に遣わされた』と言えばよい。

15 そうだ、『あなたがたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神、主が私を遣わした』と言いなさい。これが永遠に変わらないわたしの名だ。」

16 神様はまた、モーセに命じました。「イスラエルの長老全員を呼び集めなさい。そして神が燃える柴の中に現われ、こう言ったと伝えるのだ。『わたしの国民イスラエルがエジプトでどんなに苦しんでいるかを、この目で見た。

17 しかしもう、そんな屈辱を味わうことも、つらい労働をしいられることもない。わたしが必ず救い出す。そして、今、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人が住んでいる、「乳と蜜の流れる」国へ連れて行く。』

18 長老たちはおまえの言うことを聞くだろうから、いっしょにエジプト王のところへ行き、こう言うのだ。『ヘブル人の信じる神様のお告げがありました。砂漠を三日ほど行った所で、神様にいけにえをささげるようにとのことです。どうぞ出かける許可を下さい。』

19 だが王も一筋なわではいかないだろう。それは目に見えている。

20 だからわたしが、いやおうなしに承知するようにしてやろう。奇蹟を起こしてエジプトを懲らしめるのだ。そのあとで、ようやく行かせることになるだろう。

21 その時には、エジプト人から贈り物をたっぷりもらえるようにしてやろう。何も持たずにエジプトを出ることは、決してない。

22 女はみな、エジプト人の主人の妻や隣人から、金、銀、宝石、美しい服を求めるだろう。息子や娘たちに、エジプトの最良の服を着せるのだ。」

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1 しかし、モーセは反論しました。「あの人たちは私を信じてくれないでしょう。私の言うことなんか聞くはずがありません。『神様がおまえに現われたって?うそもたいがいにしろ』と言うに決まっています。」

2 「いま手にしているのは何かね。」「羊飼いの杖です。」

3 「地面に投げてみなさい。」そう言われて杖を投げると、どうでしょう。たちまち蛇に変わったではありませんか。モーセはびっくりして、あとずさりしました。

4 すかさず神様が命じます。「しっぽをつかまえろ。」言われたとおりにすると、蛇は手の中で、また杖に戻るのでした。

5 「みなの前で、今と同じことをして見せるのだ。そうすれば、おまえを信じるだろう。そして、先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神が、ほんとうにおまえに現われた、と納得するだろう。

6 今度は手をふところへ入れなさい。」また言われたとおりにして手を出すと、なんとツァラアトにかかり、雪のように白くなっているのです。

7 「もう一度ふところへ入れなさい。」そうすると、不思議なことに、ツァラアトはすっかり治っていました。

8 「たとい最初の奇蹟を信じなくても、二番目の奇蹟は信じるだろう。

9 それでもまだ信じなかったら、ナイル川の水をくんで地面に注ぎなさい。水は血に変わるだろう。」

10 しかし、モーセはなおも食いさがりました。「神様、私はとても口べたです。うまく話ができたためしがありません。こうしてお話ししていても、思うように物が言えません。すぐどもってしまうのです。」

11 「人間の口を造るのはだれかね。神であるわたしではないか。人が話せたり話せなかったり、目が見えたり見えなかったり、耳が聞こえたり聞こえなかったりするのは、だれの力によることだ?

12 さあ、ぐずぐず言わず、わたしの言うとおりにしなさい。ちゃんと話せるように助けてやるし、何を話すかも教えよう。」

13 それでも、モーセは渋っています。「神様お願いです。だれかほかの人をやってください。」

14 神様はとうとう腹を立てました。「もうよい。おまえの兄アロンは話すのがじょうずだ。ちょうど今、おまえを捜しに来る。おまえを見つけたら大喜びするだろう。

15 わたしが言うことを彼に教え、代わりに話してもらうがいい。二人ともうまく話せるようにわたしが助け、しなければならないことはみな教える。

16 彼はおまえの代わりに語る。おまえはわたしの代わりに、言うべきことを彼に告げるのだ。

17 例の奇蹟を行なうために、杖を持って行くのを忘れるな。」

18 モーセは家へ帰り、義父のイテロに相談しました。「お許しがいただければ、エジプトへ帰って親類を訪ねたいんですが......。まだ生きているかどうかさえ、わからないのです。」「遠慮はいらんよ。行っておいで。」イテロは快く承知しました。

19 いよいよミデヤンの地を出発するという時、神様はモーセに告げました。「エジプトへ帰るのを恐れてはならない。おまえを殺そうとしていた者たちは、みな死んだ。」

20 モーセは妻と息子たちをろばに乗せ、エジプトへ帰りました。手には例の神様の杖をしっかりと握りしめて......。

21 神様はモーセに命じました。「エジプトへ帰ったら、王のところへ行き、教えたとおり奇蹟を行ないなさい。だが王は強情を張る。わたしがそうさせるのだ。それで、すぐにはイスラエル人の出国を認めないだろう。

22 その時はこう言ってやりなさい。『「イスラエルはわたしの長男だ。

23 彼らがエジプトを出てわたしを礼拝できるようにせよと、わたしはおまえに命じた。ところがおまえは拒否する。その罰に、おまえの長男を殺す」と、神様は言われます。』」

24 旅の途中、ある所で一夜を過ごすことになりました。そのとき不意に神様が現われ、今にもモーセを殺そうとなさるのです。

25 妻のチッポラはあわてて火打ち石用のナイフをつかみ、息子の性器の前の皮を切り、それをモーセの両足につけました。それから、いやでたまらないというふうに、「なんてことでしょう。あなた血まみれよ」と言いました。それでやっと神様は、モーセに手をかけるのをやめました。

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27 ところで神様はアロンにも、「荒野へ行ってモーセに会いなさい」と命じました。アロンは神の山ホレブまで出かけ、モーセと会い、再会を喜び合ったのです。

28 神様が二人に、これから何をし、何を語るよう命じたのか、モーセはアロンに伝えました。もちろん、エジプト王の前で行なわなければならない奇蹟のことも話しました。

29 モーセとアロンはエジプトへ帰り、イスラエル人の長老たちを集めて会議を開きました。

30 アロンは、神様がモーセに語ったことを皆に話し、モーセは、皆の目の前で例の奇蹟を行ないました。

31 こんな不思議なことは神様にしかできません。長老たちは二人の話を信じました。神様がじきじき人々の苦しみをご覧になり、救い出そうとしておられるというのです。一同は大喜びです。その場にひざまずいて神様を礼拝しました。

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1 長老たちとの話がすむと、二人は王に会いに行きました。「私どもはイスラエルの神、主のお告げを持ってまいりました。『わたしの国民を行かせよ。荒野で聖なる祝宴を張り、わたしを礼拝させるのだ』とのことです。」

2 「ふん、そうか。だがな、どうしてこのわしが、主とやらの言うことを聞いて、イスラエル人どもを行かせなければならんのだ。だいたい主とは何者だ。聞いたこともないぞ。いちいち、そんなお告げなどに取り合っておれん。イスラエル人どもは絶対に行かせん。」王はきげんをそこねたようです。

3 しかし、アロンとモーセも引き下がってはいません。「ヘブル人の神様が私どもに現われたのです。私どもは荒野を三日行った所で、主にいけにえをささげなければなりません。もし神様に従わなければ、病気で死ぬか、さもなくば剣で殺されるかです。」

4 「ええい、いいかげんにしろっ!自分を何様だと思っているのだ。イスラエル人どもは、それでなくとも仕事が山ほどある。その仕事を放り出させるつもりか。余計なことに口出しするな。」王はどなりつけました。

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6 その日、王は腹立ちまぎれに、イスラエル人を使う監督と配下の人夫がしらたちに、命令を出しました。

7 「以後れんが作り用のわらを与えてはならん。しかも生産割り当ては一個たりとも減らすな。荒野へ行って自分たちの神にいけにえをささげたい、などとぬかすのは、暇をもて余しているからだ。

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9 どんどん仕事をさせろ。へとへとになるまでこき使え。モーセやアロンのうそっぱちなどを聞いていると、どんな目に会うか、思い知らせてやるのだ。」

10 監督と人夫がしらは、さっそく全員に伝えました。「王様の命令によって、これからはわらを渡さないことになった。自分で捜せ。ただし、れんがは前と同じだけ作るのだぞ。」

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12 たいへんなことになりました。人々はあちこちに出かけて行って、必死でわらを集めるのでした。

13 それでも、監督は容赦しません。「一日分の仕事は前と同じにちゃんとやれ。言いわけは許さんぞ」ときびしく要求します。

14 そして、イスラエル人の人夫がしらに、むちを振うのでした。「きのうの割り当て分をちゃんと作らなかったな。きょうも数が足りん。怠け者めが。命令どおりせっせと働け。」とても無理なことをわめき散らすのです。

15 人夫がしらたちは思いあまって、王のところへ嘆願に行きました。「陛下、お願いでございます。こんなひどい仕打ちは、もうやめさせてください。

16 わら一本もらわず、前と同じ数のれんがを作るのは、無理な相談です。私どもが悪いわけでもないのに、しょっちゅう打たれるのでは、かないません。だいたい、こんな理屈に合わない仕事をさせる監督が悪いのでございます。」

17 ところが、王は取り合いません。「いいや、おまえたちは暇すぎるのだ。そうでなければ、『主にいけにえをささげに行かせてほしい』などとぬかすはずがない。

18 さあ、とっとと仕事に戻れ。わらは一本も渡さん。れんがの割り当ても減らさん。今までどおり、きちんと持って来い。」

19 もう、どうにもなりません。人夫がしらたちは頭をかかえ込みました。

20 途方にくれて外へ出ると、モーセとアロンが待っていました。二人の姿を見ると、

21 無性に腹が立ちます。思いっきりののしるのでした。「王やエジプト人から、こんなひどい仕打ちを受けることになったのも、元はと言えばおまえたちのせいだ。まるで、おれたちを殺すいい口実を与えたようなものさ。二人とも神様のさばきを受けるがいい。」

22 モーセも気持ちがおさまりません。神様のもとに帰って抗議しました。「神様、どうしてご自分の国民に、こんなひどい取り扱いをなさるのですか。私が来たのは、いったい何のためでしょう。

23 神様の命令を王に伝えてからというもの、事態はよくなるどころか、ますます悪くなるばかりです。それなのに神様は、いっこうに救いの手を差し伸べてくださらないではありませんか。」

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1 「わたしがしようとしていることは、そのうちわかる。王はどうにもならなくなってから、ようやくわたしの国民を行かせるだろう。その時には、行くのを許すというより、むしろ、国から追い出さないわけにはいかなくなるのだ。

2 わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに現われた全能の神、主である。もっとも、彼らには主という名を教えたことはないが......。

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4 わたしは彼らと聖なる契約を結んだ。彼らと子孫とに、彼らが当時すんでいたカナンの地を与えると約束したのだ。

5 今こそ、イスラエル人がエジプト人の奴隷になってうめき苦しんでいるのが、よくわかった。そして、昔の約束を思い出した。

6 だから人々に、神が必ず救い出すと言ってやれ。見てるがいい、わたしは大きな力をふるい、奇蹟を行なう。彼らの奴隷の鎖を解き放ち、自由にする。

7 彼らは名実ともにわたしの国民となり、わたしは彼らの神となる。彼らは、エジプトから救い出したのがわたしであることを知る。

8 アブラハム、イサク、ヤコブに与えると約束した地に、わたしは彼らを連れて行く。その地はわたしの国民のものとなる。」モーセは、神様から聞いたとおり人々に伝えました。しかし、もうだれも、耳を傾けようとはしません。彼の言うことを聞いてひどい目に会ったために、すっかり気落ちしていたのです。

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10 神様はまた、モーセに語りかけました。「さあもう一度、王のもとへ行き、イスラエル人を行かせるように言いなさい。」

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12 しかし、モーセは素直に従えません。「神様、同胞のイスラエル人でさえ、もう私の言うことを聞こうとしないのです。まして、王が聞いてくれるはずがありません。それに第一、私は口べたなんです。」

13 神様はモーセとアロンに、再び命じました。イスラエルの人々と王にもう一度話し、イスラエル人の出国を要求しなさいというのです。

14 イスラエルの各部族の長は次のとおりです。イスラエルの長男ルベンの息子、エノク、パル、ヘツロン、カルミ

15 シメオン部族の長、エムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ツォハル、サウル〔母親はカナン人〕

16 レビ部族の家系、レビの息子ゲルション、ケハテ、メラリ、レビは百三十七歳で没。

17 ゲルションの息子リブニ、シムイの氏族

18 ケハテの息子アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエル、ケハテは百三十三歳で没。

19 メラリの息子マフリ、ムシ以上がレビの一族の家系です。

20 アムラムは父親の妹ヨケベデと結婚しました。その息子がアロンとモーセです。アムラムは百三十七歳で没。

21 イツハルの息子コラ、ネフェグ、ジクリ

22 ウジエルの息子ミシャエル、エルツァファン、シテリ

23 アロンは、アミナダブの娘でナフションの妹エリシェバと結婚しました。彼らの息子ナダブ、アビフ、エルアザル、イタマル

24 コラの息子アシル、エルカナ、アビアサフこれがコラの一族です。

25 アロンの息子エルアザルは、プティエルの娘と結婚しました。その息子の一人がピネハスです。以上、レビ部族の長とその氏族に属する家族の名をあげました。

26 このリストにあるアロンとモーセが、「イスラエル人を一人残らずエジプトから救い出せ」と、神様から命令を受けた、あの二人です。

27 彼らが王のところへ行き、イスラエル人をエジプトから去らせるように要求したのです。

28 二人はまた、「わたしが主である。行って、わたしの言うことを王に伝えよ」という命令も受けました。

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30 その時、「私にはできません。口べたなのです。どうして王が、私などの言うことを聞くでしょう」と答えたのが、このモーセです。

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1 それから、神様はモーセに言いました。「おまえをわたしの使者として、エジプト王のもとへ遣わす。兄アロンがおまえの代わりに話す。

2 おまえはわたしから聞いたとおりをアロンに話し、それを王に伝えてもらえばよい。イスラエル人をエジプトから行かせるように要求するのだ。

3 王は簡単には承知しないので、わたしはエジプトで数々の奇蹟を行なう。

4 それでも、王はなかなか言うことを聞かないだろう。そこで最後に、大きな災いを送って徹底的に打ちのめし、そのあとで、わたしの国民を救い出す。

5 その力を目のあたりにする時、エジプト人は、わたしがほんとうに神であることを思い知るだろう。」

6 モーセとアロンは、神様の命令どおりにしました。

7 王と対決した時、モーセは八十歳、アロンは八十三歳でした。

8 神様はモーセとアロンに言いました。

9 「神から遣わされた証拠に奇蹟を見せろと、王は要求するだろう。その時、アロンはこの杖を投げるのだ。あっという間に蛇に変わる。」

10 モーセとアロンは王宮に出かけて行って王と面会し、奇蹟を行ないました。神様に教えられたとおり、王をはじめ居並ぶお付きの者たちの目の前で、アロンが杖を投げると、たちまち蛇になったのです。

11 王も負けてはいません。さっそく、魔術を行なう呪術師を呼び寄せました。彼らも魔法で同じようなことをしました。

12 彼らの杖も蛇になったのです。しかしその蛇は、アロンの蛇にのまれてしまいました。

13 それでも王は、頑としてモーセの言うことを聞こうとしません。

14 神様が指摘なさったとおりです。王は強情で、イスラエル人の出国はあくまで許さないだろうと言われたのです。

15 しかし、神様は命じます。「がっかりしてはいけない。朝になったら、また王のところへ行きなさい。王は川へ水浴びに行くから、あの杖、このまえ蛇に変わった杖を持って、岸で待っているのだ。

16 会ったら、こう言いなさい。『ヘブル人の神、主が私を遣わしました。荒野で神を礼拝できるように民を行かせなさい。このまえは、私の言うことを聞こうともしなかった。

17 「今度こそ、わたしが神であることを必ず思い知ろう。モーセに杖でナイル川の水を打てと命じたからだ。川は血に変わるだろう。

18 魚は死に、水は臭くなり、エジプト人は水を飲めなくなってしまう」と、主は言われます。』」

19 命令はさらに続きます。「エジプト中のあらゆる水を杖で指すよう、アロンに言いなさい。川、運河、沼地、池から、家の中の鉢や水差しにくんだ水まで、みな血に変わってしまう。」

20 そこで、モーセとアロンは命じられたとおりにしました。王と役人たちの見守る中を、アロンが杖でナイル川の水面を打ちました。と、どうでしょう。みるみる真っ赤な血に変わったのです。

21 魚は死に、水は臭くなって、とても飲めたものではありません。国中どこを見ても、血でいっぱいです。

22 しかしエジプトの魔術師たちも、秘術を用いて水を血に変えてみせました。それで、王は相変わらず強情を張り、モーセとアロンには耳を貸そうともしません。やはり神様が予告なさったとおりです。

23 王は何事もなかったように平然と宮殿へ帰りました。

24 エジプト人は飲み水を手に入れるため、川岸に沿って井戸を掘りました。川の水が飲めなかったからです。

25 さて次の週のことです。

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1 神様はモーセに命じました。「もう一度、王のところへ警告に行きなさい。『主は、「わたしの国民が行ってわたしを礼拝するのを邪魔してはならない。

2 もし行かせないなら、かえるの大群を発生させて国の端から端まで、かえるだらけにする。

3 ナイル川には、かえるがあふれ、家の中まで跳び込んで来る。家中、寝室もベッドも、かえるで足の踏み場もなくなる。かまどや粉をこねる鉢にまで入り込む。エジプト中がかえるで埋まるだろう」と言われます。』」

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5 そして、こう続けました。「杖をエジプト中の川や水たまりに向けるよう、アロンに命じなさい。この国は隅から隅までかえるだらけになる。」

6 アロンが言われたとおりにすると、国中かえるでいっぱいになりました。

7 魔術師たちも手をこまぬいてはいません。秘術を使って、同じようにかえるを出しました。

8 困り果てた王は、モーセとアロンを呼びつけました。「かえるを何とかしてくれ。もうたくさんだ。おまえたちの神に頼んでくれ。かえるさえいなくなったら、おまえたちをこの国から出してやろう。神でも主でも、好きなように拝むがよかろう。」

9 「ありがたいことです。で?いつ出発できましょう。その日が決まりしだい、さっそく祈ります。お望みの時に、かえるは一匹残らず死にます。ナイル川のかえるは別ですが......。」

10 「よしわかった。あすにしろ。」「けっこうです。おっしゃるとおりにしましょう。その時、私たちの神、主のような方はほかにいないことが、よくおわかりになるでしょう。

11 川にいるかえるのほかは、みな死にます。」

12 モーセとアロンは王の前を下がりました。モーセがかえるのことを神様にお願いすると、

13 王に約束したとおりになりました。国中、田舎と言わず町と言わず、家の中までも、かえるの死骸でいっぱいです。

14 あちこちに山と積み上げられた死骸から、吐き気をもよおすような悪臭がぷんぷん臭ってきます。

15 ところが、かえるが死んでしまうと、王はまた強情を張りだしたのです。約束をやぶって、イスラエル人を行かせないことにしてしまいました。神様が予告なさったとおりです。

16 神様はまた、モーセに命じました。「地面のちりを杖で打つよう、アロンに命じなさい。エジプト中のちりは、ぶよになる。」

17 二人は命じられたとおりにしました。すると、ぶよが大発生し、エジプト人と家畜全部にたかりました。

18 魔術師たちも同じことをしようとしましたが、今度はみごと失敗してしまいました。

19 「これはまさしく神様のしわざです。」魔術師たちは王に叫びました。しかし、王はますます頑固になるばかりで、少しも耳を傾けようとしません。全く神様が予告なさったとおりです。

20 次に神様はモーセに命じました。「あすの朝はやく起きなさい。王が水浴びに川へ来るから、その時こう言いなさい。『主は、「わたしの国民が礼拝しに行くのを許しなさい。

21 もし許さないなら、エジプト中にあぶの大群を発生させる。家々はあぶだらけになり、地面もあぶで見えなくなる。

22 しかし、イスラエル人が住むゴシェンの地には、そういうことはない。あぶなど一匹も出ない。こうして、わたしが全地を支配する神であることがわかる。

23 おまえの国民とわたしの国民とを、はっきり区別するのだ。これらのことはみな、あす起こる」と言われます。』」

24 神様は言われたとおりになさったので、王の宮殿にもエジプト中のどの家にも、恐ろしいあぶの大群が現われました。

25 あわてたのは王です。急いでモーセとアロンを呼びつけました。「わかった、わかった。おまえたちの好きにするがいい。自分の神にいけにえをささげるのもよかろう。ただし、この国の中でだ。荒野へ出かけることは許さん。」

26 「おことばを返すようですが、それはまずいのです。私たちがささげるいけにえは、エジプトでは大へんきらわれているものです。そんな所でいけにえをささげたら、私たちのほうが殺されかねません。

27 神様の命令どおり、三日ほど旅をして、荒野でいけにえをささげなければなりません。」

28 「そんなに言うなら好きにしろ。ただ、あまり遠くへ行ってはならん。それよりも、急いで神様に祈ってくれ。」

29 「わかりました。あぶの大群がいなくなるよう、神様にお願いしましょう。ですが陛下、また気が変わって約束を破るようなまねは、二度となさらないでください。」

30 モーセは王の前から退き、あぶをいなくしてくださいと神様に願いました。

31 願いはかないました。あれほどのあぶの大群もすっかり姿を消し、どこにも見えなくなったのです。ところが、心配がなくなると、王はまたまた強情になり、イスラエル人を行かせようとはしませんでした。

32 -

9

1 神様はまた、モーセに命じました。「王のところへ戻りなさい。きっぱりこう言うのだ。『ヘブル人の神、主が要求する。神の国民が行っていけにえをささげることを許しなさい。

2 もし拒否したら、

3 恐ろしい伝染病をはやらせよう。馬やろば、らくだ、羊の群れ、牛の群れなど、家畜は全滅する。

4 ただし、死ぬのはエジプト人の家畜だけだ。イスラエル人の牛や羊の群れは、何一つ被害を受けない。』」

5 神様は、翌日すぐに伝染病がはやりだすと宣告なさいましたが、

6 実際そのとおりになりました。明くる朝、エジプト人の家畜は、ばたばた倒れ始めたのです。しかし、イスラエル人の家畜は病気にさえなりません。

7 王はわざわざ使いをやり、イスラエル人の家畜が一頭も死なないというのは本当かどうか、調べさせました。そのとおり間違いありません。それでも、やはり王の気持ちは少しも変わらず、イスラエル人を行かせようとはしませんでした。

8 そこで、神様はモーセとアロンに命じました。「かまどからすすを取り出し、王の目の前で、モーセがそれを空にまき散らしなさい。

9 それは細かなちりとなってエジプト中に散らばり、人と動物の区別なくどこにでもつき、できもののもととなる。」

10 二人はすすを取って王のところへ行き、目の前で、モーセが空に向かってまきました。すると、エジプト中の人間と動物につき、できものができるのでした。

11 魔術師たちもできものだらけになり、モーセの前に出られません。

12 しかし、神様は王が強情を張るままにさせたので、王は神様の命令に従おうとはしませんでした。神様がモーセに予告なさったとおりです。

13 それから、神様はモーセに命じました。「朝はやく起きて王の前に立ち、こう言いなさい。『ヘブル人の神、主は次のように言われます。「わたしの国民を行かせ、わたしを礼拝させなさい。

14 今度は、おまえをはじめ、おまえの家来そしてエジプト中の人間が、骨身にこたえるような災害を起こす。この世界にわたし以外に神がいないことを教えるためだ。

15 これまでも、おまえたちを滅ぼそうと思えば滅ぼせた。

16 そうしなかったのは、わたしの力を、おまえと全世界にはっきり示したかったからだ。

17 それなのにおまえは、わたしに対抗できるとうぬぼれている。それで、わたしの国民を行かせないと強情を張っているわけだ。

18 それもいいだろう。だが、あすの今ごろ、わたしはこの国全体に雹を降らせる。エジプトの国が始まってからこのかた、だれも経験したことがないような雹だ。

19 急げ。家畜を早く小屋へ入れたほうがいい。野原にいるものは、人間も動物もみな、雹に打たれて死ぬ。」』」

20 エジプト人の中には、この警告を聞いて恐れ、家畜や奴隷を家に入れた人もいました。

21 しかし、神様の言うことなど何とも思わない人たちは、雹ぐらい何だとうそぶいていました。

22 神様はモーセに命じました。「天を指さしなさい。すると、雹がエジプト全土に降る。人間、動物、木、ありとあらゆるものの上に降る。」

23 モーセが杖を天に向けて伸ばすと、たちまち雷が鳴り、いなずまが走り、激しい雹が降りだしました。

24 その恐ろしさは、とてもことばでは表現できないくらいです。エジプトの歴史上、これほど激しい嵐はありませんでした。

25 エジプトはいっぺんに荒廃してしまいました。野原にいたものは、人間と動物の区別なく死に絶え、木々は無残に裂かれ、作物もだいなしです。

26 その日、エジプト中で、雹が降らなかったのは、イスラエル人が住むゴシェンの地だけでした。

27 もう、どうにもなりません。王はモーセとアロンを呼びにやりました。「わしが間違っていた。主の言われるとおりだ。わしも国民も悪いことをした。

28 この恐ろしい雷と雹を何とかしてくれ。早くやむよう、主に願ってくれ。すぐにでも、おまえたちを立ち去らせることにする。」

29 「けっこうです。町を出たらすぐ、私は両手を主に差し伸べて祈りましょう。雷と雹は必ずやみます。主は地を支配しておられるのです。陛下はそれをご覧になります。

30 しかし、それでもなお、主の命令には従わないでしょう。お役人方も同じです。」

31 この時すでに、亜麻と大麦は全滅でした。大麦は穂を出し、亜麻も、つぼみをつけていたからです。

32 小麦とスペルト小麦は助かりました。まだ穂が出ていなかったのです。

33 モーセは王の前から退き、町の外に出て両手を高く天に伸べました。すると、どうでしょう。雷と雹はピタリとやみ、雨もすっかりあがったのです。

34 これでひと安心です。王と役人たちは、またまた強情を張りだしました。今度も約束は反古です。

35 王は、イスラエル人の出国を許さないことにしてしまいました。神様が予告なさったとおりです。

10

1 神様はモーセに命じました。「また王のところへ行って要求しなさい。しかし承知しないだろう。わたしがそうさせるのだ。奇蹟をもっとたくさん行なって、わたしの力を見せてやるためだ。

2 わたしがエジプトでどんなすばらしいことをしたか、子供や孫たちに語り伝えなさい。わたしがどのようにエジプト人を負かし、主であることをおまえたちに示したか、代々語り伝えるのだ。」

3 モーセとアロンはもう一度、王との会見を申し入れました。「ヘブル人の神、主が言われます。『いつまでおまえは、わたしの言うことに逆らうのだ。わたしの国民がわたしを礼拝できるよう、行かせなさい。

4 もし行かせないなら、明日いなごの大群を送る。国中がいなごでおおわれ、地面を見ることさえできなくなる。雹の害をまぬがれた作物も、今度ばかりは助からない。

5 -

6 宮殿も役人たちの家も、エジプト中の家という家が、全部いなごだらけになる。エジプトの歴史上、だれも体験したことのない災害になるだろう。』」そう言いきると、モーセは胸を張って王の前を下がりました。

7 心配になった宮廷の役人たちは、王に願い出ました。「私どもを滅ぼすおつもりですか。それでなくとも、エジプトは雹にやられて、すっかり荒れ果ててしまいました。もうたくさんです。どうぞ、連中が行きたいと言うなら、行かせてください。主とかいう神様でも何でも、好きなように礼拝させてやってください。」

8 モーセとアロンは、王のもとに呼び戻されました。「おまえたちの言い分はわかった。出かけて、おまえたちの神、主に仕えるがよかろう。だが行きたがっているのは、実際のところだれとだれか。」

9 「若い者も年寄りもみなです。息子、娘、羊や牛の群れも、ぜんぶ連れて行きます。」モーセが答えました。「一家をあげて、この聖なる巡礼に参加するのです。」

10 「なんだと?神かけて、子供たちを連れて行くことは許さん。おまえたちの計略は見えすいている。

11 全員行くなど、いや決して許さん。大人の、しかも男だけが出かければすむことだ。もともとそういう話じゃなかったのか。」二人は王の前から早々に追い払われました。

12 神様はモーセに命じました。「手をエジプトの国に差し伸べなさい。いなごが出て来て国中をおおい、雹の害をまぬがれた物を食い尽くしてしまう。」

13 モーセが杖を上げると、神様はまるまる一昼夜、東風を吹かせました。やがて朝になり、東風に乗っていなごの大群が押し寄せました。

14 いなごはエジプトを端から端まで埋め尽くしました。エジプトの歴史上、これほどひどいいなごの害は一度もなかったし、これからも二度とないだろうと思われるほどでした。

15 いなごは地面をおおい尽くし、太陽の光も、その大群にさえぎられて薄暗くなったほどです。雹の害を免れた作物は全部いなごに食べられてしまいました。緑の物は何一つ残りません。エジプト中の木や草が、食い尽くされてしまったのです。

16 あわてたのは王です。急いで使いをやり、モーセとアロンを呼んで言いました。「おまえたちの神、主とおまえたちとに悪いことをした。すまなかった。

17 もう一度だけ、わしの罪を赦してほしい。主に祈ってくれ。このままでは死んでしまう。今度こそ約束を守るから。」

18 モーセは王のもとを辞し、神様に願いました。

19 すると、強い西風が吹きだし、いなごを紅海まで運び去ったのです。エジプトには、いなごは一匹もいなくなりました。

20 しかし神様は、また王を強情にしたので、今度もやはり、イスラエル人を行かせようとはしません。

21 神様はモーセに命じました。「両手を天に向けて伸ばしなさい。暗やみがエジプトをおおい、光は一筋もささなくなる。」

22 モーセは言われたとおりにしました。すると、エジプトは三日間、墨を流したような暗やみにおおわれてしまいました。

23 あまりの暗さに、身動きさえできません。ただ一個所だけ光のさしている所がありました。イスラエル人がいた所です。

24 王はまたまたモーセを呼びつけました。「早く出て行ってくれ。行って主を礼拝するがいい。ただし、羊と牛の群れは置いて行け。こうなったら、子供たちは連れて行ってかまわん。」

25 「おことばを返すようですが、それでは承知いたしかねます。私たちの神、主にいけにえと完全に焼き尽くすいけにえをささげるために、羊や牛の群れを連れて行かなければならないのです。

26 一頭でも残して行くわけにはまいりません。神様には動物のいけにえをささげなければならず、向こうへ着くまでは、神様がどの動物をお選びになるかわかりません。ですから、ぜんぶ連れて行きます。」

27 これを聞いて、王はまた意地を張りだしました。神様がそうなさったのです。「そんな勝手を言うなら、行かせてやるものか」と王は思いました。

28 「ええい、下がれっ!おまえの顔など二度と見たくもない。」王はモーセをどなりつけました。「よーく覚えておけ。今度わしの前に姿を現わしたら死刑だ。」

29 「けっこうです。私も二度とお目にはかかりますまい。」モーセは答えました。

11

1 とうとう神様はモーセに命じました。「いよいよ、これが最後だ。王とエジプト人どもを徹底的に打ちのめすのだ。そのあと、王はようやく、おまえたちの出発を認めるだろう。いや、むしろ早く出て行かせたくて追い立てる、と言ったほうが正確だ。

2 その時は遠慮はいらない。エジプト人の隣人に、金や銀の高価な飾り物を要求するのだ。今からその心備えをしておくよう、イスラエル人全員に言いなさい。」

3 これは、エジプト人がイスラエル人に好意を示すよう、神様が計らってくださるからです。モーセも、エジプトでは偉大な人物として知られ、王の役人やエジプト国民に尊敬されていました。

4 さて、モーセは王に宣言しました。「主はこう言われます。『真夜中ごろ、わたしはエジプトを通り過ぎる。

5 その時、上は王位を継承する王子から下は奴隷の長男に至るまで、エジプト中の家々の長男はみな死ぬ。家畜の初子も同じだ。

6 死を嘆く声が国中に響き渡るだろう。いまだかつてなかったような、また、これからも二度とないような苦悩に満ちた嘆きだ。

7 しかしイスラエル人には、犬がきばをむくことさえない。家畜も一頭たりとも死なない。こうして、エジプト人とイスラエル人とは、はっきり区別されるのだ。』

8 ここにおられるお役人方は、そのとき私のところへ駆けつけ、拝むようにして、『どうか、どうか、今すぐ出て行ってください。イスラエル人は一人残らず連れて、出て行ってください』と頼むでしょう。そうなったら出て行きましょう。」モーセの顔は怒りで真っ赤です。言うだけ言うと、モーセはさっさと宮殿を出ました。

9 モーセは、前もって神様にこう言われていたのです。「王は言うことを聞かないだろう。おかげで、大きな奇蹟を行ない、わたしの力を十分示すことができる。」

10 モーセとアロンが、数々の奇蹟を王の目の前で行なったにもかかわらず、そういうわけで、神様は王が強情を張るままにしておかれたのです。それで、王はイスラエル人の出国を、なかなか許そうとはしなかったのです。

12

1 さて、神様はモーセとアロンに命じました。

2 「これからは今月がユダヤの一月(太陽暦の三月中旬から四月中旬)、暦の中で一番たいせつな月となる。

3 そこで、イスラエル人全員にこう布告しなさい。毎年この月の十日に、家族ごとに子羊を一頭用意しなければならない。家族が小人数の時は、近所の小人数の家族と分け合ってもよい。家族の人数によってどうするか決めるのだ。

4 -

5 用意するのは羊か山羊の一歳の雄で、傷のないものでなければならない。

6 まず、この月の十四日の夕方に子羊を殺す。

7 次に、その血を家々の戸口の両わきの柱とかもいに塗る。血は、その家で食べる子羊のものを使うこと。

8 その夜は家族全員で、丸焼きにした子羊の肉を、イースト菌抜きのパン、苦味のある野草といっしょに食べなければならない。

9 肉は生で食べたり煮たりするのではなく、必ず焼くこと。頭、足、心臓、肝臓もつけたまま丸焼きにするのだ。

10 どの部分でも、翌日まで残しておいてはならない。夜のうちに食べきれなかったら、残りは焼いてしまえ。

11 長い旅に備えて旅仕度のまま食べるように。靴をはき、杖を持ったまま急いで食べる。以後これを『主の過越の祭り』と呼ぶのだ。

12 今夜わたしがエジプトを通り過ぎ、国中の家々の長男と家畜の初子とを殺し、エジプトの神々にさばきを下すからだ。わたしは主である。

13 戸口の柱に塗った血は、わたしに従うという証拠だ。エジプトの地を打つ時も、血が塗ってある家は過ぎ越す。その家の子供は安全だ。

14 この夜の重大な出来事を忘れないために、毎年、記念の祭りを祝わなければならない。これは永遠に変わらない決まりだ。

15 祭りの期間は七日間、その間はイースト菌抜きのパンしか食べてはならない。この規則を破る者は、だれであろうとイスラエルから除名される。

16 祭りの一日目と七日目に、全イスラエル人のために特別な集会を開く。その日は、食事の準備以外はどんな労働もしてはならない。

17 この『種なしパンの祭り』を毎年行ない、いつも今日という日を、わたしがおまえたちをエジプトから救い出した日として記念せよ。子々孫々、この日を例祭としなければならない。これは法律だ。

18 この月の十四日の夕方から二十一日の夕方まで、イースト菌抜きのパンしか食べてはならない。

19 この七日間、イーストの一かけらも家にあってはならない。その間にイースト菌の入ったものを食べた者はだれでも、イスラエル人の社会から追放される。同じ規則は、いっしょに住んでいる外国人にも適用される。イスラエルに生まれた者と全く同じである。

20 もう一度くり返す。この期間中はイースト菌を使ったものを食べてはならない。どこにいても、イースト菌を入れないパンだけを食事に出しなさい。」

21 モーセは、イスラエルの長老全員を呼び集めて言いました。「さあ、群れの中から子羊を取って来なさい。一家族に一頭、小人数の場合は数家族に一頭ずつだ。そして、神様があなたがたを手にかけないで過ぎ越してくださるように、その羊を殺しなさい。

22 その血を鉢に入れ、ヒソプの枝を取って血に浸し、かもいと両側の柱に塗りなさい。夜の間はだれも外に出てはならない。

23 神様は、エジプトの国中を巡ってエジプト人を打たれる。けれども、かもいと両側の柱とに血がついている家は過ぎ越し、『死の使い』が入って長男を殺さないよう、守ってくださる。

24 これは、あなたがたばかりか、子々孫々に至るまで、永遠に変わらない法律だということを忘れるな。

25 神様の約束の国に入ったら、この過越の祭りを祝いなさい。

26 そのとき子供たちが、『なんでこの祭りをするの。どういう意味なの』と尋ねるだろう。

27 そうしたらこう答えなさい。『神様が私たちを過ぎ越してくださったことを記念する祭りだよ。エジプト人は殺されたが、イスラエル人は無事だった。神様は私たちを滅ぼしに、家へ入ったりはなさらなかったのだよ。』」人々はみな深々と頭を下げ、神様を礼拝しました。

28 イスラエル人は、モーセとアロンの指示どおりにしました。

29 その夜です。真夜中ごろ、王の世継ぎから地下牢に閉じ込められている捕虜の長男に至るまで、エジプト人の家の長男は一人残らず、神様の手にかかって死にました。家畜の初子もです。

30 王や役人たちをはじめ、エジプト中の人々が、夜中だというのに起きだし、国中に悲鳴が響き渡りました。死人の出ない家は一軒もなかったからです。

31 王は、その夜のうちに、モーセとアロンを呼びつけました。「もうたくさんだ。早く出て行ってくれ。一人残らず、今すぐ出て行けっ!主だろうが何だろうが、好きなように礼拝しろ。

32 羊も牛もみんな連れて、早く行ってしまえ!だが、出かける前にわしを祝福して行けよ。」

33 エジプト人は、「このままじゃ、われわれまで死んでしまう」と言い、できるだけ早く国から出てもらおうと、イスラエル人をせかせました。

34 ぐずぐずできません。イスラエル人はみな、イースト菌の入っていないパン生地を鉢に入れ、衣類で包んでかつぎました。

35 それから、モーセに言われたとおり、エジプト人から金や銀の飾り物と衣服を求めたのです。

36 神様のおかげで、エジプト人は親切にしてくれました。欲しい物は何でも、財産をはたいてまで譲ってくれるほどでした。

37 その夜のうちにラメセスを出発し、スコテに向かいました。女、子供は別として、六十万もの人が旅に出たのです。

38 一行の中には、いろいろな国の人たちがいました。羊や牛の群れもいっしょです。まさに家畜の大脱出です。

39 食事には、持って来たイースト菌抜きのパン生地で、パンを焼きました。あまりあわただしくて、パンがふくれるまで待っている暇がなかったからです。

40 ヤコブの息子たちとその子孫は、結局エジプトに四百三十年のあいだ滞在したことになります。エジプトを出発したのは、四百三十年目のちょうど最後の日でした。

41 -

42 この夜は、神様がイスラエル人をエジプトから連れ出すために、特に選ばれた夜です。毎年その日が、神様の救いを記念する祭りの日となったのは、そういう事情があるのです。

43 ところで、神様はモーセとアロンに命じました。「過越の祭りについて次のように定める。外国人は過越の子羊を食べてはならない。

44 しかし買い取られた奴隷は、割礼(男子が生まれて八日目にその生殖器の包皮を切り取る儀式)を受けてさえいれば、食べてかまわない。

45 雇い人や、たまたま訪問中の外国人は、食べてはならない。

46 子羊を食べる者はみな、家に集まっていっしょに食べる。決して家の外へ持ち出してはならない。骨一本も折ってはならない。

47 イスラエル人は全員、この記念行事を守らなければならないのだ。

48 いっしょに住む外国人で、過越の祭りを共に祝いたいと願う者は、男ならみな割礼を受けさせなさい。そのうえでなら、いっしょに祭りをしてもよい。その時は、イスラエルに生まれた者と同じに扱いなさい。だが割礼を受けていない者は、決して子羊を食べてはならない。

49 イスラエルに生まれた者にも、いっしょに住む外国人にも、同じ法律が適用される。」

50 イスラエル人は、神様がモーセとアロンに命じたことはみな守りました。

51 その日、神様はエジプトからイスラエル人を救い出したのです。幾つものグループが、続々と国境を越えて行きました。

13

1 さて、神様がモーセに与えた指示はこうです。「イスラエル人の長男と家畜の初子とは、みなわたしにささげなさい。わたしのものなのだから。」

2 -

3 モーセは人々に言いました。「この日こそ、永遠に記念すべき日、エジプトの奴隷の鎖から解放された日だ。神様がすばらしい奇蹟を起こして救い出してくださったのを、忘れないようにしよう。だから、毎年この出来事を記念して祭りを祝う時には、イースト菌を使ってはならない。

4 毎年、一月半ば(太陽暦の三月末)のこの日を、エジプト脱出の記念日としよう。きょうから、神様があなたがたを、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ヒビ人、エブス人の国、つまり先祖たちに約束された、『乳と蜜の流れる』国へ導いてくださるのだ。

5 -

6 七日間は、イースト菌抜きのパンしか食べてはならない。イスラエル国内ではどこでも、家の中にイーストがあってはならない。そして、七日目に神様のための祭りを盛大に祝う。

7 -

8 毎年その祭りのたびに、子供たちに祝いの意味を説明しなさい。エジプトを脱出する時、神様がどんなすばらしいことをしてくださったかを記念する祭りだからだ。

9 毎年この一週間を記念することによって、自分たちが神様の特別な国民であることを確認する。言ってみれば、神様のものだというしるしに、神様があなたがたの手や額に焼き印を押すようなものだ。

10 それで、この出来事を毎年一月半ばに祝わなければならない。

11 神様がずっと昔、先祖たちに約束した地、今カナン人が住んでいる地に導いてくださったあかつきには、

12 どの家の長男も、どの家畜の初子も、それが雄であれば、みな神様のものだということを忘れてはならない。みな神様にささげなさい。

13 ろばの初子の場合は、身代わりに子羊や子やぎをささげることができる。つまり、神様から買い戻すのだ。そうしない場合は、ろばは殺す。しかし人間の場合、長男は必ず買い戻さなければならない。

14 子供たちが、『これはどういう意味?』と聞いたら、こう教えなさい。『神様がすばらしい奇蹟を行なって、私たちを奴隷生活から救い出してくださったのだよ。

15 エジプト王はなかなか行かせてくれなかった。それで神様はエジプト中の家の長男と家畜の初子をみな殺した。だから私たちもこうして、最初の男の子は家畜も含めて、すべて神様にささげるのだよ。ただ人間の場合は、いけにえにするわけにいかないので、必ず買い戻すがね。』

16 もう一度言う。この祭りを守ることによって、あなたがたが神様の国民であることがはっきりする。神様の焼き印が額に押されるのと全く同じことだ。祭りを守ることによって、神様の偉大な力でエジプトから救い出された思い出を、新たにするのだ。」

17 こうしてついに、王はイスラエル人を行かせることになったのです。さて、エジプトから約束の地へ行くには、ペリシテ人の地を通るのがいちばん近道でしたが、神様は別の道を通るようになさいました。道中ずっとペリシテ人と戦うのは、つらいことです。エジプトを出るとき一応武装はしていましたが、人々はがっかりして、またエジプトへ帰ってしまうかもしれません。そこで紅海を通る荒野の道へ行かせたのです。

18 -

19 モーセはヨセフの遺骨を持って出ました。神様のお力によってエジプトから救い出される時には必ず持って行くようにと、ヨセフが神様の前で、イスラエル(ヤコブ)の息子たちに約束させたからです。この日がくることを、ヨセフは確信していたのです。

20 一行はスコテを出たあと、荒野のはずれにあるエタムに野営しました。

21 神様の計らいで、昼間は雲の柱、夜は火の柱が現われ、進む道をはっきり示してくれます。おかげで、昼でも夜でも旅を続けることができました。

22 この雲と火は、その後ずっと、見えなくなることはありませんでした。

14

1 神様はモーセに命じました。

2 「引き返して、ミグドルと海との間、バアル・ツェフォンに面したピ・ハヒロテへ向かいなさい。そこの岸辺にテントを張るのだ。

3 エジプト王はきっと、『イスラエル人どもは砂漠と海の間で立ち往生しているに違いない』と考えるだろう。

4 そして、またもや片意地を張り、あとを追いかけて来る。すべてわたしの思うつぼだ。王とその軍隊に、いやと言うほどわたしの力と栄光を見せてやろう。エジプト人も今度こそ、わたしが神であることを認めないわけにはいくまい。」一行は神様から命じられた場所に野営しました。

5 三日たってもイスラエル人はエジプトへは戻らず、そのまま逃げ出すつもりらしい、という知らせが届くと、王と家来たちはまた気が大きくなりました。「あの奴隷どもをみな逃がすとは、なんというばかなことをしてしまったのだ。」

6 このまま放っておく手はありません。王は戦車に跳び乗り、先頭に立って追跡隊の指揮をとりました。

7 あとには、エジプト戦車隊の精鋭六百と将校の戦車が続きます。

8 こうして追跡が始まりました。みすみすエジプトの富を持って行かせるのは、なんとしてもしゃくにさわります。

9 馬、戦車、騎手と、王の全機動部隊が追跡作戦に駆り出されました。エジプト軍は、イスラエル人がバアル・ツェフォンの手前、ピ・ハヒロテの岸辺に野営していたとき追いつきました。

10 イスラエル人が見ていると、はるかかなたからエジプト軍がやって来ます。それがだんだんスピードを増して近づいて来るのです。人々はすっかり震え上がり、神様に助けを求めました。

11 そして、モーセには泣き事を言うのでした。「エジプトには墓が足りないから、こんな砂漠まで連れ出して、死なせようというんですか。これじゃ、何のためにエジプトから逃げ出したかわかりませんよ。

12 だいたい初めからおかしいと思った。だからあの時も、このまま放っておいてくれって言ったんだ。荒野で死ぬくらいなら、エジプトで奴隷になってたほうがまだましだ。」

13 しかし、モーセは言いました。「みんな、こわがってはいけない。今いる場所にしっかり腰をすえて、きょう神様がすばらしい方法で救ってくださるのを、よく見ようじゃないか。あのエジプト人を見るのも、きょうが最後だ。

14 神様が代わりに戦ってくださる。だから、みんなは指一本、動かす必要がないのだ。」

15 神様はモーセに命じました。「さあ祈るのはそれくらいにして、人々を前進させなさい。

16 杖を海の上に差し伸べると、水が分かれて道ができる。そのかわいた土の上を歩いて渡りなさい。

17 わたしはエジプト人に意地を張らせ、彼らにあとを追わせる。だがその時、王と全軍勢、戦車や騎手たちをわたしは滅ぼす。わたしは大いにたたえられるだろう。

18 そして全エジプトは、わたしが神であることを知る。」

19 その時、いつも人々の前を進んでいた神様の使いがうしろに移ったので、雲の柱もうしろになりました。

20 ちょうど、イスラエル人とエジプト軍の間に立ちふさがるような格好です。真っ黒な雲が垂れこめたからたまりません。あたりは夜のように暗くなり、エジプト人には、イスラエル人が見えなくなってしまったのです。

21 モーセが杖を海に差し伸べると、神様は海の中に道をおつくりになりました。両側には水の壁がそそり立ち、強い東風が一晩じゅう吹きつけて、海の底にかわいた地が現われたのです。

22 イスラエル人は、そのかわいた道を進みました。

23 エジプト軍もあとを追い、どっと海の底へなだれ込みました。王の馬、戦車、騎手ぜんぶです。

24 明け方、神様は火と雲の柱の間からエジプトの軍勢をご覧になり、攪乱戦術に出ました。

25 車輪がはずれて、戦車は海の真ん中で、動きが取れなくなってしまったのです。「逃げろっ!ぐずぐずするなっ。とてもかなわん。やつらには神様がついてるぞ。」あちこちから叫び声があがります。

26 イスラエル人がみな無事に渡り終えたのを確かめると、神様はモーセに命じました。「もう一度、手を海の上に差し伸べなさい。そうすれば水が戻って、エジプト軍の戦車と騎手におおいかぶさるだろう。」

27 モーセはそのとおりにしました。たちまち水の壁はくずれ、海は元どおりになりました。何事もなかったように、朝日を受けて波がきらきら輝いています。エジプト軍は逃げようとしましたが、神様がおぼれさせてしまいました。

28 ついさっきまで道だった所も、エジプト軍の戦車も騎手も、みな海の底に沈みました。あとを追って海に入ったエジプト軍の中で、いのちが助かった者は、ただの一人もありませんでした。

29 実にイスラエル人は、両側に水の壁がそそり立つ中を歩いて、海の底のかわいた地を渡ったのです。

30 こうして神様は、その日、イスラエル人をエジプト軍の手から救い出されました。イスラエル人は岸に流れついたエジプト人の死体を見ました。

31 神様はなんという大きな奇蹟を起こし、助けてくださったのでしょう。人々はあまりの恐ろしさに、身の引きしまる思いでした。そして、神様とそのしもべモーセとを信じました。

15

1 その時モーセとイスラエル人は、神様をたたえる歌をうたいました。「主の勝利をたたえ、心から喜び歌おう。主は馬も人も、海に投げ込んだ。

2 主は私の力、私の歌、私の救いだ。私は、私の神、主をたたえよう。先祖の神、主をあがめよう。

3 主は兵。まことに主と呼ぶにふさわしい。

4 主はエジプト王の戦車と軍勢を滅ぼした。えり抜きの将校もおぼれ死んだ。

5 水にのまれ石のように海の底へ沈んだ。

6 おお、主の右手は力と栄光に満ち敵をみじんに打ち砕く。

7 その輝かしい御力によって主は立ち向かう敵をすべて滅ぼした。主の怒りの火は激しく、彼らはわらのように燃え尽きた。

8 主が息を吹きかけると、水は真っ二つに分かれた!水は壁となってそそり立ち海を二つに分けた。

9 敵は言った。『あとを追え。やつらを滅ぼせ。剣のえじきにし、戦利品を分け合おう。』

10 だが、それもつかの間、風が巻き上がり、海が彼らをのんだ。彼らは大海に沈んだ、まるで鉛のように。

11 主のような神がほかにいるだろうか。主のようにすばらしく、聖なる方がほかにいるだろうか。奇蹟を行なわれる主のようにたたえられ、恐れられる神がほかにいるだろうか。

12 主が手を伸ばすと、大地は彼らをのみ込んだ。

13 自ら買い取った国民を、主は導いてくださった。聖なる地にやさしく導いてくださった。

14 国々はこの話を聞いておののく。ペリシテ人は恐れ、

15 エドムの王たちは驚きまどい、モアブの君たちは震え上がり、カナン人は恐怖のとりことなった。

16 だれもが驚き恐れた。主の大きな力を恐れ、敵もわれわれを襲わない。主が買い取った国民は何の心配もなく外国人の間を通る。

17 主はその国民を導き、神の山に植えてくださる。恐れ多くも、主ご自身の地われわれのために備えてくださった聖なる地に。

18 主は永遠に世界を治める。」

19 エジプト王の馬と騎手と戦車は、海の中を進もうとしました。しかしその時、水の壁はくずれ、彼らの頭上におおいかぶさったのです。そしてイスラエル人は、かわいた地を渡りました。

20 この時、アロンの姉で女預言者のミリヤムが、タンバリンを手に、女たちの先頭に立って踊り始めました。

21 ミリヤムは歌いました。「主の勝利をたたえ、心から喜び歌おう。主は馬も人も海に投げ込んだ。」

22 このあとモーセは人々を率いて、紅海からさらにシュルの荒野へ出ました。三日間、水のない日が続きました。

23 やっとマラに着きましたが、水はあるものの、苦くてとても飲めません。それで、マラ〔「苦い」の意〕という名がついたのです。

24 人々はモーセに不平を言いました。「何とかしてくれ。のどが渇いて死にそうだ。このままじゃ、いよいよ最期だな。」

25 モーセは神様に助けを求めました。すると、神様は一本の木を示し、それを水に投げ入れなさいと命じるのです。そのとおりにすると、水は甘くなりました。このマラで、神様は、人々がどれだけ献身的にご自分に仕えるかを試そうと、次のような条件を出しました。

26 「もしもおまえたちがわたしに従い、正しいことを行なうなら、エジプト人を悩ませた病気で苦しまなくてすむようにしよう。わたしはおまえたちの病を治す主だ。」

27 一行は、やがてエリムに着きました。そこには泉が十二と、なつめやしの木が七十本ありました。その泉のそばで、人人は野営しました。

16

1 さて、一行はエリムを発ち、エリムとシナイ山との間に広がるシンの荒野へ向かいました。荒野に着いたのは、エジプトを出た翌月の十五日(ユダヤ暦による)でした。

2 そこでも人々は、モーセとアロンに非難をあびせました。

3 「あーあ、エジプトにいればよかったなあ。あのまま神様に殺されたほうがまだましだった。少なくとも食べ物はたっぷりあったんだ。なのに、あんたがたはこんな荒野へ連れ出した。きっと、ここでみんなを飢え死にさせるつもりなんだ。」

4 神様はモーセに命じました。「天から食べ物を雨のように降らせよう。毎日みんな外へ出て、必要なだけ集めればよい。これは、わたしの言いつけを守るかどうかを見るテストにもなる。

5 ただ六日目だけは、ふだんの二倍集めさせなさい。」

6 モーセとアロンは、人々を全員呼び集めて言いました。「あなたがたをエジプトから救い出したのは神様だったということが、きょうの夕方にはわかる。

7 そして朝になったら、神様のすばらしさをもっとよく見ることになるだろう。神様に不平を言ったのを、神様はちゃんと聞いておられたのだ。われわれに文句を言っていたつもりだろうが、ほんとうはそうじゃない。われわれなど、全く取るに足りない人間だからな。神様は夕方には肉を、朝にはパンを下さると約束なさった。さあ神様の前へ出て、どうお答えになるか聞くがいい。」

8 -

9 -

10 そして、アロンが一同を呼び集めると、今まで人々を先導してきた雲の間から、突然、神様の恐るべき栄光が荒野に輝き渡りました。

11 神様はモーセに命じました。「皆の不平は確かに聞いた。わたしの返事はこうだ。『夕方には肉を、朝にはパンを欲しいだけ食べさせよう。これによって、わたしがおまえたちの神、主であることを知れ。』」

12 -

13 その夕方、おびただしい数のうずらが飛んで来て、野営地中うずらだらけになりました。明くる朝、テントの回りの砂漠に露が降り、

14 露が消えると、あとには霜のような小さな薄片が残りました。

15 人人はそれを見て、「いったいこれは何だ?」と口々に言い合うのでした。そこで、モーセが説明しました。「これが神様の下さった食べ物だ。

16 みんな一人につき三・六リットルの割で、家族に必要なだけ集めなさい。」

17 人々は外へ出てそれを集めました。

18 集めたものを三・六リットルますで量ると、ちょうど一人当たり三・六リットルずつあって、皆に十分行き渡りました。たくさん集めた者も余さず、少ししか集めなかった者も足りないことはないのです。どの家族にも、ちょうど必要なだけありました。

19 「翌日まで残しておいてはいけない。」モーセはきつく注意しました。

20 ところが中には、やはり言うことを聞かない者もいて、明くる朝まで残しておくのでした。けれどもそういうパンは朝になると、虫がついて、ひどいにおいがしています。モーセは、言いつけを守らない者をしかりつけました。

21 こうして人々は毎朝、それぞれ家族の人数に応じて必要なだけ集めました。日がのぼって日ざしがだんだん強くなると、それは溶けて消えてしまうのです。

22 六日目には、ふだんの二倍集めました。七・二リットルずつです。どうして、六日目だけ二倍なのでしょう。指導者たちは不思議に思い、モーセにわけを尋ねました。

23 モーセはこう説明しました。「神様が、その翌日を特別な休息の日と定められたからだ。その日は一日、神様のことだけを考えて過ごし、日常の仕事はいっさい休まなければならない。だから、きょうのうちに、あすの分まで料理しておきなさい。」

24 今度は、次の朝になっても、虫もつかず、悪いにおいもなく、少しもいたんでいませんでした。

25 モーセは言いました。「きょうは、きのうの残りを食べなさい。神様の安息日だから、きょう外に出ても何もない。

26 集められるのは六日間だけだ。七日目は安息日で、何も見つけることはできない。」

27 ある人はそう言われたにもかかわらず、安息日に食べ物を集めに出かけました。しかし、やはり何も見つかりませんでした。

28 神様はあきれてモーセに告げました。「いつになったら、この民は言うことを聞くのか。六日目にいつもの二倍を与えるのは、二日分の量が十分あるようにということなのが、わからないのか。七日目は休息の日としてわたしが与えたのだから、テントの中にいて、食べ物を取りになど外へ出たりしないようにしなさい。」

29 -

30 そこで、人々は七日目に休みました。

31 この食べ物はのちに、「マナ」〔「これはいったい何だろう」の意〕と呼ばれるようになりました。コエンドロの種のように白く、平べったくて、はち蜜入りのパンのような味がします。

32 モーセはさらに、次のような神様からの指示をみなに伝えました。記念としてマナを三・六リットル取っておき、神様がエジプト脱出の時、荒野でどういうパンを与えてくださったか、のちの時代の人たちが見れるようにするのです。

33 モーセはアロンに、容器を持って来て三・六リットル分のマナを入れ、それを神様の前の聖なる場所に納めて、何代も保存するよう命じました。

34 アロンはそのとおりにしました。すべて神様が命じたとおりです。やがてそれは、神の天幕のあかしの箱(契約の箱)に納められることになります。

35 こうしてイスラエル人は、カナンの地に着くまで四十年間、ずっとマナを食べ続けました。カナンに入ってからは、その地の作物がありました。

36 マナを量るのに使ったのは、だいたい三・六リットル入りのますです。

17

1 さて、神様の命令に従って、人々はシンの荒野をあとにし、無事レフィディムへ旅を続けました。ところが着いてみると、また水がありません。

2 またもや、人々の不満が爆発しました。「水はどこだ?水をくれーっ!」人々はわめきます。「静かにっ。いいかげんにしろ。いったいどこまで神様が忍耐してくださると思ってるんだ。」モーセはしかりつけました。

3 しかし、のどの渇きに苦しむ人々には、いっこうに効き目がありません。「なんだと?おまえこそ、なぜおれたちをエジプトから連れ出したんだ!子供たちや家畜もいっしょにこんな所まで連れて来て、あげくの果てに殺そうなんて、ひどいじゃないか。」

4 モーセは神様に願いました。「どうしたらよろしいのでしょう。今にも私に石を投げつけて殺しかねない有様です。」

5 「長老たちを引き連れ、おまえが先頭に立ってホレブ山(シナイ山)まで人々を導きなさい。わたしはそこの岩のところでおまえに会う。岩をおまえの杖、ナイル川を打ったあの杖で打ちなさい。すると水があふれ出て、みなに十分行き渡るだろう。」言われたとおりにすると、水が吹き出しました。

6 -

7 モーセはその場所を、マサ〔「神様を試みる」の意〕と名づけました。時には、メリバ〔「議論」あるいは「争い」の意〕と呼ぶこともあります。というのは、この場所で人々が、「神様はわれわれを助けてくれるのか、どうなのか」と神様と言い争い、神様が自分たちを殺すかどうか試みたからです。

8 ところで、アマレクの戦士たちがイスラエル人に戦いをいどもうと、レフィディムへやって来ました。

9 モーセはヨシュアに、アマレク軍と戦うために人々を召集するよう命じました。「私はあした、神様の杖を持って丘に立つ。」モーセはきっぱり言いました。

10 ヨシュアとその部下は、アマレク軍と戦うために出て行きました。一方、モーセとアロンとフルは丘に登りました。

11 モーセが手に持った杖を差し伸べている間は、イスラエル軍が勝ち続けるのですが、腕を下げるとアマレク軍が優勢になります。

12 モーセの腕はしびれて、とうとう棒のようになってしまいました。もうこれ以上、杖を持っていることができません。アロンとフルは、石を転がして来てモーセを座らせ、両側に立って、日が暮れるまで二人がかりで腕を支え続けました。

13 こうして、ヨシュアの率いるイスラエル軍は、アマレク軍をみごと打ち破ったのです。

14 神様はモーセに命じました。「このことを書き記して永遠に残る記録としなさい。いつまでも忘れないようにするのだ。またヨシュアに、アマレク人はわたしが完全に滅ぼし、記憶にさえ残らないようにする、と伝えなさい。」

15 モーセは祭壇を築き、それをアドナイ・ニシ〔「神様は私の旗」の意〕と呼びました。モーセは言いました。「神様の旗を掲げなさい。こののち何代にもわたり、神様がアマレク人と戦ってくださる。」

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18

1 やがて、モーセのしゅうと、ミデヤンの祭司イテロのもとに知らせが届きました。神様がご自分の国民とモーセのために、どんなにすばらしいことをなさったか、どのようにしてイスラエル人をエジプトから助け出されたか、知らされたのです。

2 イテロはモーセの妻チッポラを連れ、モーセのところへ来ました。妻は実家に帰してあったのです。

3 二人の息子もいっしょでした。ゲルショム〔「外国人」の意〕とエリエゼル〔「神様は私の助け」の意〕です。こういう名がついたのは、上の子が生まれた時、モーセは、「私は外国をさまよう放浪者だ」と言い、次の子の時は、「ご先祖の神様は私を、エジプト王の剣から助け出してくださった」と言ったからです。

4 -

5 一行が来たのは、ちょうど人々がシナイ山のふもとで野営していた時でした。「わしだ、イテロだよ。チッポラと孫たちを連れて、会いに来たぞ。」

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7 イテロがそう伝えさせると、モーセは大喜びで迎えに出、心からのあいさつを交わしました。さっそくその後の消息を尋ね合い、それからモーセのテントに入って、心ゆくまで語り合うのでした。積もる話に、時のたつのも忘れるほどです。

8 モーセはイテロに、今までのことをくわしく話しました。イスラエル人を救うために、エジプトの王と国民に神様が何をしてくださったか、ここまで来る途中どんな問題が起こり、神様がそれをどのように解決してくださったか、くわしく話したのです。

9 イテロは、神様がイスラエル人を心にかけ、エジプトから助け出してくださったことで大喜びです。

10 「神様はすばらしい。ほんとうにあなたがたをエジプトと王の圧制から救ってくださったんだ。イスラエル人を助けてくださったんだ。

11 わしらの信じる神様のように偉大な方は、ほかにいない。今度こそ、それがよくわかったよ。なにしろ、あの傲慢で残忍なエジプト人から、ご自分の国民を救い出したんだからな。」

12 イテロは神様にいけにえをささげました。そのあと、アロンやイスラエルの指導者たちも会いに来て、みんなでいっしょに食事をし、神様の恵みを感謝し合いました。

13 翌日、モーセはいつものように座って、朝から夕方まで人々の不平を聞き、訴えを裁いていました。

14 全く息つく暇もありません。あまりの忙しさに驚いたイテロが聞きました。「一日中こんなに大ぜいの人が、助言してもらおうとここにやって来るんだろう?どうして、この山のような仕事を一人きりで片づけようとするのかね。」

15 「それはですね、難しい問題があると、みな私のところへ来て神様の判断を仰ぐんです。判事は私です。どちらが正しいか、どちらが間違っているかを決めたり、神様が求める生き方はどういうものかを教えたりします。私がみんなのために神様の法律を実際の情況に当てはめて適用するわけです。」

16 -

17 「うーん、よくないな。

18 こんなやり方を続けていたら、おまえのほうがまいってしまうよ。もしおまえが倒れたら、みんなはどうなるかね?何もかも一人で片づけるには、少し荷が勝ちすぎるんじゃないか。

19 余計なおせっかいかもしれんが、わしの意見を聞いてもらえまいか。神様のお助けがなければどうにもならんが......。おまえはこの人たちの、顧問弁護士になったらいいと思うが、どうだろう。人々を代表して神様の前に立つということだな。彼らの問題を神様のもとへ持って行って決定していただき、その決定を伝える。人々に神の法律を教え、正しい生活を送る原則を示すというわけだ。

20 -

21 ほかに有能な、信心深い、わいろなど取らない正直な人物を捜し、問題の処理にあたらせたらどうだ。千人につき一人そういう指導者を選び、その下に十人の責任者を置く。それぞれが百人のめんどうを見るというわけだ。さらにその下に、五十人の問題を処理する者を二人ずつ置き、その二人がまた、十人の相談相手になる者を五人ずつ受け持つ。

22 これらの人たちがいつでも問題の処理にあたって、正しく職務を果たせるようにする。特に重要な問題とか難しい問題は、おまえのところへ直接持って来させるが、小さな問題は彼らに任せる。こうやって、少しずつ責任を分担すれば、おまえも少しは楽になれるというものだ。

23 どうだ、わしの言うとおりにしてみんか。神様も、きっと賛成してくださると思うがな。こうすれば、どんな大へんな仕事もやり抜けるだろう。野営地の中も平穏無事になるしな。」

24 モーセは、イテロの提案を受け入れることにしました。

25 すべてのイスラエル人の中から有能な人物を選び、人々の指導者に任命しました。千人、百人、五十人、十人、それぞれのグループごとに指導者を置いたのです。

26 この人たちは、問題が起こればすぐ解決して、正しい判決を下すことができるようになっていました。難しい問題はモーセのところへ持って来ますが、小さな問題は自分たちだけで裁きました。

27 それから間もなく、しゅうとのイテロはモーセに別れを告げ、国へ帰りました。

19

1 エジプトを出てから三か月後、イスラエル人はシナイ半島に入りました。

2 レフィディムの野営地をたたみ、シナイ山のふもとに来て、そこにテントを張ったのです。モーセは神様に会うため、ごつごつした岩山に登りました。すると、どこからともなく、神様の呼ぶ声が聞こえました。「モーセ、人々にこう言いなさい。

3 -

4 『おまえたちはわたしがエジプト人に何をしたか見た。わしの翼に乗せるようにして、おまえたちをわたしのところへ連れて来たのを見た。

5 もしわたしに従い、契約を守るなら、おまえたちは地上のあらゆる国々の中にあって、わたしの大切な国民となる。全世界はわたしのものだからだ。

6 おまえたちは神に仕える祭司の国、聖なる国民となる。』」

7 モーセは山から帰ると指導者たちを呼び集め、神様のおことばを伝えました。

8 「神様がせよと言われることは、必ずそのとおり行ないます。」一同は口をそろえて答えました。

9 モーセがそのことばを伝えると、神様はモーセに命じました。「わたしは厚い雲の中からおまえと会おう。おまえと話す時、皆もわたしの声を自分の耳で聞けるようにしよう。そうすれば、彼らはいつもおまえを信じるだろう。

10 さあ、山を降りなさい。わたしが行ってもいいように、人々に準備をさせなさい。今日と明日、特別に身をきよめ、衣服を洗うように言いなさい。

11 あさって、わたしは人々がみな見守る中で、シナイ山に降りる。

12 まちがってそこへ足を入れたりしないよう、周囲に境界線を引きなさい。そしてこう言うのだ。『気をつけなさい。山へ登ってはならない。境界線に触れるだけでもいけない。万一そんなことをしたら命はないものと思え。

13 いいか、決して手を触れるな。さもないと、人であろうと動物であろうと、石で打ち殺されるか、刺し殺されるかだ。』雄羊の角笛が長く響き渡るのを聞くまで、山へは絶対近づかないように。角笛が鳴ったら山へ登ってかまわない。」

14 モーセは山を降り、人々のところへ帰ると、さっそく身をきよめ、衣服を洗うように言いました。

15 「二日後に神様がおいでになるから、準備をしなさい。夫婦生活も慎むように。」

16 いよいよ三日目です。朝から恐ろしい嵐になりました。雷は耳をつんざき、いなずまは宙を走ります。厚い雲が重く山に垂れこめ、雄羊の角笛のような大きな音が長く響き渡りました。あまりの恐ろしさに、人々はみな震え上がりました。

17 神様をお迎えしなければなりません。モーセは人々をうながして野営地を出、全員が山のふもとに立ちました。

18 見ると、シナイ山全体が煙に包まれています。神様が山の上に、火となって下られたのです。煙は、まるで炉に燃えさかる火のように空に渦を巻き、山全体が強い地震で揺れ動きました。

19 ラッパのような響きがますます大きくなる中で、モーセが語り、神様の答える声は天地にとどろき渡るのでした。

20 こうして、神様はシナイ山の頂上に下り、モーセをお召しになりました。モーセは神様のみもとへ登って行きました。

21 しかし、神様はモーセに注意なさいました。「今すぐ降りて、決して境界線を越えないようにと警告して来なさい。神を見ようなどという気を起こして、ここへ来るといけないから。そんなことをしたら命はない。

22 祭司でさえ、務めをする時は神に滅ぼされないよう身をきよめるのだ。」

23 「だれ一人、山へ登って来る者はありません。神様のきびしいご命令を、みな聞いております。神様は山の回りに境界線を引けとおっしゃいました。神様の場所だから人が入ってはならないと宣言するよう、お命じになったではありませんか。」

24 「とにかく、今は山を降りなさい。今度はアロンを連れて来るのだ。だが、たとい祭司であろうとだれであろうと、境界線を越すことは断じて許さん。そんな不届き者はわたしが滅ぼす。」

25 モーセは山を降りて人々のところへ行き、神様のお語りになったことを告げました。

20

1 さて、神様は次のような戒めを公布しました。

2 「わたしは、あなたをエジプトでの奴隷生活から救い出した、あなたの神、主だ。

3 わたしのほかは、どんな神も拝んではならない。

4 決して偶像を作ってはならない。鳥だろうが、動物だろうが、魚だろうが、どんな像も作ってはならない。

5 拝んでもいけない。どんな方法で礼拝してもいけない。あなたの神はこのわたしだけだ。わたしは嫉妬深いから、わたしとほかの『神』を同時に愛することは許さない。わたしの罰は、わたしを憎む者の子供、孫、曾孫までも及ぶ。

6 しかし、わたしを愛し、わたしの命令を守る者には、千代のちまでも恵みを与えよう。

7 果たすつもりもないのに、やたらにわたしの名を使って誓ってはならない。そんなことをしたら必ず罰せられる。

8 安息日を特別の日として守りなさい。

9 仕事はみな六日のうちにすませなさい。

10 七日目は神の休息の日だから、その日は一日、人も家畜も仕事をしてはならない。外国人も、あなたといっしょに住んでいる限り、この法律を守る義務がある。

11 わたしが六日の間に天と地と海と、その中のいっさいのものを造り、七日目に休んだからだ。わたしは安息日を祝福し、特別な日と定めた。

12 両親を尊敬しなさい。そうすれば、主であるわたしが与える国で、しあわせな一生を送ることができる。

13 人を殺してはならない。

14 姦淫してはならない。

15 盗んではならない。

16 うそをついてはならない。

17 人の家をうらやんではならない。人の妻に欲情を燃やしたり、使用人、牛、ろば、そのほか何でも、人の持ち物を欲しがったり、持ち主をねたんだりしてはならない。」

18 人々はみな、山にいなずまがひらめき、煙が立ちこめるのを見ました。また、雷と恐ろしいラッパの音が鳴り続けるのも聞きました。だれもが遠く離れて立ち、恐ろしさに身を震わすばかりです。

19 人々はモーセに言いました。「神様がどんなことをおっしゃったか教えてください。言われたとおり従います。ただ、神様が直接お話しにならないようにしてください。そんなことになったら命はありません。」

20 「心配はいらない。神様がおいでになったのは、恐るべきお力をあなたがたに示すためだ。神様の力を知れば、これからは罪を犯すことを恐れるようになるだろう。」

21 民が遠く離れて立ち尽くしている中を、モーセは神様のおられる濃い暗やみの中に入って行きました。

22 神様はモーセに、神の代弁者として人々に語るよう命じました。「わたしは天からおまえに呼びかけ、わたしの気持ちを知らせた。おまえはその証人である。

23 金や銀、そのほかの偶像を作ったり拝んだりしてはならないことを忘れるな。

24 わたしの祭壇は簡素な土の祭壇でなければならない。羊と牛の完全に焼き尽くすいけにえとか和解のいけにえなどを、その上でささげなさい。祭壇はわたしが命じる場所にだけ築けばよい。そこで、わたしはおまえたちを祝福する。

25 石を使うのはさしつかえないが、切り石はいけない。道具を使って、石をけずったり刻んだりしないようにしなさい。そんな石はわたしの祭壇にふさわしくない。

26 祭壇には階段をつけない。服の間からおまえの裸が見えたりするといけないからだ。

21

1 ほかに守らなければならない法律には、次のようなものがある。

2 ヘブル人(イスラエル人)の奴隷を買った時は、六年のあいだ仕事をさせたあと、七年目には無償で自由にしなければならない。

3 奴隷になったとき独身で、のちに結婚した男の場合は、男だけが自由にされる。奴隷になる前に結婚していたなら、妻もいっしょに自由にされる。

4 しかし、主人が妻を与え、息子や娘が生まれたのであれば、妻と子供たちは主人のものだから、自由の身になるのは夫だけだ。

5 しかし、もし彼が、『自由になるより、ご主人様や妻子といっしょにいたいのです』とはっきり宣言するなら、

6 主人は彼を裁判官のもとへ連れて行き、公に彼の耳をきりで刺し通さなければならない。そのあと彼は一生奴隷となる。

7 娘を奴隷に売る場合は、六年たっても、男奴隷のように自由を与えてはならない。

8 主人は、その女が気に入らなくなったら、必ず彼女を買い戻せるようにしてやらなければならない。しかし、外国人に売り飛ばす権利はない。いったんは結婚しておきながら、用ずみだということで彼女を傷つけたからである。

9 ヘブル人の女奴隷と息子を婚約させたなら、もはやその女を奴隷として扱ってはならない。娘と同じに考えるべきである。

10 自分が女奴隷と結婚し、そののち別の妻を迎えた時は、彼女への食べ物や衣類の割り当てを減らしてはならないし、夫婦の営みをおろそかにしてもいけない。

11 この三つの点で少しでも主人に落度があれば、女は一円も支払わず自由に家を出てかまわない。

12 人を強く打って死なせた時は、打った者は死刑だ。

13 しかし、殺意がなく、たまたま事故でそうなった時は、むしろ、わたしがそうしたと言ってもいいくらいなのだから、わたしが安全な逃げ場所を指定する。そこへ逃げ込めばいのちは助かる。

14 しかし殺意を持って計画的に人を殺した者は、たといわたしの祭壇から引きずり降ろしてでも、死刑にしなさい。

15 両親を打つ者は死刑だ。

16 誘拐犯は死刑だ。人質を手もとに置いている時に逮捕された場合でも、すでに奴隷として売り飛ばした場合でも同じだ。

17 両親に悪口を言ったりのろったりする者は死刑だ。

18 二人の男がけんかをし、一人が石か拳で相手を打って傷つけ、そのために、一命はとりとめたものの床につかなければならないという場合、

19 たとい、少々不自由であっても歩けるまでに回復した時は、打った男は無罪となる。ただし、完全に傷が治るまで、いっさいの損害の弁償をし、治療費は全額払わなければならない。

20 人が、男奴隷であろうと女奴隷であろうと、奴隷を打って死なせたなら、必ず罰せられる。

21 ただし、奴隷が一日、二日の間に死ななければ、その時は罰せられない。奴隷はその人の所有物だからである。

22 二人の男が争っていた時に妊娠中の女性を傷つけ、そのために、母親は助かったものの流産をした場合、彼女を傷つけた男は、裁判官が認める範囲内で、女の夫が要求するだけの罰金を支払わなければならない。

23 しかし、傷のために母親まで死ぬようなことにでもなれば、男は死刑だ。

24 もし女の目が傷ついたら、償いとして男の目を傷つけ、歯が折れたら歯を折る。手には手を、足には足を、

25 やけどにはやけどを、傷には傷を、むちにはむちを、である。

26 人が、男奴隷であれ女奴隷であれ、奴隷の目を打ち、そのために目が見えなくなってしまったら、奴隷は目の償いとして自由にされる。

27 人が奴隷の歯を折ったら、その歯の償いとして彼を自由にしなければならない。

28 牛が男または女を突いて死なせたなら、牛は石で打ち殺す。その肉は食べてはならない。しかし、牛の持ち主は罰せられない。

29 ただし、その牛が人間を突くくせがあるとわかっていた場合、そして、持ち主がそのことを知っていながら、なお管理を十分にしていなかったのであれば、その時は牛は石で殺され、持ち主も死刑となる。

30 しかし、被害者の身内の者が願うなら、補償金を取って釈放することもできる。金額は裁判官が決める。

31 牛が少年あるいは少女を突いた場合も、同じ法律が適用される。

32 しかし、男であれ女であれ奴隷を突いた場合は、奴隷の主人に銀貨三十枚を支払い、牛は石で打ち殺す。

33 人が井戸を掘り、ふたをしなかったために、牛やろばが落ちた時は、

34 井戸の持ち主は家畜の持ち主に、損害の全額を弁償しなければならない。ただし、死んだ家畜は井戸の持ち主のものになる。

35 牛がほかの人の牛を傷つけて死なせた時は、生きているほうの牛を売り、その代金と死んだ牛を、双方の持ち主が半分ずつ分ける。

36 しかし、もともと突くくせがあるとわかっていたのに、牛の所有者が管理を十分していなかったのであれば、代金を分け合うことはしない。生きている牛の所有者が全額を弁償しなければならない。ただし、死んだ牛は彼のものになる。

22

1 人が牛か羊を盗み、それを殺したり売り飛ばしたりしたなら、五倍の罰金を払わなければならない。盗んだ牛一頭につき五頭分を弁償する。羊の場合は四倍にし、盗んだ羊一頭につき四頭分を返す。

2 どろぼうが家に押し込むところを捕まえて殺しても、殺した者は無罪である。

3 ただし、昼間であれば殺人と見なされ、有罪となる。どろぼうをして捕まった時は、損害を全額弁償しなければならない。できなければ、奴隷に身を売ってでも弁償する。

4 牛、ろば、羊、そのほか何でも盗みの現行犯として捕まったなら、賠償金は二倍になる。

5 放した家畜が人のぶどう畑に侵入したり、わざと人の畑に家畜を放して作物を食べさせたりした場合は、損害の全額を弁償しなければならない。畑の持ち主に、最良の収穫に見合う分を支払う。

6 野焼きの最中に火が燃え広がって人の畑に燃え移り、刈り穂や穀物を焼いた時は、火をつけた者は損害の全額を弁償しなければならない。

7 人にあずけた金や物が盗まれた場合、どろぼうが捕まれば、犯人が損害の倍額を支払う。

8 犯人が捕まらない時は、貴重品をあずかった者は神の前で裁判を受け、自分が盗んだのでないことをはっきりさせなければならない。

9 牛、ろば、羊、衣類、そのほか何でも紛失した場合、持ち主がほかの人に疑いをかけ、しかも、相手がそれを否認する時は、双方が神の前で裁判を受ける。神に有罪と宣告された者は、損害の倍額を支払わなければならない。

10 ろば、牛、羊、そのほかどんな動物でも、人にあずけ、死ぬか傷つくか盗まれるかした場合、そして、実際にどうであったかを報告する目撃者がいない時は、

11 あずかった者は、自分が盗んだのではないことを神に誓わなければならない。持ち主がその言い分を受け入れれば、弁償の必要はない。

12 しかし、その家畜が確かに盗まれたのであれば、あずかっていた者は持ち主に弁償しなければならない。

13 また、野獣に襲われたのであれば、証拠として、食い荒らされた死体を持って来なければならない。この場合は弁償の必要はない。

14 人から家畜を借り、それが傷つくか死ぬかして、しかも、持ち主がその場に居合わせなかった時は、借りた者が弁償しなければならない。

15 しかし、持ち主が居合わせた場合は弁償の必要はない。ただし、賃借りの物については、借り賃はきちんと払わなければならない。

16 だれとも婚約していない女性を誘惑し、彼女と関係を結んだ者は、しきたりどおりの結納金を支払って、彼女を妻にしなければならない。

17 しかし、父親が結婚に反対の場合は慰謝料を払う。

18 女呪術師は死刑だ。

19 動物と性的関係を持つ者は死刑だ。

20 主以外の神々にいけにえをささげる者は死刑だ。

21 外国人を迫害してはならない。自分自身がエジプトで外国人だったことを忘れるな。

22 未亡人や孤児につらく当たってはならない。

23 少しでもそんなことがあれば、彼らはわたしに助けを求めるだろうし、わたしは必ず彼らを助ける。

24 わたしの怒りは燃え上がり、剣でおまえたちを殺す。おまえたちの妻が未亡人に、子供が孤児になる。

25 困っている仲間のヘブル人(イスラエル人)に金を貸す場合、利息を取る普通の取り引きをしてはならない。

26 服を借金のかたに取ったら、夕方には返さなければならない。

27 おそらくそれが、彼の体を暖める唯一の物だからである。着る物もなくて、どうして眠ることができるだろう。もし返さなければ、彼はわたしに助けを求めるだろう。わたしは願いを聞き、彼を助ける。わたしは情け深いからである。

28 神を冒涜してはならない。国の指導者である裁判官や支配者をのろってはならない。

29 収穫物やぶどう酒のささげ物、また長男を買い戻す金をささげるのに、ぐずぐずしてはならない。

30 牛と羊の初子は七日のあいだ母親といっしょにおき、八日目にささげなさい。

31 おまえたち自身が聖なるもの、わたしの特別な国民だから、野獣に殺された動物は食べてはならない。死体はそのままにして、犬に食べさせなさい。

23

1 根も葉もないうわさを流してはならない。証言台で偽証をし、悪人を助けることがないようにしなさい。

2 多数の力に押し流されて、悪事に加担してはならない。証言台に立つ時、その場のふんい気に左右され、不当な証言をしてはならない。また、ただ貧しいというだけで人に同情し、証言をゆがめたりしてもいけない。

3 -

4 敵の牛やろばが道に迷っているのを見たら、敵のもとへ送り返しなさい。

5 もし敵のろばが重荷に押しつぶされてうめいていたら、そのまま見過ごしにしてはならない。力を貸してろばを立たせてやりなさい。

6 正義を曲げ、貧しい人に不利になる裁判をしてはならない。

7 絶対に、うその非難をあびせてはならない。無実の者が死刑になるようなことがあってはならない。そんなことは決して許さない。

8 わいろを取ってはならない。わいろは人の目をくらませ、判断を誤らせるからである。わいろは正しい人の申し立てをゆがめる。

9 外国人を迫害してはならない。外国に住む心細さはよく知っているはずだ。エジプトでの体験を思い出すがいい。

10 六年のあいだ種をまき、収穫をあげなさい。

11 七年目は土地を休ませ、貧しい者が自然に生えた物を刈り取れるようにする。あとは、野獣が自由に食べられるように残しておきなさい。この規則はぶどう畑とオリーブ畑にも当てはまる。

12 六日間だけ働いて七日目は休みなさい。牛やろばを休ませ、奴隷や客も含め、家族全員に休息をとらせるためである。

13 これらの戒めを必ずぜんぶ守らなければならない。特に忘れてならないことは、ほかの神々の名を決して唱えてはならないことだ。

14 毎年守る祭りが三つある。

15 最初は種なしパンの祭りである。すでに命じておいたように、七日間イースト菌抜きのパンを食べる。この祭りは三月(ユダヤ暦では一月)、つまり、エジプト脱出の時期に毎年行なう。この時はささげ物を持って来る。

16 次に、刈り入れの祭りがある。この時は最初の収穫物を持って来なければならない。最後に、収穫期の終わりに収穫の祭りがくる。

17 毎年この三回、イスラエル人はみな神の前に出なければならない。

18 いけにえの血は、イースト菌を入れたパンといっしょに供えてはならない。いけにえの脂肪を翌朝までそのまま残しておいてはならない。

19 刈り入れの時、最初の収穫の最良の物を持って来なさい。それはあなたの神、主にささげなければならない。子やぎを母親の乳で煮てはならない。

20 わたしは約束の地へ無事おまえたちを連れて行くため、使いを送る。

21 彼を敬い、その教えにはすべて従いなさい。反逆してはならない。おまえたちの罪を、彼は赦さないからだ。この使いはわたしの名において行動する。

22 しかし、注意深く彼に従い、あらゆる戒めを守るならば、おまえたちの敵はわたしの敵となる。

23 わたしの使いが先立って、おまえたちをエモリ人、ヘテ人、ペリジ人、カナン人、ヒビ人、エブス人の国へ導き、そこに住まわせる。その国国を、わたしはおまえたちの目の前で滅ぼす。

24 こういった国々の偶像を拝んではならない。どんなことがあっても、そんな神々にいけにえをささげてはならない。異教徒の悪い習慣に染まらず、むしろ、完全に彼らを征服し、その汚れた偶像を破壊しなければならない。

25 おまえたちの神、主にだけ仕えなければならない。そうすれば、わたしはおまえたちを祝福して食べ物と水を与え、あらゆる病気をなくす。

26 流産もなくなるし、子供を産めない女性もいなくなる。おのおのが充実した人生を送ることができるようにする。

27 わたしは、これから征服する地の人々に恐れをいだかせる。彼らはおまえたちの前から逃げ去る。

28 わたしはまた、ヒビ人、カナン人、ヘテ人を追い払うために、くまばちを送る。

29 ただ、一年のうちに全土を占領させることはしない。そんなことをしたら、土地が荒れほうだいになり、野獣が増えすぎて手に負えなくなってしまう。

30 だから、人口が増え、国中に住みつくようになるまで、少しずつ追い払う。

31 国の境界線も広げよう。紅海からペリシテの海岸まで、南の砂漠からユーフラテス川までとする。おまえたちをその地の住民に勝たせるので、彼らを追い出すことになる。

32 彼らといっさい契約を結んではならない。彼らの神々とかかわり合ってはならない。

33 彼らをイスラエルに住ませてはならない。さもないと、偽りの神々を拝む彼らの罪に染まってしまう。それは、おまえたちにとって災い以外の何ものでもない。」

24

1 神様はモーセに命じました。「アロン、ナダブ、アビフをはじめ、イスラエルの長老たち七十人といっしょに、ここへ登って来なさい。ただしほかの者は、みな遠くから礼拝するように。

2 おまえはそばに来てかまわない。忘れるな。一般の民はだれも山に登ることは許されない。」

3 モーセが、神様から与えられた法律と戒めを伝えると、人々は声を合わせて答えました。「すべて言われたとおりにいたします。」

4 モーセは法律を書き記しました。明くる朝はやく、山のふもとに祭壇を築き、その回りに十二本の柱を立てました。イスラエルの十二部族を表わすためです。

5 それから数名の青年を送り、完全に焼き尽くすいけにえと和解のいけにえを、神様にささげさせました。

6 モーセはいけにえの血を半分取って鉢に入れ、残りの半分は祭壇に注ぎました。

7 彼は自分が書いた契約書を読みあげました。それには、神様の指示や法律が書いてあります。「この戒めを一つ残らず守ることを約束します。」人々はまた誓いました。

8 モーセは人々に鉢の血を振りかけました。「神様はこの法律を与えることによって、あなたがたと契約を結ばれた。この血が契約の証印だ。」

9 モーセ、アロン、ナダブ、アビフ、それにイスラエルの長老七十人の一行は、山へ登りました。

10 彼らはイスラエルの神様を見たのです。その足もとは、サファイヤを敷きつめたように青く輝き、澄みきった空を思わせました。

11 長老たちは神様を見たのに死にません。そればかりか、主の前でいっしょに食事をしたのです。

12 神様はモーセに命じました。「山へ登り、わたしのところへ来なさい。わたしが石に記した法律と戒めをおまえに与えよう。山で待ちなさい。おまえはその法律から人々を教えることができる。」

13 モーセと助手のヨシュアは、神の山へ登りました。

14 モーセは長老たちに言いました。「われわれが戻るまで、ここで待ちなさい。留守中に何か問題が起こったら、アロンとフルに相談すればいい。」

15 そう言うと、モーセは山へ登り、頂上をおおう雲の中に姿を消しました。

16 神様の栄光がシナイ山を包み、雲は六日のあいだ山をすっぽり隠しました。七日目に神様は雲の間からモーセに呼びかけました。

17 一方、ふもとにいた人々は恐ろしい光景を見ました。山の頂上に神様の栄光が現われたのです。まるで燃えさかる火のようでした。

18 モーセは雲に包まれた山頂に姿を消し、四十日四十夜そこにこもりました。

25

1 神様はモーセに命じました。「人々に布告を出しなさい。だれでも望むままにささげ物をわたしのところへ持って来てよろしい。ささげ物は次のリストから選びなさい。金、銀、青銅、青のより糸、紫のより糸、深紅のより糸、上質のリンネル、山羊の毛、赤く染めた雄羊のなめし皮、じゅごん(海に住む哺乳動物)の皮、アカシヤ材、ともしび用のオリーブ油、注ぎの油と香に使う香料、しまめのう、エポデと胸当てにはめる宝石類

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8 わたしがイスラエルに住めるよう、聖なる住まいを作ってほしい。

9 住まいは天幕にすること。その設計図と必要な器具の細かい寸法は、次のとおりだ。

10 アカシヤ材を使って長さ百二十五センチ、幅七十五センチ、高さ七十五センチの箱を作りなさい。

11 内側にも外側にも純金を張り、周囲に金の縁飾りをつける。

12 金の環を四つ作り、箱の下の四すみにつける。片側に二個ずつだ。

13 アカシヤ材で棒を作って金をかぶせ、箱の両側につけた金の環に通してかつげるようにする。

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15 棒は取りはずさず、差し込んだままにしておかなければならない。

16 わたしが与える十戒を記した石板を、その箱に納めなさい。

17 また、純金のふたを作りなさい。長さ百二十五センチ、幅七十五センチにする。これは罪を赦す神の恵みの座である。

18 次にふたの両端に、天使の像をつちで打ち出して作る。

19 それは恵みの座の一部分で、その両端になる。

20 ケルビム、つまりその天使は、互いに向かい合って恵みの座を見下ろし、翼が金のふたをおおうようにしなければならない。

21 ふたができたら箱にかぶせる。箱には十戒の石板を納めなさい。

22 わたしはそこでおまえに会い、ケルビムにはさまれた恵みの座からおまえと語る。箱にはわたしの契約の法律を納める。わたしはそこから、イスラエルの人々への命令をおまえに伝える。

23 次に、長さ一メートル、幅五十センチ、高さ七十五センチのテーブルをアカシヤ材で作りなさい。

24 それに純金を張り、周囲に金の縁飾りをつける。

25 テーブルの上部に八センチ幅のわくをつけ、その周囲にぐるりと金の縁飾りをつける。

26 金の環を四つ作り、それを四本の足の上部に、外側へ向けてつける。テーブルを運ぶ棒を通すためだ。

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28 棒はアカシヤ材で作り、金をかぶせる。

29 金で皿、スプーン、水差し、細口びんなどを作り、

30 テーブルの上には、わたしのために特別なパンをいつも供えなさい。

31 純金のかたまりをつちで打って燭台を作りなさい。燭台は台座と支柱からなり、ともしび皿と飾りの花びらをつける。

32 真ん中の支柱の両側から三本ずつ枝を出し、それぞれの枝は三つのアーモンドの花で飾る。

33 -

34 真ん中の支柱は四つの花で飾る。三対になっている枝の間に一つずつ、その上に一つ、その下に一つ、計四つの花をつける。

35 -

36 飾りと枝と支柱はみな、一かたまりの純金を打って作る。

37 それに七つのともしび皿を作り、あかりが前を照らすように置く。

38 芯切りばさみと芯取り皿も純金で作る。

39 燭台とその付属品のために、およそ五十キログラムの純金が必要であろう。

40 作る物はみな、この山の上でわたしが指示する型どおりに、きちんと作らなければならない。

26

1 上等のより糸で織ったリンネル十枚をつなぎ合わせ、神の天幕を作りなさい。布はそれぞれ長さ十四メートル、幅二メートルとする。青と紫と深紅のより糸を使い、全体にケルビム(天使の像)を織り出す。

2 -

3 五枚ずつへりとへりをつなぎ合わせて、大きな布を二枚作り、天幕の両側面とする。

4 この二枚の端と端をつなぎ合わせるために、へりにループをつける。それぞれのへりに対になるよう五十ずつのループを作る。

5 -

6 ほかにループをつなぐ五十個の留め金を金で作る。こうして神の住まいである天幕を一つに組み立てる。

7 屋根の部分には山羊の毛皮の防水布をかぶせる。それぞれ長さ十五メートル、幅二メートルのものを十一枚用意する。

8 -

9 このうち五枚をつなぎ合わせて幅広の幕にし、残りの六枚も、つないで一枚の幕にする。長いほうの六枚目にあたる部分は、上から垂らして、聖なる天幕の正面で折り重ねる。

10 この二枚の幕をつなぎ合わせるために、それぞれのへりに五十個のループを作り、五十個の青銅の留め金を使って一枚にする。

11 -

12 天幕のうしろは、屋根をおおう幕が五十センチ垂れ下がり、

13 また、正面にも五十センチ垂れ下がる。

14 この防水布の上に、赤く染めた雄羊のなめし皮を敷き、その上にじゅごん(海に住む哺乳動物)の皮をかける。これで屋根が完成する。

15 聖なる天幕のわく組みをアカシヤ材で作りなさい。それぞれ長さ五メートル、幅七十五センチの板を、まっすぐ立てて組み合わせる。

16 -

17 側面にほぞを二つ作り、隣の板をはめ込む。

18 こうして二十枚つなぎ合わせたものが、聖なる天幕の南側になる。それぞれの板は銀の土台二個にはめ込む。板一枚につき二個ずつ、計四十個の銀の土台が必要となる。

19 -

20 北側にも同じような板が二十枚、

21 それぞれに二個ずつ、計四十個の銀の土台を使う。

22 西側には六枚の板、

23 そして両すみに二枚の板を使う。

24 すみの板は下を重ね、上を環でつなぎ合わせる。

25 それで結局、西側には板が八枚、銀の土台がそれぞれに二個ずつで、計十六個あることになる。

26 アカシヤ材で横木を作り、わく組み全体に張り渡しなさい。両側面に五本ずつ、さらに西に面するうしろ側に五本、

27 -

28 わくの真ん中になる中央の横木は、端から端まで通す。

29 板に金をかぶせ、横木を通すために金の環を作る。横木にも金をかぶせる。

30 この天幕を、わたしが山で指示したとおりに建てなさい。

31 〔天幕の内側には〕、青と紫と深紅の上等のより糸とリンネルで垂れ幕を作り、それにケルビムを織り出しなさい。

32 これをアカシヤ材の四本の柱の上から、金のかぎ四つを使って垂らす。柱には金をかぶせ、それぞれ銀の土台に立てる。

33 幕はかぎから垂らし、その奥に箱を置きなさい。箱には神の法律を記した石板が納めてある。この幕が聖所と最も神聖な至聖所とを分ける。

34 至聖所の箱には金のふたをし、『恵みの座』をしつらえなさい。

35 幕の外の聖所に、テーブルと燭台を向かい合わせに置く。燭台は南側、テーブルは北側である。

36 聖なる天幕の入口にかける垂れ幕を、もう一枚作りなさい。青と紫と深紅の上等のより糸とリンネルで作り、精巧な刺しゅうを施す。

37 その幕を五本のアカシヤ材の柱から、金のかぎを使って垂らす。柱には金をかぶせ、青銅の土台に立てる。

27

1 アカシヤ材で祭壇を作りなさい。一辺が二メートル半の正方形で、高さは一メートル半にする。

2 四すみに角をしっかり取りつけ、全体に青銅をかぶせる。

3 灰を取るつぼ、十能、鉢、肉刺し、火皿も、みな青銅で作る。

4 青銅の格子を作り、四すみに青銅の環をつける。

5 炉の半ばほどの高さの所に棧を作り、そこに格子を取りつける。

6 祭壇を移動させるために、青銅をかぶせたアカシヤ材の棒を作る。

7 祭壇の両側面に環をつけ、その中に棒を通して運ぶのだ。

8 祭壇は板で作り、中をがらんどうにする。何から何まで、山の上で指示したとおりに作りなさい。

9 次に天幕の庭を造る。上等のより糸で織ったリンネルで幕を作り、庭を囲む。南側には五十メートルにわたって幕を張り、二十個の青銅の土台にはめ込んだ二十本の柱で支える。柱に取りつけた銀のかぎに銀の環をかけ、幕を垂らすのだ。

10 -

11 北側も同じようにする。青銅の土台に二十本の柱をはめ込み、銀のかぎと環で五十メートルの幕を張る。

12 西側は土台十個に柱十本、幕は幅二十五メートルとする。

13 東側も同じく二十五メートルである。

14 ただし、中央に入口があり、その両側に七メートル半ずつ幕を張る。三個の土台にはめ込んだ三本の柱が、それを支える。

15 -

16 庭の入口は幅十メートルの幕をかける。青と紫と深紅の上等のより糸とリンネルで作った、美しい刺しゅう入りの幕である。幕は、四個の土台にはめ込んだ四本の柱に取りつける。

17 庭の回りの柱はぜんぶ銀の環をつけ、銀のかぎを使う。柱は青銅の土台にしっかりはめ込んでおく。

18 こうして庭全体は長さ五十メートル、幅二十五メートルになる。周囲の幕は上等のより糸で織ったリンネル製で、高さ二メートル半の仕切りとなる。

19 天幕での仕事に使う道具類、それを壁からつるすための釘や庭のくいなど、すべて青銅で作る。

20 人々に命じて、天幕のともしび用の純粋なオリーブ油を持って来させなさい。天幕の中では、四六時中ともしびを燃やし続けなければならない。

21 アロンとその息子たちは、この永遠の炎を聖なる天幕の中、垂れ幕の外側に置き、昼も夜も消えることがないように、神の前で番をする。これはイスラエルの永遠のおきてである。

28

1 おまえの兄アロンとその息子ナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルを特別に選び出して祭司に任命し、わたしに仕えさせなさい。

2 そして神のために特別にきよくされた者だというしるしに、アロンのために特製の服を作りなさい。見た目にも美しく、祭司としての威厳を示す服を作るのだ。

3 そのための特別な才能を、わたしはある者たちに与えた。彼らに、アロンがほかの者とは違うことを示す服を作らせなさい。祭司としてわたしに仕えることができるようにするのだ。

4 祭司が着る服は、胸当て、エポデ(ひざ下までの、そでなし上着)、青い上着、市松もようの長服、ターバン、飾り帯である。このほかアロンの息子たちのためにも、特製の服を作る。

5 エポデは、最も優秀な技術者に、金と青と紫と深紅の上等のより糸で織ったリンネルで作らせなさい。

6 -

7 これに二枚の肩当てをつけ、両端を留める。

8 同じ生地、金と青と紫と深紅の上等のより糸で織ったリンネルで、あや織りの帯を作る。

9 二個のしまめのうに、イスラエルの十二部族の名を彫りなさい。

10 それぞれに六つずつの名を彫り、全部族の名が誕生順になるようにする。

11 名前を彫る時は、印を作る技術を用いる。その二つの石を金の台にはめ、

12 エポデの肩に縫いつけて、イスラエル国民を記念する石とする。アロンは神の前に出る時、いつも全部族の名を身につけ、絶えずそのことが頭から離れないようにする。

13 また、純金をよって二本の鎖を作り、エポデの肩のところで金の留め金につける。

14 -

15 次に、最もすぐれた技術を用いて、神の託宣を聞くために用いる胸当てを作りなさい。エポデと同じく、金と青と紫と深紅の上等のより糸で織ったリンネルを使う。

16 大きさは二十五センチ四方で、二つに折って袋状にする。

17 それに石を四列に取りつける。最初の列はルビー、トパーズ、エメラルド。

18 二列目はトルコ玉、サファイヤ、ダイヤモンド。

19 三列目はヒヤシンス石、めのう、紫水晶。

20 四列目は緑柱石、しまめのう、碧玉。これらはみな金の台にはめる。

21 それぞれの石はイスラエルの部族を表わし、その部族の名を、印と同じように彫りつけなければならない。

22 二本の純金をよって鎖を作り、胸当ての縁をエポデにつなぎ合わせなさい。それぞれの鎖の一端は、胸当ての上辺の外側につけた金の環に結びつける。

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24 -

25 もう一端は、エポデの両肩に取りつけたしまめのうの台に、外向きに結びつける。

26 次に金の環をもう二個作り、胸当ての下のへり、内側の二個所に取りつける。

27 また、もう二つ金の環を作り、エポデの肩当てのすその外側、帯を締める位置につける。

28 胸当ての下とエポデのすそにある環とを青いひもで結び、胸当てとエポデを、ずれないようにしっかりつなぐ。

29 こうしてアロンは、聖所へ入る時はいつでも、胸当てに十二部族の名をつけていることになる。神がイスラエルのことを絶えず心にかけ、託宣を下すようにするのである。

30 胸当てのポケットにウリムとトンミム〔神意をうかがう一種のくじ〕を入れ、アロンが神の前に出る時はいつも、胸の上にあるようにしなさい。アロンは神の前にいる時、いつでも神託を胸に入れていることになる。エポデの下に着る服は、青い布で作らなければならない。

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32 それに頭を通す口をあける。口の回りには織った縁をつけ、ほつれないようにする。ちょうど、よろいの首回りのようにする。

33 青服のすそのへりには、青と紫と深紅のより糸でざくろを作ってつけ、ざくろとざくろの間に金の鈴をつける。

34 -

35 アロンは務めのために神の前に出る時はいつでも、これを身につけなければならない。聖所の神の前に出入りするたびに、鈴が鳴るようにする。そうすれば死ななくてすむだろう。

36 次に、純金のプレートを作り、ちょうど刻印を彫るように、『神のために特別に選ばれた者』と彫りなさい。

37 このプレートは、青いひもでアロンのターバンの正面につける。アロンはそれを額につけ、イスラエル国民のささげ物のことで何か過ちがあれば、その罪を負う。神の前に出る時いつも、それを額につけなければならない。こうして、人々は神に受け入れられ、罪を赦される。

38 -

39 上等のより糸で市松もように織ったリンネルを使って、アロンの長服を作りなさい。ターバンも同じ布で作る。そのほかに刺しゅうをした帯も作る。

40 アロンの息子たちには、上着と帯を作り、また、名誉と威厳を与えるためのターバンを作りなさい。

41 アロンと息子たちにこれらの服を着せ、頭にオリーブ油を塗って、祭司に任命しなさい。わたしに仕える者として特別に選び、きよめるのだ。

42 また体にじかにつける下着を、リンネルで作りなさい。これは腰からももまでをおおう。

43 アロンと息子たちが天幕に入ったり、聖所の祭壇に近づいたりする時はいつでも、この下着をつけなければならない。さもなければ有罪とされ、死ぬことになるだろう。これは、アロンと息子たちが守る永遠のおきてである。

29

1 アロンと息子たちを祭司に任命するために、次の儀式を行ないなさい。若い雄牛一頭と傷のない雄羊二頭を用意する。

2 また、イースト菌抜きのパン、油を混ぜた輪型のパン、イースト菌抜きのせんべい状のパンに油を塗ったものを準備する。パンは精製した小麦粉で作らなければならない。

3 パンをかごに入れ、若い雄牛一頭、雄羊二頭といっしょに、神の天幕の入口に持って来る。入口のところでアロンと息子たちに沐浴させる。

4 -

5 次に、アロンに上着をきせ、長服、エポデ、胸当て、帯をつけさせ、

6 頭には金のプレートつきのターバンをかぶせる。

7 次に、注ぎの油を頭に注ぐ。

8 さらに、彼の息子たちにも上着をきせ、

9 織って作った帯をつけさせ、頭に帽子をかぶせる。この儀式がすめば、彼らは永遠に祭司となる。こうして、アロンと息子たちを特別に選び、きよめなければならない。

10 まず、おまえが若い雄牛を天幕に引いて来る。アロンと息子たちは手を牛の頭に置き、

11 おまえが天幕の入口、神の前でそれを殺す。

12 血は指で祭壇の角に塗り、残りは祭壇の土台に注ぐ。

13 内臓をおおう脂肪ぜんぶ、胆のうと二つの腎臓と、それらを包む脂肪を、祭壇の上で焼きなさい。

14 死体は皮や汚物ごと野営地の外へ持って行き、罪が赦されるためのいけにえとして焼かなければならない。

15 次に、雄羊の一頭を引いて来る。アロンと息子たちがその頭に手を置いたら、おまえがこれを殺し、その血を集めて祭壇に振りかける。

16 -

17 死体を切り開いて内臓を取り出し、足を切り取る。それらをきれいに洗い、頭や体のほかの部分といっしょに置きなさい。

18 こうして、羊をぜんぶ祭壇の上で焼く。それは神にささげる完全に焼き尽くすいけにえで、大いに神に喜ばれるものである。

19 もう一頭の雄羊も殺す。その前に、アロンと息子たちは手を羊の頭に置かなければならない。おまえは血を集めて、その一部分を、アロンと息子たちの右の耳たぶと手足の右親指につけ、残りは祭壇に振りかける。

20 -

21 続いて祭壇の上の血を取り、注ぎの油といっしょに、アロンと息子たち、また彼らの服に振りかける。このようにして彼らとその服を、神のために特別に選ばれたものとしてきよめなければならない。

22 次に、雄羊の脂肪を取る。あぶら尾、内臓をおおう脂肪、さらに胆のうと二つの腎臓、それらの回りの脂肪、右のももである。これは、アロンと息子たちを祭司に任命する雄羊だからである。

23 さらにパン一個、油を混ぜた輪型のパン一個、せんべい一枚を、神の前に置かれたイースト菌抜きのパンのかごから取る。

24 これらをアロンと息子たちの手に載せる。彼らは神にささげ物をする手つきをする。

25 そのあと、もう一度それらを受け取り、神への香ばしい完全に焼き尽くすいけにえとして、祭壇の上で焼く。

26 それから、アロンの任職の雄羊の胸を取り、ささげ物をする手つきで神の前に揺り動かす。それは自分のものにしてかまわない。

27 雄羊の胸とももは、アロンと息子たちに与えなさい。イスラエル人はいつでも、和解のための感謝のいけにえのうち、胸とももは神へのささげ物として、アロンと息子たちに与えなければならない。

28 -

29 アロンの神聖な服は、跡を継ぐ息子たちのために取っておかなければならない。こののち何代にもわたり、大祭司の油注ぎの儀式に用いるのだ。

30 アロンの次の大祭司がだれであろうと、その者は天幕と聖所で務めを始める前に、七日間この服を着なければならない。

31 祭司の任命式にささげた雄羊の肉を、神聖な場所で煮なさい。

32 アロンと息子たちはその肉とかごの中のパンとを、天幕の入口で食べなければならない。

33 彼らだけが、彼らの罪を赦し、祭司として特別に選び任命する儀式に用いた、これらのものを食べる。一般の人たちは食べてはならない。これらは特別にきよめられたものだからである。

34 肉やパンが翌日まで残ったら焼き捨てなさい。食べてはならない。それは聖なるものである。

35 このようにして、アロンと息子たちを祭司に任じなさい。任命式は七日間つづく。

36 毎日、罪が赦されるためのいけにえとして、若い雄牛を一頭ささげなければならない。祭壇の汚れを払うためにも、罪が赦されるためのいけにえをささげなさい。さらに、その上にオリーブ油を注いできよめる。

37 七日のあいだ毎日それを続け、神のための祭壇として特別にきよめなさい。そのあと、祭壇は最も神聖なものとなり、それに触れるものは何でも、神のために選び分かたれ、きよめられたものとなる。

38 毎日、祭壇に一歳の雄羊を二頭ささげなさい。

39 朝に一頭、夕方に一頭である。

40 朝の雄羊をささげる時には、上等の小麦粉三・六リットルとオリーブ油一リットル半を混ぜたものを、いっしょにささげ、また、一リットル半のぶどう酒を注ぎの供え物にしなさい。

41 もう一頭の雄羊は夕方、朝と同じ小麦粉のささげ物とぶどう酒の注ぎの供え物といっしょにささげる。これは神への香ばしい完全に焼き尽くすいけにえである。

42 このささげ物は、一日でも絶やしてはならない。毎日、天幕の入口、神の前でささげる。そこでわたしはおまえに会い、おまえと語る。

43 また、そこでイスラエル国民と会う。天幕はわたしの栄光によってきよめられる。

44 天幕と祭壇、また、わたしに仕える祭司、アロンとその息子たちは、わたしがきよめる。

45 わたしはイスラエル国民とともに住み、彼らの神となる。

46 彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知らなければならない。彼らといっしょに住めるようにと、わたしは彼らをエジプトから助け出したのだ。わたしは彼らの神、主である。

30

1 香をたく小さな祭壇をアカシヤ材で作りなさい。

2 一辺が五十センチの正方形で、高さは一メートルとする。祭壇には角を彫りつけなさい。別に作ってあとから接着するのではなく、初めから祭壇の一部として作る。

3 香の祭壇の上と側面と角は純金をかぶせ、周囲はぐるりと金の縁飾りをつける。

4 両側面の縁飾りの下に金の環を二つつけ、祭壇を運ぶ棒を通すようにする。

5 棒はアカシヤ材で作り、金をかぶせる。

6 この香の祭壇は聖所の垂れ幕のすぐ外側に置きなさい。十戒を納めてある箱のふた、つまり恵みの座の近くに置くのだ。わたしはおまえとそこで会う。

7 アロンは毎朝ともしびの芯を切る時、香の祭壇の上で、香りの高い香をたかなければならない。

8 また夕方、明かりをともす時にも、神の前で香をたかなければならない。これは代々守るべきことである。

9 この祭壇の上では、公に認められていない香をたいてはならない。完全に焼き尽くすいけにえ、穀物のささげ物、飲み物のささげ物をささげてはならない。

10 年に一度、アロンは罪が赦されるため、いけにえの血を香の祭壇の角に塗り、壇をきよめなさい。これは毎年必ず行ない、代々続けなければならない。神の最も神聖な香の祭壇だからである。」

11 神様はさらにモーセに命じました。「イスラエル国民の人口調査をする時はいつでも、登録される成年男子はみな、金を納めて自分自身を買い取らなければならない。人口調査によって、国民に災いが起きないようにするためである。

12 -

13 金額は百五十円とする。

14 満二十歳以上の者はみな、このささげ物をしなければならない。

15 金持ちもそれ以上ささげてはならないし、貧しい者もそれ以下であってはならない。自分自身を買い取るために神にささげるものだからである。

16 この献金は神の天幕の用にあてる。それは、イスラエル国民をわたしが心にかけ、買い取るためである。」

17 神様はまた、モーセに命じました。「青銅の洗い鉢を作り、青銅の台をつけなさい。それを天幕と祭壇の間に置き、水をいっぱいにする。

18 -

19 アロンと息子たちは手と足をそこで洗う。

20 天幕に入り、わたしの前に立つ時、あるいは、わたしの前でいけにえを焼くために祭壇へ近づく時、その前に、いつも手足を洗わなければならない。さもなければ死ぬ。

21 これは、アロンとその子孫に代々伝えなければならないおきてである。」

22 神様はモーセに命じて、最上の香料を集めさせました。純粋な没薬八キログラム、シナモンとにおいしょうぶが、それぞれ半分の量、

23 -

24 桂枝が没薬と同じ量、オリーブ油が六リットル集まりました。

25 そこで神様は、熟練した香料作りに、これらの材料を使って聖なる注ぎ油を作らせるよう命じました。

26 また、次のように言いました。「天幕と、十戒の箱と、供えのパンのテーブルおよびその付属品すべてと、燭台およびその付属品と、香の祭壇とに、この油を注ぎなさい。

27 -

28 完全に焼き尽くすいけにえをささげる祭壇とその器具ぜんぶ、また、洗い鉢とその台にも同じようにしなさい。

29 それらを、特別に選ばれたものとしてきよめるためである。それらに触れるものは何でもきよくなる。

30 アロンと息子たちにもこの油を塗り、祭司としてわたしに奉仕できるようにきよめなさい。

31 人々にはこう言うのだ。『これは神の聖なる注ぎ油としなければならない。

32 決して一般の者に注いではならない。自分でかってに作ってはならない。聖なるものだから厳重に取り扱わなければならない。

33 このような香料を作ったりする者、また、それを祭司でない者に注ぐ者はだれであれ、みな共同体から除名されなければならない。』」

34 香について神様がモーセに与えた指示は、次のとおりです。「香料として、ナタフ香、シェヘレテ香、ヘルベナ香、純粋な乳香を同量ずつ用意し、

35 香料作りの普通の技術で、それに塩を混ぜ、純粋で聖なる香にしなければならない。

36 その一部分は細かく砕き、天幕の中の、わたしがおまえに会う箱の前に置きなさい。この香は最も神聖なものである。

37 自分のためにそれを作ってはならない。特別に神のためのものだからである。神聖なものとして取り扱わなければならない。

38 自分のためにそれを作る者は、除名されなければならない。」

31

1 神様はまた、モーセに告げました。「わたしはユダ部族のウリの息子で、フルの孫にあたるベツァルエルを選んだ。

2 -

3 彼に神の霊を満たし、神の天幕とその中にある物いっさいを作るのに必要な、知恵と才能と技術を与えた。

4 彼は、金、銀、青銅の細工を美しくデザインすることができる。

5 また宝石の細工にも、木の彫刻にも熟練した腕を持っている。

6 助手には、ダン部族のアヒサマクの息子オホリアブを任命した。さらにまた、優秀な技術者たちにも特別な力を与え、わたしの指示どおりの物を作れるようにした。

7 天幕、十戒の箱とそのふたの恵みの座、天幕の中のあらゆる造作、

8 供えのパンのテーブルとその付属品、純金の燭台とその付属品、香の祭壇、

9 完全に焼き尽くすいけにえの祭壇とその器具類、洗い鉢とその台、

10 祭司アロンの神聖な服、彼の息子たちが祭司として奉仕するとき着る服、

11 注ぎの油、聖所でたく香りのよい香である。彼らは何もかも、わたしがおまえに与えた指示どおりに作らなければならない。」

12 神様はさらに、次の命令も与えました。「人々に、安息日は休むよう言いなさい。安息日は、おまえとわたしの間の契約を永遠に思い出させるものである。わたしが神であり、おまえたちを聖なる国民とする者であることを、安息日は思い出させてくれる。

13 -

14 だから、神聖な日として安息日には休みなさい。この命令に従わない者はだれであれ死刑だ。この日仕事をする者はみな死刑だ。六日の間だけ働きなさい。七日目は神の聖なる日、特別な休息の日である。

15 -

16 この法律は、イスラエル国民が永遠に守るべき契約であり義務である。

17 安息日はわたしとイスラエルとの契約の、永遠のシンボルである。六日の間わたしは天と地を造り、七日目に休んだからである。」

18 こうして神様は、シナイ山でモーセと話し終え、二枚の石板を与えました。その板には、神の指で書かれた十戒が記されていました。

32

1 モーセがなかなか降りて来ないので、人々は気がかりになり、アロンのところへ文句を言いに行きました。「おれたちのために神様を作ってくれ。その神様のお告げに従おう。エジプトからここまでおれたちを連れて来たモーセは、姿を消してしまったじゃないか。きっと何かあったに違いないんだ。」

2 「それなら、金のイヤリングをよこしなさい。」アロンは答えました。そこで、男も女も子供たちまで、みな言われたとおりにしました。

3 -

4 アロンはその金を火で溶かし、鋳型に入れ、道具を使って子牛の形に作りました。「イスラエルばんざーいっ。これこそ、われわれをエジプトから連れ出した神様だ。」人々は大喜びで叫びました。

5 アロンは民が有頂天になっているのを見ると、子牛の前に祭壇を築いて布告しました。「あすは神様のために盛大な祝いをしよう。」

6 人々は明くる朝はやく起き、子牛の像に、完全に焼き尽くすいけにえと和解のいけにえとをささげました。そのあとが大へんです。あたりに座り込んで食べたり飲んだりするかと思えば、立って踊りだす者も出るしまつです。とんだ乱痴気さわぎになってしまいました。

7 それを知った神様は、モーセに命じました。「大急ぎで山を降りなさい。おまえがエジプトから連れ出した連中が、かってなことを始めた。ひどくて目もあてられん。

8 わたしのおきてをもう捨ててしまった。子牛の像を作って礼拝し、いけにえまでささげ、『これこそ、イスラエル人をエジプトから連れ出した神だ』などと言っている。」

9 神様はさらに続けます。「イスラエル人がどんなに強情で恩知らずの国民か、よくわかった。

10 もう容赦はできん。こうなったら皆殺しだ。邪魔だてはするな。モーセよ、連中の代わりに、おまえを大きな国にしよう。」

11 しかし、モーセは必死でお願いしました。「神様、御みずからあれほど大きなお力を示し、すばらしい奇蹟をもって、ご自分の国民をエジプトから救い出されたのではありませんか。その国民に、なぜそのようにお怒りになるのでしょう。

12 そんなことをなさったら、エジプト人は何と言うでしょう。『ふん、イスラエルの神は連中をだまして山へ連れ出したんだ。その証拠に、見ろよ、やつらは一人残らず殺されちまった』とあざけるかもしれません。どうぞ怒りをおさめてください。そんな恐ろしいさばきは、思いとどまってください。

13 神のしもべアブラハム、イサク、イスラエル(ヤコブ)に約束されたことを、思い出していただきたいのです。『おまえの子孫を空の星のようにふやそう。約束の地をすべておまえの子孫に与え、永遠に受け継がせよう。』こう誓われたではありませんか。」

14 そこで、神様も思い直し、人々のいのちを助けることにしました。

15 モーセは山を降りました。手には、十戒を両面に記した二枚の石板を持っています。

16 神様がみずから戒めをその板に記したのです。

17 やがて、ふもとの方から人々の叫び声が聞こえてきます。ヨシュアはモーセに言いました。「まるで戦争でもしているような騒ぎですね。」

18 「いや、あれは勝利の叫びでもないし、敗北のうめきでもない。歌って騒いでいるのだ。」

19 野営地に近づくと、子牛の偶像と踊り狂っている人々の姿が目にはいりました。それを見たモーセは、むらむらと怒りがこみ上げ、思わず石板を地面に投げつけました。それは山のふもとで、木端微塵に砕けました。

20 彼はやにわに子牛の像をつかみ、火にくべて溶かし、冷えると、今度は粉にして水にまき散らし、人々にむりやり飲ませました。

21 それからアロンに向き直り、きびしく問い詰めました。「いったい何があったんです?ただ事じゃありませんよ。兄さんも兄さんだ。いっしょになってこんな恐ろしい罪を犯すなんて、どういうつもりなんです?」

22 「まあ、そんなに興奮しないでくれ。おまえも知ってるだろう。あいつらときたら、ひどいやつばかりだ。

23 『おれたちを導く神様を作ってくれ。エジプトからおれたちを連れ出したモーセのやつは、きっとどうかなっちまったんだ』と詰め寄ってな。

24 それで、『金のイヤリングを持って来い』と言ってやったんだ。するとどうだ。みんな持って来るじゃないか。それを火に投げ込んだらこの子牛が出て来た、というわけだ。」

25 アロンにはまるで反省の色がありません。人々がみだらな行為にふけるのを、黙って見ているばかりです。これでは敵の物笑いもいいところです。

26 堪忍袋の緒が切れたモーセは、野営地の入口に立って叫びました。「神様につく者、私と行動を共にする者は、ここに集まれっ。」すると、レビ部族が全員集まりました。

27 モーセはその面々に命じました。「イスラエルの神、主が言われる。『剣を持って野営地中を駆け巡り、兄弟だろうが、友だちだろうが、知り合いだろうが、皆殺しにしろ。』」

28 彼らは命令どおりにしました。その日、約三千人の男が死にました。

29 モーセはレビ部族に言いました。「きょう、あなたがたはりっぱに神様に仕えた。息子や兄弟を殺してでも、神様に従った。きっとすばらしい祝福があるだろう。」

30 翌日、モーセは人々に言いました。「おまえたちは大きな罪を犯した。それで、もう一度山へ登り、神様にお願いしようと思う。おまえたちの罪を赦していただけるかもしれない。」

31 モーセは神様のところへ帰って言いました。「神様、あの連中は大きな罪を犯しました。金で偶像を作ったのです。

32 けれども、あえてお願いします。どうか罪を赦してやってください。もし、どうしてもだめだと言われるのなら、神様が記しておられる書物から、私の名前を消してください。」

33 「わたしに罪を犯した者はみな、わたしの書物から名前を消される。

34 今は黙って行きなさい。わたしが話しておいた地に人々を導くのだ。わたしの使いが必ずおまえの前を行くようにする。だが、今度のことは見のがすわけにはいかない。人々の罪は罰する。」

35 おことばどおり神様は、人々がアロンの子牛を礼拝した罰として、大きな災いを下されました。

33

1 神様はモーセに命じました。「おまえはこの国民をエジプトから連れ出した。彼らを、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに約束した地へ導きなさい。『この地をおまえの子孫に与えよう』と約束したからだ。

2 ひと足先に神の使いをやり、カナン人、エモリ人、ヘテ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払わせよう。

3 その地は『乳と蜜の流れる』国だ。しかしわたしは、いっしょに行かない。おまえたちが手に負えない強情者だからだ。いっしょに行けば、途中でおまえたちを滅ぼしたくなるかもしれない。」

4 人々はきびしいことばに、胸もつぶれる思いでした。あまり悲しくて、身につけていた宝石や飾りを、ぜんぶ取ってしまったほどです。

5 それは、彼らにこう伝えるよう、神様がモーセに命じておいたからです。「おまえたちは、わがままで強情な国民だ。たとい一瞬でもわたしがいっしょにいたら、おまえたちを地上から消し去ってしまうだろう。おまえたちの処分がはっきり決まるまでは、宝石や飾りはぜんぶ取ってしまえ。」

6 それ以後、人々は宝石を身につけなくなりました。

7 モーセはいつも、神様とお会いする聖なる天幕を、野営地から遠く離れた所に張りました。神様に何かうかがいを立てたいと思う人は、みなそこまで行くのです。

8 モーセが天幕へ行く時はいつでも、人々はみなそれぞれのテントの入口に立ち、彼が中へ入るまで見送るのでした。

9 中へ入ると雲の柱が降りて来て、神様がモーセと話している間中、入口に雲がかかるのです。

10 人々はみなそれぞれのテントの入口で、雲の柱に向かって深くおじぎをし、礼拝します。

11 天幕の中では、まるで友だち同士のように、神様が親しくモーセとお語りになります。そのあと、モーセは野営地に帰るのですが、彼の助手、ヌンの子ヨシュアはそのまま天幕に残ります。

12 モーセは天幕の中で、神様に言いました。「神様は私に、『人々を約束の地へ連れて行け』と、いつもおっしゃいます。けれども、どなたが私といっしょに行ってくださるのか、まだ教えてくださいません。神様は、もったいなくも私を友だちのように扱ってくださいます。また、おこころにかなった者だとも言ってくださいました。

13 もしそれが本当なら、どうぞ私の歩むべき道をはっきり示してください。そうすれば神様を理解できるようになり、おこころにかなった生活が送れるでしょう。この国民が神様ご自身のものであることを、忘れないでください。」

14 「わかった。安心しなさい。わたしがいっしょに行く。失敗のないようにおまえを守ろう。」

15 「神様がごいっしょでなければ、この場所から一歩でも動くのを許さないでください。

16 神様が共にいてくださらなければ、私とこの国民がおこころにかなっていること、また、地上の他の国民とは違うことが、どうしてわかりましょう。」

17 「いいだろう。おまえの言うとおりにしよう。確かにわたしはおまえに目をかけている。おまえは友だちも同然だからな。」

18 それからモーセは、神様の栄光を見せてほしいと願いました。

19 神様は答えました。「わたしが与えるあらゆる良いものを、おまえに見せよう。また、わたしの名によってはっきり宣言しよう。わたしは、自分がそうしようと思った者に心から同情し、恵みを与える。

20 しかし、おまえはわたしの顔の栄光を見てはならない。わたしを見た者はいのちがない。

21 だから、そばの岩の上に立ちなさい。

22 わたしの栄光がいま通り過ぎる。おまえを岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、手でおまえをおおう。

23 わたしが手を取ると、おまえはわたしの背を見る。しかし顔を見ることは決してできない。」

34

1 神様はモーセに命じました。「最初のと同じような石板を二枚用意しなさい。おまえが割った板に書いたのと同じ戒めを、もう一度その板に書こう。

2 朝になったら、準備を整えシナイ山に登りなさい。頂上でわたしと会うのだ。

3 だれもいっしょに来てはならない。山のどこにも人がいてはならない。羊や牛の群れも、山の近くでは放牧しないようにしなさい。」

4 モーセは最初のと同じような石板を二枚用意し、東の空が白むころ、神様の命令どおりシナイ山に登りました。二枚の石板を両手にかかえています。

5 神様は雲の柱となって天から下り、モーセのそばに立ちました。それから彼の前を通り過ぎ、ご自分の名によって宣言しました。「わたしは主である。思いやりにあふれた恵み深い神である。だから簡単には怒らない。愛と真実こそ、わたしの身上なのだ。

6 -

7 わたしは人々の罪を赦し、千代にもわたって彼らを愛し通す。しかしまた、はっきり有罪と決まった者を甘やかすこともしない。父親の犯した罪のために、息子や孫ばかりか、さらにのちの世代の者をも罰する。」

8 それを聞いて、モーセは思わず神様の前にひざまずき、礼拝しました。

9 「神様、ほんとうに私がおこころにかなっているのでしたら、どうぞ私どもといっしょに、約束の国まで行ってください。彼らは確かに頑固でわがままな国民には違いありません。けれどもお願いです。どうぞその罪をお赦しください。神様の国民として受け入れてください。」

10 「いいだろう。おまえと契約を結ぼう。古今東西、見たことも聞いたこともない奇蹟を行なおう。イスラエル人はみな、神の力を目のあたりにするのだ。おまえによって、わたしは恐るべき力を示す。

11 契約の相手としてのおまえの義務は、わたしの戒めをすべて守ることだ。そうすれば、おまえの前からエモリ人、カナン人、ヘテ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払う。

12 目ざす約束の国へ着いたら、そこの住民と決して妥協しないよう、くれぐれも気をつけなさい。いったん妥協すれば、知らず知らずのうちに、彼らの悪習に染まってしまうからだ。

13 むしろ、異教の祭壇や礼拝用の石柱などはこわしてしまいなさい。汚らわしい偶像も切り倒しなさい。

14 わたし以外には、どんな神々も拝んではならない。わたしは絶対の忠誠と、心からの献身を求める神である。

15 その地の住民と、どんな条約も結んではならない。彼らは、信仰の面では売春婦と同じだ。偶像の神々にいけにえをささげることによって姦淫を行ない、わたしに反逆する。万一彼らと親しくなり、いっしょに行って偶像を拝もうと言われたら、その誘惑に負けてしまうだろう。

16 そして、他の神々を拝む娘たちを、息子の嫁に迎えるだろう。すると、息子たちは妻の信じる神々を拝み、姦淫を行ない、わたしに反逆することになる。

17 だから、偶像とはいっさい関係を持たないようにしなければならないのだ。

18 種なしパンの祭りを七日間、必ず祝わなければならない。毎年三月(ユダヤ暦では一月)の決まった時に、教えておいたとおりに祭りを守りなさい。それは、おまえたちがエジプトを出た月だ。

19 牛、羊、何でも最初に生まれた雄は、わたしのものだ。

20 ろばの初子は代わりに羊をささげて買い戻せる。買い戻さないと決めたら、首を折る。しかし人間の場合、長男はみな買い戻さなければならない。ささげ物を持たずにわたしの前に出てはならない。

21 忙しい耕作期や収穫期でも、六日間だけ働いて七日目は休みなさい。

22 次の祭りを毎年祝うことを忘れてはならない。小麦の最初の収穫を祝う七週の祭り、それに収穫の祭りである。

23 年に三度、祭りの時にはイスラエルの男子はみな、わたしの前に出なければならない。

24 男子全員が神の前に出るこの時は、だれもイスラエルに攻撃をしかけない。そのような国はわたしが追い払い、イスラエルの国境を広げる。

25 わたしへのささげ物といっしょに、イースト菌を入れたパンを使ってはならない。過越の子羊の肉は、どの部分でも翌朝まで取っておいてはならない。

26 毎年の最初の収穫から、いちばん良い物を神の天幕に持って来なければならない。子やぎを母親の乳で煮てはならない。」

27 また、神様はモーセに命じました。「わたしが示した法律を書き記しなさい。この法律が、おまえとイスラエルに対するわたしの契約の条件だ。」

28 モーセは山で四十日四十夜、神様とともにいました。その間は、食べることも飲むこともしませんでした。この時、契約の十戒を石板に記したのです。

29 モーセは二枚の石板をかかえて山を降りました。それまで神様といっしょだったために、モーセの顔は輝いていましたが、自分では気がつきませんでした。

30 彼の顔の輝きを見て、アロンをはじめ人々は、そばに来るのを恐れました。

31 モーセに呼ばれ、やっとアロンと指導者たちは来て、彼と話しました。

32 そのあと、今度は人々が全員集まったので、モーセは山で神様から与えられた戒めを伝えました。

33 話し終わると、モーセは顔にベールをかけました。

34 しかし、神様と話すために天幕へ入る時はいつでもベールを取り、外へ出るまでそのままにしていました。そして、神様から示されたことは何でも人々に伝えました。

35 外に出て来る彼の顔を見ると光り輝いています。そこでまた、彼は神様と語るために天幕へ入るまで、ベールをつけるのでした。

35

1 さてモーセは、全国民を呼び集めて言いました。「あなたがたが守らなければならない神のおきては、次のとおりだ。

2 六日間だけ働きなさい。七日目は神様を礼拝する神聖な日、休息の日である。この日に働く者はだれでも死刑だ。

3 家の中で火をおこすことさえ許されない。」

4 モーセはまた、一同に言いました。「神様は次のことをお命じになった。

5 ささげ物をしたい者はだれでも、これらのささげ物を神様のもとへ持って来てよろしい。金、銀、青銅、青のより糸、紫のより糸、深紅のより糸、上質のリンネル、山羊の毛、赤く染めた雄羊のなめし皮、特別な処理を施したじゅごん(海に住む哺乳動物)の皮、アカシヤ材、ともしび用のオリーブ油、注ぎの油と香に使う香料、エポデや胸当てにはめる、しまめのうと宝石類

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10 特別な才能に恵まれた熟練した技術者は、みな集まりなさい。そして、神様が命じたとおりの物を作りなさい。天幕とおおい、留め金、わく組み、横木、柱、土台、十戒の箱とかつぎ棒、恵みの座、聖所を囲む幕、テーブルとかつぎ棒と器具類いっさい、供えのパン、燭台、ともしび皿と灯油、香の祭壇とかつぎ棒、注ぎの油と香りの高い香、天幕の入口用の垂れ幕、完全に焼き尽くすいけにえをささげる祭壇、祭壇の青銅製の格子とかつぎ棒、器具類、洗い鉢とその台、庭の周囲を仕切る引き幕、柱と土台、庭の入口用の幕、天幕用の釘、庭用の釘とひも、祭司が聖所で務めをする時に着る服、祭司アロンと息子たちが着る聖なる服。」

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20 人々はみな、ささげ物を用意するため各自のテントへ戻りました。

21 心に感じた人たちは、天幕や必要な器具類、聖なる服を作るための材料を、ささげ物として持って来ました。

22 男も女もです。みな喜んでささげる人ばかりです。ある者は金や宝石でできたイヤリング、指輪、ネックレスなど、あらゆる種類の金製品を持って来ました。

23 ほかの者は青、紫、深紅のより糸、上質のリンネル、山羊の毛、赤く染めた雄羊のなめし皮、特別に処理したじゅごんの皮などを持って来ました。

24 銀や青銅を持って来た者もいます。ある人は建築に必要なアカシヤ材をささげました。

25 縫うことと紡ぐことがじょうずな婦人たちは、青、紫、深紅のより糸や、上質のリンネルを持って来ました。

26 ほかの婦人たちは、腕によりをかけて山羊の毛を紡ぎ、布を織りました。

27 指導者たちはまた、エポデや胸当てに使うしまめのうとか、

28 ともしび用や、注ぎの油や香り高い香を調合するための、香料やオリーブ油を持って来ました。

29 こうして、神様がモーセに命じた仕事に少しでも役に立ちたいと願った人たちはみな、心からのささげ物をモーセのところへ持って来たのです。

30 モーセは彼らに言いました。「神様はユダ部族のウリの息子で、フルの孫にあたるベツァルエルを、特別にこの仕事の総監督に任じられた。

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32 彼は金や銀や青銅の細工にたけ、

33 宝石を切ったり磨いたりすることもうまい。美しい彫刻もお手のものだ。全く必要な技術はぜんぶ身につけている。

34 また、ほかの人に教えるのもじょうずだ。ダン部族のアヒサマクの息子オホリアブも、同じような才能に恵まれている。

35 神様はこの二人に特別な才能を与え、宝石細工人、建築師にしてくださった。そればかりか、リンネルに青、紫、深紅の糸で美しい刺しゅうもできるし、織物もじょうずだ。これからの仕事に必要なあらゆる技術にひいでている。

36

1 ほかにも、才能に恵まれた技術者がたくさんいる。二人を中心にみんなで力を合わせ、調度品を作り上げてくれ。」ベツァルエルとオホリアブをはじめ、この仕事に参加すべきだと自分で思った人たち全員に、モーセは仕事を始めるよう命じました。

2 -

3 そして、人々がささげた材料を渡しました。ところがそのあとも、新しい材料が毎朝とどけられます。

4 もうとても、現場ではさばききれません。みな仕事を中断し、モーセにじきじき実情を報告しました。「材料があんまりたくさん集まりすぎて、使いきれないくらいです。」それではと、モーセは野営地中に、これ以上ささげ物をする必要はないと伝えさせました。おかげでようやく、人々は持って来るのをやめたのです。

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7 -

8 腕のいい織物師たちが、まず上等の細いより糸で織ったリンネルで幕を十枚作り、青、紫、深紅のより糸でケルビム(天使の像)を織り出しました。幕の大きさは長さが十四メートル、幅が二メートルです。

9 -

10 これを五枚ずつつなぎ合わせ、長い布を二枚作りました。

11 次に、それぞれの端に青いひもでループを五十ずつ作り、対になるようにしました。

12 -

13 ループをつなぎ合わせる留め金を五十個作り、二枚の長い布を一枚にして、天幕ができあがりました。

14 布の上には、二番目のおおいとして、山羊の毛皮で作った十一枚の幕を使いました。それぞれ長さ十五メートル、幅二メートルのものです。

15 -

16 ベツァルエルはこの五枚をつなぎ合わせて一枚の長い幕とし、残りの六枚も別の長い幕としました。

17 次に、それぞれのへりに沿ってループを五十ずつ作り、

18 五十個の小さな青銅の留め金でつなぎ、二枚の幕をぴったりつなぎ合わせました。

19 屋根の外側にかぶせるおおいは、赤く染めた雄羊のなめし皮とじゅごん(海に住む哺乳動物)の皮で作りました。

20 天幕の側面にするために、まっすぐ立ったわく組みをアカシヤ材で作りました。

21 一枚の板は高さ五メートル、幅七十五センチです。

22 それぞれの板には二個のほぞをつけて、隣の板にはめ込みます。

23 南側に板が二十枚、

24 下の部分は銀の土台四十個にさし込みます。一枚の板に二個ずつの土台とほぞを使って、しっかり固定したのです。

25 北側にも板が二十枚、それぞれに二個ずつ、全部で四十個の銀の土台を作りました。

26 -

27 西側、つまり天幕のうしろ側は板六枚と、

28 両すみに一枚ずつの板を置きました。

29 この二枚はそれぞれ下を重ね、上を環でつなぎます。

30 ですから西側には、全部で板が八枚、それぞれの下に二個ずつ、計十六個の銀の土台があったことになります。

31 次にベツァルエルは、わく組みの板をしっかりつなぎ合わせるために、アカシヤ材で横木を作りました。天幕の三方に五本ずつの横木です。

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33 五本のうち真ん中の横木は、板のほぼ中央を端から端まで通っています。

34 板と横木にはすべて金をかぶせ、木を通す環は純金でした。

35 天幕内を仕切る垂れ幕は、青、紫、深紅のより糸でリンネルを織り、ケルビムを織り出しました。

36 幕は、アカシヤ材の四本の柱に金のかぎを四つ取りつけ、そこから垂らしました。柱には金をかぶせ、四個の銀の土台にはめ込んであります。

37 次に天幕の入口用のカーテンを作りました。目のつんだリンネルに青、紫、深紅の刺しゅうをしたものです。

38 カーテンは五個のかぎで取りつけ、柱の頭部と環に金をかぶせました。土台は青銅で五個作りました。

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1 次に、ベツァルエルは十戒の箱を作りました。アカシヤ材で作り、長さ百二十五センチ、幅七十五センチ、高さ七十五センチに仕上げました。

2 内側にも外側にも純金を張り、周囲に金の縁飾りを巡らしました。

3 片側に二つずつ並ぶよう、四すみに金の環を四個つけました。

4 アカシヤ材でかつぎ棒を作って金をかぶせ、

5 箱の側面の環に通します。その棒をかついで箱を運ぶのです。

6 それから、純金で箱のふたを作りました。これは『恵みの座』と呼ばれます。長さ百二十五センチ、幅七十五センチです。

7 両端に、金でケルビム(天使)の像を二つ打ち出しました。

8 ケルビムはふたの一部分で、切り離すことはできません。

9 ケルビムは互いに顔を見合わせ、伸ばした翼が恵みの座におおいかぶさって、それを見下ろす形にしました。

10 次はテーブルです。やはりアカシヤ材で、長さ一メートル、幅五十センチ、高さ七十五センチです。

11 それに純金を張り、ぐるりと金の縁飾りをつけました。

12 周囲に八センチ幅のわくをつけ、それに沿って金の縁飾りをつけたのです。

13 次に金の環を四つ作り、四本の足の、

14 縁飾りに近いところへつけ、アカシヤ材に金をかぶせたかつぎ棒を通すようにしました。

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16 また、純金で鉢、水差し、皿、びんを作り、テーブルの上に置きました。

17 純金を打ち出して燭台を作りました。台座、支柱、ともしび皿、アーモンドの花飾りが、ぜんぶ一体となるようにしたのです。

18 燭台の支柱には、両側から三本ずつ、計六本の枝が出るようにしました。

19 それぞれの枝は三つの花で飾りました。

20 支柱にも同じようにアーモンドの花飾りをつけました。三対の枝の間に二つ、下と上に二つ、合計四つです。

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22 飾りと枝はみな、一かたまりの純金を打ち出して作りました。

23 枝の先に七つのともしび皿をつけ、芯切りばさみと灰皿とを純金で作りました。燭台全体は五十キログラムの重さがあり、すべて純金です。

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25 香の祭壇はアカシヤ材で作りました。五十センチ四方の正方形で、高さは一メートルです。すみに、壇の一部として角を彫りつけました。

26 全体に純金をかぶせ、へりには金の縁飾りをつけました。

27 壇の両側面、縁飾りの少し下に金の環を二個つけ、かつぎ棒を通しました。

28 かつぎ棒はアカシヤ材で、金をかぶせてあります。

29 次に、香りのよい香料を使って、聖なる油を調合しました。祭司に注ぐ油や、純粋な香として用いる油です。調合には高度の技術がいりました。

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1 完全に焼き尽くすいけにえの祭壇も、アカシヤ材で作りました。上部は二・五メートル四方の正方形、高さは一・五メートルです。

2 四すみに、他の部分と切れ目なく続くよう、四本の角をつけました。祭壇には青銅を張り、

3 祭壇で使うつぼ、十能、鉢、肉刺し、火皿などの器具類も青銅で作りました。

4 次に、炉の半ばあたりに棧を張り、そこに青銅の格子を置きました。

5 環を四つ作り、格子の四すみのところでかつぎ棒を通せるようにしました。

6 かつぎ棒はアカシヤ材で、青銅をかぶせてあります。

7 祭壇の側面につけた環に、その棒を通します。祭壇の側面は板で、中はがらんどうでした。

8 天幕の入口で奉仕していた女たちが、青銅の鏡を寄付したので、それを使って青銅の洗い鉢とその台を作りました。

9 次は庭です。南側は五十メートルで、細い上等のより糸を織って幕を作り、それを張り巡らしたのです。

10 幕を垂らす柱を二十本立てました。土台は青銅で、柱には銀のかぎと環をつけました。

11 北側にも五十メートルの幕を張り、青銅の柱二十本とその土台、銀のかぎと環があります。

12 西側は二十五メートルで、十本の柱と土台で幕を支えました。柱には、やはり銀のかぎと環がついています。

13 東側も二十五メートルです。

14 入口の両側には、幅七メートル半の幕を垂らし、それぞれ三個の土台に立てた三本の柱で支えました。

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16 庭の仕切りとして巡らした幕は、どれも細い上等のより糸で織ったものです。

17 柱はみな青銅の土台にはめ込み、かぎと環は銀です。柱の頭部には銀をかぶせ、幕を垂らす環は純銀でした。

18 庭の入口に垂らすカーテンは上質のリンネルで作り、青、紫、深紅のより糸で美しい刺しゅうをしました。幕の幅は十メートル、高さは二メートル半で、庭の仕切りとした他の幕と同じ高さです。

19 幕は四本の柱と四個の青銅の土台、銀のかぎと環で支えました。柱の頭部も銀でした。

20 天幕と庭を作るのに用いた釘は、すべて青銅です。

21 これが、箱を納める天幕の建設工事の諸工程です。天幕ができ上がり、ようやくレビ部族が仕事につけるようになりました。いっさいの工事は、モーセが立てた計画どおり行なわれ、祭司アロンの息子イタマルが監督しました。

22 ユダ部族のウリの息子で、フルの孫にあたるベツァルエルが、技術面での責任者となり、

23 ダン部族のアヒサマクの息子オホリアブが、助手を務めました。彼も熟練した職人で、彫刻、設計、色とりどりの刺しゅうをするのに、すばらしい腕を発揮しました。

24 人々がささげ、天幕建設に使った金は千四百キログラムに達しました。

25 銀は四千二百五十キログラム使われました。これは、人口調査の時に登録する二十歳以上の人から取り立てた、百五十円の人頭税でまかなわれました。登録したのは、計六十万三千五百五十人です。

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27 聖所の壁となるわく組みの土台と、垂れ幕を支える柱の土台には、一個につき四十二キログラム、計四千二百キログラムの銀が必要でした。

28 残った銀は柱頭にかぶせたり、環やかぎを作るために使いました。

29 青銅は三千三百六十五キログラムささげられ、

30 次のような物を作るのに使われました。天幕の入口に立てる柱の土台、祭壇、格子、祭壇に付属する器具類、庭を仕切る引き幕を支える柱の土台、天幕と庭の釘などです。

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1 次に、青、紫、深紅のより糸で、祭司用の美しい服を作りました。聖所で務めをする時に着る服です。同じ生地で、アロンの聖なる服も作りました。すべて、神様がモーセに命じたとおりです。

2 エポデ(ひざ下までの、そでなし上着)も、同じ上質のリンネルと、金、青、紫、深紅のより糸で作りました。

3 ベツァルエルは金の板を薄く延ばし、細く切って金糸を作りました。それを青、紫、深紅の糸により込み、布に織ると、実に精巧な美しい布ができ上がりました。

4 エポデには肩当てをつけ、両端を留めるようにしました。上に締める帯も織りました。生地はエポデと同じく、金、青、紫、深紅の細いより糸を織り込んだリンネルで、たいへん美しいものでした。神様がモーセに指示したとおりです。

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6 二個のしまめのうを金の台にはめ、エポデの肩当てに縫いつけましたが、石の上には、イニシアルのようにイスラエルの全部族の名を彫りました。この石を見て、神様がイスラエル国民を絶えず思い起こせるようにしたのです。すべて神様がモーセに指示したとおりです。

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8 胸当てもエポデと同じように、金、青、紫、深紅のより糸で織った上質のリンネルで、美しく作りました。

9 これは二十五センチ四方の布で、二つに折って袋状にしました。

10 そこには宝石を四列に並べました。最初の列はルビー、トパーズ、エメラルド。

11 二列目はトルコ玉、サファイヤ、ダイヤモンド。

12 三列目はヒヤシンス石、めのう、紫水晶。

13 四列目は緑柱石、しまめのう、碧玉。これらはみな金の台にはめました。

14 石には、イスラエルの十二部族の名を、印と同じように彫りつけました。

15 胸当てをエポデに結びつけるために、エポデの肩当てに金の環をつけました。この環と、胸当ての上すみの金の留め金とを金の鎖でつなぐのです。

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19 また、胸当ての下のへり、ちょうどエポデと接する所の内側にも、金の環を二個つけました。

20 別の金の環を、エポデの肩当ての下部につけました。エポデの上から、美しく織った帯を締めるあたりです。

21 胸当ての環とエポデの環とを青いひもでしばり、胸当てを、帯の上にしっかり結びつけました。何もかも神様の命令どおりです。

22 エポデの下に着る服は青糸で織りました。

23 真ん中に、ちょうどよろいの首の部分のように頭を通す穴をあけ、ほつれないようにかがりました。

24 長服のすそには、ざくろをつけました。これは、青と紫と深紅のより糸で作ったものです。

25 ざくろとざくろの間には、純金の鈴もつけました。服のすそに鈴とざくろが交互に並ぶわけです。この長服は、アロンが祭司の務めをする時に着ます。神様がモーセにそう命じたのです。

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27 細いより糸で織ったリンネルで、アロンと息子たちのために上着を作りました。

28 美しいターバン、帽子、下着もみな、同じ布で作り、帯には青、紫、深紅の糸で美しい刺しゅうをしました。神様がモーセに命じたとおりです。

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30 最後に、ターバンの正面につける聖なるプレートを純金で作りました。その上には、「神のために特別に選ばれた者」ということばを彫り、

31 青いひもでターバンに結びつけました。神様が教えたとおりです。

32 こうしてついに、神様がモーセに指示したいっさいの工事が終わり、神の天幕が完成しました。

33 そこで工事担当者は、でき上がった天幕と付属品を全部、モーセのところへ運んで来ました。調度品、留め金、わく組みの板、横木、柱、土台、屋根と側面用の赤く染めた雄羊のなめし皮、特別になめしたじゅごん(海に住む哺乳動物)の皮、仕切りの垂れ幕、十戒を納めた箱、かつぎ棒、恵みの座、供えのパンのテーブルと付属品、供えのパン、純金の燭台とともしび皿、付属品、油、金の香の祭壇、注ぎの油、香りの高い香、天幕の入口用のカーテン、青銅の祭壇、青銅の格子、かつぎ棒と付属品、洗い鉢とその台、庭を仕切る引き幕とそれを支える柱、柱の土台と庭の入口に下げる幕、ひも類と釘、天幕で使うあらゆる用具類

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41 そのほか美しく仕立てた祭司用の服も、モーセに点検してもらいました。祭司が聖所で務めをする時に着る服、つまり大祭司アロンの聖なる服と、彼の息子たちが公式に着る衣装などです。

42 このようにしてイスラエル国民は、神様がモーセに指示したことを、全部、そのとおり行ないました。

43 モーセはでき上がった物を一つ残らず点検し、祝福しました。何もかも神様の指示どおりにできていたからです。

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1 さて、神様はモーセに命じました。

2 「一月一日(ユダヤ暦による。太陽暦では三月中旬)に、神の天幕を組み立てなさい。

3 十戒を納めた箱を天幕に安置する。至聖所に箱を置き、その前には仕切りの垂れ幕をしつらえるのだ。

4 次に、供えのパンのテーブルを運び入れ、その上に用具類を並べる。燭台を持って来て、ともしび皿を載せる。

5 箱の前には金の香の祭壇を置き、天幕の入口にカーテンを垂らす。

6 入口の前に、完全に焼き尽くすいけにえ用の祭壇を置く。

7 天幕と祭壇との間に洗い鉢を置き、水を満たす。

8 それがすんだら、天幕の回りに庭を造り、庭の入口にはカーテンを垂らす。

9 組み立てが終わったら、注ぎの油を天幕とその中にある物ぜんぶに注ぎなさい。いろいろな用具類、すべての調度品にも注いで、それらをきよめる。

10 完全に焼き尽くすいけにえ用の祭壇とその用具類も、同じようにする。これで、祭壇は最も神聖なものとなる。

11 洗い鉢とその台も同様だ。

12 次に、アロンと息子たちを天幕の入口に連れて来て沐浴させ、

13 アロンに聖なる服を着せて油を注ぎなさい。祭司としてわたしに仕えることができるように、彼をきよめるのだ。

14 次に、彼の息子たちを連れて来て祭司の服を着せ、

15 父親と同じように彼らにも油を注ぎ、祭司とする。その油注ぎは何代にもわたり、永遠に続く。息子たちも、またその息子たちも、永遠にわたしの祭司となるからだ。」

16 そこでモーセは、神様に命じられたことをすべて実行に移しました。

17 二年目の正月の一日に、天幕が組み立てられました。

18 モーセはまず、わく組みの板を土台にはめ込み、横木をつけました。

19 それから、屋根のおおいをかけ、さらに幕を重ねました。すべて神様に命じられたとおりです。

20 箱の中に十戒を刻んだ二枚の石板を入れ、環にかつぎ棒を通しました。箱の上には、恵みの座と呼ばれる金のふたを載せました。

21 それから、箱を天幕に入れ、仕切りの垂れ幕をかけました。すべて神様に命じられたとおりです。

22 次に、供えのパンのテーブルを垂れ幕の外の北側に置き、

23 供えのパンを神様に供えました。すべて神様に命じられたとおりです。

24 天幕の南側、テーブルの反対側に燭台を置きました。

25 次に、指示されたとおり、神様の前にともしび皿を整えました。

26 それから、垂れ幕のすぐ前に金の香の祭壇を置き、

27 香りの高い香料で作った香をたきました。すべて神様に命じられたとおりです。

28 天幕の入口にはカーテンを取りつけました。

29 そして、外へ出た所に完全に焼き尽くすいけにえ用の祭壇を置き、その上でいけにえと穀物のささげ物をささげました。すべて神様に命じられたとおりです。

30 次は洗い鉢です。天幕と祭壇の間に置き、水を満たしました。祭司たちがその水で手足を洗えるようにしたのです。

31 モーセとアロンとアロンの息子たちは、そこで手足を洗いました。

32 天幕へ入るために祭壇のところを通って行く時はいつも、そこで立ち止まり、手足を洗うのです。すべて神様に命じられたとおりです。

33 それから、天幕と祭壇を囲む庭を造りました。庭の入口にもカーテンを垂らしました。こうしてついに、モーセはいっさいの仕事を終わったのです。

34 すると、雲が天幕にかかり、神様の栄光が輝きわたりました。

35 あまりの神々しさに、モーセは中へ入れませんでした。

36 雲が天幕から離れて動きだした時、イスラエル人はそのあとに従って旅をしました。

37 雲が動くのをやめると一行もそこに止まり、雲が動きだすまでじっと待つのです。

38 昼間は雲が天幕にかかり、夜は雲の中に赤々と火が輝き、人々はみなその有様を見ました。これは旅の間ずっと絶えることがありませんでした。