1 アハブ王が死ぬと、モアブの国が独立を宣言し、イスラエルに貢を納めないと言いだしました。
2 さて、イスラエルの新しい王アハズヤは、サマリヤにある宮殿の二階のベランダから落ちて、重傷を負いました。そこで、使者をエクロンにあるバアル・ゼブブの神殿に送り、傷が治るかどうか、伺いを立てさせようとしました。
3 ところが、神様の使いが預言者エリヤに、こう告げたのです。「さあ、王の使者に会い、次のように言いなさい。『イスラエルには神がいないとでもいうのか。わざわざエクロンの神バアル・ゼブブに、王が治るかどうか伺いを立てるとは......。
4 こんなまねをしたので、王は床に釘づけになったまま、やがて死ぬ。』」エリヤのことばを聞いた使者は、すぐ王のもとへ引き返しました。「なぜ、こんなに早く帰って来た?」と尋ねる王に、使者は答えました。
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6 「ある人が来て、すぐ陛下のもとへ帰り、こう語るようにと告げたのでございます。『神様は、なぜ王がエクロンの神バアル・ゼブブに伺いを立てるのか、そのわけを知ろうとしておられる。イスラエルに神がおられないとでもいうのか。こんなことをしたからには、王は床から離れることはできないし、そのうちきっと死ぬ。』」
7 「だれがそんなことを。で、どんななりをしておった、そいつは。」
8 「毛衣を着て、太い皮帯を締めていました。」「うーん、それでまちがいない。あの預言者エリヤめだっ!」
9 そこで王は、五十人の兵士に隊長をつけて、エリヤ逮捕に向かわせました。彼らは丘の上に座っているエリヤを見つけ、声をかけました。「預言者よ、王の命令だ。いっしょに来てもらおう。」
10 「もし私が預言者なら、天から火が下って、おまえたちを皆殺しにするはずだ」と、エリヤが言ったとたん、いなずまが彼らを直撃し、一人残らず焼き殺してしまいました。
11 王はまた、別の五十人の兵士に隊長をつけ、「預言者よ、すぐ来るようにとの、王の命令だ」と言わせました。
12 「もし私が預言者なら、天から火が下って、おまえたちを皆殺しにするはずだ。」今度も、神様の火が彼らを焼き殺してしまいました。
13 それでも、王はあきらめません。もう一度、五十人の隊を送り出しました。ところが今度の隊長は、エリヤの前にひざまずいて懇願したのです。「預言者様、どうか、私どものいのちをお助けください。
14 どうか、お情けを。前の者たちのように殺さないでください。」
15 その時、御使いがエリヤに、「こわがらずに、いっしょに行け」と命じたので、エリヤは王に会いに行きました。
16 エリヤは、王の前でも少しも臆しません。「なぜ陛下は、ご病気のことで、エクロンの神バアル・ゼブブに伺いを立てようと、使者を送ったのですか。イスラエルに神がおられないとでもいうのですか。そんなことをなさったので、陛下は床に釘づけになったまま、そのうちきっと死にます。」
17 神様がエリヤによって予告なさったとおり、アハズヤは死に、弟ヨラムが王位につきました。アハズヤには世継ぎがなかったからです。それは、ヨシャパテの子でユダの王ヨラムの即位後二年目のことでした。
18 アハズヤのその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
1 さて、神様がエリヤをたつまきで天に上げる時がきました。エリヤはギルガルを出立する時、エリシャに、「ここに残ってくれ。神様がわしに、ベテルへ行けと仰せじゃ」と言いました。ところがエリシャは、「神様にかけて言っておきますが、決して先生から離れません」と答えたのです。そこで二人は、そろってベテルへ向かいました。
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3 すると、ベテルの預言者学校の若い預言者たちが迎えに出て、エリシャに言いました。「きょう、神様がエリヤ先生をあなたから取り上げようとしておられるのを、ご存じですか。」「黙りなさい!もちろん知っているとも。」エリシャはきびしい口調で言いました。
4 すると、エリヤはエリシャに、「このベテルに残れ。神様がわしを、エリコへやられるのじゃ」と言いました。しかし、またもエリシャは、「神様にかけて言っておきますが、決して先生から離れません」と答えたのです。そこで二人は、そろってエリコへ出かけました。
5 エリコでも、預言者学校の生徒たちがエリシャに、「きょう、神様がエリヤ先生をあなたから取り上げようとしておられるのを、ご存じですか」と言いました。エリシャはきっぱり答えました。「知っているとも。だが、そのことは黙っていてくれないか。」
6 エリヤはまたもエリシャに、「ここに残れ。神様がわしを、ヨルダン川へやられる」と言いました。この時も、エリシャは前と同じように、「神様にかけて言っておきますが、決して先生から離れません」と答えたのです。二人はそろって出かけ、ヨルダン川のほとりに立ちました。若い預言者五十人は、遠くから見守っていました。
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8 エリヤが外套を丸めて、ヨルダン川の水を打つと、川の水が分かれたので、二人はかわいた土の上を渡って行きました。
9 向こう岸に着くと、エリヤはエリシャに言いました。「わしが天に行く前に、どんなことをしてやろうかの。」「どうぞ、先生の二倍の預言の力を、お授けください。」
10 「難しいことを注文するものだ。わしが取り去られる様子を見ることができたら、願いはかなえられるぞ。じゃが、見られなければだめじゃな。」
11 二人が話しながら歩いていると、突然、火の馬に引かれた火の戦車が、二人の間に割り込みました。こうして、エリヤはたつまきに乗って天にのぼって行ったのです。
12 エリシャはその姿をじっと見つめ、「わが父!わが父!イスラエルの戦車と騎兵よ!」と絶叫しました。エリヤの姿が見えなくなると、エリシャは着物を引き裂きました。
13 それから、エリヤの外套を拾い上げ、ヨルダン川のほとりに引き返し、その外套でヨルダン川の水を打ったのです。「エリヤの神様は、どこにおられますか」と、大声をあげると、水が両側に分かれたので、歩いて川を渡りました。
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15 エリコの若い預言者たちはこれを見て、口々に「エリヤの霊がエリシャに臨んだ!」と叫び、エリシャを迎えに出て、ていねいにおじぎしました。
16 「お許しをいただければ、五十人の屈強な連中にエリヤ先生を捜しに行かせます。おそらく、神の御霊が先生を運んで、どこかの山か谷に置き去りにされたのでしょうから。」「どうか、そんなことはしないでくれ。」
17 ところが、彼らがあまりにもしつこく言うので、ついにエリシャも根負けして、「ま、いいだろう。そうしなさい」と折れました。そこで、五十人の男が三日間、手分けして捜しましたが、エリヤの姿はどこにも見あたりません。
18 すごすご引き返して来ると、エリシャはまだエリコにいて、「だから、あれほど、行くなと言っただろう」としかりつけました。
19 エリコの町の代表者たちが、エリシャを尋ねて来ました。「実は、困ったことがあるのです。この町は、ご覧のとおり、美しい自然に囲まれています。ところが水が悪くて、女たちは流産に悩まされています。」
20 「それはお困りですな。何とかしましょう。新しい器に塩をいっぱい入れて、持って来なさい。」そこで彼らは言われたとおりにしました。
21 エリシャは町の井戸へ出かけ、塩を振りまいて、「神様がこの水をきよめてくださった。これからはもう、流産する人もないし、水にあたって死ぬ人もいません」と太鼓判を押しました。
22 はたして、そのとおり水質は良くなったのです。
23 エリシャがベテルへの道を進んで行くと、ベテルの町から小さい子供たちが出て来て、「やーい、はげ頭、はげ頭」とはやし立てました。
24 エリシャは子供たちの方を振り向いて、神様の御名によってのろいました。すると、森の中から二頭の雌熊が出て来て、四十二人もの子供を裂き殺してしまったのです。
25 このあと、エリシャはカルメル山へ行き、またサマリヤへ帰って来ました。
1 ユダのヨシャパテ王の即位後十八年目に、アハブの子ヨラムがイスラエルの王となり、首都のサマリヤで十二年のあいだ治めました。
2 彼はしたたか者でしたが、両親ほどではありませんでした。その証拠に、父の作った、バアルにささげる石柱だけは取り除いたのです。
3 しかし一方では、イスラエル国民を偶像礼拝に誘った、ネバテの子ヤロブアムの罪を犯し続けました。
4 モアブ人はメシャ王をはじめとして、羊を飼っており、毎年イスラエルに、子羊十万頭と、雄羊十万頭分の羊毛とを貢として納めていました。
5 ところが、アハブ王が死ぬと、モアブの王はイスラエルに背いたのです。
6 そこで、ヨラム王はイスラエル軍を召集する一方、ユダのヨシャパテ王に使いをやりました。「モアブの王が反旗を翻しました。戦いにお力添え願えないでしょうか。」「喜んで力になりましょう。国民も馬も、あなたの言いなりにさせます。作戦計画を教えてください。」「エドムの荒野の道から攻めることにしています。」
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9 こうして、エドムからの援軍も加わった、イスラエルとユダの連合軍は、荒野の道を遠回りして七日間すすみました。ところが、兵士や荷物を運ぶ家畜の飲み水が底をついたのです。
10 イスラエルの王は悲鳴をあげました。「ああ、どうしよう。神様はわれわれを、モアブの王の餌食にしようと、ここに連れ出されたのだ。」
11 「預言者はいないのですか。もしいたら、どうすればいいかわかるのに。」ユダのヨシャパテ王のことばに、イスラエルの王の家来が答えました。「エリヤの助手をしていたエリシャがいます。」
12 ヨシャパテは、「それはいい。その人に聞いてみよう」と言いました。そこで、イスラエルとユダとエドムの王は、そろってエリシャを尋ねたのです。
13 ところが、エリシャはイスラエルのヨラム王にかみつきました。「かかわりになりたくありませんな。ご両親がひいきにしていた、偽預言者のところへでも行ったらいいでしょう。」「いやだ!われわれをここに呼び出し、モアブの王の餌食になるように仕向けたのは、神様だぞ。」
14 「神様にかけて言っておきます。ユダのヨシャパテ王がいなかったら、こんなことに首をつっ込む気は、さらさらなかったんですがね。
15 ま、しかたがない、竪琴をひく者を連れて来てください。」竪琴がひき鳴らされると、エリシャに神様のお告げがありました。
16 「このかわいた谷に溝を掘れ。わたしがそこに水を満たす。
17 風も吹かず、雨も降らないのに、谷は水であふれ、おまえたちも家畜も、十分に飲むことができる。
18 だが、これはまだ序の口だ。わたしはモアブ軍を破り、おまえたちに勝利を与える。
19 おまえたちは城壁で囲まれた最上の町々を占領し、良い畑をみな、石ころで台なしにする。」
20 翌日、朝のいけにえがささげられるころ、水がエドムの方から流れて来て、あたり一面を水浸しにしました。
21 そのころ、モアブ人は、連合軍が攻めて来ると聞き、老いも若きも、戦うことのできる男子を総動員して、国境の守備を固めました。
22 ところが、翌朝はやく起きてみると、太陽が水面を真っ赤に照らしているではありませんか。
23 彼らは思わず、「血だ!連合軍が、同士討ちをしたに違いない。さあ、出て行って戦利品を集めよう」と叫びました。
24 こうして、彼らがイスラエル陣に攻め込むと、イスラエル軍が飛び出して来て、モアブ人を片っぱしから殺し始めたのです。たちまちモアブ軍は総くずれです。ここぞとばかり、イスラエル軍はモアブの地に攻め込み、手あたりしだいに破壊してしまいました。
25 町を廃墟とし、すべての良い畑に石を投げ、井戸をふさぎ、実のなる木を切り倒しました。キル・ハレセテの要害が最後まで残っていましたが、そこもついに、イスラエル軍の手に落ちたのです。
26 モアブの王は勝ち目がないとわかると、七百人の抜刀隊を率い、エドムの王のところへ突入しようとしましたが、それも失敗に終わりました。
27 そこで、世継ぎの長男を城壁の上で殺し、完全に焼き尽くすいけにえとしてささげたのです。これを見たイスラエル人は、ぞっとして気分が悪くなり、国へ引き揚げて行きました。
1 ある日、預言者学校の生徒の妻がエリシャを訪ね、夫の死を告げました。「主人は神様を愛していました。ところが、亡くなる時、少しばかり借金があったのです。今、貸し主が返済を求め、もし返せなければ、二人の子供を奴隷にすると言うのです。」
2 「はて、どうしてあげたらいいのかな。家には、どんな物があるかね。」「油のつぼが一つあるだけで、ほかには何も。」
3 「では、隣近所から、空のかめや鉢をたくさん借りて来なさい。
4 鍵をしっかりかけ、子供たちと家に閉じこもり、つぼのオリーブ油を、かめや鉢にどんどんつぎなさい。」
5 女は言われたとおり、子供たちが借りて来たかめや鉢を油でいっぱいにしました。
6 まもなく、どの入れ物も口まであふれるほど、いっぱいになりました。「もっと、もっと、かめを持っておいで」と言うと、「もうないよ」という返事です。そのとたんに元のつぼから油が流れ出なくなりました。
7 女からいきさつを聞くと、預言者は言いました。「さあ、その油を売って、借金を返しなさい。その余りで、子供たちと十分くらしていけるはずだ。」
8 ある日、エリシャがシュネムの町へ行くと、裕福な婦人が食事に招きました。その後も、そこを通るたびに、彼は立ち寄って食事をするようになったのです。
9 婦人は夫にこう話しました。「お通りになるたびに立ち寄られるあの方は、きっと神の預言者に違いございませんわ。
10 あの方のために、屋上に小さなお部屋を造って差し上げとうございます。中には、ベッド、机、いす、それに燭台を置きますの。そうすれば、おいでになるたびに、そこでゆっくりお休みになれますわ。」
11 ある日、エリシャはその部屋で休んでいましたが、しもべのゲハジを呼び、「奥様に、ちょっとお話ししたいことがあると伝えてくれ」と頼みました。彼女が来ると、
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13 エリシャはゲハジに言いました。「まず、いつも親切にしてくださることのお礼を言ってくれ。それから、何かして差し上げられることがないか、聞いてほしい。王様か、将軍にでも、評判を伝えてもらいたいと思っているかもしれんしな。」ところが、彼女は答えました。「まあ、とんでもございません。私は今のままで満足しておりますわ。」
14 「何かしてやれることはないのかの」と、あとでエリシャがゲハジに尋ねました。「あの女には子供がありません。それに、ご主人もかなりの年ですし......。」
15 「もう一度、奥さんを呼んでくれ。」彼女が来ると、エリシャは、入口に立っている彼女に言いました。「来年の今ごろ、あなたに男の子が生まれます。」「ご、ごじょうだんでしょう。預言者ともあろうお方が、私をおからかいになるのですか。」彼女は思わず叫びました。
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17 ところが、それはほんとうのことでした。婦人はやがてみごもり、エリシャが言ったとおり、翌年の同じころに男の子を産んだのです。
18 その子が大きくなったある日、小作人といっしょに働いている父親に、会いに出かけました。
19 その時、子供はしきりに頭痛を訴え、苦しみ始めたのです。父親は下男に、「抱いて母親のところへ連れて行け」と言いつけました。
20 その子は家へ連れ戻され、母親のひざに抱かれていましたが、昼ごろに息を引き取りました。
21 彼女は子供をかかえて預言者のベッドに運び、戸を閉めました。
22 それから、夫に使いをやって、「どうぞ、下男にろば一頭をつけて寄こしてください。急いで、あの預言者様のところへ行って来ます。」
23 「どうしてまた、きょうなどと?特別な祝日でもないのに。」「でも、どうしても行きたいのです。」
24 彼女はろばに鞍を置くと、下男にこう言いつけました。「うんと急いでおくれ。私の指示のないかぎり、手綱はゆるめなくていいのよ。」
25 カルメル山に近づいて来る彼女を、エリシャは遠くから見つけ、ゲハジに言いました。「見なさい。あのシュネムのご婦人が来る。
26 さあ、走って行って出迎え、何があったのか聞いてみるのだ。ご主人やお子さんはお元気かどうかもな。」彼女はゲハジに、「ありがとうございます。別に変わりはございません」とだけ答えました。
27 ところが、山の上にいるエリシャのそばまで来ると、彼女はひれ伏し、彼の足にすがりつきました。ゲハジが払いのけようとすると、預言者は言いました。「そのままにさせておきなさい。何か大きな悩みがあるに違いない。それが何であるか、神様はまだお告げになっていないのだ。」
28 「私に子供が生まれると言われたのは、あなた様です。その時、おからかいにならないでください、と申し上げたはずです。」
29 これを聞いたエリシャは、ゲハジに命じました。「大急ぎで、わしの杖を持って行って、あの子の顔の上に置くのだ。途中、だれに会っても話をするな。急げ!」
30 その子の母親が、「神様にかけて申します。あなた様とごいっしょでなければ、家へ帰りません」と言うので、エリシャは彼女といっしょに出かけました。
31 ゲハジは先に行って、杖を子供の顔の上に置きましたが、何の変化も起こりません。そこで引き返して、エリシャに、「あの子は死んだままです」と報告しました。
32 エリシャが着いてみると、なるほど子供は死んでいて、ベッドに寝かされています。
33 彼は中に入り、戸を閉めて、神様に祈りました。
34 それから小さいなきがらの上に体をかぶせ、自分の口を子供の口に、自分の目を子供の目に、自分の両手を子供の両手に重ねました。すると、子供の体がだんだん温かくなってきました。
35 ここで、いったん降り、部屋の中を、何回か行ったり来たりして、またベッドに戻り、子供の上に体をかぶせました。すると、子供は七回くしゃみをして、目をぱっちりと開いたのです。
36 預言者はゲハジを呼んで、「奥さんを呼んで来なさい」と命じました。彼女が入って行くと、エリシャは、「ほら、お子さんですよ」と声をかけるではありませんか。
37 彼女はエリシャの足もとにひれ伏しました。それから子供を抱き上げると、外へ出て行きました。
38 エリシャがギルガルに戻ってみると、ききんが起こっていました。ある日、若い預言者たちを教えている時、ゲハジを呼んで、「この人たちのために食事の用意をしなさい」と命じました。
39 若者の一人が野菜を取りに野へ行き、野生のうりを前掛けにいっぱい入れて帰って来ました。彼は、毒があるとも知らず、それを輪切りにして、かまに入れたのです。
40 ところが、みんなが一口食べてみて、「先生、たいへんです!この煮物には毒が入っています!」と大騒ぎになりました。
41 エリシャは少しもあわてません。「麦粉を少し持って来なさい」とだけ言いました。そして麦粉をかまに投げ入れ、「これで大丈夫だ。さあ、どんどん食べなさい」と言いました。煮物の毒はすっかり消えていたのです。
42 ある日、バアル・シャリシャ出身の人が、エリシャのところに、新穀を一袋と、初穂で焼いた大麦のパン二十個を持って来ました。エリシャはゲハジに、これを若い預言者たちに食べさせるよう指示しました。
43 ゲハジは、「これっぽちのものを、百人もの人に食べさせるのですか」とあきれ顔でした。しかし、エリシャは言いました。「さあ、黙って食べさせるのだ。『みんなに十分なだけある。食べ残す者も出るくらいだ』と、神様は言われるのだから。」
44 はたして、神様が言われたとおりだったのです。
1 シリヤの王は、軍の最高司令官ナアマンを非常に重んじていました。ナアマンが軍隊を率いて、何度も輝かしい勝利を収めたからです。彼は押しも押されもしない偉大な英雄でしたが、なんと、ツァラアトにかかっていたのです!
2 さて、シリヤ軍がイスラエルに侵入した時、捕虜の中に若い娘がいて、ナアマンの妻の小間使いになっていました。
3 ある日、その少女が女主人に申しました。「だんな様は、サマリヤにいる預言者のところへ行かれたらよろしいのに。きっと、その方がツァラアトを治してくださいますわ。」
4 ナアマンは、少女のことばを王に話しました。
5 王は、「その預言者のところへ行くがよい。イスラエルの王にあてて、紹介状を書こう」と言いました。そこでナアマンは、贈り物として、千八百万円相当の金と六百万円相当の銀、それに衣服五着を持って、イスラエルへ出発したのです。
6 イスラエルの王への手紙には、こう書いてありました。「この書状をあなたに手渡す男は、私の家来ナアマンです。ぜひとも、ナアマンのツァラアトを治してください。」
7 イスラエルの王は手紙を読むと、服を裂いて、こう言いました。「シリヤの王め、ツァラアトの人をよこして、病気を治してくれと無理難題を吹きかけてきおった。わしは殺したり、生かしたりできる神であろうか。これは、イスラエル侵略の口実を見つける罠に違いない。」
8 預言者エリシャは、イスラエルの王が苦境に立たされていることを知り、人をやって、次のように言わせました。「なぜ、そんなに取り乱しているのですか。ナアマンをお寄こしください。イスラエルには神の預言者がいることを教えてやりましょう。」
9 ナアマンは馬と戦車を従えて、エリシャの家の玄関に立ちました。
10 エリシャは使いをとおして、次のように言いました。「ヨルダン川へ行って、体を七回洗いなさい。そうすれば、ツァラアトは完全に治り、跡形もなくなります。」
11 これを聞いたナアマンは、ひどく腹を立て、不きげんそうに引き返しました。「何てことだ!預言者がじきじきに出て来てあいさつし、患部に手をあて、彼の神の名を呼んで、ツァラアトを治してくれると思っていたのに。
12 川で洗えだと?それなら、ダマスコのアマナ川やパルパル川のほうが、よっぽどきれいじゃないか。どうしても川でなきゃというんなら、故郷の川でやったほうがまだましだ。」彼はぷりぷり怒って帰って行きました。
13 ところが、部下がこう説き伏せたのです。「あの預言者に、何か難しいことをせよと言われても、そうなさるおつもりだったのでしょう。それなら、体を洗って、きよくなれと言われただけのことですから、そのとおりになさったらいかがですか。」
14 それももっともです。ナアマンはヨルダン川へ下って行き、言われたとおり、七回、水につかりました。すると、どうでしょう。皮膚は幼子のようにつやつやし、すっかり治ったではありませんか!
15 一行は預言者のところへ引き返し、うやうやしく彼の前に立ちました。ナアマンは感謝でいっぱいです。「今こそ、イスラエルのほかに、世界のどこにも、神様がおられないことがわかりました。どうぞ、この贈り物をお受けください。」
16 「私の神様にかけて、そんな物をいただくわけにはまいりません。」ナアマンはしきりに勧めたのですが、エリシャはどうしても受け取りません。
17 しかたなく、ナアマンは言いました。「では、これだけはお聞き届け願えないでしょうか。どうぞ、二頭のらばに載せられるだけの土を分けてください。国へ持ち帰りたいのです。これからはもう、イスラエルの神様のほかには、どの神にもいけにえをささげたくありません。
18 ただし、一つだけ、お許しいただきたいことがあります。私の主君が、リモンの神殿に参拝する時、私の腕に寄りかかります。その時、私もいっしょに体をかがめますが、そのことを神様がお許しくださいますように。」
19 「よろしい。安心してお帰りなされ」というエリシャの返事を聞いて、ナアマンは帰って行きました。
20 ところが、エリシャのしもべゲハジは、ひそかに考えたのです。「だんな様のお人好しにも困ったものだ。贈り物を一つも受け取らずに、あの方を帰してしまうんだから。よーし、あの方のあとを追いかけ、何かいただいて来よう。」
21 ゲハジはナアマンのあとを追いました。ナアマンはゲハジが走って来るのを見ると、戦車から飛び降り、走り寄って迎えました。「何かあったのですか。」
22 「はい。主人がお伝えしたいことがあると、私を使いに出したのでございます。たった今、若い預言者が二人、エフライムの山地から来まして、彼らに何かみやげをと思ったものですから。よろしければ、六十万円分の銀と衣服二着を分けていただけませんか。」
23 「よろしいですとも。なんなら、いっそ百二十万円分の銀をお持ちください。」ナアマンは強く勧め、高価な衣服二着と銀貨二袋を二人の家来に持たせ、ゲハジといっしょに行かせました。
24 エリシャの家のある丘まで来ると、ゲハジは衣服と銀貨の袋を受け取り、二人を帰しました。受け取ったものを隠しておこうというのです。
25 何くわぬ顔で主人の前に出たゲハジに、エリシャは尋ねました。「ゲハジ、どこへ行っていた。」「別に、どこへもまいりませんが。」
26 「ナアマンが戦車から降りて、おまえを迎えるのを、わしは心の目で見ていたのだ。今は、金や衣服、オリーブ畑やぶどう畑、羊や牛、下男や下女を受け取る時だろうか。
27 そんなことをしたからには、ナアマンのツァラアトは、いつまでも、おまえとおまえの子孫に降りかかるぞ。」ゲハジはたちまちツァラアトにかかり、肌が雪のように白くなって、エリシャの部屋から出て行きました。
1 ある日、預言者学校の生徒たちが、エリシャのところへ来て言いました。「校長先生、ご覧のように、寄宿舎が手狭になりました。ヨルダン川のそばには、材木がたくさんありますから、そこに新しい寄宿舎を建ててはいかがでしょう。」「よかろう。そうしなさい。」
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3 「どうか、先生もいっしょに行ってください。」「わかった。行こう。」
4 こうして、一行はヨルダン川に着き、木を切り倒しにかかりました。
5 ところが運悪く、一人が斧の頭を川に落としてしまったのです。「先生、たいへんです。あの斧は借り物なんです!」
6 「どこへ落とした。」彼がその場所を教えると、エリシャは一本の枝を切り、そこへ投げ込みました。すると、斧の頭が水面に浮かび上がったのです。
7 「さあ、つかめ!」と言われて、彼は手を伸ばしてつかみ上げました。
8 シリヤの王がイスラエルと戦っていた時のことです。王は家来たちに、「これこれの所に兵力を集めよう」と言いました。
9 すると、すぐさまエリシャはイスラエルの王に、「あの場所へは近寄りませんように。シリヤ軍が集結しようとしています」と警告しました。
10 イスラエルの王は、エリシャの言うことがほんとうかどうか確かめようと、斥候を出しました。はたして、そのとおりです。こうして、エリシャはイスラエルを救いました。こんなことが何回もあったのです。
11 シリヤの王は首をかしげ、家来たちを呼んで、きびしく追及しました。「この中に裏切り者がいる。こちらの作戦を敵に通報している者がいるはずじゃ。」
12 「陛下、私どもではございません。預言者エリシャが、陛下が寝室でこっそりおっしゃることまで、イスラエルの王に告げているのでございます。」
13 「そうか、では、そいつの居場所を突き止め、捕まえろ。」やがて、「エリシャがドタンにいる」という知らせが届きました。
14 そこで、ある夜、シリヤの王は戦車と馬で武装した大軍を差し向け、ドタンを包囲しました。
15 翌朝はやく、預言者のしもべが起きて、外に出てみると、どうでしょう。馬と戦車で固めた大軍が、ぐるりと取り巻いているではありませんか。思わず、大声で叫びました。「ああ、だんな様ーっ。ど、どうしたらよいでしょうか。」
16 「恐れるな。わしらの軍隊は彼らよりも多く、強いのだ。」
17 こう言って、エリシャは祈りました。「神様、どうか、彼の目を開いて、見えるようにしてください。」すると、神様が若者の目を開いてくださったので、火の馬と火の戦車が山の上に目白押しに並んでいるのが見えました。
18 シリヤ軍が攻め寄せて来た時、エリシャは、「神様、どうぞ、彼らを盲にしてください」と祈りました。そのとおり、シリヤ軍の兵士たちは盲になったのです。
19 エリシャは出て行って、彼らに言いました。「道をまちがえているぞ!攻撃する町はここじゃない!わしについて来い。おまえたちが捜している人のところへ、連れて行ってやろう。」こうして、彼らをサマリヤへ連れて行きました。
20 サマリヤに着くと、「神様、彼らの目を開いて、見えるようにしてください」と祈りました。目が見えるようになった時の、彼らの驚きようといったらありません。事もあろうに、イスラエルの首都サマリヤにいるのですから。みな目を丸くしました。
21 イスラエルの王は敵の兵士を見て、エリシャに尋ねました。「彼らを殺してもいいのですか。」
22 「捕虜を殺すなど、とんでもないことです。パンと水を与え、国に帰しておやりなさい。」
23 そこで王は、彼らのために盛大な宴をもうけてから、シリヤ王のもとへ送り返しました。それからというもの、シリヤの略奪隊がイスラエルに侵入することは、ぴたりと止みました。
24 ところが、のちに、シリヤのベン・ハダデ王は、全軍を召集してサマリヤを包囲しました。
25 そのため、サマリヤの町はひどい食糧難にみまわれたのです。包囲が長く続いたので、ろばの頭一つが一万五千円、鳩の糞○・五リットルが九百円で売られるほどになりました。
26 ある日、イスラエルの王が町の城壁の上を歩いていると、一人の女が、「陛下、お助けください!」と叫び求めました。「神様がおまえを助けてくださらないのに、わしに何ができよう。食べ物もぶどう酒もやれんぞ。それにしても、いったいどうしたのか。」「実は、この女が私に、『きょうはあなたの子供を食べ、あすは私の子供を食べましょう』と言ったのです。それで、二人して私の子供を煮て食べました。次の日、私が、『さあ、今度はあなたの子供の番よ』と言うと、この女は子供を隠してしまったのです。」なんということでしょう。王はあまりのひどい話に、服を引き裂きました。それを見ていた人々は、王が下に荒布をまとっているのを知りました。
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31 王は誓って言いました。「きょう、わしがエリシャの首をはねないなら、神様がわしの首をはねてくださるように。」
32 王がエリシャを呼び出す使者を立てた時、エリシャは家の中に座って、イスラエルの長老たちと話し合っていました。ところが、使者が到着する前に、エリシャは長老たちにこう話しました。「あの人殺しが、わしを殺そうと使者をよこした。来ても、戸をしっかり閉め、中に入れてはならん。本人がすぐあとからやって来るからだ。」
33 話し終わらないうちに、使者が到着しました。〔そのあとには王が続いていたのです。〕王は声を荒立てて言いました。「神様はこんなひどいことをなさった。もうこれ以上、神様の助けなど期待できん。」
1 エリシャは答えました。「いや、神様はこうお言いじゃ。あすの今ごろには、サマリヤの市場で、小麦粉十二リットルと大麦二十四リットルが、それぞれ三百円で売られるようになる、とな!」
2 これを聞いた王の侍従は、「たとい神様が天に窓をお作りになっても、そんなことが起こるはずはない!」と言いはりました。エリシャも、負けずにやり返しました。「あなたは自分の目でその有様を見る。しかし、買って食べることはできない!」
3 そのころ、町の門の外に四人のツァラアトの人が座って、こう話し合っていました。「死ぬまで、ここにじっと座っていることはないな。
4 ここにいても、飢え死にするだけだし、町に入っても同じことだ。それなら、いっそ出て行って、シリヤ軍に降伏しよう。助かりゃ、もうけものだし、殺されて、もともとだ。」
5 話がまとまり、夕方、そろってシリヤ軍の陣営に行きましたが、驚いたことに、そこにはだれもいません!
6 そのわけは、こうでした。神様がシリヤの全軍に、音を立てて近づいて来る戦車の響きと馬のいななき、それに攻め寄せる大軍の喊声を聞かせたのです。すると、彼らは口々に、「イスラエルの王がヘテ人やエジプト人を雇って、攻めて来たに違いないぞ!」と叫び、
7 あわてふためいて、その夜のうちに、テントも馬もろばも、何もかも置き去りにして、いのちからがら逃げ出したのです。
8 ツァラアトの人たちは陣営の端まで来ると、テントを次から次へと回って、食べたり、飲んだりしましたが、金や銀や衣服は持ち出して、隠しておきました。
9 そうこうしているうち、「こんなことしてちゃいかんぞ。このすばらしい知らせを、まだ、だれにも伝えていないじゃないか。あすの朝まで黙っていようものなら、きっと恐ろしい罰を受けるだろう。さあ、宮殿にいる人々に知らせよう」ということになりました。
10 そこで、四人は町へ戻り、見張りの者に、シリヤ軍の陣営に行ってみると、人っ子ひとりおらず、また、馬やろばはつながれたままで、テントもそっくりそのままだと報告しました。
11 見張りは、大声で、この知らせを宮殿の中の人々に伝えました。
12 王は起き上がると、家来たちに言いました。「これは罠に違いない。シリヤ軍は、われわれが飢えているのを知って、わざと陣営をからにし、野に隠れているのだ。われわれをおびき出す作戦だ。うっかり出て行ったら、たちまち生け捕りにされ、町も占領されてしまうだろう。」
13 家来の一人が答えました。「では、偵察隊を出して、様子を探らせてみてはいかがでしょう。残っている馬の中から、五頭だけ差し向けましょう。こうなれば、何が起ころうが、たいした損失でもありますまい。どうせここにいても、私たちと共に死ぬのですから。」
14 戦車用の馬四頭が引き出され、敵陣偵察に、二人の戦車隊員が送り出されました。
15 彼らは大急ぎで、逃げたシリヤ軍のあとを追い、ヨルダン川まで行きましたが、道々に、衣服や武器がいっぱい捨ててあるだけです。帰って、このことを王に報告しました。
16 そうとわかると、サマリヤの人々は、われ先にシリヤ軍の陣営に殺到し、略奪をほしいままにしました。それで、神様のお告げのとおり、その日のうちに、小麦粉十二リットルと大麦二十四リットルが、三百円で売られるようになったのです。
17 王は例の侍従を、門の出入りの監視にあたらせました。ところが彼は、なだれのように殺到する人々に押し倒され、踏みつけられて、ついに死んでしまいました。前日、王がエリシャを捕らえようと押しかけた時、エリシャが予告したとおりでした。
18 そのとき預言者は、「あすになったら、小麦粉と大麦が安く売られるようになる」と、王に断言したのです。
19 ところがその侍従は、「たとい神様が天に窓をお作りになっても、そんなことは起こり得ない」と言いはりました。そこで預言者は、「あなたは自分の目でそのようになるのを見るが、買って食べることはできない」と言ったのでした。
20 そのとおり、彼は小麦粉や大麦を買うことができませんでした。人々が門のところで彼を踏みつけ、殺してしまったからです。
1 エリシャは、前に子供を生き返らせてやったことのある婦人に言いました。「ご家族を連れて、どこかに疎開しなさい。神様がイスラエルに、七年ものききんを見舞わせるからです。」
2 婦人は家族を連れてペリシテ人の地に移り、七年間そこに住みました。
3 ききんが終わると、イスラエルに戻り、自分の家と畑を返してくれるよう、王に願い出ました。
4 彼女が王のところへ来た時、たまたま王は、エリシャのしもべゲハジと話している最中でした。王はゲハジに、「エリシャが行なったすばらしいことを、聞かせてくれ」と頼んだのです。
5 ゲハジは、エリシャが子供を生き返らせた時のことを話していました。ちょうどそこへ、その子供の母親が入って来たというわけです。ゲハジは思わず叫びました。「陛下!今、その女がここにおります。先生が生き返らせたのは、この子です!」
6 「しかと相違ないか」と尋ねられ、彼女が、「そのとおりでございます」と答えると、王は家来に命じました。「この女が所有していた物を、ぜんぶ返してやるがよい。留守の間の収穫に見合うだけの作物もだ。」
7 そののち、エリシャはシリヤの首都ダマスコへ行きました。時に、シリヤのベン・ハダデ王は病床に伏していましたが、だれかが、「あのイスラエルの預言者がまいりました」と告げたのです。
8 それを聞いた王は、ハザエルに言いつけました。「その預言者に贈り物を持って行き、わしの病気が治るかどうか、神様に伺いを立ててもらってくれ。」
9 ハザエルは、贈り物として、土地の最上の産物をらくだ四十頭に載せて行き、エリシャに尋ねました。「ベン・ハダデ王が、病気は治るかどうか、お伺いを立ててほしい、と申しております。」
10 「『治る』と伝えなさい。ただし、お告げでは、王はきっと死ぬと出ています。」
11 そう言うと、エリシャは、ハザエルがきまり悪くなるほど、じっと顔を見つめて、急に泣きだしました。
12 「先生、いったい、どうなさったのですか。」「あなたが、イスラエル人に恐ろしいことをしようとしているのが、わかるのだ。あなたは要塞を焼き払い、若い男を殺し、赤ん坊を岩に投げつけ、妊婦の胎を切り開くだろう。」
13 「私が情け知らずの犬畜生だとでも?そんな大それたことなど、できっこありませんよ。」「いや、神様は、あなたがシリヤの王になると仰せじゃ。」
14 ハザエルの帰りを待ちかねていた王は、せき込んで尋ねました。「エリシャは何と申した。」「陛下は治る、と申しました。」
15 ところが、翌日、ハザエルは水に浸した毛布を王の顔にかぶせて窒息死させ、自分が王に取って代わったのです。
16 ユダのヨシャパテ王の子ヨラムが王位についたのは、イスラエルのアハブ王の子ヨラム王の即位後五年目のことです。
17 ヨラムは三十二歳で王となり、八年間エルサレムで治めました。
18 王はアハブやほかのイスラエルの王のように、悪事を重ねました。アハブ王の娘と結婚していたからです。
19 それにもかかわらず、神様はしもべダビデに、子孫を守り導くと約束しておられたので、ユダを滅ぼすことはなさいませんでした。
20 ヨラム王の治世に、エドム人はユダに背き、自分たちの王を立てました。
21 ヨラム王は反乱を鎮めようとしましたが、うまくいきませんでした。ヨルダン川を渡って、ツァイルの町を攻撃したものの、あっという間にエドムの軍勢に囲まれてしまったのです。夜陰に乗じて、どうにか敵の包囲は破りましたが、味方の軍勢は、王を見捨てて逃げてしまいました。
22 それ以後、エドムは独立国になったのです。時を同じくして、リブナも反乱を企てました。
23 ヨラム王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
24 王は死んで、ダビデの町、エルサレム旧市街にある王室墓地に葬られました。ヨラム王の子アハズヤが新しい王となったのは、イスラエルのアハブ王の子ヨラム王の即位後十二年目のことです。
25 -
26 アハズヤは二十二歳で王になりましたが、エルサレムで王位についていたのは、わずか一年でした。母親のアタルヤは、イスラエルのオムリ王の孫娘でした。
27 アハズヤはアハブ家の婿だったので、アハブ王の子孫と同じように悪い王でした。
28 アハズヤ王は、イスラエルのヨラム王を助けてシリヤのハザエル王と戦うために、ラモテ・ギルアデに出陣しました。ところが、その戦いでヨラム王は負傷し、
29 イズレエルへ治療に帰りました。その病床を、ユダのアハズヤ王が見舞ったのです。
1 時に、エリシャは若い預言者を呼んで言いました。「ラモテ・ギルアデに行くしたくをするのじゃ。この油のびんも持ってな。
2 向こうに着いたら、ニムシの子ヨシャパテの子エフーを捜せ。捜しあてたら、呼び出して奥の部屋に案内し、
3 彼の頭に油を注ぐのじゃ。それから、『神様はあなたに油を注いでイスラエルの王とされる』と言って、すぐに逃げて来い。」
4 若い預言者は、言われたとおりラモテ・ギルアデへ行き、
5 ほかの将校たちと会議中のエフーを見つけました。「隊長、申し上げることがあります」と、彼は言いました。「だれにだ」と、エフーが返事しました。「あなたにです。」
6 エフーは席を立ち、家に入りました。若者はエフーの頭に油を注いで、言いました。「イスラエルの神様のお告げです。『わたしはおまえに油を注いで、神の国民イスラエルの王とする。
7 おまえはアハブ家の者を皆殺しにしなければならない。こうして、イゼベルに殺された預言者や、国民のために復讐するのだ。
8 アハブ家の者は、奴隷に至るまで、すべて殺される。
9 わたしは、ネバテの子ヤロブアムの家や、アヒアの子バシャの家を滅ぼしたように、アハブの家をも滅ぼす。
10 犬がイズレエルで、アハブの妻イゼベルを食うが、だれも彼女を葬らない。』」こう言い終わると、彼は一目散に逃げ帰りました。
11 エフーが仲間のところへ戻ると、一人が尋ねました。「あの気が変なやつは、何をしに来たんです。何か変わったことでも?」「皆さんは、あれがだれか、何を言ったか、よくわかっておいでだ。」
12 「とんでもない。わかりませんよ。教えてください。」そこでエフーは、あの男が言ったこと、また、神様が自分に油を注いで、イスラエルの王としてくださったことを話しました。
13 すると、彼らはすばやく上着を脱いで階段の上に敷き、ラッパを鳴らして、「エフーは王様だ!」と大声で叫びました。
14 こうして、ニムシの子ヨシャパテの子エフーは、ヨラム王に反旗を翻したのです。ヨラム王はイスラエルの全軍を率いて、ラモテ・ギルアデで、シリヤのハザエル王の軍勢を防いでいました。
15 しかし、傷を負ったので、イズレエルに帰り、治療していたのです。エフーは、いっしょにいる者たちに言いました。「私が王になることを願っているなら、このことはイズレエルに知らせに行くな。」
16 それから、エフーは戦車に飛び乗り、病床にいるヨラム王を捜しに、イズレエルへ急行しました。たまたまユダのアハズヤ王も、ヨラム王を見舞いに来ていました。
17 イズレエルのやぐらの上にいた見張りが、エフーの一隊が近づいて来るのを見て、「だれか来るぞ!」と叫びました。王は、「騎兵一人を出して、敵か味方か、調べさせよ」と命じました。
18 そこで一人が、エフーを迎えに行きました。「陛下が、あなたは敵か味方か、と言っておられます。和平のために来られたのですか。」「和平が何だ。つべこべ言わず、ついて来い!」見張りは王に、「使者は行ったまま戻りません」と報告しました。
19 王は第二の使者を出しました。彼は馬に乗ってエフーのところへ行き、彼らが友好を意図しているかどうか尋ねました。「友好が何だ。つべこべ言わず、ついて来い!」
20 見張りは大声を張り上げました。「第二の使者も帰って来ません。ところで、あれはエフーに違いありません。気が狂ったように馬を走らせています。」
21 王は、「急いで、戦車の用意をせよ」と命じました。ヨラム王とユダのアハズヤ王は、戦車に乗ってエフーを迎えに出ました。エフーに出会ったのは、ナボテの畑でした。
22 王は尋ねました。「エフー、友人として来たのか。」「あなたの母イゼベルの悪が、私たちを取り巻いている限り、どうして友情などありえましょう。」
23 王は戦車の馬を回れ右させて逃げ、大声でアハズヤ王に、「裏切りです!反逆です!」と叫びました。
24 エフーは力いっぱい弓を引き絞り、王の両肩の間にねらいをつけました。矢はみごと心臓を射抜き、王は戦車の中にどっと倒れ、そのまま息が絶えました。
25 エフーは侍従のビデカルに命じました。「王の死体をナボテの畑に投げ捨てろ。いつかおまえと馬に乗って、彼の父アハブ王のお供をしていた時、神様からこうお告げがあったからだ。
26 『わたしは、ナボテとその子らを殺した罪に、このナボテの地所で報復する。』だから、そのとおり、ナボテの畑に王の死体を投げ捨てるのだ。」
27 その間に、ユダのアハズヤ王はベテ・ハガンの道へ逃げました。エフーはアハズヤ王を追いかけ、「やつも討ち取れ」と命じました。エフーの軍勢は、イブレアムに近いグルの坂道で、戦車に乗ったアハズヤ王に矢を射かけ、重傷を負わせました。王はやっとの思いでメギドまで逃げのびはしたものの、そこでついに事切れたのです。
28 家来たちは遺体を戦車でエルサレムに運び、王室墓地に葬りました。
29 アハズヤがユダの王となったのは、イスラエルのヨラム王の即位後十二年目のことです。
30 イゼベルはエフーがイズレエルに来たと聞くと、目の縁を塗り、髪を結い直して、窓ぎわに座りました。
31 エフーが宮殿の門を入ると、彼女は大声で呼びかけました。「あら、人殺しエフーじゃない!ごきげんいかが。主君殺しのジムリの子!」
32 彼がイゼベルを見上げながら、「だれか私に味方する者はおらんか」と叫ぶと、二、三人の宦官が顔を出しました。
33 「そのあばずれを突き落とせ!」エフーの命令で、宦官たちはイゼベルを窓から突き落としました。回りの壁や馬は、その返り血をあびて真っ赤です。その上、死体は無残にも、馬のひづめにかけられました。
34 エフーは宮殿に入って食事をしてから、「あの、のろわれた女を葬ってやれ。何といっても、王の娘だからな」と言いました。
35 人々が遺体を葬ろうと出て行くと、すでに頭蓋骨と両手両足しか残っていませんでした。
36 戻った者たちの報告に、エフーはこう言いました。「まさに、お告げのとおりだ。神様は預言者エリヤにお語りになった。『犬がイゼベルの肉を食い、その死体は肥やしのようにまき散らされ、だれにも、見分けがつかなくなる。』」
37 -
1 それから、エフーはサマリヤの町の役人と、そこに住んでいるアハブ王の七十人の子供の養育係りに、手紙を書きました。
2 「この手紙を読んだら、いちばん優秀な子を王に立て、アハブ王家のために戦う準備をするがいい。戦車も馬も、城壁のある町も武器も十分ある。」
3 -
4 しかし彼らには、そんなことをする勇気などありませんでした。「二人の王でさえ、この人に立ち向かえなかった。私たちにできるはずがない」と、しりごみするばかりです。
5 そこで宮内長官と町の最高責任者は、役人や養育係りと相談して、エフーに使者を立て、次のように答えました。「エフー様、私どもはあなた様のしもべですから、ご命令どおり何でもいたします。アハブのお子ではなく、あなた様を私たちの王と仰ぎ、忠誠を尽くします。」
6 エフーはさっそく返書を送りました。「もし私の味方となり、私に忠誠を尽くすつもりなら、主君の子供らの首を、あすの今ごろ、イズレエルの私のもとへ持って来るように。」アハブ王の子供七十人は、サマリヤの町の重だった人たちの家に住み、幼いころから、この町で育てられていたのです。
7 手紙が届くと、子供たちはみな殺され、首は幾つかのかごに入れられて、イズレエルにいるエフーのもとへ送り届けられました。
8 使者がエフーに、王の子供の首が届けられたと伝えると、エフーは、首を二山に分けて門の入口に積み重ね、翌朝まで置いておけと命じました。
9 朝になると、エフーは出て行って、その回りに集まっていた人々に言いました。「皆さんには落度はありません。私が主君に陰謀を企て、主君を殺したのです。しかし、この子供たちを殺したのは、私ではなく、神様です。神様がお語りになることは、きっとそのとおりになります。アハブ王の子孫はこうなると、神様はそのしもべエリヤによって、はっきり告げておられたのです。」
10 -
11 エフーは、イズレエルに残っていたアハブ王の家族を、重立った家来、親友、おかかえの祭司と同じく、みな殺しました。とにかく王と親しい関係にあった者で生き残った者は、一人もありません。
12 このあと、エフーはサマリヤに向かいましたが、途中で、羊飼いの宿舎に一泊しました。
13 その時、ユダのアハズヤ王の身内の者に出会いました。「どなたですか」と尋ねると、「アハズヤの身内の者です。王のお子と、王母イゼベル様のお子に会いに、サマリヤへ行くところです」という返事です。
14 「連中を捕まえろ」と、エフーは家来に命じました。そして、水ためへ連れて行って、四十二人全員を殺してしまいました。
15 宿舎を出たエフーは、彼を迎えに来た、レカブの子ヨナダブに会いました。互いにあいさつを交わしたあと、エフーが言いました。「私があなたを裏切らないように、あなたも私を裏切りませんか。」「もちろんです。」「では、手を出して。」エフーは彼の手をとって戦車に引き上げ、こう言いました。
16 「さあ、いっしょに来て、私がどれほど神様のために熱心か、とくと見届けてください。」ヨナダブはエフーと並んで戦車に乗りました。
17 サマリヤに着くと、エフーはアハブの親族や友人を、一人残らず虐殺しました。神様がエリヤによって予告なさったとおりのことが、起こったのです。
18 それから、エフーはサマリヤの全住民を集めて、次のように指示しました。「アハブでも、私ほど熱心なバアル信奉者ではなかった。
19 バアルの預言者と祭司を全員呼び集めよ。バアルの礼拝者も残らずだ。全員が集まったかどうか、しっかり見届けろ。バアル信奉者こぞってバアルをほめたたえる、盛大な祭りを行なうことにする。バアル信奉者でここに来ない者は、生かしてはおかない。」ところが、これは彼らを皆殺しにしようとする計略だったのです。
20 エフーはイスラエル中に使者をやり、バアル信奉者を集めました。バアルの神殿は、すみずみまで人でいっぱいになりました。
21 -
22 エフーは衣装係りに、「この者たちに祭服を着せてやれ」と命じました。
23 エフーとレカブの子ヨナダブは、神殿に入ると、集まった人々にこう語りました。「ここにいるのはバアル信奉者だけかどうか、よく確かめろ。イスラエルの神様を礼拝する者は、一人も入れてはならんぞ!」
24 こうして、バアルの祭司が完全に焼き尽くすいけにえをささげている時、エフーは八十人の部下に神殿を取り巻かせ、こう言い渡しました。「この中にいる者を一人でも逃がしたら、いのちはないぞ!」
25 いけにえをささげ終わるのを待ちかねたように、エフーは外へ出て、「さあ、入って、一人残らず討ち取れ」と命じました。彼らは中にいた者を残らず切り殺し、死体を外に引きずり出しました。それから、神殿の奥に踏み込み、
26 礼拝用の柱を引き倒し、焼き捨てました。
27 また、神殿もこわし、公衆便所に造り変えました。それは、今もそのままになっています。
28 このようにエフーは、イスラエルからバアルの痕跡を、完全に取り除きました。
29 ただし、ベテルとダンにある金の子牛像だけは、取り除きませんでした。その子牛像こそ、全イスラエルを罪に陥れたもとでした。ネバテの子ヤロブアムが犯した、最大の罪の産物だったのです。
30 のちに、神様はエフーに約束なさいました。「おまえは、アハブ王家を滅ぼせという、わたしの命令によく従った。だから、曾孫の代まで、イスラエルの王としよう。」
31 ところがエフーは、真心から神様に従おうとはしませんでした。彼は、イスラエルに大きな罪を犯させる原因となった、ヤロブアムの金の子牛像を拝み続けていたのです。
32 そのころ、神様はイスラエルの領土を少しずつ削り取っておられました。ハザエル王が、ガドとルベンの部族のものである、ヨルダン川東岸に広がる、ギルアデの全地域、さらに、アルノン渓谷にあるアロエルからギルアデとバシャンに及ぶ、マナセ部族の諸地域をも手中に収めたのです。
33 -
34 エフーのその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
35 エフーは死んでサマリヤに葬られ、息子エホアハズが、新しく王となりました。
36 エフーがサマリヤでイスラエルの王位についていたのは、合計二十八年間でした。
1 ユダのアハズヤ王の母アタルヤは、息子が死ぬと、王の子供をぜんぶ殺してしまいました。
2 ただし、アハズヤの子で一歳のヨアシュだけは、叔母のエホシェバに助け出されて無事でした。エホシェバはアハズヤの父ヨラム王の娘でした。彼女は、殺される運命にある王子たちの中から、ヨアシュを連れ出し、乳母とともに神殿の物置に隠しました。二人はそこで、六年間すごしたのです。その間、アタルヤが女王として治めていました。
3 -
4 アタルヤ女王の即位後七年目に、祭司エホヤダは、宮殿の護衛隊長と女王の側近を神殿に呼び集め、秘密を守ると誓わせた上で王子を見せ、
5 次のように指示しました。「安息日には、三分の一の者を宮殿の護衛にあたらせ、
6 残る三分の二は、神殿の警備にあたらせよ。めいめい武器を持って、王の回りを囲むのだ。囲みを破ろうとする者がいたら、容赦なく殺せ。かた時も王のそばを離れるな。」
7 -
8 -
9 隊長たちは指示どおり、安息日の勤務をしない者と勤務につく者とを、エホヤダのところへ連れて来ました。
10 エホヤダは彼らを、神殿にあったダビデ王の槍や盾で武装させました。
11 すでに武器を手にしていた宮殿の衛兵たちは、神殿の正面に向かって立ち、ヨアシュの隠れ場所に近い、祭壇の回りを囲みました。
12 それから、エホヤダは幼い王子を連れ出し、頭に王冠をかぶらせ、十戒の写しを渡し、油を注いで王としたのです。一同は拍手かっさいして、「王様、ばんざーい!」と叫びました。
13 女王はこの騒ぎを聞くと、何事かと神殿へ急ぎました。見ると、即位の時の習わしに従って、新しい王が柱のそばに立ち、回りを女王の側近やラッパ手たちが、取り囲んでいるではありませんか。みんな大喜びで、ラッパを吹いているのです。それを見た女王は、「謀反だ!反逆だ!」と絶叫して、衣服を引き裂きました。
14 -
15 エホヤダは護衛隊長に命じました。「女を連れ出せ。神殿の中で殺してはいかん。この女につく者があれば、殺してかまわん。」
16 彼らは女王を引きずり出して宮殿の馬屋へ連れて行き、そこで殺しました。
17 エホヤダは、神様と、王、国民との間で、神様の国民となるという契約を結び、王と国民との間でも、契約を結びました。
18 人々はバアルの神殿を取りこわし、祭壇と像を砕き、祭壇の前でバアルの祭司マタンを血祭りにあげました。エホヤダは神殿に警備を置きました。
19 それから、隊長、衛兵、人々とともに、王を神殿から連れ出し、衛兵詰め所から宮殿に入り、王座につけたのです。
20 人々は喜びにあふれていました。こうして、アタルヤ女王の死後、ようやくエルサレムの町は平穏を取り戻しました。
21 ヨアシュが王となったのは七歳の時です。
1 ヨアシュがユダの王となったのは、エフーがイスラエルの王となってから七年後のことで、四十年間エルサレムで治めました。母親は、ベエル・シェバ出身のツィブヤでした。
2 ヨアシュ王は一生を通じて、正しいことを行ないました。大祭司エホヤダが正しく教え導いたからです。
3 それでも、丘の上にある礼拝所だけは取りこわさなかったので、国民はなお、そこでいけにえをささげたり、香をたいたりしていました。
4 ある日、ヨアシュ王はエホヤダに言いました。「神殿を修理しなければならない。割り当てられた献金であっても、自由な特別献金であっても、神様にささげられたものはみな、修理代にあてるように。」
5 -
6 ところが、王の即位後二十三年たっても、神殿の修理は手つかずでした。
7 そこで王は、エホヤダはじめ祭司たちを呼びつけました。「なぜ、神殿の修理にかからないのか。もうこれ以上、献金を祭司の生活費にあててはならん。これからは、神殿の修復のためにだけ使うように。」
8 祭司たちは、彼らの生活費とは別途の、神殿修理のための基金を積み立てることに同意しました。
9 祭司エホヤダは大きな箱のふたに穴をあけ、神殿入口の祭壇の右側に置きました。門番が、人々の献金を全部その中に納めるのです。
10 箱がいっぱいになると、王の財務官と大祭司がお金を勘定し、袋に詰めました。
11 それは工事監督者に渡され、大工、石工、石切り工、材木商、石材商への支払いや、神殿修理に必要な他の資材購入費にあてられました。
12 -
13 銀杯、金の芯切りばさみ、鉢、ラッパなどを買う費用ではなく、全額が建物の修理だけにあてられたのです。
14 -
15 工事監督者は正直な人たちで、忠実に職務を果たしたので、決算報告を求める必要はありませんでした。
16 ところで、罪が赦されるためのいけにえや、罪を償ういけにえのためにささげられたお金は、祭司たちが自由に使えました。それは箱には入れられませんでした。
17 そのころ、シリヤのハザエル王はガテを攻めて占領し、余勢をかって、エルサレムへと攻め上りました。
18 ヨアシュ王は、ユダの歴代の王ヨシャパテ、ヨラム、アハズヤなどが神様のために特に選んでささげた物すべて、さらに王自身のささげ物を、神殿と宮殿の宝物倉にある金とともに、ハザエル王に送ったので、王は攻撃を中止しました。
19 ヨアシュ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
20 ところで、王は謀反を起こした家来に、シラへ下る途中、ミロの王宮で暗殺されたのです。
21 暗殺者は王に信頼されていた側近で、シムアテの子ヨザバデと、ショメルの子エホザバデです。ヨアシュ王はエルサレムの王室墓地に葬られ、息子アマツヤが王位につきました。
1 エフーの子エホアハズが、十七年にわたるイスラエル統治を始めたのは、ユダのヨアシュ王の即位後二十三年目のことです。
2 エホアハズは悪い王で、イスラエルを罪に誘い込んだ、ヤロブアムの悪にならいました。
3 神様はそんなイスラエルを激しく怒り、シリヤのハザエル王とその子ベン・ハダデが、イスラエルを征服するがままにまかせておかれました。
4 ところが、エホアハズ王が助けを祈り求めると、神様はその願いを聞き入れてくださったのです。シリヤの王がイスラエルをひどく苦しめるのを、見ておられたからです。
5 神様はイスラエルに指導者を起こし、シリヤ軍の圧制から救い出してくださいました。それで人々は、以前のように平和に過ごせるようになりました。
6 ところが、それでもなお、人々は罪を犯し続け、ヤロブアムの悪から離れようとしませんでした。相も変わらず、サマリヤにあったアシェラの女神像を礼拝していたのです。
7 ついに神様は、エホアハズ王の軍隊を、騎兵五十、戦車十台、歩兵一万の貧弱な集団にしてしまわれました。その他の兵力は、シリヤの王によって、足下のちりのように踏みにじられてしまったのです。
8 エホアハズ王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
9 エホアハズ王は死んで、サマリヤに葬られ、息子ヨアシュが、十六年間サマリヤで王位につきました。彼が王となったのは、ユダのヨアシュ王の即位後三十七年目のことです。
10 -
11 ところが、彼は悪人で、ヤロブアムのように、国民を偶像礼拝に誘い込み、罪を犯させました。
12 ヨアシュ王のその他の業績は、ユダのアマツヤ王と戦ったことも含めて、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
13 ヨアシュ王は死んで、歴代のイスラエルの王とともにサマリヤに葬られ、ヤロブアム二世が新しく王となりました。
14 ところで、エリシャが再起不能の病気になった時、ヨアシュ王は病床を訪れ、泣き伏してしまいました。「わが父、わが父。あなたはイスラエルの力です!」
15 エリシャが、「弓と矢を取り、
16 東の窓を開けなさい」と言いました。さらに、弓に手をかけるように言い、自分の手を王の手に重ねました。「矢を射なさい。」王は言われるとおりにしました。すると、エリシャは言いました。「これは神様の矢、シリヤに勝つ矢だ。あなたはアフェクで、シリヤ軍をみごとに破るだろう。
17 -
18 さあ、別の矢を取り、それで床を打ちなさい。」王は矢を取って三度床を打ちました。
19 ところが、預言者は怒ったのです。「三度だけでなく、五度も六度も打つべきだった。そうすれば、シリヤを徹底的に滅ぼせたのに。これでは、三度しか勝つことはできない。」
20 こうしてエリシャは死に、葬られました。そのころ、毎年春になると、モアブの略奪隊がこの国に侵入して来ました。ある時、友人を葬ろうとしていた人々が略奪隊を見つけ、あわてて死体をエリシャの墓に投げ入れました。すると、どうでしょう。死体がエリシャの骨に触れたとたん、死人は生き返り、すっくと立ち上がったではありませんか!
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22 シリヤのハザエル王は、エホアハズ王が治めている間中、イスラエルを圧迫しました。
23 それでも、神様がイスラエル国民を思いやってくださったので、根絶やしになるようなことはありませんでした。それというのも、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を、神様がお忘れにならなかったからです。この契約は、今も変わっていません。
24 シリヤのハザエル王は死に、息子ベン・ハダデが王になりました。
25 エホアハズの子でイスラエルの王ヨアシュは、三度の勝利によって、父が失った町々をベン・ハダデ王から取り返しました。
1 イスラエルのヨアシュ王の即位後二年目に、アマツヤがユダの王となりました。
2 時にアマツヤは二十五歳で、二十九年間エルサレムで治めました。母親はエホアダンといい、エルサレム出身でした。
3 彼は先祖ダビデほどではありませんでしたが、神様の目にかなった良い王で、父ヨアシュのように振る舞いました。
4 それでも、丘の上の礼拝所だけは取り除かなかったので、国民は相変わらず、そこでいけにえをささげたり、香をたいたりしていました。
5 王国をしっかり掌握すると、王は父を暗殺した者たちを殺しました。
6 しかし、その子供たちまでは殺しませんでした。神様がモーセの法律で、こう命じておられたからです。「父親が子供のために殺されてはならないし、子供が父親の罪によって殺されてもならない。だれでも、自分の罪を償わなければならない。」
7 ある時、王は塩の谷で、一万ものエドム人を殺しました。また、セラを占領して、ヨクテエルと名を変えました。今でも、そう呼ばれています。
8 ある日、アマツヤ王は、エホアハズの子でエフーの孫にあたる、イスラエルのヨアシュ王に使者を送り、戦いをしかけました。
9 ところが、ヨアシュ王は相手にしませんでした。「レバノンのあざみがレバノンの大きな杉の木に、『娘さんを息子の嫁にくれないか』と言っていると、通りかかった野獣があざみを踏みつけてしまったそうだ。
10 どうも、エドムを撃破したことで、鼻を高くしておられるようですな。だが、悪いことは言わんから、得意になるのはそれくらいにして、家に引っ込んでいなさい。わざわざ事をかまえて、わが身とユダに災いをもたらすこともないでしょう。」
11 ところが、アマツヤ王はこれを無視したのです。そこで、イスラエルのヨアシュ王も軍隊を召集しました。いよいよユダの町ベテ・シェメシュで、戦いの火ぶたが切られると、
12 ユダ軍はさんざんな負けいくさです。ほうほうのていで逃げ帰るしかありません。
13 アマツヤ王は捕らえられ、イスラエル軍がエルサレムに進軍しました。そして、城壁をエフライムの門から隅の門まで、約二百メートルにわたってこわしました。
14 ヨアシュ王は、多くの人質をはじめ、神殿や宮殿の宝物倉にある金、銀、金の杯などをごっそりサマリヤへ持ち帰りました。
15 ヨアシュ王のその他の業績や、ユダのアマツヤ王と戦ったことは、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
16 ヨアシュ王は死んで、歴代のイスラエルの王とともにサマリヤに葬られ、息子ヤロブアムが王位につきました。
17 アマツヤ王はヨアシュ王の死後、なお十五年生き長らえました。
18 アマツヤ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
19 エルサレムで謀反が起こった時、王はラキシュへ逃げました。しかし、王のいのちをつけねらう者たちは、暗殺者を送り込んで王を殺しました。
20 遺体は馬でエルサレムに運ばれ、ダビデの町の王室墓地に葬られました。
21 アマツヤの子アザルヤ〔ウジヤ〕が、十六歳で新しい王となりました。
22 父の死後、アザルヤ王はエラテを再建し、再びユダの領地としました。
23 一方、イスラエルでは、ユダのアマツヤ王の即位後十五年目に、ヤロブアム二世が王となりました。ヤロブアムの治世は四十一年間でした。
24 彼は、イスラエルを偶像礼拝の罪に誘い込んだ、ネバテの子ヤロブアム一世と同じくらい悪い王でした。
25 ヤロブアム二世は、レボ・ハマテと死海の間の領土を取り戻しました。神様が、アミタイの子でガテ・ヘフェル出身の預言者ヨナをとおして、前もって語っておられたとおりでした。
26 そうなったのは、神様がイスラエルの苦境をご覧になり、しかも、イスラエルを助ける者が一人もいなかったからです。
27 神様はイスラエルを抹殺するとはおっしゃいませんでした。そんなわけで、ヤロブアム二世に力を貸して、イスラエルをお救いになったのです。
28 ヤロブアム二世の強大な勢力、戦功、ユダに占領されていたダマスコとハマテを取り戻したことなどは、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
29 ヤロブアム二世は死んで、イスラエルの歴代の王とともに葬られ、息子ゼカリヤが新しい王となりました。
1 ユダの新しい王アザルヤ、父はアマツヤ王、母はエルサレムの出身のエコルヤ、エルサレムでの在位期間は五十二年、十六歳で即位、当時のイスラエルの王はヤロブアム二世。アザルヤの即位は、その即位後二十七年目にあたる
2 -
3 アザルヤは良い王で、父アマツヤのように、神様に喜ばれることを行ないました。
4 ところが、先王にならって、丘の上の礼拝所は取り除きませんでした。それで国民は、そこでいけにえをささげたり、香をたいたりしたのです。
5 このため神様は、王をツァラアトになさいました。王は死ぬまでツァラアトに苦しみ、隔離された家に住まなければなりませんでした。その間、息子ヨタムが摂政を務めました。
6 アザルヤ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
7 王は死んで、先祖とともにダビデの町に葬られ、息子ヨタムが王となりました。
8 イスラエルの新しい王ゼカリヤ、父はヤロブアム、在位期間は六か月、当時のユダの王はアザルヤ。ゼカリヤの即位は、その即位後三十八年目にあたる
9 ゼカリヤは先祖のように、神様の目から見て悪い王でした。ネバテの子ヤロブアム一世のように、国民に偶像礼拝の罪をたきつけました。
10 そこでヤベシュの子シャルムが謀反を企て、イブレアムで王を暗殺し、代わって王となりました。
11 ゼカリヤ王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
12 こうして、神様がエフーに予告なさったとおり、エフーの子と孫と曾孫とが、イスラエルの王となったのです。
13 イスラエルの新しい王シャルム、父はヤベシュ在位期間は一か月、当時のユダの王はウジヤ。シャルムの即位は、その即位後三十九年目にあたる
14 シャルムが王となって一か月後、ガディの子メナヘムが、ティルツァからサマリヤに上って王を暗殺し、王位を奪いました。
15 シャルム王のその他の業績と、彼が企てた謀反のことは、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
16 メナヘム王は、タプアハの町と周辺の村々を滅ぼしました。そこの住民が、彼を王に迎えることを喜ばなかったからです。王は全住民を殺害し、妊婦は切り裂いてしまいました。
17 イスラエルの新しい王メナヘム、サマリヤでの在位期間は十年、当時のユダの王はアザルヤ。メナヘムの即位は、その即位後三十九年目にあたる
18 メナヘムは悪い王で、ヤロブアム一世のように偶像を礼拝し、国民を恐ろしい罪に誘い込みました。
19 折りしも、アッシリヤのプル王がこの地を侵略しました。ところが、メナヘム王が六億円のお金を与えたので、プル王は引き返しました。王は資金調達のため、資産家全員から六十万円ずつ、特別税を強制的に取り立てました。
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21 メナヘム王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
22 王は死んで、息子ペカフヤが新しく王となりました。
23 イスラエルの新しい王ペカフヤ、父はメナヘム、サマリヤでの在位期間は二年、ユダのアザルヤ王の即位後五十年目に即位
24 ところで、ペカフヤは悪い王で、イスラエルに悪の根を植えつけた、ネバテの子ヤロブアム一世が持ち込んだ偶像礼拝を続けました。
25 イスラエル軍の最高司令官であった、レマルヤの子ペカが、ギルアデ出身の五十人を誘って謀反を起こし、サマリヤの宮殿で王を暗殺しました。その時の反乱で、アルゴブとアルエも巻き添えを食いました。こうして、ペカが新しく王となりました。
26 ペカフヤ王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
27 イスラエルの新しい王ペカ、父はレマルヤ、サマリヤでの在位期間は二十年、ユダのアザルヤ王の即位後五十二年目に即位
28 ペカも悪い王で、イスラエル国民を偶像礼拝の罪に誘い込んだ、ネバテの子ヤロブアム一世にならいました。
29 ペカが王位にある時、アッシリヤのティグラテ・ピレセル〔プル〕王が攻めて来て、イヨン、アベル・ベテ・マアカ、ヤノアハ、ケデシュ、ハツォル、ギルアデ、ガリラヤ、ナフタリの全土を占領し、住民を捕虜として連れ去りました。
30 その時、エラの子ホセアが謀反を企てたのです。彼は王を暗殺して、自分が王座につきました。イスラエルの新しい王ホセア、ウジヤの子、ユダの王ヨタムの即位後二十年目に即位
31 ペカ王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。
32 ユダの新しい王ヨタム、父はウジヤ、二十五歳で即位、エルサレムでの在位期間は十六年、母はツァドクの娘エルシャ、当時のイスラエルの王はレマルヤの子ペカ。ヨタムの即位は、その即位後二年目にあたる
33 -
34 ヨタムはまずまずは良い王で、父ウジヤのように、神様の言いつけを守りました。しかし、丘の上の礼拝所は取り除かなかったので、人々はそこで、いけにえをささげたり、香をたいたりしていました。彼の在位中に、神殿の上の門が造られました。
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36 ヨタム王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
37 そのころ、神様はシリヤのレツィン王とイスラエルのペカ王に、ユダを攻めるよう仕向けました。
38 ヨタム王は死んで、ユダの歴代の王とともにエルサレムの旧市街、ダビデの町の王室墓地に葬られ、息子アハズが新しく王となりました。
1 ユダの新しい王アハズ、父はヨタム、二十歳で即位、エルサレムでの在位期間は十六年、悪政を敷く、当時のイスラエルの王はレマルヤの子ペカ。アハズの即位は、その即位後十七年目にあたる
2 アハズは、先祖ダビデのようには、神様の言いつけを守りませんでした。
3 それどころか、イスラエルの歴代の王のように偶像礼拝を行ない、完全に焼き尽くすいけにえとして、わが子を神々にささげることまでしました。イスラエル国民がこの地に入った時、神様が滅ぼしてしまわれた国々の、異教的風習をまねたのです。
4 このほかにも、丘の上の礼拝所や木陰の祭壇で、いけにえをささげたり、香をたいたりしました。
5 その時、シリヤのレツィン王とイスラエルのペカ王の連合軍が、ユダに宣戦を布告し、エルサレムを包囲しました。しかし、町を占領することはできませんでした。
6 それでも、レツィン王はエラテの町を取り戻し、ユダの人々を追い出して、シリヤ人を移住させました。今もそのままです。
7 アハズ王はアッシリヤのティグラテ・ピレセル王に使者を送り、援軍を要請しました。
8 このために、神殿や宮殿の宝物倉にあった金銀を、贈り物として差し出したのです。
9 そのかいあって、アッシリヤ王はシリヤの首都ダマスコを攻撃し、住民を捕虜として、キルへ連れ去りました。また、レツィン王は殺されてしまいました。
10 アハズ王はティグラテ・ピレセル王に会うため、ダマスコへ行き、そこで、異教の神殿にある見慣れない祭壇に目を留めたのです。さっそくその寸法を書き留め、図面を作り、くわしい説明書きとともに、祭司ウリヤに送りました。
11 ウリヤは指示どおりに祭壇を作り、王のために準備しました。王は、ダマスコから帰るとすぐに、いけにえをささげました。
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13 祭壇の上に、完全に焼き尽くすいけにえと穀物の供え物とをささげ、さらに注ぎのささげ物を注いでから、和解のいけにえの血を振りかけたのです。
14 それから、これまで神殿の入口にあった青銅の祭壇を、神殿の正面から新しい祭壇の北側に移し変えました。
15 王は祭司ウリヤに、新しい祭壇の上で、朝ごとの完全に焼き尽くすいけにえと夕べの穀物の供え物、王の完全に焼き尽くすいけにえと穀物の供え物、国民のささげ物、および、これらに添える注ぎのささげ物をささげるように言いつけました。完全に焼き尽くすいけにえや他のいけにえの血も、新しい祭壇に振りかけられました。古い祭壇は、もっぱら占い用に使うことになりました。「古い青銅の祭壇は、私が個人的に伺いを立てるために使おう」と、王が言ったからです。
16 祭司ウリヤは、王の命令どおりにしました。
17 それから王は、神殿にあった車輪つきの台を解体し、横木とその上に載せてあった洗盤を取りはずしました。また、青銅の牛の背に載せてあった大洗盤を下ろして、敷石の上に置きました。
18 さらに、アッシリヤ王に敬意を表して、宮殿と神殿との間にこしらえた、祝祭用の通路を取りはずしました。
19 アハズ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
20 王は死んで、エルサレムの旧市街、ダビデの町の王室墓地に葬られ、息子ヒゼキヤが新しく王となりました。
1 イスラエルの新しい王ホセア、父はエラ、サマリヤでの在位期間は九年、悪政を敷いたが、歴代の王ほどではなかった、当時のユダの王はアハズ。ホセアの即位は、その即位後十二年目にあたる
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3 さて、アッシリヤのシャルマヌエセル王はイスラエルを攻め、ついにホセア王を服従させました。イスラエルは、毎年アッシリヤに、ばく大な貢を納めることになったのです。
4 ホセア王は謀反を企て、エジプトのソ王に、アッシリヤの支配から脱することができるようにと援軍を頼みました。ところが、これが発覚してしまったのです。貢を納めることを拒んだホセア王を、アッシリヤ王は、反逆のかどで牢に入れ、鎖につなぎました。
5 こうして、イスラエルにアッシリヤ軍がなだれ込み、三年のあいだ首都サマリヤを包囲しました。
6 ホセア王の即位後九年目、ついにサマリヤは陥落し、イスラエル国民はアッシリヤへ連れ去られ、ハラフの町、ゴザンのハボル川のほとり、メディヤ人の町々に移されたのです。
7 こうした災難が臨んだのは、国民がほかの神々を礼拝して、エジプトの奴隷生活から救い出してくださった神様に、罪を犯したからです。
8 神様が追い払った外国人の悪い風習に、染まっていたのです。
9 そのほかにも、ひそかに多くの悪事を行ない、国中に、異教の神々の祭壇を作っていました。
10 彼らは、すべての丘の上やよく繁ったどの木の下にも、石の柱や神々の像を立て、
11 神様がこの地から一掃した外国人の神々に、香をたいていました。こうして、数々の悪事を重ねたので、ついに神様の激しい怒りを招いたのです。
12 あれほど、神様が口をすっぱくして警告しておられたのに、人々は平気で偶像礼拝の罪を犯していたのです。
13 神様は再三再四、イスラエルとユダに預言者を送り、悪の道から離れ、先祖に与えたおきてを守るよう、警告してこられました。
14 ところがイスラエル国民は、いっこうに耳を貸そうとしなかったのです。先祖と同じように強情で、神様を信じようとしませんでした。
15 神様の教えに耳をふさぎ、神様が先祖と結んだ契約を軽んじ、たび重なる警告を無視しました。それは彼らの愚かさのゆえで、神様のきびしい戒めがあったにもかかわらず、偶像礼拝の罪に陥ったのです。
16 神様の命令なんかどこ吹く風とばかり、金で鋳込んだ二つの子牛像を作りました。さらに、恥ずべき忌まわしい像を作り、バアルを礼拝し、太陽や月や星を拝みました。
17 また、息子や娘さえ焼き殺して、モレクの祭壇にささげるやら、占いやまじないに走るやらで、悪の限りを尽くしたのです。こんなことをして、神様の激しい怒りを買わないわけがありません。
18 とうとう神様は、ユダ部族だけを残して、イスラエル国民を一掃してしまわれたのです。
19 ところで、神様の命令を守ろうとしないのは、ユダも同じでした。イスラエルがたどった悪の道を、ユダも進みました。
20 そこで神様は、ヤコブのすべての子孫を見限り、侵略者の手に渡し、ついに打ちのめしてしまわれました。
21 イスラエルはダビデ王朝から分離すると、ネバテの子ヤロブアム一世を王に迎えました。このヤロブアム王がイスラエルを神様から引き離し、いっそう大きな罪に誘い込んだのです。
22 イスラエル国民は、王の持ち込んだ悪から離れようとしませんでした。
23 それで、ついに神様は、彼らを一掃してしまわれたのです。預言者によって警告されたとおり、イスラエル国民はアッシリヤに連れ去られ、今なおそこにとどまっています。
24 アッシリヤ王は、バビロン、クテ、アワ、ハマテ、セファルワイムの住民を連れて来て、サマリヤの町々に住まわせました。こうして、サマリヤをはじめイスラエルの町々は、アッシリヤ人のものとなったのです。
25 アッシリヤからの移住者は、初め、神様を礼拝しませんでした。それで、神様はライオンを送り込み、幾人かを噛み殺させたのです。
26 移住者はアッシリヤ王に使者を立て、こう報告しました。「私たちイスラエルに植民した者は、この地の神の教えを知りません。その神がライオンを送り込んで、私たちを滅ぼそうとしました。その神を礼拝しなかったからです。」
27 王は、サマリヤから捕らえ移した祭司をイスラエルに帰らせ、新しい住民に、神様のおきてを教えることにしました。そんなわけで、祭司の一人がベテルに帰り、バビロンからの移住者に、神様を礼拝する方法を教えました。
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29 それでも、移住者たちは、同時にめいめいの神をも拝んだのです。神の像は自分たちが住む町の近くにある、丘の上の礼拝所に安置しました。
30 バビロンから来た人々はスコテ・ベノテ神、クテから来た人々はネレガル神、ハマテから来た人々はアシマ神というぐあいにです。
31 アワ人はニブハズ神とタルタク神の像を拝み、セファルワイムから来た人々は、アデラメレク神とアナメレク神の祭壇に、わが子を火で焼いてささげました。
32 彼らは、一方ではイスラエルの神様を礼拝し、他方では同僚の中から祭司を任命して、丘の上の祭壇でいけにえをささげさせました。
33 このように、いぜんとして、出身国の宗教慣習を守り続けていたのです。
34 この傾向は今も残っています。彼らは、心から神様を礼拝するのでもなく、のちにイスラエルと改名したヤコブの子孫に与えられた、神様の教えを守るのでもなく、ただ、昔からの故国の風習に従っていただけです。
35 神様がヤコブの子孫と結ばれた契約によると、彼らは異教の神々を礼拝したり、これにいけにえをささげたりすべきではなかったのです。彼らは、驚くべき力と奇蹟によって、エジプトから連れ出してくださった神様だけを、礼拝すべきでした。
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37 ヤコブの子孫は、神様のおきてをぜんぶ守り、どんなことがあっても、ほかの神々を礼拝してはならなかったのです。
38 それというのも、神様がこう命じたからです。「わたしがおまえたちと結んだ契約を忘れて、ほかの神々を礼拝してはならない。
39 わたしだけを礼拝すべきだ。わたしはおまえたちを、すべての敵から救い出す。」
40 ところがイスラエルは、このおことばに耳をふさぎ、ほかの神々を礼拝しました。
41 一方、バビロンからの移住者は、なるほど神様を礼拝したものの、同時に偶像も拝んでいました。今でも、彼らの子孫は同じことをしています。
1 ユダの新しい王ヒゼキヤ、父はアハズ、エルサレムでの在位期間は二十九年、二十五歳で即位、母はゼカリヤの娘アビ、先祖ダビデと同じように善政を敷く、当時のイスラエルの王はエラの子ホセア。ヒゼキヤの即位は、その即位後三年目にあたる
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4 ヒゼキヤ王は丘の上の礼拝所を取り除き、石の柱をこわし、アシェラの忌まわしい像を倒しました。また、人々が香をたいて祈るようになった、モーセの作った青銅の蛇を粉々にしました。それは、元をただせば、王が指摘したとおり、ただの青銅にすぎなかったのです。
5 王はイスラエルの神様に、心から信頼していたのです。あとにも先にも、ヒゼキヤのように神様に従った王はいませんでした。
6 すべての点で神様に従い、神様がモーセにお与えになった命令を、注意深く守っていたからです。
7 神様は王とともにおられ、王のすることを、みな祝福してくださいました。王はアッシリヤの王に反逆し、貢を納めることをやめました。
8 また、ガザとその周辺までもペリシテ人の領土を占領し、大小の町々を滅ぼしました。
9 アッシリヤのシャルマヌエセル王が、イスラエルのサマリヤの町を包囲したのは、イスラエルのホセア王の即位後七年目にあたる、ヒゼキヤ王の即位後四年目のことでした。
10 三年後、サマリヤは陥落しました。
11 その時、アッシリヤの王はイスラエル人を捕虜としてアッシリヤに移し、ハラフの町、ゴザンのハボル川のほとり、メディヤの町々に住まわせました。
12 そうなったのは、彼らが神様に聞き従わず、神様の命令を守らなかったからです。それどころか、神様の契約を踏みにじり、神様のしもべモーセによって与えられたすべてのおきてに背いたのです。
13 そののち、ヒゼキヤ王の即位後十四年目に、アッシリヤのセナケリブ王が、ユダの要塞化された町を残らず占領しました。
14 ヒゼキヤ王は、ラキシュにいるアッシリヤ王のもとに使者を送って、和平を求めました。「私がまちがっておりました。わが国から引き揚げてくださいますなら、お望みどおりの賠償金を支払います。」アッシリヤ王の要求は四億五千万円でした。
15 ヒゼキヤ王は、神殿と宮殿の宝物倉にある銀を全部、この賠償金にあてました。
16 足りない分は、王自身が献納し、神殿のとびらと柱の金箔をはぎ取って補いました。
17 ところがアッシリヤ王は、前線の将軍、主計長、参謀長に大軍をつけて、エルサレムに送ったのです。彼らは、布ざらしの野に面した大路に沿って、上の池の水道のそばに宿営しました。
18 三人は、ヒゼキヤ王とじきじきに話し合うことを望みましたが、王は自分の代わりに、官房長官エルヤキム、書記官シェブナ、史官ヨアフを休戦交渉の代表として送りました。
19 アッシリヤの将軍は、次のようなことづけを王に伝えました。「アッシリヤの大王の仰せだ。『余の手からおまえを助け出せる者はいない。
20 外国の口先だけの援助をあてにして、余に反逆するとは、もってのほかだ。同盟国の中で、どの国が実際にその約束を果たしてくれよう。エジプトだって。もしエジプトを頼りにしているなら、それこそ大へんだ。エジプトは葦の杖にすぎない。おまえの重みでぽっきり折れ、かえって手を突き刺すだろう。エジプト王など、少しも当てにならんやつだ。
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22 それとも、「きっと神様が助けてくださる」と思っているのではあるまいな。だったら次のことを忘れるな。その神とは、おまえが取り除いた丘の上の祭壇の神々と同じだ。そんな神を、エルサレムの祭壇で拝めと命じているとは、あきれ果てたものだ。』
23 そこで、どうしたらよいか教えてやろう。わが主君アッシリヤ王と賭けをするがよい。そちらが馬に乗れる者二千人を用意するなら、こちらで二千頭の馬を出そう。
24 おまえたちの小さな軍隊では、わが主君の軍隊の最小部隊を指揮する最下位の将校さえ、脅かすことはできまい。たとい、エジプトが馬や戦車を出してくれたとしても、それが何の助けになるのか。
25 考え違いをしてもらっては困る。われわれは野心をいだいて来たのではないぞ。全くとんでもないことだ。神様が、『攻め上って滅ぼせ』とばかり、われわれを送り出されたのだ。」
26 エルヤキムとシェブナとヨアフは、たまりかねて口をはさみました。「私たちにはアラム語がわかりますから、どうか、アラム語で話してください。ヘブル語は使わないでください。城壁の上にいる国民にわかると困るからです。」
27 しかし、アッシリヤの将軍は平然と答えました。「わが主君がわざわざ私をよこしたのは、おまえたちやおまえたちの主君とだけ話すためではない。城壁の上にいる国民にも話しかけるためなのだ。彼らもいっしょに、自分の糞を食べ、自分の尿を飲むようになるからだ。」
28 こう言い捨てると、使者は、城壁の上にいる者たちに大声で呼びかけました。「アッシリヤの大王の仰せを聞け!
29 『ヒゼキヤ王にだまされるな。彼はおまえたちを、余の手から救い出せん。
30 神様が救い出してくれる、とか何とか言っておるそうだが、決してだまされてはならんぞ。
31 ヒゼキヤ王の言うことなど聞かずに、降伏せよ!そうすれば、自分の国で平和に暮らせるのだ。そのうち、この国と同じように、穀物とぶどう酒がたくさんでき、オリーブの木と蜜に恵まれた、新しい地に連れて行ってやる。それが助かる唯一の道だ。いくらヒゼキヤ王が、神様が救い出してくれると言っても、そんなたわごとに耳を貸すな。
32 -
33 アッシリヤ王の手から国を救った神々がいたか。
34 ハマテ、アルパデ、セファルワイム、ヘナ、イワの神々は、サマリヤを助けたか。
35 どこの神が、余の手から国を救えたか。いったい何を根拠に、神様はエルサレムを救える、などと考えているのか。』」
36 城壁の上の者たちは王の命令どおり、黙って、何も答えませんでした。
37 その時、ヒルキヤの子で官房長官のエルヤキム、書記官シェブナ、アサフの子で史官のヨアフは、衣を裂いてヒゼキヤ王のもとへ行き、アッシリヤの将軍が言ったことを報告しました。
1 それを聞いたヒゼキヤ王は、衣を裂き、荒布をまとって、祈るため神殿へ入りました。
2 それから、エルヤキム、シェブナ、および年長の祭司たちにも荒布をまとわせ、アモツの子の預言者イザヤのもとへやり、こう言わせました。
3 「王はこう仰せです。『きょうは、苦難と屈辱と不面目の日だ。子供が生まれようとしているのに、母親には産み落とす力がない。
4 おそらく、あなたの信じている神様は、生ける神をそしってはばからない、アッシリヤの将軍のことばを聞いて、彼を罰してくださるだろう。われわれ少数の生存者のために祈ってほしい。』」
5 「神様のお告げです。『おまえたちの主君に、あのアッシリヤ人が神様をばかにしたことで気に病むな、と伝えよ。』
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7 アッシリヤの王は、本国から悪い知らせを受け、引き揚げざるを得なくなります。そして、本国へ戻ったら殺されます。それもみな、神様のお取り計らいなのです。」
8 まもなく、アッシリヤの将軍は、リブナにいるアッシリヤ王のもとへ帰りました。王がラキシュを離れたという知らせを受けたからです。
9 その後、エチオピヤのティルハカ王が攻めて来るという知らせが、アッシリヤ王のもとに届きました。この攻撃を受ける前に、彼はヒゼキヤ王に再び使者を立てました。
10 「おまえが信頼している神に、たぶらかされるな。神が、『エルサレムを敵の手に渡さない』と言っても、信じてはならん。
11 今まで、アッシリヤの諸王が行く先々でどんなことをしたか、よく知っているはずだ。彼らは、諸国を手あたりしだい、片っぱしから打ち破って回ったぞ。なぜ、おまえだけが、そうならないと言えるのか。
12 ほかの国々の神は、国を救ったか。ゴザン、カラン、レツェフ、およびテラサルにいるエデンの人々の場合を見よ。彼らは皆殺しにされたではないか。
13 ハマテの王とアルパデの王は、どんな目に会ったか。セファルワイム、ヘナ、イワの王たちは、どうなったか。」
14 王はこの手紙を受け取って目を通すと、神殿に上り、それを神様の前に広げ、こう祈りました。「ケルビム(契約の箱を守る天使の像)の上に座しておられるイスラエルの神様。あなた様だけが、全世界を支配する神様でいらっしゃいます。あなた様は天と地とを創造なさいました。
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16 神様、どうか御顔をこちらに向け、とくとご覧ください。耳を傾けて、生ける神に反抗するこの男のことばを、しかとお聞きください。
17 神様。なるほど、アッシリヤ王は、あらゆる国々を滅ぼし、
18 その国々の偶像を焼き払いました。それらの偶像は、もともと神ではなく、人間が木や石で作ったものにすぎなかったから、当然です。
19 私たちの神様、お願いですから、私たちを彼の手から救い出してください。そうすれば、全世界は、あなた様だけが神であることを知るでしょう。」
20 その時、イザヤは人づてに、神様のお告げを王に伝えました。「イスラエルの神様はお語りになります。『おまえの祈りを聞いた。
21 わたしはセナケリブ王にこう答える。処女であるシオンの娘はおまえなど少しも恐れない。エルサレムの娘はおまえをさげすみ、あざ笑う。
22 おまえはだれに反抗し、だれをののしったのか。だれに向かって、そんなにいばりくさるのか。相手はイスラエルの聖なる神ではないか。
23 おまえは鼻高々と言った。「余の戦車は高い山に登り、レバノンの最高峰まで占領した。高くそびえるレバノン杉と良質の糸杉を切り倒し、辺境の地に至るまで手中におさめた。
24 占領した多くの井戸の水を飲んで元気を取り戻し、近寄っただけでエジプトを震え上がらせた」と。
25 神であるわたしにあやつられていたのを、知らなかったのか。わたしがおまえに、すべての城壁のある町々を占領するよう命じたのだ。
26 だからこそ、あの征服された国々は、おまえに逆らう力を失ったのだ。まるで、灼熱の太陽のもとでしなびた草、途中で枯れた穂のようにな。
27 わたしはおまえが何を計画し、次にどこへ行こうとしているか、何もかも知っている。また、わたしについて言っている悪口も、みな筒抜けだ。
28 おまえがあまりに思い上がっているので、その鼻に鉤を引っかけ、口にはくつわをはめ、もと来た道に引き戻してやる。
29 はっきり言っておく。今年、わたしの国民は自然に生えた麦を食べ、それを翌年の種もみにする。そして三年目には、豊作にわくだろう。
30 わが国民ユダよ。敵の包囲を免れた者たちは、再び大きな国民となる。地中深く根を張り、神のために実を結ぶようになる。
31 わが国民の残りの者は、エルサレムで強くなる。わたしが目の色を変えてそうするからだ。
32 アッシリヤ王はこの町に入らせない。王は盾を持って町に近づくことはできない。とりでを築いて町を攻めることも、矢を射かけることもできない。
33 王は来た道を引き返す。
34 わたしが、自分の名誉にかけ、また、わたしのしもべダビデのために、この町を守り、救うからだ。』」
35 その夜、神様の使いが、アッシリヤの軍勢十八万五千を殺しました。翌朝になってみると、死体があたり一面に転がっていたのです。
36 セナケリブ王はニネベに帰って行きましたが、
37 ニスロク神の神殿で礼拝していた時、王子アデラメレクとサルエツェルに殺されてしまいました。二人は東トルコのアララテに逃げ、王子エサル・ハドンが新しく王となりました。
1 そのころ、ヒゼキヤ王が重病をわずらい、あすをも知れぬ身となりました。預言者イザヤは彼を訪ねて来て言いました。「身の回りを整理しておかれますように。病気は治らない、とお告げがありました。」
2 王は顔を壁に向け、神様に嘆願しました。
3 「ああ神様、どうか、私がいつも神様にお従いし、何につけても神様をお喜ばせしようとしてきたことを、思い出してください。」こう言うと、泣き伏してしまいました。
4 イザヤが中庭を出ないうちに、再び神様のお告げがありました。
5 「わが国民の指導者ヒゼキヤのもとへ引き返して、こう告げるがよい。先祖ダビデの神は、王の祈りを聞き、涙を見た。王を元どおりにする。三日後には床から起き上がり、神殿の前に立つ。
6 寿命を十五年のばしてやる。また、アッシリヤ王の手から、王とこの町とを救い出す。そうするのは、わたし自身の栄光のため、また、わたしのしもべダビデのためである。」
7 イザヤは干しいちじくをゆでて軟膏をつくり、それを王のはれものにつけるよう指示しました。すると、王はすっかり治ったのです。
8 ところで、王はイザヤにこう言いました。「元気になり、三日後にまた神殿へ行けるという証拠を見せてほしい。」
9 「よろしい。神様は奇蹟を見せてくださいます。日時計の上の影を十度進ませるか、それとも十度引き戻すか、どちらを選びますか。」
10 「影は進むと決まっているから、引き戻すほうにしてもらいたい。」
11 イザヤはそのように祈りました。すると、神様はアハズの日時計の影を、十度引き戻してくださったのです。
12 そのころ、バビロン王バルアダンの子メロダク・バルアダンは、ヒゼキヤ王が病気だというので、見舞いの使者に託して、手紙と贈り物を届けました。
13 王は使者を喜んで迎え、宝物として大事にしまってある金、銀、香料、香油、武器などをみな見せました。
14 そこでイザヤは、王に会って尋ねました。「あの人たちは何を欲しいと言ったのですか。どこから来ました?」「はるばるバビロンからだ。」
15 「宮殿で何を見たのですか。」「何もかもだ。宝物倉にある物はぜんぶ見せた。」
16 「神様のお告げを聞きなさい。
17 この宮殿にある物が、一つ残らずバビロンに運ばれる時がくる。先祖の宝物はぜんぶ持ち去られ、何も残らない。
18 息子のうちからは、捕虜になって、バビロン王の宮殿で宦官として仕える者が出る。」
19 「よくわかりました。神様のお望みなら、それもけっこうです。」実を言うと、王は、自分が生きている間は平和と安全が保証されると考え、ほっとしていたのです。
20 ヒゼキヤ王のその他の業績、すなわち貯水池と水道を造り、町に水を引いたことなどは、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
21 王は死んで、息子マナセが新しく王となりました。
1 ユダの新しい王マナセ、十二歳で即位、エルサレムでの在位期間は五十五年、母はヘフツィ・バハ、以前この地に住んでいた異教の国民の風習にならい、悪政を敷く
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3 彼は、父ヒゼキヤが取りこわした丘の上の礼拝所を再建し、イスラエルのアハブ王にまねて、バアルのために祭壇を築き、いまわしいアシェラ像を作りました。また太陽神をはじめ、月や星の神のための祭壇を、なんと神様の神殿に置いたのです。
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6 さらに、わが子を偶像の祭壇にいけにえとしてささげ、まじないや占いに凝り、霊媒や口寄せに走りました。このように、マナセ王のすることがあまりにもひどかったので、神様は激しくお怒りになりました。
7 よりによって、いまわしいアシェラ像を神殿に安置したのです。神殿は、神様がダビデとソロモンに、次のように説明なさった場所にほかなりません。「わたしは、この神殿と、わたしがイスラエル全部族の町から特に選んだエルサレムに、わたしの名をいつまでも置く。
8 もしイスラエル国民が、わたしがモーセをとおして与えておいた命令に従うなら、もう二度と、彼らを父祖の地から追い出さない。」
9 ところが、人々は神様の言いつけに背いたのです。それに輪をかけるように、マナセ王は国民をそそのかして、すでにイスラエル人の前で神様によって滅ぼされた周囲の国民以上に、悪いことを行なわせたのです。
10 それで神様は、預言者に次のように言わせました。
11 「マナセ王はこのように悪事を重ね、その非道ぶりは以前この地にいたエモリ人以上だ。王はユダの国民を、偶像礼拝に誘い込んだ。
12 だから、わたしはエルサレムとユダに大きな災いを下す。それを聞く者は、恐怖のあまり、激しい耳鳴りに襲われるだろう。
13 わたしはエルサレムをサマリヤと同じ目に会わせる。洗った皿をかわかすために引っくり返すように、エルサレムを引っくり返す。
14 生き残りのわずかばかりの国民をも見限り、敵の手に渡す。
15 それというのも、わたしが彼らの先祖をエジプトから連れ出した日から今日まで、彼らが悪に悪を重ね、わたしの怒りを招いたからだ。」
16 マナセ王は、国民を神様が忌みきらう偶像礼拝に誘い込んだばかりでなく、罪のない人々を大ぜい殺しました。エルサレムは、その犠牲者の死体で埋め尽くされるほどでした。
17 罪にまみれたマナセ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
18 マナセ王は死んで、ウザにある宮殿の庭に葬られ、息子アモンが新しく王となりました。
19 ユダの新しい王アモン、二十二歳で即位、エルサレムでの在位期間は二年、母はヨテバ出身のハルツの娘メシュレメテ、悪政を敷く
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21 アモン王は父の悪事をそっくりまね、父の拝んだ偶像を拝み、
22 先祖代々つかえてきた神様を捨てました。神様の命令に耳をふさいだのです。
23 そこで、家来が謀反を起こし、宮殿の中で王を殺しました。
24 ところが、今度は武装した民衆が暗殺者を皆殺しにし、アモンの子ヨシヤを王にしたのです。
25 アモン王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
26 王はウザの宮殿の庭にある墓地に葬られ、息子ヨシヤが新しく王となりました。
1 ユダの新しい王ヨシヤ、八歳で即位、エルサレムでの在位期間は三十一年、母はボツカテ出身のアダヤの娘エディダ、善政を敷く。先祖ダビデにならい、完全に神様に従った
2 -
3 即位後十八年目に、王はメシュラムの子アツァルヤの子、書記官シャファンを使いに出し、神殿にいる大祭司ヒルキヤに指示しました。「礼拝に来る者が、神殿の入口にいる祭司に手渡す献金を集めよ。
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5 その金を工事監督者に渡し、それで神殿を修理する大工や石工を雇い、木材や石材を買わせよ。」
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7 工事監督者たちは正直な人ばかりだったので、支出明細書を出せとは命じられませんでした。
8 ある日、大祭司ヒルキヤは書記官シャファンのところへ来て、「神殿で、神のおきての書いてある巻物を発見しました」と報告しました。ヒルキヤは、その巻物をシャファンに見せました。
9 シャファンは神殿の修理状況を王に報告した時、ヒルキヤが発見した巻物のことにもふれ、王の前でそれを読み上げました。
10 -
11 王はその内容を聞くと、恐れに取りつかれて衣を裂きました。
12 それから祭司ヒルキヤ、シャファン、王の補佐官アサヤ、シャファンの子アヒカム、ミカヤの子アクボルに命じて、神様に尋ねさせたのです。「どうしたらよろしいのですか。私どもはこの書のおきてを守りませんでした。私どもも先祖も、ご命令に従わなかったので、神様は激しく怒っておられるに違いありません。」
13 -
14 そこで祭司ヒルキヤ、アヒカム、アクボル、シャファン、アサヤは、エルサレムのミシュネ地区へ行って、女預言者フルダに会いました。彼女は、ハルハスの子ティクワの子で、宮殿の衣装係りをしているシャルムの妻でした。
15 彼女は彼らに、神様のお告げを伝えました。「おまえたちを使いに出した人に告げなさい。わたしは、おまえたちが読んだ書物にあるとおり、この町と国民を滅ぼすつもりだ。
16 -
17 ユダ国民はわたしを捨てて、ほかの神々を拝み、わたしを激しく怒らせた。もう、その怒りはとどめようがない。
18 だが、この地がのろわれて荒れ地となる、という警告を読んだ時、おまえは深く心を痛め、謙そんになり、衣を裂いて、わたしの前で涙を流した。それで、おまえの切実な願いを聞き入れよう。
19 -
20 おまえが死ぬまで、この国民に災いは臨まない。わたしがこの場所に下す災いを、おまえは見ないですむ。」彼らは、このお告げを王に伝えました。
1 その時、王は使者を、ユダとエルサレムの長老や指導者のところへ送り、いっしょに神殿へ上るよう命じました。そこで、ユダとエルサレムに住む祭司と預言者全員、それに身分の高い者も低い者もみな、神殿に集まりました。王は、神殿で発見された神のおきての書を、一同に読み聞かせたのです。
2 -
3 王は一同の正面の柱のわきに立っていました。朗読が終わると、王と一同は、いつも神様に従い、おきての書に命じられているすべての戒めを守ることを、神様の前で厳粛に誓いました。
4 そのあと、王は大祭司ヒルキヤをはじめ祭司たち、および神殿の警備員に命じて、バアルやアシェラ、太陽や月や星を礼拝するための設備を、ぜんぶ取りこわさせました。また、それらをエルサレム郊外のキデロンの野で焼き、灰はベテルへ運ばせました。
5 次に、先のユダの王たちが任命した異教の祭司たちを処刑しました。彼らは、ユダの全地およびエルサレム周辺の丘の上にある礼拝所で香をたき、バアルや太陽、月、星、惑星にも香をたいていたのです。
6 さらに王は、いまわしいアシェラ像を神殿から取り除き、エルサレム郊外のキデロン川に運んで焼き、粉々に砕いて灰とし、その灰を共同墓地にまき散らしました。
7 また、神殿の回りにあった男娼の家を取りこわしました。それらの家で、女たちがアシェラ像のために衣を織っていたのです。
8 王は、ユダの町々に住む、神様に仕える祭司たちを、エルサレムに連れ戻しました。そして、北はゲバから南はベエル・シェバに至るまでの丘の上の礼拝所を、全部たたきこわしました。次に、エルサレム市長ヨシュアの邸宅の入口にあった礼拝所も、取りこわしました。その邸宅は、町の門をはいって左側にあったのです。
9 ところで、この祭司たちは、ほかの祭司たちと共に食事はしたものの、エルサレムにある神様の祭壇で供え物をささげる役には、つきませんでした。
10 それから王は、だれも二度と、自分の息子や娘をモレクのいけにえとしてささげることがないように、ベン・ヒノムの谷にあるトフェテの祭壇を取りこわしました。
11 また、神殿の入口に近い、宦官ネタン・メレクの部屋の隣にある馬と戦車の像をこわしました。それは、先のユダの王たちが太陽神に献納したものだからです。
12 さらに、ユダの王たちが宮殿のアハズの部屋の屋上に作った祭壇と、マナセが神殿の二つの庭に作った祭壇も粉々にし、キデロンの谷にまき散らしました。
13 それから、エルサレムの東、破壊の山の南にある丘の上の礼拝所を取り除きました。ソロモン王が、シドン人の悪の女神アシュタロテ、モアブの悪神ケモシュ、アモン人の悪神ミルコムのために建てたものです。
14 ヨシヤ王は石の柱を粉々に砕き、いまわしいアシェラ像を切り倒し、それらのあった場所に人骨をまき散らして、汚れた所にしました。
15 さらに、イスラエルを罪に誘い込んだヤロブアム一世の築いた、ベテルにある祭壇や礼拝所をたたきこわし、石は粉々に砕き、いまわしいアシェラ像を焼き払いました。
16 王は、山麓に墓があるのを見つけました。さっそく家来に命じて、その墓から骨を取り出し、それをベテルの祭壇の上で焼かせて、祭壇を汚れたものとしました。こうして、神の預言者がヤロブアムの祭壇はこうなる、と言っていたとおりになったのです。
17 王は、「あそこに見える記念碑は何か」と尋ねました。町の人々は答えました。「ユダから出て来て、陛下が今ベテルの祭壇に対してなさったことを預言した、預言者の墓でございます。」
18 「そうか。では、そのままにしておけ。だれも彼の骨にさわってはならん。」それで人々は、彼の骨も、サマリヤから来たあの預言者の骨も、焼きませんでした。
19 王はサマリヤの丘の上の礼拝所をぜんぶ取り払い、ベテルでしたように、粉々にしてしまいました。それはみな、イスラエルの王たちが建て、神様の激しい怒りを買ったものです。
20 王はまた、異教の神々に仕える祭司たちを、彼ら自身の祭壇の上で殺し、祭壇を汚れたものとするため、その上で人骨を焼きました。こうして、エルサレムへ帰ったのです。
21 王は国民に、神の『契約の書』にあるとおり、過越の儀式を執り行なうよう命じました。
22 イスラエルを士師(王国設立までの軍事的・政治的指導者)が治めていたとき以来、このように過越の祭りが祝われたことはありません。イスラエルとユダの諸王のどの時代にも、例がありません。
23 この過越が祝われた場所はエルサレムで、ヨシヤ王の即位後十八年目のことでした。
24 王はまた、霊媒や口寄せ、それにエルサレムとユダの全地にある、ありとあらゆる偶像を一掃しました。祭司ヒルキヤが神殿で発見した書物にあるおきてを、忠実に守ろうとしたからです。
25 このように完全に神様に立ち返り、モーセのすべてのおきてを守った王は、あとにも先にも、ヨシヤ王のほかにいません。
26 それにもかかわらず、マナセ王の悪行が引き金となった、ユダへの神様の激しい怒りは、おさまりませんでした。
27 神様は、こう言っておられたのです。「わたしは、イスラエルを滅ぼしたように、ユダも滅ぼす。わたしが選んだ町エルサレムも、わたしが自分のものだと言った神殿も、捨ててしまう。」
28 ヨシヤ王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
29 そのころ、エジプトのネコ王が、アッシリヤの王を攻めるため、ユーフラテス川に向かっていました。ヨシヤ王はアッシリヤの王を助けようと出陣しましたが、メギドでネコ王に会い、殺されたのです。
30 家来たちは、遺体を戦車でエルサレムに運び、前もって決めてあった墓地に葬りました。国民は、その息子エホアハズを新しい王に選びました。
31 ユダの新しい王エホアハズ、二十三歳で即位、エルサレムでの在位期間は三か月、母はリブナ出身のエレミヤの娘ハムタル、先王たちにならって悪政を敷く
32 -
33 ネコ王は、エホアハズが王になることに反対でした。そこで、彼をハマテにあるリブラの牢獄に入れ、ユダに総計七千万円の重税を課しました。
34 そしてヨシヤの息子エルヤキムを、エルサレムで王位につけ、名をエホヤキムと改めさせました。一方、エホアハズはエジプトへ連れて行かれ、そこで死にました。
35 エホヤキム王は、エジプトの王が要求する金を集めるため、国民に重税を課したのです。
36 ユダの新しい王エホヤキム、二十五歳で即位、エルサレムでの在位期間は十一年、母はルマ出身のペダヤの娘ゼブダ、先王たちにならって悪政を敷く
37 -
1 エホヤキムが王であった時、バビロンのネブカデネザル王が、エルサレムを攻めました。エホヤキム王は降伏し、三年間みつぎを納めたのち、背きました。
2 そこで神様は、かねて預言者たちによって警告したとおり、カルデヤ人、シリヤ人、モアブ人、アモン人の略奪隊を送って、ユダとその国民を滅ぼそうとなさいました。
3 こうした災いが臨んだのは、神様のじきじきの命令によります。マナセ王が、エルサレムを罪のない人の血で満たし、罪に罪を重ねたので、神様もとうとう、堪忍袋の緒が切れて、ユダを一掃しようと決心なさったのです。
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5 エホヤキム王のその他の業績は、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。
6 王は死んで、息子エホヤキンが新しく王となりました。
7 当時バビロンの王が、エジプト川からユーフラテス川に至る、以前のエジプトの全占領地を押さえていたので、エジプトの王はその後、再び攻めて来ませんでした。
8 ユダの新しい王エホヤキン、十八歳で即位、エルサレムでの在位期間は三か月、母はエルサレムのエルナタンの娘ネフシュタ、先王たちにならって悪政を敷く
9 -
10 エホヤキンが王であった時、バビロンのネブカデネザル王の軍隊が、エルサレムを包囲しました。
11 さらに王みずからもやって来て、この作戦に加わりました。
12 エホヤキン王と家来一同、それに王母は、そろって降伏し、王は捕虜としてバビロンへ連れて行かれました。ネブカデネザル王の即位後八年目のことです。
13 バビロン軍は、神殿と宮殿の宝物を残らず持ち出し、ソロモン王が神様の命令で神殿にしまっておいた金の器具を、片っぱしから二つに切ってしまいました。
14 ネブカデネザル王は、エルサレムから一万人を捕虜として連れ去りました。多くは、王子、高官、えり抜きの勇士、職人、鍛冶屋でした。貧しい人や、手に職のない人々だけが、あとに残されたのです。
15 エホヤキン王とその妻たち、家来、それに王母はもちろんのこと、
16 七千人の精鋭部隊、戦争に役立つ職人と鍛冶屋千人が捕虜となりました。
17 このあとバビロンの王は、エホヤキン王の叔父マタヌヤをゼデキヤと改名し、次の王にしました。
18 ユダの新しい王ゼデキヤ、二十一歳で即位、エルサレムでの在位期間は十一年、母はリブナ出身のエレミヤの娘ハムタル、エホヤキムと同じく悪政を敷く
19 -
20 神様はとうとう、すっかり怒って、エルサレムとユダの人々を滅ぼしてしまわれたのです。一方ゼデキヤ王は、バビロン王に反逆を企てました。
1 そこで、ネブカデネザル王は全軍を率いて攻撃をしかけ、エルサレムを包囲してしまいました。王がエルサレムに来たのは、ゼデキヤ王の即位後九年目の十二月二十四日のことです。
2 包囲は、ゼデキヤ王の即位第十一年まで続きました。
3 最後の年の六月二十三日になると、町に残っていた最後の食糧も底をつきました。
4 その夜、王とその手勢は、内側の城壁に穴をあけ、宮殿の庭園の近くにある、二重の城壁の間の門を通り抜けて、アラバへ逃げました。町を包囲していたバビロンの兵士たちはあとを追い、エリコの平原で王を捕らえました。家来たちが散り散りになったことは、言うまでもありません。
5 -
6 王はリブラへ連行され、バビロンの王の前で裁判を受けました。
7 その結果、目の前で息子が次々に殺されるのを見せつけられたのち、両眼をえぐり出され、足かせにつながれたまま、バビロンへ連行されました。
8 ネブカデネザル王の即位後十九年目の七月二十一日に、王の侍従長ネブザルアダン将軍が、バビロンからエルサレムに到着し、
9 神殿や宮殿をはじめ、町中のめぼしい建物をぜんぶ焼き払いました。
10 また、バビロン軍を指揮して、城壁を取りこわしました。
11 町に残っていた人々と、バビロンの王に忠誠を誓ったユダの逃亡兵全員は、捕虜としてバビロンへ連行されました。
12 貧民街に住む者だけが、土地を耕すために残されたのです。
13 バビロン軍は、神殿の青銅の柱と青銅の洗盤を台もろともこわし、青銅を全部バビロンへ運びました。
14 また、つぼ、十能、火皿、芯切りばさみ、さじ、その他、いけにえをささげるために使う青銅の器具も全部です。金や銀の鉢は、その他の金銀とともに、溶かして金塊や銀塊にされました。
15 -
16 ソロモン王が神殿のために作った、二本の柱と台つきの大洗盤は、あまりにも重くて、量ることができませんでした。
17 柱の高さは、それぞれ九メートルあり、その上に回りを青銅の網細工とざくろで飾った一メートル半の柱頭がついていました。
18 ネブザルアダン将軍は、祭司長セラヤと次席祭司ゼパニヤ、それに、三人の神殿警備員を、捕虜としてバビロンへ連れて行きました。
19 ユダ軍の司令官、徴兵官、王の五人の側近、町に隠れているところを見つかった六十人の農夫は、
20 将軍に捕らえられて、リブラにいるバビロンの王のもとへ連行され、
21 剣で切り殺されました。こうして、ユダの国民は祖国をあとに、捕虜となって連れ去られたのです。
22 ネブカデネザル王は、アヒカムの子、シャファンの孫ゲダルヤを、ユダに残った者を治める総督に任命しました。
23 バビロンの王がゲダルヤを総督に任命したと聞くと、イスラエルのゲリラ部隊の指導者たちは、部下を引き連れ、ミツパにいるゲダルヤのところへ来ました。ネタヌヤの子イシュマエル、カレアハの子ヨハナン、ネトファ人タヌフメテの子セラヤ、マアカ人の子ヤアザヌヤと、その部下たちです。
24 ゲダルヤは、彼らにこう保証しました。「武器を捨ててバビロン軍に下れば、捕虜にもならず、この地に住める。」
25 ところが、それからしばらくして、王族の一人であったイシュマエルは、十人の部下を連れてミツパへ行き、ゲダルヤをはじめ、ユダ人とバビロン人からなる総督府の職員を殺してしまったのです。
26 たいへんなことになりました。バビロン軍が報復に出るかもしれません。人々はゲリラ部隊の指導者たちとともに、あわててエジプトへ逃げました。
27 エホヤキン王は、捕虜となって三十七年目の三月の十一日に、牢から釈放され、自由の身となりました。これは、エビル・メロダク王の即位の年のことです。
28 彼はエホヤキンに親切にし、バビロンで共に獄につながれていたどの王よりも、厚遇しました。
29 エホヤキンはそれまでの囚人服から新しい服に着替え、一生の間、いつも王の食卓で食事をしました。
30 王は、エホヤキンが生きている間中、毎日の生活費を支給したのです。