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1 この書は、モーセがヨルダン川の東、モアブ平原のアラバ渓谷で演説した時の記録です。当時、イスラエルの人々はそこに野営していたのですが、付近には、スフ、パラン、トフェル、ラバン、ハツェロテ、ディ・ザハブなどの町がありました。この演説が行なわれたのは、ホレブ山(シナイ山)を出発してから四十年目の二月十五日でした。ところで、ホレブ山のふもとからカデシュ・バルネア〔約束の地パレスチナの南端〕までは、セイル山を通れば、普通なら歩いても十一日ほどで来られます。それはさておき、この時にはすでに、ヘシュボンでエモリ人の王シホンを、エデレイに近いアシュタロテでバシャンの王オグを打ち破ったあとでした。ここへたどり着くまでの間、神様はいろいろな法律をモーセをとおして伝えましたが、それを全部まとめて、もう一度、モーセが説明しなおしたのです。

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6 「皆さん、今からちょうど四十年前、神様がホレブ山でこう言われたのを覚えていますか。『もうこれ以上、ここにいる必要はない。

7 出発しなさい。エモリ人の山地、アラバ渓谷、ネゲブ、カナンとレバノンの全土、つまり地中海からユーフラテス川までの全地域を占領するのだ。

8 わたしが与えると言うのだから遠慮はいらない。どんどん入って行きなさい。そこが、昔おまえたちの先祖アブラハム、イサク、ヤコブおよびその子孫に、いつか必ず与えると約束した国だからだ。』

9 あの時、私は皆さんにこう訴えました。『私一人じゃ、これから先、とても全員のめんどうを見きれない。どうしても助手がいる。

10 神様があなたがたを、星の数ほどにふやしてくださったからだ。

11 それどころか、お約束どおり今の千倍にもしてくださるそうだ。

12 こんなに大ぜいじゃ、もめ事や問題もたくさん起こる。とても一人ではさばけない。

13 そこでお願いだが、各部族から、人生経験が豊かで知恵もあり、もの事のよくわかる者を選んでくれないか。その者たちを指導者に任命しよう。』

14 みんなが賛成してくれたので、

15 私は彼らを助手に任命しました。いちばん上を千人の者を指導する長とし、その下にそれぞれ百人、五十人、十人の者の世話をする長を置いたのです。彼らはめいめい、自分の管理のもとにある人々のもめ事を解決したり、いろいろ必要な世話をしたりすることになりました。

16 当然ですが、いつでも、だれに対しても、たとい外国人でも、決して差別をせず、あくまで正しく振る舞うように言っておきました。

17 『決定を下す時、金持ちの肩をもってはいけない。身分の高い者も低い者も同じように正しく扱いなさい。神様の代わりにさばくのだから、人の不平不満を恐れることはない。手に負えない事件は、私のところに持って来れば処理してやろう。』

18 あの時には、ほかにもいろいろ指図しました。

19 それからホレブ山を発って、恐ろしく果てしもない荒野を旅し、神様のお守りのもとにエモリ人の山地に着きました。そしてついに、約束の国との境にあるカデシュ・バルネアまで行ったのです。あそこで私は、『神様がこの国を下さったのだから、ご命令どおり前進して占領しなさい。恐れたり疑ったりしてはいけない』と告げました。

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22 これに対してみんなは、『まずスパイを送り込もう。いちばん攻めやすい町から占領したほうがいい』と提案したのです。

23 もっともなので、各部族から一名ずつ、全部で十二名のスパイを選びました。

24 彼らは山地に潜入し、エシュコルの谷まで行くと、その地のくだものを持ち帰りました。それを見て、神様の下さった地が実に良い地であることが、はっきりわかりました。

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26 ところが、みんなは神様の命令に逆らい、前進したくないと言いだしたのです。

27 そして、テントの中でぶつぶつ不平を言いました。『神様はきっと、私たちがおきらいなんだ。だから、わざわざエジプトから連れ出し、エモリ人の手にかけて殺そうとしておられるんだ。

28 どうしよう。スパイの報告じゃ、やつらは背が高く、力もあり、町の城壁はおっそろしく高いっていうじゃないか。おまけに、アナク人の子孫の巨人を見たとも言ってた。考えただけでもぞっとする。』

29 そこで私は反論しました。『恐れることはない。

30 神様が先頭に立って戦ってくださる。エジプトでは力強い奇蹟を行ない、

31 そのあともずっと、まるで父親のように気を配り、荒野の旅を安全に守ってくださったことを忘れたのか。』

32 しかし、何を言ってもむだでした。それまでいつも共にいて、野営するのに最適の場所を選び、夜は火の柱、昼は雲の柱で、進む道を教えてくださった神様を、彼らは信じようとしなかったのです。

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34 これには神様も腹を立てました。おかげで、当時おとなだった者は一人も約束の国へ入れなくなりました。

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36 ただ、エフネの息子カレブは別です。神様の命令に完全に従い通したほうびに、自らスパイとして潜入した地の一部を、相続地としてもらえるのです。

37 不信仰な者たちのために、私でさえ神様の怒りを買い、こう言い渡されました。『おまえは約束の国へ入れない。

38 代わりに、おまえの助手ヌンの息子ヨシュアが指導者となるのだ。その準備ができるように励ましてやりなさい。

39 国は、荒野で死ぬ者の子供たちに与えよう。

40 決して、おまえたちのものにはならない。だから、回れ右をして荒野の道を紅海の方へ戻りなさい。』

41 すると今度は、あわてて罪を告白しだしたのです。『お赦しください。私たちが悪かったのです。ご命令どおり、その国に攻め入ります。』そう言うと、簡単に全地を征服できるとでも思ったのでしょうか、あたふたと武装し始めました。

42 それでも神様は、きっぱり言われました。『やめさせなさい。わたしがいっしょに行かないのにむちゃをしたら、ひどい目に会うだけだ。』

43 その警告を聞き入れず、彼らはまたもや神様の命令に背いて、山地に攻め上ったのです。

44 案の定、結果はさんざんでした。エモリ人の迎え撃ちに会い、あべこべにセイルからホルマのあたりまで激しく追撃されたのです。

45 逃げのびた者たちは神様に泣きつきましたが、お聞き入れにはなりません。

46 しかたなく、長いことカデシュにとどまりました。

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1 そのあと、神様の命令どおり、荒野を通って紅海の方に戻りました。こうして、長いことセイル山のあたりをさまよったあげく、

2 やっと神様のおことばをいただいたのです。

3 『ここにはもう、とどまらなくてよい。北へ行きなさい。

4 これからエドム人の国を通る、と皆に知らせなさい。エドム人は、ヤコブの兄でセイルに住みついたエサウの子孫にあたり、おまえたちとは同族だが、ひどく神経をとがらせているから、くれぐれも注意が必要だ。

5 まちがっても戦いをしかけてはいけない。セイルの山地はみな、わたしが永遠の領地として彼らに与えたからだ。ほんの一部でも、おまえたちに与えるつもりはない。

6 食糧や水がいる時は、金を払って買いなさい。

7 全くこの四十年間、わたしが守り、祝福してやったからこそ、おまえたちは果てしもない荒野をさまよいながら、何不自由なく過ごせたのだ。』

8 そこで私たちは、同族のエドム人が住むセイルをあとにし、南のエラテ、エツヨン・ゲベルに至るアラバ街道を横切って北へ向かい、モアブの荒野へと旅を続けました。

9 すると神様は、『モアブも攻撃してはいけない。そこはロトの子孫のものだ。おまえたちに与えるつもりはない』と警告なさったのです。

10 ――モアブには以前、アナクの巨人と同じように背の高いエミム人が、大ぜい住んでいました。

11 エミム人もアナク人と同じように、レファイム人だと考えられていたのですが、モアブ人は彼らをエミム人と呼んだのです。

12 それより以前、セイル地方にはホリ人が住んでいましたが、追い出され、エサウの子孫のエドム人が代わって住みつきました。ちょうど、イスラエル人がカナン人を追い出し、その地に住みついたようにです。――

13 『さあ、ゼレデ川を渡りなさい』と神様に命じられ、私たちは従いました。

14 こうしてみると、カデシュに着いてからゼレデ川を渡るまで、実に三十八年もかかったことになります。それというのも、三十八年前、すでに成人し、戦いに出られるようになっていた者が死に絶えるまでそうはならないと、神様が誓われたからです。おことばどおり、彼らは全員、罪の報いを受けました。

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16 こうして、待ちに待った神様のおことばがありました。

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18 『きょう、モアブの領土、アルを通って、

19 アモン人の国へ入りなさい。ただし、そこはロトの子孫のもので、おまえたちに与えるつもりはないから、戦いをしかけてはいけない。』

20 ――その地にも以前、アモン人がザムズミム人と呼んだレファイム人が住んでいました。

21 アナク人のように背が高く強大な氏族でしたが、アモン人に侵略されたのです。神様が彼らを滅ぼしたので、アモン人が代わって住みつきました。

22 同じように神様は、今セイル山に住むエサウの子孫に味方し、先に住んでいたホリ人を滅ぼしました。

23 ガザにまで及ぶ地方の村々に散在していたアビム人をカフトル人が侵略し、滅ぼした時も同じです。――

24 続けて、神様はお語りになりました。『アルノン川を渡り、ヘシュボンの王、エモリ人シホンの国を攻め取りなさい。

25 きょうから、天下のあらゆる国民はおまえたちを恐れ、おまえたちが来ると聞いただけで震え上がるだろう。わたしが彼らをこわがらせるからだ。』

26 そこでまず、ケデモテの荒野からヘシュボンの王シホンに使者を送り、和平を申し入れました。

27 『お国を通らせてください。わき道にそれたり、畑に入ったりはせず、ただ街道をまっすぐ進みます。

28 途中で食糧を盗んだりもしません。食糧や水を分けてもらったら、代金をきちんとお払いします。ただ通らせていただくだけでけっこうです。

29 セイルのエドム人や、アルを首都としているモアブ人は、国を通らせてくれました。私どもは、ヨルダン川を渡り、神様が下さると言われた国へ行く途中なのです。』

30 ところが王は断わりました。いま見るとおり、王をあなたがたの手で滅ぼさせようと、神様がわざと強情を張らせたのです。

31 そのあと、神様は私に、『さあ、シホン王の国をやろう。遠慮なく占領するがいい。そこは永遠にイスラエルのものだ』と約束なさいました。

32 シホン王は宣戦を布告し、ヤハツに軍隊を集めました。

33 しかし神様のお助けで、私たちは彼を負かしました。町という町はすべて占領し、男も女も赤ん坊さえも皆殺しです。

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35 家畜以外、生き残った者はありません。家畜は分捕り物とし、ほかにも戦利品を略奪して、意気揚々ひき揚げました。アルノン渓谷のアロエルやその他の町々をはじめ、ギルアデまでの全地を占領したのです。なにしろ神様が下さったのですから、戦うところ敵なしです。

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37 ただし、アモン人の国、ヤボク川、山地の町々など、神様のお許しがない所には近づきませんでした。

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1 次に行ったのは、バシャンの王オグの国です。ここでもまた、王は直ちに軍隊をくり出し、エデレイで戦いをしかけて来ました。しかし、少しも恐れることはありませんでした。神様が、『この国も国民も、おまえたちのものだ。ヘシュボンのエモリ人の王シホンと同じ目に会わせてやるがいい』と励ましてくださったからです。

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3 そのとおり、私たちは神様に助けられて、彼らを皆殺しにし、

4 バシャンのアルゴブ地域にある六十の町を占領しました。

5 どの町も、高い城壁とがっちりした門で守りを固めてありました。ほかに、城壁のない町も奪いました。

6 ヘシュボンの王シホンの国と同じように、バシャンの国を全滅させ、男も女も子供も、一人残らず殺したのです。

7 ただし、家畜と戦利品は分捕り物としました。

8 こうして、エモリ人の二人の王を滅ぼし、ヨルダン川の東側に広がる、アルノン渓谷からヘルモン山までの全地域を占領したのです。

9 ――ところで、ヘルモン山のことをシドン人はシルヨンと呼び、エモリ人はセニルと呼んでいました。――

10 高原にあるすべての町、ギルアデの全土、サルカからエデレイまでのバシャンの町々は、私たちのものになりました。

11 ――バシャンの王オグは、レファイム巨人の最後の生き残りでした。彼が使ったベッドがアモン人の町ラバの博物館に保存されていますが、鉄製で、長さがなんと四メートル半、幅は二メートルもあります。――

12 さて、征服した国は、ルベン部族、ガド部族、マナセの半部族に与えました。ルベン部族とガド部族には、アルノン川のアロエルのほかギルアデの山地の半分と町々を、

13 マナセの半部族には、ギルアデの山地の残り半分とオグ王の国のアルゴブ地域全部です。――バシャンはレファイムの国と呼ばれることもあります。――

14 マナセ部族から出たヤイル氏族は、ゲシュル人とマアカ人の国境までのアルゴブ地域全体を取り、氏族の名にちなんで、現在のようにハボテ・ヤイル〔「ヤイルの村」の意〕と変えました。

15 ギルアデはマキル氏族のものになりました。

16 ルベン部族とガド部族に与えられたのは、ギルアデからアルノン渓谷の中ほどまで、北はアモン人との国境ヤボク川までの地域、

17 それに、アラバ〔荒れ地〕です。つまり、西の境をヨルダン川に接し、キネレテの海からピスガ山、塩の海〔別名アラバの海〕までの地域です。

18 そのとき私は、これらの三部族に注意しました。神様は確かにその土地を下さるが、兵士たちはみな武装し、ほかの部族の先頭に立ってヨルダン川を渡り、神様の約束の国を占領するまで、そこに住みつくことはできない、と。

19 『ただし、女、子供はここに住んでもよい。家畜の世話をしながら、戦いに出た者の帰りを待つのだ。ヨルダン川の向こう側にある約束の国を征服し、ほかの部族の土地を確保したら、自分たちのところへ帰ってかまわない。』

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21 ヨシュアには、こう命じました。『いいか、神様があの二人の王になさったことを、よく見たな。同じことを、ヨルダン川の向こう側のすべての国にもするのだ。

22 神様が戦ってくださるから、敵を恐れるな。』

23 そして、神様に必死でお願いしました。『ああ、神様、お願いでございます。どうか、ヨルダン川の向こうに広がるお約束の国へ行かせてください。あのなだらかな山地、豊かな土地、そしてレバノンに行きたいのです。これまでもすばらしい奇蹟や偉大な御力を見せていただきましたが、最後までその結果を見届けさせてください。あんなすばらしいことのできるお方は、神様のほかにはいません。』

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26 しかし神様は、どうしてもお聞き届けにはなりませんでした。こんなお怒りをこうむったのも、元はと言えば、あなたがたのせいです。『もう、そのことは言うな。

27 ただ、ピスガ山の頂上からなら四方をぐるっと見渡せるから、登って約束の国を眺めるがいい。だがヨルダン川を越えることは、断じて許さん。

28 代わりにヨシュアを任命するのだ。人々を率いて約束の国に入るのは彼だから、何かと励ましてやれ。』

29 それで、私たちはベテ・ペオルの近くの谷間にとどまっていました。

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1 ところで皆さん、生きて神様の約束の国に入り、自分のものにしようと思うなら、これから教える法律を注意深く聞き、そのとおり守りなさい。

2 ほかの法律を加えたり、ある部分をかってに削ったりしてはいけない。神様の法律なのだから、何も言わず、黙って従うのだ。

3 神様が偶像バアル・ペオルになさったことは見たでしょう。そんな偽りの神を拝んだ者はみな、罰があたって死んでしまった。

4 しかし、神様に忠実だった者たちは、今もまだ元気だ。

5 いいですか、これから住みつく国へ行ったら、この法律をきちんと守りなさい。これは神様からじきじきに示された法律で、あなたがたに伝えるようにと言われたのです。

6 これを守れば、知恵のある賢明な国民だと評判になるでしょう。回りの国々がこの法律を知ったら、『イスラエル人ほど賢明で、物のわかった国民はいない』と驚くに違いありません。

7 どんな国でも、呼べば必ずそばにいてくださる、私たちの神様のような神を信じている国はありません。

8 どんなに偉大な国でも、きょう私が教えるような正しい法律をもつ国はありません。

9 気をつけなさい。まちがっても神様がしてくださったことを忘れてはいけません。これから先もずっと、神様のなさった奇蹟を思い出しなさい。子供にも孫にも、すばらしい奇蹟のことを話してやりなさい。

10 特に、ホレブ山(シナイ山)で神様の前に立った日のことは大事です。あの時、神様は私にこう言われました。『人々を集めなさい。わたしを大切にし、わたしの法律を子供たちに教えられるように、まずわたしが、彼らを教えよう。』

11 あなたがたはふもとに立っていましたが、山には黒雲がたれこめ真っ暗で、赤々と火に包まれ、炎は天をこがしていました。

12 その時、炎の中から神様の声が聞こえたのです。お姿は全く見えません。

13 こうして神様は、守るべき法律として十戒をお示しになりました。それは二枚の石板に記されました。

14 そして私は確かに、それをあなたがたに与えるようにと命じられたのです。約束の国へ行ったら、そのとおり守らなければなりません。

15 気をつけなさい。あの日ホレブ山で炎の中からお語りになった時、神様の姿は見えなかったのです。

16 ですから、神様の像を作ってはいけません。そんなことをしたら、正しい信仰をなくしてしまいます。どんな像も作ってはいけません。男だろうが女だろうが、あるいは動物、鳥、

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18 地をはう小さな動物、魚だろうが、絶対にいけません。

19 また、太陽、月、星などを拝むのもよくありません。外国人は大目に見られても、あなたがたはそうはいきません。

20 何といっても、あの牢獄のようなエジプトから救い出し、特別な国民として宝物のように大切に守ってくださるのは、この神様だからです。今こうしていられるのも、みな神様のおかげです。

21 しかし、まずいこともありました。あなたがたのことで私は神様の怒りを買い、ヨルダン川を渡って約束の地へ行けなくなったのです。あなたがたは、あのすばらしい地をいただくことができます。しかし私は、ヨルダン川のこちら側で死ななければなりません。

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23 神様が結んでくださった契約をあなたがたのほうから破らないよう、くれぐれも注意しなさい。どんなものでも、神様がいけないと言われた偶像を作るのは契約違反です。

24 神様は背く者を激しく憎み、焼き尽くす火のように徹底的に罰するお方だからです。

25 将来、あの国に住みつき、子供や孫が生まれてから、正しい信仰を捨て、偶像を作りでもしたら、神様はきっとお怒りになります。

26 すぐさま滅ぼされるのがおちです。もうすぐヨルダン川を渡り、あの国を征服しますが、なにほども住まないうちに、全滅させられてしまうでしょう。

27 生き残るのはほんの一にぎりで、その者たちも国々に散らされます。

28 やがてその国々で、見ることも、聞くことも、食べることも、かぐこともできない木や石の偶像を拝むようになるのです。

29 しかしあなたがたは、もう一度、神様を慕い求めるようになります。心からせつに慕い求めれば、神様は必ず見いだせます。

30 苦しい時を過ごしたあと、ついに神様のもとへ返り、その教えに従うようになるのです。

31 神様は思いやりのあるお方だから、あなたがたをすげなく見捨てたり、滅ぼしたりはなさいません。ご先祖への約束は必ず果たしてくださいます。

32 神様が地上に人間をお造りになって以来、このような事があったかどうか、くまなく調べてみなさい。

33 全国民が、恐れ多くも炎の中から語られる神様の声を聞き、それでもなお生き長らえている国民が、ほかにいるでしょうか。

34 あるいは、恐ろしい伝染病や目をみはるような奇蹟を起こし、激しい戦いに勝って国々を恐れさせ、奴隷となった国民を救い出した神が、ほかにいますか。私たちの神様は、まさにそのとおりのことを、エジプトで、あなたがたの目の前でなさったのです。

35 ご自分こそほんとうの神であり、ほかに神はいないことをわからせるためです。

36 天からの声、地に燃え上がる巨大な火の柱、炎の中から語られる神様の声、何もかも驚くことばかりでした。

37 神様はご先祖に特に目をかけ、その子孫を祝福しようとお決めになりました。だからこそ、あのようなすばらしい奇蹟を行ない、あなたがたをエジプトから救い出されたのです。

38 そればかりではありません。あなたがたよりはるかに強い国民を追い出し、現在のように、その国々をあなたがたのものとしてくださいました。

39 だから、これだけは忘れないようにしなさい。天にも地にも、この神様のほかに神はないのだと。

40 神様が下さる国で子々孫々しあわせに暮らしたかったら、きょう私が与える法律を守りなさい。」

41 このあとモーセは、ヨルダン川の東側にある三つの町を特別に選んでおくように、と命じました。

42 過って人を殺した者が逃げ込むためです。

43 町は、ルベン部族の領地からは荒野の高地にあるベツェル、ガド部族の領地からはギルアデにあるラモテ、マナセ部族の領地からはバシャンにあるゴランが選ばれました。

44 次に記すのは、イスラエルの人々がエジプトを出て、ヨルダン川の東側、ベテ・ペオルの町の近くに野営していた時、モーセが語った法律です。ここは以前エモリ人の領地で、首都をヘシュボンにおき、シホン王が治めていましたが、モーセとイスラエルに滅ぼされたのです。

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47 イスラエルはさらに、ヨルダン川の東側に勢力を張る、もう一人のエモリ人の王オグを滅ぼし、バシャンを征服しました。

48 こうして、アルノン渓谷沿いの町アロエルからシーオン山、またの名をヘルモン山に至る全地域、

49 つまり、ヨルダン川の東側全域と、その南に広がるアラバの全域、ピスガ山の傾斜地のふもとにある塩の海までを征服したのです。

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1 モーセはなおも語り続けました。「さあ、神様が命じる法律をよく聞きなさい。それを正しく理解し、きちんと守るのだ。

2 いいですか、神様はホレブ山(シナイ山)で、あなたがたと契約を結ばれました。ご先祖とではなく、今ここにいるあなたがたとです。

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4 あのとき神様は、炎の中からじきじきにお語りになりました。

5 あまりのことにあなたがたは震え上がり、だれ一人、山に登って神様のところへ行こうとしないので、私が行って神様のおことばを聞き、それをあなたがたに伝えたのです。その法律はこうでした。

6 『わたしは、エジプトでの奴隷生活からあなたがたを救い出した、あなたがたの神、主だ。

7 わたしのほかは、どんな神も拝んではならない。

8 決して偶像を作ってはならない。鳥だろうが、動物だろうが、魚だろうが、どんな像も作ってはならない。

9 拝んでもいけない。どんな方法で礼拝してもいけない。あなたがたの神は、このわたしだけだ。わたしは嫉妬深いから、わたしを憎む者を三代、四代のちの子孫に至るまでのろい続ける。しかし、わたしを愛し、わたしの命令を守る者には、千代のちまでも恵みを与えよう。

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11 果たすつもりもないのに、やたらにわたしの名を使って誓ってはならない。そんなことをしたら必ず罰せられる。

12 安息日を特別の日として守りなさい。これは命令だ。

13 仕事はみな六日のうちにすませなさい。

14 七日目は神の休みの日だから、その日は一日、人も家畜も仕事をしてはならない。外国人でも、いっしょに住んでいる限り、この法律を守る義務がある。すべての人が休むのだ。

15 安息日を守るのは、エジプトで奴隷にされていたあなたがたを、主であるわたしがすばらしい奇蹟を起こして救い出したことを、忘れないためだ。

16 両親を尊敬しなさい。そうすれば、主であるわたしが与える国で、何不自由なく、長くしあわせな一生を送ることができる。これは神の命令だ。

17 人を殺してはならない。

18 姦淫してはならない。

19 盗んではならない。

20 うそをついてはならない。

21 人の妻に欲情を燃やしたり、家、土地、使用人、牛、ろば、そのほか何でも、人の持ち物を欲しがったり、持ち主をねたんだりしてはならない。』

22 この法律は、暗雲たれこめるシナイ山で、神様が炎の中からあなたがた一人一人にお与えになったのです。神様はそれを二枚の石板に記し、私に下さいました。

23 ところが、あなたがたはどうしたでしょう。暗やみにとどろく御声を聞き、山頂に燃え上がる無気味な火を見ると、恐ろしさのあまり震え上がったではありませんか。部族長たちはわたしのところへ駆けつけ、

24 必死に訴えました。『神様がどんなにすばらしいお方か、よくわかりました。なにしろ、炎の中からお語りになるんですから。しかも、その御声を聞いても、私たちはこうして生きています。

25 ですが、もう一度こんなことがあったら、その時は助かりっこありません。恐ろしい火で焼き殺されてしまうでしょう。

26 炎の中から語られる神様の声を聞いたら、ただじゃすみっこありません。お願いですから、あなたが代表で聞きに行ってください。どんなことを言われても、そのとおりにいたします。』

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28 神様はそれを聞き、こう言われました。『皆の気持ちはわかった。願いどおりにしよう。

29 わたしの命じるとおりにすると言うが、いつもそのような心がけでいてくれたら、どんなにうれしいだろう。そうすれば、彼らばかりか、子々孫々に至るまで、何の心配もなくしあわせに暮らせる。

30 さあ、帰って、めいめいのテントへ戻るように言いなさい。

31 そのあとでもう一度、わたしのところへ来て命令を聞き、人々に伝えなさい。わたしが与える国で、それをみな守るのだ。』」

32 そこでモーセは、人々に命じました。「神様の戒めをすべて守りなさい。どんな細かな点もきちんと守りなさい。何もかも、神様が定めたとおりに行なうのです。

33 そうしてはじめて、約束の国へ入ってから末長くしあわせに暮らせます。

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1 もうすぐ約束の国へ入りますが、そこに住みついたら、すべての戒めを守りなさい。神様がそう命じておられるのです。

2 というのも、あなたがたが子々孫々に至るまで神様をたいせつにし、生涯その命令を忠実に守ってほしいからです。そうすれば、いつまでもしあわせに暮らせます。

3 だから、少しも聞きもらさないよう気をつけ、一つ一つの戒めを注意深く守りなさい。こうしてすべてがうまくいき、子供にも恵まれます。命令に従いさえすれば、神様がご先祖に約束されたとおり、『乳と蜜の流れる』すばらしい地で、大国になることもできるのです。

4 いいですか、私たちの神様は主お一人です。

5 だから、心を尽くし、たましいを尽くし、力を尽くして神様を愛しなさい。

6 きょう与える戒めを、一時も忘れてはいけません。

7 子供たちにも、しっかり覚えさせなさい。家にいる時、外を歩いている時、寝る前、朝起きた時、いつでもまず第一に暗唱させるのです。

8 決して忘れないように、指に結び、額につけ、

9 家の門柱に記しなさい。

10 神様がご先祖アブラハム、イサク、ヤコブに約束された国を下さったあかつきには、そこにある良い物はみな、あなたがたのものになります。町、井戸、ぶどう園、オリーブ畑と、自分でつくったわけではないのに、何もかも手に入れるのです。しかし、いくら豊かになり、何不自由なく食べられるようになっても、神様を忘れてはいけません。あのエジプトでのみじめな奴隷生活から救い出してくださったのは神様です。

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13 満ち足りた時にこそ、神様をたいせつにし、心からお仕えしなさい。また、神様以外の名にかけて誓わないよう気をつけなさい。

14 外国の神々を拝んではいけません。

15 あなたがたと共におられる神様は嫉妬深いお方ですから、たいへんなことになります。たちまち腹を立て、あなたがたを一人残らず殺してしまうかもしれません。

16 マサでは不平をこぼし、お怒りを買いましたが、なんとかお赦しをいただくことができました。もう二度と、神様を試みてはいけません。

17 神様の命令には、どんなことでも進んで従いなさい。

18 でなければ、神様は決して、「よし」とは言ってくださいません。事がうまくいき、約束の国を占領できるかどうかは、心から神様にお従いするかどうかにかかっているのです。

19 神様の助けさえあれば、敵を追い出すことぐらい、わけはありません。

20 いつか息子たちが、『どうして神様は、この法律を下さったのですか』と聞くようになったら、

21 答えてやりなさい。『私たちイスラエル人は昔、エジプト王の奴隷だった。その私たちを、神様はとても考えられないような奇蹟を起こし、助けてくださったのだ。その御力のすばらしさに、王をはじめエジプト中の人々が驚き、震え上がるのを、この目ではっきり見たのだよ。

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23 こんなにまでして助けてくださったのも、ご先祖への約束どおり、この国を下さるためだった。

24 だからこそ神様は、この法律を守り、神様をたいせつにするようにとお命じになったのだ。そうすれば、これから先もずっと神様のお守りがある。

25 神様の法律に従ってさえいれば、何もかもうまくいくのだよ。』

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1 もうじき約束の国へ行きますが、神様がついておられるので心配はありません。あなたがたなど問題にならないほど大きな強い国も、神様には歯が立ちません。ヘテ人の国をはじめ、ギルガシ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の国々は、七つとも神様に滅ぼされます。

2 神様がそう考えておられるのだから、徹底的に戦いなさい。へたな取り引きをしたり、あわれみをかけたりせず、敵を一掃するのです。

3 ましてや、彼らとの結婚などもってのほかです。息子や娘たちとも結婚させてはいけません。

4 やたらに外国人と結婚させたら、それをいいことに、外国の神々を拝むようになるかもしれないからです。そんなことになったら取り返しがつきません。神様の怒りを買って、あなたがたまで滅ぼされてしまいます。

5 むしろ、異教の祭壇やオベリスクは片っぱしからたたきこわし、神々の偶像も切り倒して焼き払いなさい。

6 あなたがたは、神様にささげられたきよい国民だからです。地上のあらゆる国民の中から特別に選ばれ、神様のものとされたのです。

7 こんなに目をかけられたのはなぜでしょう。ほかのどの国よりも大国だからでしょうか。とんでもない。それどころか、世界中で一番ちっぽけな国です。

8 にもかかわらず、神様はあなたがたを愛し、ご先祖への約束を果たされます。ただそのためにこそ、驚くべき御力ですばらしい奇蹟を行ない、エジプトの奴隷だったあなたがたを助け出してくださったのです。

9 このように神様は忠実なお方なので、約束したことは千代のちの子孫にまでも守り通し、神様を愛し、命令を守る者に、いつもよくしてくださいます。

10 しかし、神様を憎む者はそうはいきません。みんなの見ている前でひとりひとり罰せられ、死刑にされます。

11 だから、きょう命じる戒めをみな守りなさい。

12 素直に従えば、神様も、ご先祖と結んだ思いやりあふれる契約をお守りになります。

13 あなたがたを愛し、何事もうまくいかせ、大国にしてくださるのです。約束の国へ着いたら、あなたがたは裕福になります。家畜はどんどん増え、土地も肥えているので、小麦、ぶどう、オリーブが豊かに実ります。

14 世界中のどの国よりも祝福されることまちがいなしです。一人として子供に恵まれない者はなく、家畜も次々と子を産みます。

15 すべての病気はなくなり、エジプトでよく悩まされた伝染病もなくなります。反対に、敵が伝染病に苦しめられることでしょう。

16 念を押しますが、神様が滅ぼせと言われた国は、みな滅ぼさなければなりません。決してあわれみをかけてはいけません。その国の神々を拝んでもいけません。そんなことをしたら悲惨な結果を招くだけです。

17 時には、『自分たちより強い国を征服できるだろうか』と心配になるかもしれません。

18 しかし、恐れることはありません。そんな時は、神様がエジプトの王と国になさったことを思い出しなさい。

19 あの、エジプト中を巻き込んだ恐怖、すばらしい奇蹟、とても考えられないような不思議な出来事を、よもや忘れてはいないでしょう。あれだけのことをして、あなたがたをエジプトから助け出された神様に、できないことはありません。あなたがたの親は自分の目でそれを見ました。だったら、今あなたがたが恐れている国に対しても、神様は同じようになさるはずです。

20 そればかりか、あなたがたの目を逃れる者をも、くまばちをけしかけて追い払われるのです。

21 偉大な、恐るべき力を持った神様がついておられるのだから、恐れることはありません。

22 神様は敵を、一度に全部ではなく、少しずつ、だんだんに追い払われます。さもないと、急に野獣が増えて危険です。

23 あせらず、しかも着実に国を攻め取りなさい。

24 神様がその国の王を負かすのです。彼の名が二度と思い出されないように完全に滅ぼしなさい。だれ一人、あなたがたに刃向かえる者はありません。

25 偶像は焼き払いなさい。それにかぶせてある金や銀に手をつけてはいけません。神様は偶像が大きらいなので、そんなものを取ったら、自分が罠にかかるだけです。

26 偶像を家に持ち込むなど、もってのほかです。そんなことをしたが最後、罰があたって死んでしまいます。のろわれた偶像は心底から憎みなさい。

8

1 私がきょう命じることをみな守りなさい。そうすれば生き長らえ、人口も増え、約束の国を占領することもできます。

2 いいですか、神様は四十年のあいだ荒野の旅を続けさせ、あなたがたが謙そんになり、神様の命令にどうこたえるようになるか、はたして心から従うようになるかどうか試されたのです。

3 ひもじい思いをさせたのも、謙そんを学ばせるためでした。なぜなら、そのあとで、マナという見たこともない食べ物を下さり、人はただパンだけで生きるのではなく、神様の命令を守ることによって真に生きるのだということを教えてくださったからです。

4 思えばこの四十年間、衣服も古びず、足もはれませんでした。

5 神様があなたがたを懲らしめるのは、ちょうど親が子供のためを思って懲らしめるのと同じなのです。

6 神様の法律を守りなさい。神様を恐れ、命じられるとおりに歩みなさい。

7 神様は、小川や池や泉、谷や丘のあるすばらしい国へ導いてくださるからです。

8 そこは、小麦、大麦、ぶどう、いちじく、ざくろ、オリーブ、はち蜜が山ほど採れ、

9 何不自由なく暮らせます。鉄は地に石のようにたくさんあり、丘の至る所からは銅が採れます。

10 そこで恵まれた生活ができるようになったら、すばらしい国を下さった神様に感謝しなさい。

11 しかし油断は禁物です。何の心配もないからといって気が大きくなりすぎ、神様を忘れ、命令に背くようになってはいけません。

12 家を持ち、羊や牛も増え、財産ができ、何もかもうまくいって満ち足りるようになった時こそ、危ないのです。気をつけないと、神様のおかげでそうなったのに、思い上がり、エジプトでの奴隷生活から救い出されたことなど、忘れてしまうでしょう。

13 -

14 -

15 蛇やさそりの住むあの広く恐ろしい荒野、暑くかわききった荒野を無事に旅できたのは、神様のおかげです。その神様を忘れていいでしょうか。岩から水を出し、

16 〔パンに似ているけれど〕それまで見たこともないマナを下さったのも神様です。こうして、あなたがたに謙そんを学ばせ、信仰を強め、ほんとうのしあわせを与えようとなさったのです。

17 あんなやり方をなさったのには訳があります。ああでもしなければ、あなたがたは自分の力で豊かになったと思い込むでしょう。

18 しかし、豊かにしてくださるのは神様です。ご先祖との約束を果たすためにこうなさるのだということを、よく自分に言い聞かせなさい。

19 万が一にも神様を忘れ、ほかの神々を拝み、悪の道に迷い込んだりすれば、必ず滅ぼされます。

20 神様にのろわれ、滅びの道をたどった国々と同じ運命をたどるのです。神様に従わなければ、あなたがたといえども容赦はありません。

9

1 さあ、よく聞きなさい。きょう、あなたがたはヨルダン川を渡り、川向こうの国々を征服します。どの国も大国で、あなたがたより強いのです。町々は高い城壁で守りを固めています。おまけに、無敵の巨人と恐れられるアナク人もいます。

2 -

3 しかし神様がおられる以上、心配はありません。いつもあなたがたの先頭に立ち、火のような勢いで敵を滅ぼしてくださるでしょう。だから、すぐさま国国に攻め入り、占領しなさい。

4 しかし思い違いをしないように。神様があなたがたを助けるのは、あなたがたが正しいからではなく、ほかの国々が悪いからです。

5 決して、あなたがたが立派で正しいから、ほかの国々を滅ぼすのではありません。ただ、ほかの国々が悪いからであり、ご先祖アブラハム、イサク、ヤコブに、そうすると約束されたからなのです。

6 くどいようですが、神様があのすばらしい国を下さるのは、あなたがたが正しいからではありません。それどころか、あなたがたはひねくれ者の強情な国民です。

7 大体あなたがたは、エジプトを出てから今まで、神様を怒らせ通しだったではありませんか。いつも神様に逆らい続けてきたのを忘れたとは言わせません。

8 ホレブ山(シナイ山)ではどうでしたか。あまり神様を怒らせたので、すんでのところで殺されそうになりました。

9 あのとき私は、神様があなたがたと結ばれる契約の板を受け取りに、山へ登っていました。私は飲まず食わずで四十日間も待ちました。

10 そして、やっといただいたのです。そこには、人々が見守る中で、神様が真っ赤に燃え立つ山の炎の中からお命じになった戒めが記してありました。

11 -

12 その板を下さるとすぐ、神様は急いで山を降りるようにとせかせました。エジプトから助け出した国民が早くも堕落し、神様の戒めを破って鋳物の偶像を作ったからです。

13 あまりのことに神様の怒りが爆発しました。『なんということだ。こんなに強情でひねくれた国民は生かしておけない。止めてもむだだ。一人残らず滅ぼそう。その代わり、おまえの子孫を強い国民に育ててやろう。彼らより、もっともっと強く偉大な国民にな。』

14 -

15 私は石板をしっかりかかえ、燃える山を一目散に駆け降りました。

16 その私の目に真っ先に映ったのは、いまわしい子牛の像でした。よりにもよって、これほどひどい罪を犯し、こんなにも早く神様を捨てるとは何てことだ!

17 私は腹立ちまぎれに、石板を振りかざし、力まかせに地面にたたきつけました。石板はあなたがたの目の前で、木端微塵に砕け散りました。

18 しかたがありません。私はもう一度、飲まず食わずで四十日間、神様の前にひれ伏しました。あなたがたが神様のいちばん嫌いなことをし、お怒りを買ってしまったからです。

19 そのあいだ中、あなたがたのことで頭がいっぱいでした。なにしろ、神様はすぐにでもあなたがたを滅ぼしかねないけんまくだったのです。しかしあの時もまた、神様は私の祈りを聞いてくださいました。

20 いちばん危なかったのはアロンです。彼のしたことに、神様はもうれつに腹を立てておられたので、一心にお赦しを願いました。こうしてようやく、アロンのいのちは助かったのです。

21 最後に私は、あのいまわしい子牛の像をしまつしました。まず火で焼き、粉々に打ち砕き、山を下る流れに投げ捨てました。

22 数え上げればきりがありませんが、タブエラでも、マサでも、キブロテ・ハタアワでも、あなたがたは神様を怒らせました。

23 カデシュ・バルネアでは、約束の国へ入れと命じられたにもかかわらず、こわがるばかりで少しも言うことを聞きませんでした。神様が助けてくださると励ましてもだめでした。恐ろしさのあまり、とうとう神様の命令に逆らったのです。

24 全く、あなたがたを知ってからというもの、神様に逆らわなかった時はないと言っていいくらいです。

25 あまりのひどさに、神様はあなたがたを皆殺しにしようとされました。そのとき私は、四十日のあいだ昼も夜も神様の前にひれ伏して祈りました。

26 『どうか神様、特別に目をかけてくださった国民を滅ぼさないでください。この国民は、驚くべき御力によってエジプトから救い出された、たいせつな財産ではありませんか。

27 今度のことは、どうかお見のがしください。神様に忠実にお従いしたご先祖のアブラハム、イサク、ヤコブへの約束に免じて、彼らの強情でひねくれた心をお赦しください。

28 それに、もし彼らを滅ぼしたりすれば、エジプト人たちは、それ見たことかと悪口を言うでしょう。「へん、何てざまだ。イスラエルの神はどうにも約束の国へ連れて行けなくなって、荒野でやつらを殺しちまったぞ。それともやつらが嫌いだったから、初めからそのつもりで連れ出したのかもしれないな。」

29 神様、お忘れにならないでください。彼らは神様のたいせつな財産、すばらしい御力によってエジプトから助け出された国民なのです。』

10

1 そのとき神様は、前と同じような石板を二枚切り出し、それを入れる木の箱を作ってから、もう一度登って来るようにとお命じになりました。

2 私が砕いてしまった前の板にあったのと同じ戒めを新しい板に記し、箱に納めておけるようにというのです。

3 私はさっそくアカシヤの木で箱を作り、石板を二枚切り出すと、それを持って神様のところへ登って行きました。

4 すると神様は、前と同じように石板に十戒を記してくださいました。それは、あなたがたが真っ赤に燃える山を見上げる中で、炎の中から命じられたのと同じ戒めです。板をいただくと、

5 私は山を降り、二枚とも箱に納めました。神様の命令どおり、それは今でも箱の中にあります。

6 さて、話は飛びますが、私たちはベネ・ヤアカンのベエロテからモセラに向かいました。そこでアロンが死に、葬られたので、息子エルアザルが二代目の祭司に任じられました。

7 そのあとグデゴデに行き、さらに、渓流の流れる水の豊かな地ヨテバタに向かいました。

8 神様がレビ部族に今のような特別な務めをお与えになったのは、その時です。つまり、十戒を入れた箱をかつぎ、神様のための仕事をし、神様の名によって祝福するのです。

9 このように、神様ご自身がレビ部族の財産なので、彼らは、ほかの部族のように約束の国で相続地をもらうことはできません。

10 ところで前にも言ったとおり、一回目と同じく二回目も、私は四十日のあいだ山にとどまり、昼も夜も神様の前で祈りました。ついに、神様は私の願いを聞き入れ、あなたがたは滅ぼされずにすんだのです。

11 そのとき神様は、『さあ、立って人々の先頭に進み、約束の国へ行きなさい。そこを占領する時がきたのだ』と、私にお命じになりました。

12 いいですか、よく聞きなさい。神様がお求めになるのは次のことだけです。神様のおことばに注意深く耳を傾けること、きょう私が与えた戒めを守ること、神様を愛すること、心を尽くし、たましいを尽くして神様を礼拝することです。

13 -

14 天も地も、神様のものです。

15 今のように特別目をかけていただけるのは、ただ神様がご先祖を愛されたからです。

16 だから、いつまでも強情を張らず、心を入れ替えなさい。

17 あなたがたの信じる神様は、神の中の神、主の中の主です。偉大な力あるお方、えこひいきもしなければ、わいろを取ることもなさいません。

18 みなしごや未亡人のために正しい裁判をし、外国人をも差別せず、食べ物や衣服をお与えになります。

19 だからあなたがたも、いっしょにいる外国人に親切にしなさい。エジプトでは、あなたがたも外国人だったではありませんか。

20 ただ神様だけを恐れ、礼拝し、頼りなさい。神様の名前以外のものにかけて誓ってはいけません。

21 何といっても、神様はほめたたえるべきお方です。あなたがたも見てきたとおり、あんなにすばらしい奇蹟を行なわれる方はいません。

22 なにしろ、ご先祖がエジプトへ行った時は七十人だったのに、今では星の数ほどにもふやしてくださったのです。

11

1 神様を愛し、すべての命令に従いなさい。

2 いいですか、私は子供たちにではなく、一人前の大人たちに話しているのです。子供たちはまだ、神様に罰せられたことも、その偉大さや恐ろしいまでの御力を見たこともありません。

3 もちろん、エジプトの国や王になさった奇蹟も見てはいません。

4 エジプト軍がイスラエル人を追って来た時、神様が馬や戦車もろとも紅海の底に沈めてしまったことも見ていません。それからというもの、エジプト人はあなたがたに手出しができなくなりました。

5 そのあとも、ここに来るまでの長い道中、荒野をさまようあなたがたを、神様が守り続けてこられたことも知りません。

6 また、エリアブの息子で、ルベンの孫にあたるダタンとアビラムが謀反を起こしたこと、そのためにイスラエル人全員の目の前で、彼らも家族も一人残らず、テントもろとも地にのみ込まれてしまったことも見ていません。

7 しかし、あなたがたは違う。あの目をみはるような奇蹟を確かに見たのだ。

8 だから、きょう与える戒めをどんなに注意深く守らなければならないか、よくわかるはずだ。そうしてはじめて、いま目の前にしている国を占領できるのです。

9 戒めを守れば、ご先祖いらい約束されてきた国で、いつまでもしあわせに過ごせます。そこは、『乳と蜜の流れる』すばらしい国なのです。

10 エジプトのように灌漑する必要もありません。

11 雨に恵まれ、丘や渓谷もある変化に富んだ地だからです。

12 神様はあなたがたのことをいつも心にかけ、絶えずその地を見守ってくださいます。

13 きょう与えるすべての戒めを注意深く守り、心を尽くし、たましいを尽くして神様を愛するなら、

14 春と秋に必ず雨を降らせ、穀物も、ぶどう酒用のぶどうも、油を採るオリーブも豊かに実らせてくださいます。

15 家畜には青々とした牧草地を、あなたがたには十分な食糧を下さるのです。

16 しかし、油断は禁物です。いい気になりすぎて神様を忘れ、外国の神々を拝んだりしないように、くれぐれも気をつけなさい。

17 万一そんなことをしたら、神様は激しくお怒りになり、雨を一滴も降らせないでしょう。収穫がなければ、神様が下さった良い地にいながら、みすみす飢え死にすることになります。

18 そうなりたくなかったら、戒めをしっかり頭にたたき込みなさい。手に結び、額に張りつけるくらいにして絶えず思い出し、従いなさい。

19 子供たちにも教えなさい。家に座っている時も、外を歩いている時も、寝る時も、朝食の前にも話して聞かせなさい。

20 家の門と戸に書き記しなさい。

21 そうすれば、天地の続く限り、約束の国で子々孫々しあわせに暮らせます。

22 私が与えた戒めをみな注意深く守り、神様を愛し、神様に頼って歩めば、

23 どんなに大きく強い国民でも、神様が必ず追い出してくださいます。

24 行く所どこでも、あなたがたの土地になるのです。南はネゲブから北はレバノンまで、東と西はそれぞれユーフラテス川と地中海までです。

25 だれ一人、たち打ちできる者はありません。神様はお約束どおり、行く先々で敵に恐れと不安をいだかせるからです。

26 神様の祝福を選ぶかのろいを選ぶか、今はっきり決めなさい。

27 私が与える神様の戒めに従えば祝福されます。

28 しかし、それを拒否し、外国の神々を拝んだりすれば、のろわれます。

29 神様が約束の国を下さったら、ゲリジム山から祝福を、エバル山からのろいを宣言しなさい。

30 どちらも、カナン人が住むヨルダン川の西側の地域にある山で、ギルガルに近く、モレの樫の木のある荒野にそびえています。

31 あなたがたは、これからヨルダン川を渡り、神様が下さる国に入るのです。

32 だから、きょう私が与えるすべての法律を守りなさい。

12

1 ご先祖の神様、主が永遠にあなたがたのものとしてくださった国で守るべき法律は、次のとおりです。

2 外国人の作った祭壇は、見つけしだいこわすこと。高い山の上にあっても、丘の上にあっても、木の下にあっても、すべてこわすのです。

3 祭壇もオベリスクも粉々に砕き、みだらな偶像は焼き払い、鋳像はこわしなさい。二度と思い出さないように、跡形もなく破壊し尽くすのです。

4 外国人のように、どこででもおかまいなしに神様にいけにえをささげないこと。そのための聖所は、神様がお選びになる場所に建てなさい。

5 -

6 完全に焼き尽くすいけにえをはじめ、神様にささげるいけにえはみな、そこへ持って来るのです。十分の一のささげ物、祭壇の前で揺り動かしてささげるささげ物、誓いを果たすためのささげ物、進んでささげるささげ物、羊や牛の初子のささげ物などすべてです。

7 そこで家族といっしょに神様の恵みを感謝し、お祝いに神様の前で楽しく食事しなさい。

8 今までは、それぞれが正しいと思うようにやってきましたが、これからは、そうはいきません。

9 ただし、約束の国に落ち着いてからの話です。

10 ヨルダン川を渡り、約束の国に住みつき、敵に攻められる心配もなく安心して暮らせるようになったら、

11 神様がご自分の家としてお選びになった聖所に、完全に焼き尽くすいけにえや、ほかのいけにえを持って行かなければなりません。

12 聖所の神様の前で、子供たちや使用人たちといっしょに祝いなさい。祝いには、同じ町に住む領地を持たないレビ人も、忘れずに招きなさい。

13 完全に焼き尽くすいけにえを、かってに好きな場所でささげてはいけません。

14 神様がお選びになる場所でだけささげなさい。神様は、一つの部族に与える領地から一個所を選ばれます。いけにえやささげ物は、ただそこにだけ持って行きなさい。

15 しかし食用にする場合は、今、鹿やかもしかの肉を取っているように、どこで動物を殺してもかまいません。神様のお恵みなのだから、好きなだけ、何回でも食べてかまわないし、礼拝規則で汚れた者とみなされる者が食べても、いっこうにかまいません。

16 ただし、血は決して食べないことです。一滴残らず、水のように地面にしぼり出してしまいなさい。

17 ささげ物は家で食べないこと。穀物や新しいぶどう酒やオリーブ油の十分の一の供え物、羊や牛の初子、誓いのささげ物、祭壇で揺り動かしてささげるささげ物などです。

18 これはみな、神様がお選びになるただ一つの聖所に持って来て、神様の前で、家族やレビ人といっしょに食べなさい。神様のお恵みを、皆で感謝するのです。

19 その時、レビ人を招くのを忘れないように。一生の間、何でもレビ人と分け合いなさい。

20 やがて国が大きくなり、聖所から遠く離れた所に住むようになったら、今、鹿やかもしかにしているように、羊や牛をそれぞれの牧場でつぶしてかまいません。礼拝規則で汚れた者とみなされる者も食べてかまいません。ただし血は例外です。血はいのちであり、いのちを食べてはいけないからです。

21 -

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24 血は地面にしぼり出しなさい。そうすればすべてがうまくいき、子々孫々しあわせに暮らせます。

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26 誓いのささげ物や完全に焼き尽くすいけにえなど、神様へのささげ物は、聖所に持って来なければなりません。神様の祭壇の上でいけにえとするのです。こうして血は祭壇に注ぎ、肉は食べなさい。

27 -

28 以上の戒めに注意深く従いなさい。神様の目にかなうことを行なえば、この先もずっと、すべてがうまくいくのです。

29 神様が国々を滅ぼされ、あなたがたがそこに住みつくようになっても、

30 そこの神々を拝むようなまねは、まちがってもしてはいけません。『どんなふうに拝めばいいのですか』などと言って、のこのこ拝みに行ってはいけません。

31 それは、ほかでもない、神様を侮辱することです。それらの国々は宗教に名を借りて、神様の大きらいな忌まわしい事をやってきました。子供を神々のいけにえにささげ、火で焼き殺しさえしたのです。

32 そんな恐ろしいことをしないように、私が与えるすべての戒めに従いなさい。かってにつけ加えたり、削ったりしてはいけません。

13

1 自分は預言者だとか、夢で未来を占えるとか言う者には、気をつけなさい。

2 ぴったり言いあてたからといって、うっかり信じてはいけません。どんなに占いが上手でも、『外国の神々を拝もう』などと誘惑する者の言うことを聞いてはいけません。

3 神様は、あなたがたが心とたましいを尽くして神様を愛しているかどうかを、試しておられるのです。

4 決して、ほかの神々を拝んではいけません。神様の命令にだけ従い、神様だけを頼りなさい。

5 あなたがたを惑わすような預言者は死刑です。エジプトの奴隷生活から助け出してくださった神様に背かせようとする、危険分子だからです。悪い考えがはびこらないように、そんな連中は処罰しなさい。

6 ひそかにあなたがたをそそのかして、外国の神々を拝ませようとする者には、近い親類や親しい友人、あるいは血を分けた兄弟、愛する妻や子であっても、

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8 決して同意してはいけません。その話を聞くことも、同情することもなりません。まして、罪を見のがしたり、かばいだてするなど、もってのほかです。

9 そんな者は一人残らず死刑です。まず身内の者が手を下し、次に全員が手を下しなさい。

10 エジプトの奴隷生活から助け出してくださった神様に背かせようとしたのですから、石を投げつけて殺しなさい。

11 そうすれば、その事件を知っただれもが、自分たちの中に恐ろしい悪の根があることに気づき、二度と同じ罪を犯さないでしょう。

12 イスラエルの町のどこかで、外国の神々を拝むようにそそのかす者がいると聞いたら、まず、うわさが本当かどうか確かめなさい。事実そのとおりで、そんな恐ろしいことが神様の下さった町で起こっていることがはっきりしたら、

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15 その町を攻め、住民も家畜も皆殺しにしなさい。

16 戦利品は道に積み上げて燃やし、町にも火を放って、神様への完全に焼き尽くすいけにえとしなさい。そこは永遠の廃墟となり、再建されることはありません。

17 まちがっても、戦利品を持ち帰ってはいけません。何もかも焼き尽くすことによって、神様は激しい怒りを静め、もう一度あなたがたに目をかけ、ご先祖への約束どおり、大国にしてくださいます。

18 ただ神様に従順に従い、きょう私が与える戒めを守り、神様の目にかなう正しいことを行なえば、必ずそうなるのです。

14

1 あなたがたは神様の国民だから、〔外国人が偶像を拝む時するように〕体を傷つけたり、葬式の時に額をそったりしてはいけません。

2 あなたがたは特別な国民なのです。神様が地上のどの国民よりも、あなたがたをご自分のものとしてお選びになったからです。

3 礼拝規則で汚れたものとみなされる動物を、食べてはいけません。食べていい動物は次のとおりです。牛、羊、山羊、鹿、かもしか、のろじか、野やぎ、くじか、大鹿、野羊

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6 ひづめが分かれていて反芻する動物は、食べてかまいません。

7 それ以外のものはだめです。らくだ、野うさぎ、岩だぬきなどは反芻しますが、ひづめが分かれていないので食べられません。

8 その反対に、豚はひづめが分かれていますが、反芻しないので、やはりだめです。このような動物は死体にも触れてはいけません。

9 水中の動物では、ひれとうろこのあるものは食べてかまいません。

10 それ以外はみな汚れたものです。

11 鳥は、次のものを除いて、ぜんぶ食べられます。はげわし、はげたか、黒はげたか、黒とび、はやぶさ、とびの類、からすの類全部、だちょう、よたか、かもめ、たかの類、ふくろう、みみずく、白ふくろう、ペリカン、野がん、鵜、こうのとり、さぎの類、やつがしら、こうもり

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19 例外はありますが、羽のある昆虫類は汚れたもので、食べてはいけません。

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21 自然に死んだものは食べてはいけません。ただ、いっしょにいる外国人は別です。その肉を彼らにやっても、売ってもかまいません。しかしあなたがたは、神様にとってきよい者とされているのだから、食べてはいけません。子やぎをその母の乳で煮てはいけません。

22 毎年、収穫の十分の一をささげなさい。

23 それを、神様が聖所としてお選びになった場所へ持って行き、いっしょに食べなさい。穀物、新しいぶどう酒、オリーブ油、牛や羊の初子などの十分の一です。こうして、いつも神様を第一にして生きることを学ぶのです。

24 聖所が遠すぎてささげ物を持って行けない時は、

25 それを売った代金を持って行きなさい。

26 着いてから、その金で牛と羊を一頭ずつ、ぶどう酒や強い酒など、何でも欲しい物を買い、家族といっしょに神様の前で楽しく食事し、祝い合いなさい。

27 同じ町に住むレビ人にも、忘れずにその一部を分け与えなさい。レビ人は土地もなければ、収穫もないからです。

28 三年ごとに、その年の十分の一のささげ物を、それぞれの地域の福祉事業に使いなさい。

29 財産のないレビ人や外国人、町に住む未亡人やみなしごに与えるのです。だれもがお腹いっぱい食べられるように助け合えば、神様は、万事がうまくいくように祝福してくださいます。

15

1 また七年目ごとに、イスラエル人の負債はみな、帳消しにしなさい。

2 貸し主は借用証書に、『返済ずみ』と書き込まなければなりません。それ以上返済の必要はないと、神様が決められたからです。

3 ただし外国人には、この決まりは適用されません。

4 このやり方を守れば、貧しい者はいなくなります。そして、約束の国で祝福されることまちがいなしです。ただ、きょう私が与える神様の戒めに注意深く従えば、の話です。

5 -

6 それさえ守れば、神様は約束どおり祝福してくださいます。多くの国に金を貸すことはあっても借りることはなく、多くの国を支配することはあっても、支配されることはありません。

7 神様が下さる国に着いてから貧しい者がいたら、その人に冷たくしてはいけません。

8 必要な物は何でも貸してやりなさい。

9 もうじき負債免除の年だからと貸すのを断わるなど、もってのほかです。その人がほかにどうしようもなく、神様に泣きついたら、言い逃れはできません。悪いのは明らかにあなたです。

10 未練がましくぐちをこぼさず、何でも快く貸しなさい。そうすれば、神様は仕事をうまくいかせ、ますます豊かにしてくださいます。

11 貧しい人はいつでもいるから、この戒めはどうしても必要です。くどいようですが、貧しい人には進んで貸しなさい。

12 ヘブル人(イスラエル人)の奴隷を買ったら、男でも女でも、七年目には自由にしてやりなさい。

13 といっても、手ぶらで帰してはいけません。

14 必ず、羊の群れと収穫したオリーブやぶどうの中から、十分な餞別を持たせなさい。神様の恵みを分け合うのです。

15 エジプトで奴隷だったあなたがたを、神様は助け出してくださいました。そのことを決して忘れないように、きょう私はこの戒めを与えたのです。

16 しかし奴隷のほうで、『自由になりたくありません。ご主人様が大好きですから、どうぞ、いつまでもおそばに置いてください』と言ったら、

17 その者の耳を、きりで戸に刺し通しなさい。そうすれば、永久にあなたの奴隷となります。女奴隷の場合も同じです。

18 一方、自由になりたいと言う者は、気持ちよく解放しなさい。六年ものあいだ使用人の賃金の半分以下の費用で働いてくれたからです。奴隷を自由にすることで、神様はあなたがたのすることを、いっそう栄えさせてくださいます。

19 羊や牛の雄の初子は神様のために取っておきなさい。牛の初子を働かせたり、羊や山羊の初子の毛を刈ったりしてはいけません。

20 その代わり、毎年、聖所で、家族といっしょに神様の前でそれを食べなさい。

21 ただし、足が悪かったり、目が見えなかったりして欠陥のあるものは、いけにえにできません。

22 家で食用にしなさい。礼拝規則で汚れた者とみなされる者でも、鹿やかもしかの肉と同じように、その肉を食べてかまいません。

23 ただし血は食べず、水のように地面にしぼり出しなさい。

16

1 三月(ユダヤ暦では一月)には必ず、過越の祭りを祝いなさい。神様が、夜、エジプトから助け出してくださった月だからです。

2 過越のいけにえには、子羊と雄牛を聖所で神様にささげなさい。

3 それを、イースト菌を入れないパンといっしょに食べます。エジプトから逃げ出す時に食べたパンをしのんで、七日間イースト菌を入れないパンを食べるのです。エジプトを発つ時には、パンをふくらませる暇もありませんでした。生涯、あの日のことを忘れないようにしなさい。

4 七日間は、ほんの少しのイースト菌も家に置いてはならず、過越の子羊の肉は翌朝まで残してはなりません。

5 過越のいけにえは家では食べられません。

6 神様が聖所としてお選びになった場所で食べなさい。毎年その日がきたら、夕方、日の沈むころに聖所でいけにえをささげるのです。

7 子羊を調理して食べ、翌朝、家に帰りなさい。

8 続く六日間は、イースト菌の入ったパンを食べてはいけません。七日目には、それぞれの町から集まり、神様の前で共に静かに過ごしなさい。その日一日、どんな仕事もしてはいけません。

9 取り入れが始まって七週間目に、

10 神様の前で七週の祭りを祝います。その時には、神様が収穫させてくださった量に応じて、それぞれ、進んでささげるささげ物をしなさい。

11 こうして、家族をはじめ家中の者が、神様の前でいっしょに喜び合うのです。この祝いには、同じ町に住むレビ人、外国人、未亡人、みなしごも招待しなさい。

12 エジプトで奴隷だったことを忘れないように、必ずこのとおりにしなければなりません。

13 取り入れも終わり、穀物を脱穀し、ぶどうをしぼり終えたころ、七日のあいだ仮庵の祭り(荒野でのテント生活を記念して、祭りのあいだ小屋に住むことから名づけられた)を祝いなさい。

14 家族も使用人もみな、いっしょに楽しく過ごします。同じ町に住むレビ人、外国人、みなしご、未亡人も忘れずに招待しなさい。

15 この祭りは聖所で祝います。収穫を感謝し、神様の数々の祝福を心から喜び合うのです。

16 イスラエルの男子はみな、年に三度、種なしパンの祭り、七週の祭り、仮庵の祭りの時、聖所に集まり、神様の前に出なければなりません。そのたびに神様へのささげ物を持って来なさい。

17 神様の祝福に応じて、ささげられるだけささげるのです。

18 神様が下さるすべての町々に、裁判官と行政官を任命しなさい。国の各地で正義が行なわれるためです。

19 金持ちの肩をもって正義を曲げたり、わいろを取ったりしてはいけません。知恵ある人も、欲に目がくらむと正しい判断ができなくなります。

20 至る所で正義が行なわれなければなりません。でなければ、神様が下さる国で成功を収めることはできません。

21 神様の祭壇のほかは、たといどんな事情があろうとも、いまわしい偶像を立ててはいけません。

22 オベリスクも同じです。神様はそのどちらも大きらいなのです。

17

1 病気とか欠陥のある牛や羊は、神様へのいけにえにはできません。そんなものをささげるのは、神様を辱しめることです。

2 どこででも、だれでも、神様との契約を破り、私が堅く禁じたにもかかわらず、ほかの神々、太陽、月、星などを拝んでいる者がいると聞いたら、

3 -

4 まず、うわさが事実かどうかよく調べなさい。事実であれば、

5 男だろうが女だろうが、町の外に連れ出し、石を投げつけて殺しなさい。

6 ただし死刑にする場合は、一人の証言では不十分です。必ず二人か三人の証言を聞きなさい。

7 死刑と決まったら、はじめに証人が石を投げつけ、続いて全員が手を下します。こうして、悪の根を断ち切るのです。

8 判断の難しい事件、例えば証拠が不十分な殺人事件、人権侵害の問題などの場合は、神様の聖所に行き、

9 レビ人の祭司か、その時の主任判事に上告しなさい。彼らが判決を下します。

10 その判決に不服を申し立てることはできません。おとなしく判決に従いなさい。

11 そのとおり、完全に実行するのです。

12 神様がお選びになった祭司や裁判官の判決に従わなければ死刑です。そのような罪人は、イスラエルから除き去らなければなりません。

13 きびしい罰を加えるのは、法廷を侮辱してはならないことを教えるためです。

14 神様が下さる国を占領し、住みついて、ほかの国のように王が必要になった時は、

15 必ず神様がお選びになる者を王としなさい。外国人は絶対に王になれません。

16 王は自分のために大きな馬屋を建てたり、馬を買いにエジプトへ部下をやったりしてはいけません。神様が、『二度とエジプトへ帰ってはならない』と言われたからです。

17 大ぜいの妻をもってはいけません。神様よりも妻のほうに心を奪われる危険があるからです。ばく大な財産をつくるのもよくありません。

18 戴冠式を終え、王位についたら、レビ人の祭司が保管している書から、この法律を書き写しなさい。

19 それをいつも手もとに置き、一生のあいだ毎日読みなさい。そうすれば、神様のすべての戒めを守ることによって、神様をたいせつにすることを学ぶでしょう。

20 毎日、規則的に読み続けていけば、自分は国民より偉いのだと思い上がったり、ほんのわずかでも神様の法律からそれたりしません。長いあいだ立派に国を治め、王位は何代のちまでも、子孫に受け継がれます。

18

1 祭司とレビ部族は、ほかの部族と違って土地がもらえません。彼らは、祭壇にささげられるいけにえやささげ物で、生計を立てるのです。

2 神様のものはみないただけるのですから、相続地をもらう必要はありません。何もかも神様の約束のとおりです。

3 いけにえにする牛や羊の肩、頬、胃は、祭司に与えなさい。

4 祭司はそのほかに、収穫を感謝するしるしとして神様にささげる穀物の初物、新しいぶどう酒、オリーブ油、羊の毛の初物などももらえます。

5 神様はすべての部族の中からレビ部族を、代々神様に仕える者としてお選びになったからです。

6 レビ人はイスラエルのどこに住んでいようと、いつでも聖所に来てかまいません。そこで定期的に仕えているほかのレビ人と全く同様に、神様の御名によって仕事ができます。

7 -

8 そして同じように、いけにえやささげ物の分配も受けます。貧しいからではなく、受ける権利があるからです。

9 約束の国に着いたら、そこの住民のいまわしい習慣に染まらないよう、くれぐれも注意しなさい。

10 自分の子供を異教の神々へのいけにえとして焼き殺すような者は、死刑です。そのほか、魔術師、占い師、まじない師、蛇使い、霊媒師、魔法使い、口寄せも赦されません。

11 -

12 こんなことをする者は、神様にきらわれ愛想をつかされます。ほかの国が滅ぼされるのもそのためです。

13 だからあなたがたは、神様に非難されないように歩みなさい。

14 これから追い払う国々はみな、このような悪いことを行ないますが、絶対にまねをしてはいけません。

15 代わりに神様は、イスラエル人の中から私のような預言者を起こされます。その預言者の言うことを聞きなさい。

16 これはあなたがたが願ったことです。あれはホレブ山(シナイ山)のふもとでした。あの時あなたがたは、『恐ろしくて生きた心地もしません。もう二度と神様の恐ろしい声を聞かなくてすむように、山をこがす火を見なくてすむようにしてください』と泣きつきました。

17 神様は願いを聞き、私に言われました。『よろしい、言うとおりにしよう。

18 イスラエル人の中から、あなたのような預言者を立てよう。わたしが言いたいことはみな、その者に語らせる。

19 その者の言うことを聞かない不届き者は、わたしの教えをいいかげんに扱ったのだから、わたしが罰しよう。

20 しかし預言者のほうが、自分の考えをわたしの教えのように見せかけて語ったり、ほかの神々の教えを語ったりした時は、その預言者が死刑になるのだ。』

21 では、神様の教えかそうでないか、どうしたらわかるでしょう。

22 預言どおりのことが起こらなければ、それはうそです。ただのでっち上げです。そんな預言者を恐れることはありません。

19

1 神様が、あなたがたのものになる国々をぜんぶ滅ぼし、その町々に住むようになったら、

2 避難用の町を三つ確保しなさい。過って人を殺した者が安全に逃げ込めるようにするのです。国を三つに区分し、各地域に一つずつ避難用の町を設けます。町に通じる道はよく補修しておきなさい。

3 -

4 町を設けるのは、次のような場合のためです。

5 二人の人が森へ木を切りに行ったとします。ところが、一人が木を切ろうと斧を振り上げたとたん、刃が柄から抜け、相手に当たり、運悪くその人は死んでしまいました。そういう場合、避難用の町に逃げ込んで身を守るのです。

6 だれも復讐はできません。どこに住んでいても、必ず三つの町の一つには逃げ込めるように、よく考えて町を選びなさい。でないと、町まで行かないうちに怒りに燃えた復讐者に追いつかれ、殺されるかもしれません。過って殺しただけでは死刑にはなりません。

7 -

8 ご先祖への約束どおり、神様が領土を広げ、約束の国を全部くださったら、

9 避難用の町をさらに三つふやしなさい。もっとも、それには、きょう私が与える戒めをみな守り、神様を愛し、神様の言われるとおりに歩まなければなりません。

10 避難用の町が十分にあれば、罪のない者が殺されることもなく、不法なリンチが行なわれた責任をとることもなくなります。

11 しかし、以前から憎んでいた相手を待ち伏せて殺した時は、避難用の町に逃げ込んでもむだです。

12 犯人の出身地にあたる町の長老が連れ戻し、被害者の復讐をする者に殺させなさい。

13 容赦はいりません。イスラエルから人殺しを除き去りなさい。そうしてはじめて、万事が順調にいくのです。

14 神様の下さる国へ着いたら、かってに境界線を動かして人の土地を盗んではいけません。

15 たった一人の証言で、人を有罪にしてはいけません。証人は、少なくとも二人、できることなら三人いればもっといいのです。

16 無実の人をつかまえて、罪を犯す現場を見たと偽証する者がいたら、

17 その者と訴えられた者とを二人とも、そのとき任務についている祭司と裁判官のところへ連れて行きなさい。

18 裁判官がよく調べた結果、偽証であることがはっきりしたら、

19 訴えられた者が受けるはずだった刑を、反対に偽証人が受けることになります。こうして悪の根を取り除きなさい。

20 それがいい見せしめとなり、だれも偽証しなくなるでしょう。

21 だから容赦はいりません。みな自分の罪に見合う刑罰を受けるのです。いのちの代わりにはいのち、目の代わりには目、歯の代わりには歯、手の代わりには手、足の代わりには足で償うのです。

20

1 戦いに行き、はるかに強い大軍を目の前にしても、馬や戦車の数に恐れをなしてはいけません。エジプトから安全に助け出してくださった神様がついておられます。

2 戦う前に、祭司はイスラエル全軍に宣言しなさい。

3 『皆よく聞け。きょうの戦いを恐れてはならない。

4 神様が味方だ。神様が戦われるからには、勝利はまちがいなくわれわれのものだ。』

5 続いて司令官が質しなさい。『家を建てたばかりで、まだ神様におささげしていない者はいないか。戦死でもして、ほかの者がその家を神様にささげることになったらまずい。すぐ家へ帰れ。

6 ぶどうの木を植えて、まだその実を食べていない者はどうか。戦死でもして、ほかの者に食べられてはまずい。すぐ家へ帰れ。

7 婚約したばかりの者はいないか。戦死でもしたら、ほかの者がその娘と結婚することになる。今すぐ家へ帰り、結婚しろ。

8 怖じ気づいている者はいないか。そんなやつがいたら、全体の士気に影響する。さっさと家へ帰れ。』

9 こう言い終わったら、司令官は戦いの指揮官の名を告げます。

10 戦いをいどむ町に近づいたら、まず降伏を勧めなさい。

11 その町が降伏して門を開けた場合、住民は全員奴隷にしなさい。

12 降伏をこばみ、あくまで戦うというのなら、包囲攻撃をかけます。

13 そして神様がその町を下さったら、男は皆殺しにしなさい。

14 ただし、女、子供、家畜、戦利品は自分たちのものにしてかまいません。

15 これは、遠くの町々を攻める時の方法です。約束の国の中では通用しません。

16 約束の国の中の町々では、住民は皆殺しにしなさい。

17 ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を全滅させるのです。これは神様の命令です。

18 こうしないと、その地の住民があなたがたを惑わして、偶像礼拝をさせるかもしれません。吐き気をもよおすような忌まわしい習慣に染まり、神様にひどい罪を犯したら、取り返しがつきません。

19 町を包囲攻撃する時は、くだものの木を全滅させないようにしなさい。好きなだけ食べてかまいませんが、木を切り倒してはいけません。木は敵ではないのです。

20 食用にならない木は切り倒して、包囲攻撃用のはしご、移動やぐら、破城槌などを作りなさい。

21

1 約束の国に着いてから殺人事件があり、被害者は町の外で発見されたのに、現場を目撃した者がいない場合は、次のようにしなさい。

2 まず、長老と裁判官が、死体から最も近い町はどこか調べます。

3 どこかわかったら、その町の長老が、まだ仕事をしたことのない雌の子牛を引いて、

4 渓流の流れる開墾されていない谷間へ行き、そこで子牛の首を折ります。

5 それから祭司が進み出ます。神様は、聖所の仕事や人々を祝福することばかりでなく、訴訟があったり事件が起きたりした時に判決を下すためにも、祭司を選ばれたのです。

6 そこで、町の長老たちは子牛の上で手を洗いきよめ、きっぱり宣言します。

7 『被害者に手をかけたのは私たちではありません。私たちが全く知らないうちに事件は起きたのです。

8 神様、どうぞお赦しください。私たちは神様が買い取られた国民です。その私たちに、罪のない者を殺した罪を負わせないでください。』

9 こうして、神様の指図どおりに罪悪を取り除きなさい。

10 神様のおかげで戦いに勝ち、捕虜を連れて引き揚げる時、

11 その中に、妻にしたいような美しい娘を見つけたら、

12 家へ連れ帰りなさい。娘は髪をそり、つめを切り、

13 すっかり着替えをし、捕虜になったとき身につけていた物を全部はずして、あなたの家で、両親のために一か月のあいだ喪に服します。そのあと結婚しなさい。

14 彼女が好きでなくなったら、自由の身にして去らせなさい。恥をかかせたのですから、売り払ったり、奴隷のように扱ったりしてはいけません。

15 妻が二人あり、どちらにも子供がある場合、長男の母親はきらいで、

16 次男の母親のほうを愛しているからといって、次男に財産を余計やることはできません。

17 きらわれている母親の子でも、父親には初めての子であり、長男の権利を持っているのだから、習慣どおり、兄に弟の二倍の財産を与えなければなりません。

18 いくら懲らしめても親の言うことを聞かない、強情で反抗的な息子は、

19 町の長老のところへ連れて行きなさい。

20 『息子は強情っ張りのうえに反抗的で、とても手に負えません。親の言うことなどそっちのけで、大酒ばかり食らい、遊び暮らしています』と訴えるのです。

21 そのあと、町の者が息子に石を投げつけて殺します。二度と若者たちがそんな親不孝をしないように、今後の見せしめとするのです。

22 人が死刑にあたる罪を犯し、殺され、木にさらされる場合は、

23 次の日までそのままにしてはいけません。その日のうちに埋葬しなさい。木にさらされた者は、神様にのろわれた者だからです。そんなことで、神様が下さる国を汚してはいけません。

22

1 迷い牛や羊を見つけたら、そ知らぬふりをせず、持ち主のところへ連れて行きなさい。

2 持ち主がわからない時は、自分のところであずかり、持ち主が捜しに来たら返してやりなさい。

3 このほか、ろば、衣服など、見つけた物は何でも同じです。持ち主がわかるまで大事にあずかりなさい。

4 足をすべらせて荷の下敷きになった牛やろばを立たせようとしている人を見たら、黙って素通りしてはいけません。すぐ行って手を貸しなさい。

5 女が男の格好をし、男が女の格好をしてはいけません。神様はそんなことが大きらいです。

6 鳥の巣が地面や、木の上にあるのを見つけた場合、ひなや卵が母鳥といっしょだったら、みんないっしょに取ってはいけません。

7 母鳥は逃がして、ひなだけを取りなさい。そうすれば、あなたがたもしあわせに暮らせます。

8 家を新築する時は、人が落ちないように屋上に手すりをつけなさい。そうしておけば、万一だれかが落ちても、家や持ち主には責任がありません。

9 ふどう園にはほかの種をまいてはいけません。そんなことをしたら、どちらの実も祭司に没収されます。

10 牛とろばを組にして耕してはいけません。

11 羊毛と亜麻というふうに、二種の糸で織った衣服を着てはいけません。

12 (神様の命令を思い出すために)、外套の四すみにふさを縫いつけなさい。

13 結婚してから、夫が、結婚前にほかの男と関係があったと妻に言いがかりをつけ、『妻は処女ではなかった』と訴えたら、

14 -

15 娘の両親は町の裁判官に、娘が処女であった証拠を持って行きなさい。

16 まず父親が裁判官に、『この男に娘を嫁がせましたが、今になって、とんでもない言いがかりをつけるのです。娘が処女でなかったと言っていますが、でたらめもいいとこです。ご覧ください。ちゃんと証拠があります』と言い、裁判官の目の前に衣服を広げなさい。裁判官は夫をむち打ちの刑にし、

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18 -

19 罰金三万円を娘の父親に払わせなさい。イスラエル人の処女に言いがかりをつけ、恥をかかせた罰です。彼は生涯、妻を離縁することができません。

20 しかし、夫の訴えどおり、妻が処女でなかったことがはっきりしたら、

21 裁判官は彼女を父親の家の入口のところに連れ出し、町の者が石を投げつけて殺しなさい。両親のもとにいながら売春婦まがいのひどい罪を犯し、イスラエルの名を汚したからです。このような罪悪は除き去らなければなりません。

22 姦通罪を犯し、見つかった場合、男も相手の人妻も二人とも死刑です。こうして、イスラエルから罪悪を除き去りなさい。

23 婚約中の娘が町の城壁内で暴行された場合、娘も犯人も二人とも町の外に連れ出し、石で打ち殺しなさい。娘は助けを叫び求めず、男は他人の婚約者を奪ったからです。

24 -

25 罪悪は除き去らなければなりません。ただし事件が起きたのが町の外であれば、死刑になるのは男だけです。娘は殺人事件の被害者同様に罪はありません。叫び声をあげたのに、町から遠かったのでだれも助けに来なかったと見なすのです。

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28 婚約前の娘に暴行し、捕まった場合は、父親に罰金一万五千円を払い、娘と結婚しなければなりません。絶対に離婚はできません。

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30 義理の母は父親の妻なのですから、父親が死んでからも関係を持ってはいけません。

23

1 睾丸のつぶれた者、陰茎を切り取られた者は、聖所に入れません。

2 私生児とその十代あとまでの子孫も、聖所には入れません。

3 アモン人とモアブ人は十代目の子孫でも、絶対に聖所へは入れません。

4 彼らはあなたがたがエジプトを出て来た時、食べ物も水もくれなかったからです。ただ歓迎しないばかりか、わざわざメソポタミヤのペトルからベオルの息子バラムを雇い、あなたがたをのろわせようとさえしました。

5 しかし神様は、バラムの言うことに耳を貸さず、のろうどころか祝福するようにされました。あなたがたを愛しておられるからです。

6 生涯、どんな方法ででも、アモン人やモアブ人を助けてはいけません。

7 ただし、エドム人やエジプト人は見下さないように。エドム人は兄弟、エジプト人はかつて生活を共にした人たちだからです。

8 あなたがたといっしょに来たエジプト人の孫は、聖所に入ってかまいません。

9 戦争中は、陣営内の男子は身をきよく保たなければなりません。夜、射精して身を汚した者は陣営を出て、

10 -

11 夕方まで外にいなければなりません。日が暮れたら、体を洗い陣営に戻ります。

12 用を足す時は陣営の外に出なさい。

13 武器とくわを持って行き、穴を掘って用を足したら、きれいに土をかけます。

14 陣営内はいつもきよくしておくのです。神様がその中を歩まれるとき見苦しい物があったら、いやな思いをなさるでしょう。せっかくあなたがたを守り、敵を負かそうとしておられたのに、そんなことで愛想をつかされたら、元も子もありません。

15 逃げて来た奴隷を、むりやり主人のところへ連れ戻してはいけません。決して意地悪をせず、どこでも好きな所に住まわせなさい。

16 -

17 イスラエルの女子は神殿娼婦になってはいけません。男子も、神殿男娼になってはいけません。そんなことでもうけた物を神様にささげてはいけません。神様はそんな汚らわしいことは大きらいです。

18 -

19 イスラエル人には、利息を取って物を貸してはいけません。金、食物、そのほか、どんなものについてもです。

20 外国人ならかまいませんが、イスラエル人はだめです。兄弟であるイスラエル人から利息を取ったりしたら、約束の国へ着いても、神様に祝福されません。

21 神様に誓いを立てたら、すぐ実行しなさい。どんなことでも、ぐずぐずあとに延ばしてはいけません。誓いを破るのは罪です。

22 誓いを取り消せば、罪にはなりません。

23 誓った以上、そのとおり実行するよう気をつけなさい。自分から神様に誓ったのですから、責任はとりなさい。

24 人のぶどう園に入って好きなだけ食べるのはかまいませんが、持ち帰ってはいけません。

25 麦畑でも同じです。そこで食べる分だけ手で摘むのはかまいませんが、かまで刈り取ってはいけません。

24

1 妻のことで何か気に入らないことがあったら、離縁状を渡して去らせなさい。

2 彼女が再婚し、

3 その夫からも離縁されるか、あるいは死別した場合、

4 前の夫は彼女と再婚できません。彼女は汚されているからです。そんなことをしたら、神様が下さる国に罪を持ち込むことになります。

5 新婚の男子は兵役やその他の務めを免除されます。一年間は家にいて、新婚生活を思うぞんぶん楽しむのです。

6 ひき臼を担保に取るのは違法です。粉がひけなくなったら、毎日の食事もできません。

7 同胞のイスラエル人をさらって奴隷にしたり売り飛ばしたりする者は、死刑です。そのような罪悪は除き去りなさい。

8 ツァラアトの場合は、何でも祭司の言うとおりにしなさい。どうすればよいかは、すべて祭司に教えてあります。

9 エジプトからの道中、神様がミリヤムになさったことを思い出しなさい。

10 物を貸す時は、担保の品を取りに、相手の家にずかずか入り込んではいけません。

11 相手が持って来るのを外で待ちなさい。

12 貧しくて外套しか出せない人には、夜の間はそれを返してやりなさい。あなたがそれを掛けて寝てはいけません。返してもらった人は、これで寒さをしのげると感謝するでしょう。神様はあなたの正しい行ないをちゃんと認めてくださいます。

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14 貧しい使用人をこき使ってはいけません。イスラエル人でも町に住む外国人でも同じです。日が暮れないうちに、その日の給料を払いなさい。貧しい人はすぐにでも金がいるのです。あまりひどい扱いをすると、その人は神様に訴えるかもしれません。そうなったらあなたは有罪です。

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16 父親は子供の罪で死刑になることはなく、子供も父親の罪で死刑になることはありません。人が死刑になるのは自分の罪のためです。

17 移住者やみなしごを正しく扱いなさい。借金のかたに未亡人の外套を取り立ててはいけません。

18 あなたがたも、エジプトでは奴隷だったではありませんか。神様が助けてくださったから、今はこうしていられるのです。そのことを忘れないためにも、気の毒な人には親切にしなさい。

19 刈り入れをし、畑にひと束おき忘れて来たら、わざわざ取りに戻らず、移住者やみなしご、未亡人のために残しておきなさい。そうすれば、神様は何もかもうまくいくようにしてくださいます。

20 オリーブの実を打ち落とす時も同じです。あとでもう一度、残りを打ち落としに行ってはいけません。移住者やみなしご、未亡人のために残しておきなさい。

21 ぶどう園のぶどうもそうです。落ちた実を拾い集めたりせず、貧しい人のために残しておきなさい。

22 エジプトで奴隷だったことをくれぐれも忘れないように。以上のことを命じるのも、そのためです。

25

1 裁判でむち打ちの刑と決まったら、裁判官は自分の前に罪人を伏させ、罪の程度に応じて、それぞれ適当な回数だけ打ちなさい。ただし最高は四十回で、それ以上は絶対に打ってはいけません。あまりにきびしい刑を科して、同胞を不当に扱わないためです。

2 -

3 -

4 脱穀をしている牛に口かせをはめてはいけません。

5 息子がないまま死んだ人の妻は、夫に兄弟がいる場合、ほかの者と再婚はできません。必ず夫の兄弟と結婚するのです。

6 そして、二人の間にできた長男に前の夫の名を継がせ、その家が絶えないようにしなさい。

7 兄弟が結婚したがらず、義務を果たさない時は、町の長老に、『夫の兄弟は夫の名を残すために私と結婚してくれません』と訴え出なさい。

8 長老はその男を呼び、話し合います。それでも頑として承知しないなら、

9 長老の見ている前でその男に近寄り、くつを脱がせ、顔につばして言ってやりなさい。『兄弟の家を立てないような人は、こうなるのよ。』

10 そのあと彼の家は、『くつを脱がされた者の家』と呼ばれます。

11 二人の男がけんかをし、一方の男の妻が夫を助けようとして相手の男の急所をつかんだ時は、

12 容赦なく女の手を切り落としなさい。

13 取り引きには正確なはかりを使い、正直に量りなさい。そうすれば、神様が下さる国でいつまでもしあわせに暮らせます。

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16 目盛りをごまかす者は神様にきらわれます。

17 エジプトからの道中でのアマレク人の仕打ちを、決して忘れないようにしなさい。

18 神様を恐れず戦いをいどみ、ひきょうにも、疲れ果て列のずっとうしろに離れた者に襲いかかったのです。

19 神様が約束の国で敵をみな破り、安心して住めるようになったら、アマレク人を皆殺しにし、その名を完全に葬り去りなさい。どんなことがあっても必ずそうするのです。

26

1 約束の国を征服し終え、住みつくようになったら、

2 聖所で、毎年の収穫の初物を神様にささげなければなりません。かごに入れたささげ物を、そのとき任務についている祭司に渡し、『これは、神様がご先祖に約束された国へ連れて来てくださったことへの、感謝のしるしです』と言いなさい。

3 -

4 祭司はかごを受け取り、祭壇の前に置きます。

5 それからあなたが、神様の前でこう言います。『私の先祖は、エジプトへ避難したアラム人の移住者です。初めは小人数でしたが、エジプトにいる間に、大きな強い国民となりました。

6 そのためにひどい虐待を受け、神様のお助けを必死に求めたのです。その叫びを聞き、苦しみあえいでいるさまをご覧になった神様は、力強い奇蹟を起こし、エジプトから救い出してくださいました。エジプト人の目の前で、目をみはるような恐ろしい奇蹟を次々と起こし、

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9 ついに私たちを、この「乳と蜜の流れる」国に連れて来てくださったのです。

10 神様、ご覧ください。この土地から取れた初物でございます。』次に、神様の前にそれを供え、礼拝します。

11 そのあと、神様のお恵みを感謝してごちそうを食べます。家族はもちろんのこと、レビ人やイスラエルに住む外国人といっしょに祝うのです。

12 三年ごとに、特別な十分の一のささげ物をします。その年は十分の一のささげ物をみな、レビ人、外国人移住者、みなしご、未亡人に分け与え、彼らの必要を満たしてやるのです。

13 そうして、神様の前で言いなさい。『ご命令どおり、十分の一のささげ物をみな、レビ人や外国人移住者、みなしご、未亡人に与えました。すべて決まりどおりに行ない、忘れたことは一つもありません。

14 喪中など、礼拝規則で汚れていると見なされる時は、十分の一のささげ物にさわりませんでした。また、そのうちほんの少しでも死人に供えたことはありません。いつも神様にお従いし、ご命令はすべて守りました。

15 どうか、天の聖所からご覧になり、お約束どおり私たちに下さった国を祝福し、「乳と蜜の流れる」国にしてください。』

16 きょう神様がお与えになる、すべての戒めと法令に心から従いなさい。

17 あなたがたはきょう、イスラエルの主こそほんとうの神様であり、これからは主に従い、その法律、法令を守り、命令に従いますと断言しました。

18 そこで神様は、こう宣言なさいました。『約束どおり、おまえたちはわたしの国民だ。これからはすべて、わたしの法律どおりに行なえ。』

19 そうすれば、あなたがたは他のどの国よりもすばらしい国となり、称賛の的となります。ただし、それには、神様が命じるとおり、聖なる国民とならなければなりません。」

27

1 それから、モーセとイスラエルの長老たちは、次のような指示を与え、そのとおり行なうよう命じました。

2 「ヨルダン川を渡り、約束の国、『乳と蜜の流れる』地に入ったら、川底から丸い石を取り、川向こうのエバル山に記念碑を建てなさい。石の表面には石灰を塗り、神様の法律を書き記すのだ。

3 -

4 -

5 またそこに、神様の祭壇も築きなさい。自然のままの丸い石を積み重ね、その上で、完全に焼き尽くすいけにえを神様にささげる。

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7 さらに和解のいけにえもささげ、神様の前で祝宴を開いて、楽しく過ごしなさい。

8 もう一度言うが、記念碑には全部の法律を書き記すのだ。」

9 それから、モーセとレビ人の祭司たちとは、イスラエルの全国民に呼びかけました。「みんな、よく聞け。きょう、あなたがたは神様の国民となった。

10 だからきょうから、すべての命令に従いなさい。」

11 同じ日に、モーセは命じました。

12 「約束の国に入ったら、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ヨセフ、ベニヤミンの各部族は、ゲリジム山に立って祝福を告げ、

13 ルベン、ガド、アシェル、ゼブルン、ダン、ナフタリの各部族は、エバル山に立ってのろいを告げなさい。

14 それから、レビ人が両者の間に立ち、全国民に向かって叫びます。

15 『たとい隠れてでも、彫像や鋳像を作り、拝む者は、神様にのろわれる。神様は人間が作った神々が大きらいだからだ。』国民はみな、『アーメン』(「そのとおりです」「そうしてください」の意)と答えなさい。

16 『親を侮辱する者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

17 『隣の土地との境界線を移す者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

18 『盲人をだます者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

19 『外国人、みなしご、未亡人などに不正を働く者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

20 『義理の母と姦通する者はのろわれる。彼女は父親のものだからだ。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

21 『獣姦をする者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

22 『異父姉妹であれ異母姉妹であれ、自分の姉妹と姦通する者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

23 『たとい父親が死んでからでも、義理の母親と姦通する者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

24 『ひそかに殺人を犯す者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

25 『報酬をもらって、罪もない人を殺す者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

26 『この法律を守らない者はのろわれる。』国民はみな、『アーメン』と答えなさい。

28

1 神様の戒め、きょう与えるこの戒めに完全に従えば、神様はあなたがたを、世界中で一番すばらしい国民とし、

2 次のような祝福をお与えになります。町の中でも外でも祝福され、子宝にも恵まれます。作物は豊かに実り、羊や牛もどんどん増え、くだものとパンには事欠きません。よそから帰って来る時も出かける時も、必ず祝福されます。

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7 神様は敵を蹴散らされます。束になってかかっても、くもの子を散らすように逃げ帰るのがおちです。

8 約束の国に着いたら、神様は良い収穫をあげ、丈夫な牛が生まれ、何もかもがうまくいくように守ってくださいます。

9 神様に従い、神様の道に歩むなら、あなたがたは、神様にささげられた聖なる国民としていただけるのです。

10 世界中の国々は、あなたがたが神様のものであることを知り、恐れるでしょう。

11 神様は約束どおり、子宝を恵み、家畜や作物の実りに至るまで祝福してくださいます。

12 天の雨の倉を開き、豊かな収穫をもたらす雨を季節ごとに降らせてくださるのです。すべてが順調にいくので、あなたがたは栄え、多くの国に貸し与えるようにはなっても、借りることはありません。

13 きょう与える神様の戒めに従いさえすれば、どこよりもすばらしい国となり、いつも優位に立てるのです。

14 ただし、それはみな、私が与える法律をきちんと守るかどうかにかかっています。だから、絶対にほかの神々を拝んではいけません。

15 もし神様の言われることを聞かず、きょう与える法律を守らないなら、必ずのろわれます。町の中でも外でものろわれ、くだものやパンに不自由します。子供は授からず、作物の実りも乏しく、牛や羊まで減る一方です。帰って来る時も出かける時も、良くないことばかり起きます。

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20 神様が自らのろいをお下しになるからです。何もかもが混乱し、やることなすこと失敗ばかり、そして最後には滅ぼされます。それもこれも、神様を捨てた罰です。

21 これから占領する国で、神様は伝染病をはやらせ、難なくあなたがたを滅ぼしてしまわれます。

22 結核、熱病、伝染病、ペストの流行、戦争、さらに黒穂病による作物の立ち枯れと、きりがありません。こんな惨事が続いたら、たちまち全滅です。

23 天は青銅のように堅く閉じて雨を降らせず、地は鉄のように堅くしまり、作物を実らせません。

24 国中が干上がり、ほこりと化し、もうれつな砂嵐が荒れ狂って、生き残る者は一人もありません。

25 神様から見捨てられるので、勢い込んで戦いに出かけても、たちまち陣容はくずれ、敵前をみじめに敗走するでしょう。そうなったら、国々のいいように、もてあそばれるだけです。

26 戦死者の死体が鳥や野獣のえじきとなっても、追い払う者さえいません。

27 また神様は、エジプトの皮膚病にかからせます。できもの、腫瘍、壊血病、疥癬に苦しめられ、治す薬もありません。

28 恐ろしさのあまり気が転倒し、何が何だかわからなくなり、パニック状態に陥ります。

29 盲人が暗やみで手探りするように、真っ昼間、明るい所でも手探りしなければ歩けません。何をやってもうまくいかず、痛めつけられ、略奪されるばかりなのに、だれも助けてくれません。

30 婚約者は奪われ、自分が建てた家には他人が住み、自分が育てたぶどう園の実を他人が食べるようになります。

31 自分の牛が目の前で殺されても、その肉の一片さえもらえません。目の前でろばが連れ去られても、黙って見ているだけで、取り返すことはできません。羊がみな敵に奪われても、だれも守ってくれないのです。

32 目の前で、息子や娘が奴隷に売られます。いくらかわいそうだと思っても、助けることはできません。

33 名前さえ聞いたこともない国民が、あなたがたが汗水流して育てた作物を食べ、あなたがたを痛めつけます。

34 見ることすべてが悲しいことばかりで、心痛のあまり気が変になります。

35 おまけに神様は、あなたがたをつま先から頭のてっぺんまで、できものだらけにされるでしょう。

36 神様は、あなたがたも王も国外追放にし、ご先祖もだれも知らなかった国へ追いやります。そこでは、木や石の神々を拝むしかありません。

37 こうして神様に追い払われ、国々の恐怖の的、ことわざの種、笑い草となるのです。

38 いくら種をまいても、いなごが食べてしまうので、収穫はわずかです。

39 ぶどう園をつくり、せっせと手入れしても、虫に食い荒らされ、実を食べることもぶどう酒を飲むこともできません。

40 オリーブの木はどこにでもありますが、実が熟さないうちに落ちてしまうので、体に塗るほどのオリーブ油さえ採れません。

41 息子や娘はあっという間に連れ去られ、奴隷になります。

42 いなごは、木と言わずぶどうと言わず、食い尽くします。

43 いっしょに住む外国人がますます金持ちになっていく中で、あなたがたはますます貧しくなるばかりです。

44 物を貸すのは彼らで、あなたがたではありません。外国人のほうが恵まれ、あなたがたより優位に立ちます。

45 神様の言われることを聞かないと、これらののろいが次々に降りかかり、ついには滅ぼされます。どこにも逃げ場はありません。

46 これらのことはみな、あなたがたと子孫への警告なのです。

47 何の不自由もなくしていただきながら、神様をほめたたえようとしなければ、敵の奴隷にされます。敵に攻められ、飢え渇き、着る物もなく、あらゆる不自由を忍ばなければなりません。絶対にはずせない鉄のくびきをはめられ、最後には全滅するのです。

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49 神様は遠く離れた国を立ち上がらせ、わしが飛びかかるように、あなたがたを襲わせます。聞いたこともないことばを話し、

50 子供だろうが老人だろうが容赦しない、どう猛で怒りに燃えた国民です。

51 家畜も農産物も何もかも食い尽くされ、イスラエルでは、麦も新しいぶどう酒もオリーブ油も底をつき、牛や羊もいなくなります。

52 町町は包囲され、頼みの、高い城壁もついにくずれ落ちる日がきます。

53 激しい包囲攻撃の中で、わが子の肉さえ食べるほどの食糧難にみまわれるのです。

54 ふだんはやさしい人でさえ、兄弟や妻はおろか子供にまで、むごい仕打ちをします。

55 町の中には食べる物が何もなくなり、飢えをしのぐためにわが子の肉を食べるばかりか、それを一人占めにしようとする者さえ出るでしょう。

56 足を地面につけようともしないほど上品でやさしい婦人が、愛する夫や子供たちと物を分け合うのをいやがり、後産や自分の産んだ赤ん坊を彼らに見せず、一人で食べてしまいます。敵の包囲攻撃のために町中が恐ろしいききんに陥り、死ぬほど苦しい目を見るからです。

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58 この書にあるすべての法律に従わず、神様の輝かしく恐るべき御名をあがめようとしないなら、あなたがたも子孫も、絶えず伝染病に苦しめられるでしょう。

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60 あの恐ろしいエジプトの病気を、神様がはやらせるからです。伝染病は国中に広がります。

61 それだけではありません。神様は、この書にも書いてない、ありとあらゆる伝染病、災いを下し、ついには、あなたがたを全滅させるでしょう。

62 星の数ほどいるあなたがたも、ほんの一にぎりが生き残るだけです。神様の命令に従わなければ、必ずこのとおりになります。

63 かつて神様があなたがたのためにすばらしい奇蹟を行ない、人数をふやすことを喜んだように、その時には、あなたがたを滅ぼすことを喜ばれるでしょう。一人もイスラエルに残れません。

64 世界の果てから果てまで追い散らされます。そこで、あなたがたもご先祖も知らなかった、木や石でできた外国の神々を拝むのです。

65 一時も安心できず、不安と絶望に打ちのめされ、悲しみと恐れのあまり体はやせ衰えてしまうでしょう。

66 しじゅう死の危険にさらされ、昼も夜も、恐ろしさのあまり生きた心地もしません。明日のいのちさえわからないのです。

67 朝がくると、『夜になればいいのに』と言い、夜になればなったで、『朝がくればいいのに』とため息をつきます。そう言わずにはいられないほど、恐ろしいことばかり起こるのです。

68 もう行くこともないと言われたエジプトへ、神様は舟で連れ帰ります。そこで自分を奴隷として敵に身売りしようとしても、買ってくれる者もいません。」

29

1 神様がホレブ山(シナイ山)でイスラエル人と結ばれた契約を、モーセがもう一度語ったのは、モアブ平原でした。

2 モーセは全国民を集めて言いました。「皆さんは、神様がエジプトで王と国民に下された大きな災害と、力強い奇蹟とを目のあたりに見ました。

3 -

4 それなのに、今までまるでわかっていなかったのです。物を見る目も、素直に聞く耳もありませんでした。

5 荒野を放浪した四十年間を振り返ってみなさい。その間、衣服は古びず、はき物もすり切れなかったではありませんか。

6 神様は、あなたがたが定住して、パンをつくる麦を植えたり、ぶどう酒や強い酒をつくるぶどうを育てたりするのをお許しになりませんでした。それは、あなたがたの世話をしてきたのは他ならぬ神様であることを、わからせるためです。

7 ここへ来た時、ヘシュボンの王シホンとバシャンの王オグが戦いをしかけました。私たちは二人を打ち破り、

8 その領地を、ルベン部族とガド部族とマナセの半部族に与えました。

9 ですから、この契約を守りなさい。守りさえすれば、何もかもうまくいくのです。

10 部族長も、国民も、裁判官も、行政官もみな、きょう神様の前に立っています。

11 妻子も、移住の外国人も、たきぎを割り、水をくむ下働きの者までも含め全員です。

12 きょう、ここに立っているのは、神様と契約を結ぶためです。

13 ご先祖アブラハム、イサク、ヤコブに約束されたとおり、きょう神様は、あなたがたを神様の国民とし、自らあなたがたの神となるおつもりなのです。

14 この契約は、きょう神様の前に立っている者とだけでなく、イスラエルの子孫全員と結ばれます。

15 -

16 エジプトでどんなみじめな生活をしたか、そこを出てからは、敵の領地を通りながら、いかに安全に過ごしてきたか、今さら言うまでもありません。

17 木、石、銀、金でできた異教の偶像も、いやと言うほど見ました。

18 あなたがたの中に、個人だろうが、家族だろうが、部族だろうが、神様に背を向け、外国の神々を拝みたいと言いだす者が出たら、気をつけなさい。それは、渋い、毒のある実しか結ばない根を植えるのと同じです。

19 こののろいのことばを聞きながら、『何と言われたって、やりたいようにやるだけさ。大丈夫、絶対にうまくいくさ』などと、呑気にかまえてはいけません。

20 神様は決してお赦しになりません。裏切り者は激しいねたみと怒りを買うだけです。この書に書かれたすべてののろいが降りかかり、地上から永遠に忘れ去られてしまうでしょう。

21 神様はその者をイスラエルの全部族から除外し、契約の違反者に下ることになっている、すべてののろいを下されるのです。

22 その結果、子孫たちや遠くから来た外国人が、ひどい災害や伝染病のつめ跡をまざまざと見るでしょう。

23 全土が塩分を含んだアルカリ性の荒れ地となり、種もまけず収穫もなく、一本の草木も生えません。まるで、神様の怒りによって滅ぼされたソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムのようになってしまいます。

24 『こんなひどいことをなさるとは、いったいどういう訳ですか。それも、特別に目をかけていた国に......。なぜ神様は、これほどまでお怒りになったのですか』と、国々の民は不思議がるでしょう。

25 答えはこうです。『彼らのご先祖の神様が昔、彼らをエジプトから助け出し、特別な契約を結ばれたのに、彼らのほうからその契約を破った罰です。

26 神様がはっきり禁止されたのに、ほかの神々を拝んだのです。

27 それで神様は激しく怒り、前もって警告してあったすべてののろいを下されました。

28 彼らを一人残らずこの国から追い出し、情け容赦なく外国へ追いやったのです。彼らは今もまだ故国に帰れず、外国に住んでいます。』

29 神様はすべてのことをお示しになったわけではありません。確かに、神様だけがご存じの秘密もあります。しかし、はっきり示されたことには、私たちも子孫も永遠に従わなければなりません。

30

1 これらのことがみな起こり、外国へ追いやられても、絶望してはいけません。その時にはもう一度、この祝福とのろいのことをよく考えなさい。

2 そして神様のもとへ帰りたくなったら、きょう私が与える戒めに、あなたがたも子供たちも心から従いなさい。

3 そうすれば、神様は、囚われの身から救い出してくださいます。あなたがたをかわいそうに思い、いったんは散り散りに追いやった国々から集めてくださるのです。

4 たとい地の果てにいようと、心配はいりません。神様は必ず見つけ出し、ご先祖の国へ連れ戻します。そして国を取り戻したら、ご先祖たちの時よりも、もっともっと祝福され、よくしていただけるでしょう。

5 -

6 あなたがたも、子供たちも、孫たちも、みな神様に心をきよめていただき、心から神様を愛するようになり、イスラエルは生き返るのです。

7 神様のもとに帰り、きょう私が命じる戒めをすべて守るなら、神様はのろいを取り去り、それをそっくりそのまま、あなたがたを憎み、迫害する敵に下します。

8 -

9 反対に、あなたがたのすることは何でもうまくいきます。子供にも恵まれ、家畜はどんどん増え、すばらしい収穫をあげるでしょう。かつてのご先祖のように、あなたがたも神様のお気に召すからです。

10 この法典にある戒めを守り、心の底から回心して神様のもとに帰れば、神様は必ず喜ばれます。

11 戒めを守るのは決して無理なことではありません。

12 この法律は手の届かない天にあるわけではないからです。聞こうにも聞こえず、守ろうにも守れず、かといって、地上に届けてくれる者もいないと、途方にくれることはありません。

13 また、だれも伝えてくれないほど遠い海のかなたにあるわけでもありません。

14 むしろ、いつでも守れるように、すぐ近くに、あなたの口、あなたの心にあるのです。それを覚え、絶えず暗唱していればいいのです。

15 いいですか、これは生きるか死ぬかの問題です。神様に従って生きるか、従わないで死ぬかの、どちらかしかありません。

16 私はきょう、神様を愛し、その道に従い、法律を守るようにと命じました。そのとおりにすれば生きることができます。神様はあなたがたと、もうすぐあなたがたのものになる国を祝福し、大国としてくださるでしょう。

17 しかし、神様から心が離れ、その教えに耳も傾けず、外国の神々を拝んだりすれば、

18 今はっきり断言しますが、必ず滅びます。あなたがたのものになる国で、いつまでもしあわせに暮らすことはできません。

19 さあ、天と地が証人です。どちらを選びますか。生きることですか、それとも死ぬことですか。祝福ですか、それとものろいですか。もちろん、あなたがたのためにも子孫のためにも、生きるほうを選ぶべきです。

20 神様はあなたがたのいのちです。神様を愛し、信頼し、ご命令に従いなさい。そうすれば、ご先祖アブラハム、イサク、ヤコブに約束された国で安心して暮らせます。」

31

1 モーセはさらにことばを続けました。「私はすでに百二十歳です。これ以上あなたがたを指導することはできません。それに、ヨルダン川を渡ってはならないと、神様から言われています。

2 -

3 これからは、神様が自らあなたがたを導き、川向こうの国々を滅ぼされます。そこを征服するための新しい司令官は、神様の命令どおりヨシュアです。

4 エモリ人の王シホンやオグと戦った時のことは忘れていませんね。神様はその国々にも同じようにされます。

5 完全にあなたがたの自由になるようにしてくださいますから、命令どおり、必ず全滅させなさい。

6 心を強く持ち、勇敢に戦いなさい。恐れてはいけません。神様が味方です。神様は絶対に、裏切ったり、途中で見捨てたりはなさいません。」

7 ここで、モーセはヨシュアを呼び、イスラエル全国民の前で命じました。「心を強く持ち、勇敢に振る舞いなさい。神様の約束の国へ国民を導き入れる務めを与えよう。そこを征服するのを見届けなさい。

8 神様が味方だから、恐れてはならない。神様はいつも先頭に立ち、途中で見放すことも、見捨てることもなさらないのだ。」

9 それから、モーセは以上の法律を書き記し、十戒の入った箱をかつぐレビ人の祭司と、長老とに渡しました。

10 この法律は、七年目ごとの負債免除の年の仮庵の祭りに、全国民が聖所の神様の前に集まったとき読み聞かせるのです。

11 -

12 そのことについて、神様はこう命じました。「男も、女も、子供も、いっしょに住む外国人も全員集めて、神の法律を読み聞かせなさい。どのように生きることをわたしが望んでいるかを学ばせるのだ。こうして、わたしを大切にし、忠実に法律を守ることをくり返し教えれば、

13 今この法律を知らない子供たちも、約束の国に住む間、いつもそのことを学べるだろう。」

14 このあとモーセに、「いよいよおまえの最期の時がきた。これからのことを指示するから、ヨシュアを神の天幕に来させなさい」と命じました。二人は命じられたとおり、神様の前に立ちました。

15 すると、天幕の入口に大きな雲が現われ、その中から神様の声がしました。

16 「モーセよ、おまえは死に、先祖の仲間に加えられる。そのあとこの国民は、約束の国で外国の神々を拝むようになる。わたしのことなどすっかり忘れ、平気で契約を破るだろう。

17 そうなれば、黙っているわけにはいかない。容赦なく彼らを見捨て、顔をそむけてやろう。次々と恐ろしい目に会い、もうだめだという時、ようやく彼らは気がつき、『神様はもう私たちの味方じゃないのだ』と言うだろうが、手遅れだ。

18 あれほど禁じたのに外国の神々を拝む者には、わたしもきっぱり背を向けるだけだ。

19 その警告のために、次の歌を書き記しなさい。

20 先祖に約束した『乳と蜜の流れる』国で、何もかもうまくいき、ぜいたくに慣れてくると、彼らはわたしをばかにし、平気で契約を破り、外国の神々を拝むようになるからだ。

21 そしてついに、大きな災いがみまうのだ。その時、代々歌い続けられたこの歌を聞き、どうしてそんなことが起こったか思い知るだろう。この国民がどんな国民か、約束の国に入る前から、わたしはちゃんと知っている。」

22 その日モーセは、歌を書き記し、イスラエルの国民に教えました。

23 それからヌンの息子ヨシュアに、強く、勇敢な者となれと命じました。「神様の約束の国へイスラエルの国民を導き入れなさい。神様は『わたしがついている』と言われたではないか。」

24 モーセはすべての法律を書き終えると、

25 十戒の入った箱をかつぐレビ人に、

26 この法典を箱のそばに置き、国民への厳粛な警告とするよう指示しました。

27 「全くあなたがたは反抗的で強情だ。こうして私がいっしょにいてさえ神様に反抗するのだから、私が死んだら、どうなることやらわかったものじゃない。

28 さあ、部族の長老、高官を全員集めなさい。天と地とを証人に立て、言っておきたいことがあるのだ。

29 私の死後、あなたがたはきっと堕落し、神様の命令に背くだろう。神様を怒らせるような悪いことをし、その報いで、結局は破滅を招くのだ。」

30 それでモーセは、イスラエルの全国民に聞こえるように、次の歌を初めから終わりまで大声でうたいました。

32

1 「天よ、地よ、じっと耳をすませ、私のことばを聞いてくれ。

2 小糠雨や露のように静かに、若草をぬらす雨のように心地よく、山腹を走る夕立のように激しく、私のことばは下る。

3 さあ、神様の偉大さを告げよう。この上なくすばらしいお方。

4 岩のように堅く、なさることはみな、完全で正しく、何事にも公平で忠実なお方。神様はいつも完全に潔白だ。

5 しかし、イスラエルは堕落し、罪に汚れてしまった。強情で曲がったことばかりする。もはや神様の国民ではない。

6 これが神様への恩返しか。ばかな国民よ。神様は父親ではなかったか。おまえの生みの親ではなかったか。おまえを強く育て上げた方ではなかったか。

7 昔を思い出せ。父や老人に聞けばすべてがはっきりするだろう。

8 世界を造られた時、神様は天使を遣わし、国々を監督させた。

9 だが、イスラエルは特別だ。神様ご自身のものだからだ。

10 獣の遠ぼえの聞こえる寂しい荒野を行く時、神様はまるで自分の目のようにイスラエルを守られた。

11 わしが翼を広げひなを乗せて飛ぶように、神様はその国民を翼に乗せて運ばれる。

12 神様だけがイスラエルを指導し、国民も外国の神々を知らずにいた時は、

13 丘は豊かな実りを約束し、ゆるやかに起伏する畑は肥えていた。岩からはち蜜が、石地からオリーブ油が採れた。

14 そのほかにも、乳と肉、バシャンの極上の雄羊と雄やぎ、最良の小麦、あわ立つぶどう酒と、何でも欲しいだけあった。

15 イスラエルはじきに満腹し、丸々と太った。ぜいたくに慣れて威張りだし、すげなく神様を捨てた。救いの岩に肩をすくめてみせた。

16 イスラエルは外国の神々のあとを追い、神様の激しい怒りと恨みを買った。

17 事もあろうに、外国の神々それまで拝んだこともない神々にいけにえをささげたのだ。

18 生みの親である岩をけとばし、いのちを与えてくれた神様を忘れるとは。

19 神様はそれを見て憎しみに燃えた。自分の息子、娘たちに侮辱されたからだ。

20 とうとう神様は言われた。『強情で不信仰な連中などもう知るものか。どんなことになるか見ているがいい。

21 恨みを買ってでもまやかし物の偶像を拝みたいのか。だったらお返しをしてやろう。おまえたちを捨て、無知な異教の諸国民に救いを与えてやるから、さんざん恨み事を言うがいい。

22 怒りの炎は燃え上がり、地とその産物を焼き尽くし、山々をなめ尽くす。

23 息つく間もなく災いを下し、次々と矢を放ち、射倒そう。

24 飢えと熱病と不治の病で痛めつけてもかまわない。容赦なく滅ぼしてやるのだ。野獣が彼らを八つ裂きにし、毒蛇は獲物を求めて地をはい回る。

25 外には敵の剣、内には伝染病。老人も、若者も、乳飲み子さえも逃れられない。

26 あげくの果ては、遠い国へ散り散りに追いやろう。彼らがいたことさえ忘れさせるために。

27 だが、ちょっと待て。それでは敵の思うつぼだ。「われわれがイスラエルを滅ぼした。神様なんかじゃない」と大口をたたかせることになる。』

28 イスラエルはまぬけな国、大ばか者の、わからず屋だ。

29 ああ、少しでも知恵があり、物わかりがよかったら、自分の末路を見きわめることもできたろうに。

30 彼らの岩である神様が見捨てず、滅ぼそうとされなかったら、一人の敵が千人を追い散らし、二人が万人を敗走させることもなかったろうに。

31 この岩にまさる岩はどこにもない。敵も、神々への祈りがむなしいことを知っている。

32 彼らの行ないはソドム、ゴモラの人たちと同じで、苦々しい毒がある。

33 彼らの飲むぶどう酒はまむしの毒液だ。

34 『だがイスラエルはわたしの取っておきの国民、倉に納めた宝だ。

35 復讐はわたしの務め、イスラエルの敵には罰を下す。判決はすでに下った。』

36 神様はイスラエルをさばき、彼らの失敗をやさしくかばわれる。奴隷も自由の者も力が衰えていくのを見て、

37 こう言われる。『ほかの神々はどこへ行った。頼みの岩はどうしたのだ。

38 あぶら身やぶどう酒をささげた神々はどうなったのか。さあ、神々を奮い立たせ、助けてもらうがいい。

39 どうだ、思い知ったか。ほんとうの神はわたし一人なのだ。殺すも生かすも、傷つけるも治すも、思いのまま。わたしの手から救い出せる者はいない。

40 手を天に差し伸べ、わたしの存在をかけて誓おう。きらめく剣をとぎすまし、敵に刑罰を下す。

41 -

42 矢は血に酔いしれ、剣は肉と血をむさぼる。刺し殺され、捕らわれた者の肉と血を。敵の頭は血にまみれる。』

43 異教の国民よ、神様の国民をたたえよ。神様は彼らのかたきを討ち、御国と民をきよめられたからだ。」

44 モーセはヨシュアとともにこの歌をうたい終えると、

45 -

46 人々に命じました。「きょう与えた法律をみな心に留め、子供たちに教えなさい。

47 この法律は、ただ意味もなくことばを並べてあるのではありません。あなたがたの命そのものです。この法律を守れば、ヨルダン川の向こうの、これから占領する国で、いつまでも、何不自由なく暮らせるのです。」

48 同じ日、神様はモーセに語られました。

49 「エリコに向かい合った、モアブのアバリム高地にあるネボ山に登れ。頂上から、わたしがイスラエル人に与えるカナンの国を見渡すのだ。

50 兄のアロンがホル山で死に、先祖の仲間入りをしたように、おまえもその国を見たら、先祖の仲間入りをしなければならない。

51 ツィンの荒野のメリバテ・カデシュの泉でしたことの報いだ。あの時おまえは、人々の目の前でわたしを侮辱した。

52 だから、約束の国を目の前にしながら、入って行くことはできないのだ。」

33

1 次にあげるのは、神様に立てられた忠実な指導者モーセが、死を目前にしてイスラエルの人々を祝福した時のことばです。

2 「神様はシナイ山でわれわれのところに来られ、セイル山からご自身を現わし、無数の御使いに囲まれパラン山から光を放たれました。その右手には炎が燃えさかっていました。

3 ああ神様は、どんなに深く御民を愛しておられることか。聖徒は御腕にしっかりと抱かれています。神様、彼らは御跡に従い、御教えを受けました。

4 私が与えた法律は何よりも大切な宝です。

5 神様は部族の指導者たちに選ばれ、エルサレムで王となられました。

6 ルベン部族はいつまでも滅びず、その数も増すように。」

7 ユダ部族への祝福のことば。「神様、ユダ部族の叫びをお聞きください。決して彼らをイスラエルから切り離さず、彼らの敵と戦ってください。」

8 レビ部族への祝福のことば。「ウリムとトンミム(神意をうかがう一種のくじ)を敬虔なレビ部族にお与えください。マサとメリバでの試練の時にも、

9 レビ部族は御教えに従いました。大ぜいの悪人を殺し、自分の子供、兄弟、両親でさえも容赦しませんでした。

10 レビ部族はイスラエルに神様の法律を教えます。また、香をたく祭壇や完全に焼き尽くすいけにえをささげる祭壇で、神様のご用に励みます。

11 神様、レビ部族を栄えさせてください。彼らの働きを認め、彼らに敵対する者を打ち砕き、二度と立てないようにしてください。」

12 ベニヤミン部族への祝福のことば。「神様に愛され、みそばで安らかに住む者よ。神様はやさしく見守り、どんな害も受けさせません。」

13 ヨセフ部族への祝福のことば。「その所有地は神様に祝福され、天と地の最良の物に恵まれるように。

14 作物は太陽の恵みによって育ち、月を追うごとに実りを増し、

15 永遠の山と丘が最良の産物におおわれるように。

16 地とそこに満ちるもろもろの物、燃える柴の中に現われる神様の恵み、そのすべてが、兄弟の中の王子ヨセフにあるように。

17 ヨセフの力と威厳は若い雄牛のようです。頭には野牛の角をいただき、すべての国々を突き倒します。これがエフライムへの祝福、これがマナセへの祝福です。」

18 ゼブルン部族への祝福のことば。「喜べ、ゼブルン、野の人よ。喜べ、イッサカル、家を愛する人よ。

19 彼らは人々を集め、共にいけにえをささげて喜びます。海の富、砂に隠れた宝をも自分のものにするからです。」

20 ガド部族への祝福のことば。「ガドに手を貸す方に祝福があるように。ガドはライオンのように伏し、腕力は強く、不敵な面魂が売り物です。

21 彼は最良の土地を見つけました。指導者となる者の土地です。こうして人々の先頭に立ち、イスラエルのために神様の刑罰を下すのです。」

22 ダン部族への祝福のことば。「ダンはライオンの子、バシャンから躍り出ます。」

23 ナフタリ部族への祝福のことば。「神様の祝福はみなあなたのもの、何一つ不自由はしません。ガリラヤ湖の西と南に広がる土地、それがあなたのふるさとです。」

24 アシェル部族への祝福のことば。「アシェルは兄弟のだれよりも愛されている息子。神様の怒りを静めるオリーブ油に足をひたし、

25 鉄と青銅の頑丈なかんぬきに守られ、生きる限り力にあふれているように。

26 エルサレムの神様のような神はほかにありません。神様はあなたを助けようと恐れ多くも天から下られます。

27 永遠の神様があなたの避難所。永遠の御手があなたを支え、敵を追い散らし、『滅ぼせ』と命じます。

28 しかし、イスラエルは平和です。穀物とぶどう酒はあふれ、雨は静かに、しかも絶え間なく、地を潤します。

29 しあわせなイスラエル。これほど神様に祝福されるとは。神様に助けられた国がほかにあるでしょうか。神様はあなたを守る盾、あなたを助ける剣です。敵はあなたの前で小さくなり、あなたは難なくその背中を踏みつけます。」

34

1 モーセはモアブ平原から、エリコの向かいにあるネボ山に登り、ピスガのいただきに立ちました。神様に示されるままに約束の国を眺めると、ギルアデのずっと向こう、はるかかなたのダンまで見渡せます。

2 北から、ナフタリの領地、エフライムとマナセの領地、ユダの領地と続き、西は地中海まで広がっています。

3 ネゲブ、ヨルダン渓谷、なつめやしの町エリコ、それにツォアルも見えます。

4 「これが約束の国、いつか子孫にこの地を与えると、アブラハム、イサク、ヤコブに約束した国だ。おまえは今ようやくその国を見た。しかし、入ることは絶対に許さない」と、神様はきっぱり言われました。

5 モーセは生涯、神様に忠実に仕え、神様が言われたとおり、モアブの国で死にました。

6 神様はモアブのベテ・ペオルの近くの谷にモーセを葬りましたが、場所ははっきりしていません。

7 モーセは百二十歳の高齢で死んだのに、まだ視力は完全で、体力も若者のようでした。

8 イスラエル人は三十日間、モアブ平原で喪に服しました。

9 ヌンの息子ヨシュアは、知恵のある立派な指導者でした。モーセがかつて、彼の頭に手を置いて任命したからです。そこで、人々はヨシュアの指導に従い、神様がモーセに与えた戒めをそのとおり守りました。

10 ところで、モーセのような預言者はもう二度と現われませんでした。実に神様は、面と向かってモーセと話されたのです。

11 そのご命令どおり、モーセは目をみはるような奇蹟を行ないました。あれほどの奇蹟は、その後なされたためしがありません。エジプトでは王と宮廷の人々の目の前で、荒野ではイスラエル人の見ている前で、恐るべき奇蹟を行なったのです。

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