1

1 ここに書いてあるのは、ユダのベニヤミンの地のアナトテという町に住んでいた祭司、ヒルキヤの子エレミヤへの神様のお告げです。

2 アモンの子でユダ王朝のヨシヤ王の治世第十三年に、最初のお告げがありました。

3 そののち、ヨシヤの子でユダ王朝のエホヤキム王の時代など、ヨシヤの子でユダ王朝のゼデキヤ王の治世第十一年の七月にエルサレムが陥落して、住民が奴隷として連れ去られるまで、数回にわたってお告げがありました。

4 神様は私に、こうお語りになりました。

5 「おまえが母の胎内に宿る前から、おまえを知っていた。おまえが生まれる前から、おまえをわたしのものとして取っておき、国々へのわたしの代弁者に任命していた。」

6 「神様、とんでもないことです。そんなことができるはずはありません。何と言っても若すぎます。まだほんの青二才ですから。」

7 「そんな言い方をするものではない。おまえは、わたしの送り出す所はどこへでも行き、命じることはどんなことでも語るようになるのだ。

8 人を恐れてはいけない。主であるこのわたしがついていて、どんな時にも面倒を見てやる。」

9 こう言ってから、神様は私の口にさわりました。「さあ、わたしのことばをおまえの口に入れた。

10 きょうから、世界の国々に警告するおまえの仕事が始まる。おまえの口から語られるわたしのことばどおりに、わたしはある国を引き倒し、あるいは滅ぼし、ある国は起こし、育て、大国にする。」

11 それから、こうお尋ねになりました。「エレミヤよ、何が見えるかね。」「アーモンドの枝でできたむちが見えます。」

12 「よくわかったな。そのむちは、わたしが必ず恐ろしい罰を下すというしるしだ。

13 さあ、今度は何が見えるかね。」「煮立っているなべが、南の方に傾き、ユダの上に煮え湯がこぼれているのが見えます。」

14 「そのとおり。北からの恐怖が、この地の全住民に降りかかる。

15 わたしは北方の国々の軍隊に、エルサレムを攻めさせる。彼らは都の門と城壁沿いに、またユダのほかの町々に、それぞれの王座をつくる。

16 このようにして、わたしの国民に罰を加える。彼らがわたしを捨て、自分の手で作った神々を拝んだからだ。

17 さあ、立って身じたくを整え、出かけなさい。わたしが伝えるとおりを彼らに語るのだ。彼らをこわがるな。さもないと、おまえを彼らの目の前で物笑いの種にするぞ。

18 わたしはきょう、おまえを彼らには歯の立たないものとした。彼らはどのようにしても、おまえに危害を加えることはできない。おまえは、難攻不落の要塞化した町のようにがんじょうそのもので、鉄の柱、青銅製の重い門のように強いのだ。ユダの王たち、将校たち、祭司たちをはじめ、この国民は、おまえと戦っても、とうてい勝ち目がない。

19 攻撃をしかけても、途中であきらめる。わたしがおまえについていて、きっと救い出すからだ。」

2

1 神様は再び、私にお語りになりました。

2 さあ、出かけて行って、エルサレムの町の通りで、次のように大声で語れ。わたしは、ずっと昔、おまえがまだ若い花嫁だったころ、わたしを喜ばせようとしてどんなに尽くしてくれたか、また、わたしを愛し、一本の草木も生えていない砂漠でさえも、わたしについて来てくれたことを覚えている。

3 そのころ、イスラエルはきよい民、わたしの初子だった。これに害を加える者はだれでも犯罪人とみなされ、これに触れる者には大きな災いが降りかかったものだ。

4 ああ、イスラエルよ。おまえの先祖は、どうしてわたしを置き去りにしたのか。わたしのどこが、いけなかったのか。わたしに背き、偶像を拝むなど、全くばかげている。

5 -

6 彼らは、自分たちをエジプトから無事に連れ出し、だれも住まず、足も踏み入れない砂漠と岩の地、乾ききった死の地である荒野を導きとおしたのが、主であるこのわたしであったことに、目をつぶっている。

7 わたしは彼らを、実り豊かな地に連れて入り、そこの祝福をぞんぶんに味わわせた。ところが、彼らはそこを罪と腐敗の地に変え、わたしの相続地を汚した。

8 祭司でさえ、神のことなどそっちのけにし、裁判官もわたしを無視した。指導者連中はわたしに盾をつき、預言者はバアルを拝み、くだらないことで時間をつぶした。

9 だが、まだおまえたちをあきらめたわけではない。わたしに立ち返るようにと、根気よく、何度でも説得する。のちのちの子孫の時代になっても、同じようにする。

10 あたりを見回して、たとい少しも価値がないものであったにせよ、昔からいた神々を、新しい神々と取り替えた国があったか、調べてみよ。西にあるキプロスに使いを出し、東にあるケダルの砂漠に人をやり、こんなおかしなことを今までに聞いたことがあるかどうか、調べさせてみよ。ところがわたしの国民は、栄光に輝く神を捨て、代わりに役立たずの偶像を取り入れた。

11 -

12 天はこれを知ってショックを受け、恐怖に身をすくめる。

13 わたしの国民は二つの悪事を重ねたのだ。まず、いのちの水の泉であるわたしに見切りをつけ、次に、水をためることもできない、こわれた水ためを作った。

14 イスラエルは、どうして奴隷の国になり下がったのか。どうして捕虜となり、遠い国へ連れて行かれたのか。

15 わたしには、エルサレムに向かって進んで来る大軍が見える。彼らは天にも届くような大声をあげてエルサレムを破壊し、焼き払い、人の住まない荒れ地とする。

16 わたしには、エルサレムへ攻め上ろうとしているエジプトの軍隊も見える。メンピスとタフパヌヘスの町々から行軍して来て、イスラエルの栄光と力を踏みにじろうとしている。

17 こうなったのは、神であるわたしがおまえを導き、行くべき道を示そうとしたのに、おまえが反抗したからだ。

18 エジプトやアッシリヤと手を組んで、どんな得をした?

19 身から出たさびが、おまえに罰を加える。神である主に刃向かい、いとも簡単に神を捨てることがどんなに悪いことであり、恐ろしいことであるかを、身をもって知るようになる。こう天の軍勢の主は宣告なさいます。

20 おまえはとうの昔に、わたしのくびきを払いのけ、わたしのきずなを断ち切った。頑として、わたしの言うことを聞こうとしない。すべての丘の上、またすべての木の下で、偶像に深々と頭を下げたのだ。

21 こんなことが、ありうるだろうか。どうして、こんなことになったのか。おまえを植えた時、あんなに注意して、最上の苗木を選んだというのに。どうして、これほど堕落した悪い人種になったのか。

22 どれほどの石けんと灰汁を使っても、おまえはきれいにならない。どんなことをしても洗い流せない罪の汚れが、こびりついている。それがいつも、わたしの目の前にちらついている。こう神様は言います。

23 それでもなお、そんなはずはない、偶像を拝んだ覚えなどない、と言いはるのか。そんなことを言えた義理だろうか。試しに、この国のどの谷へでも行ってみよ。あくせくと雄を捜し求める雌のらくだよ、おまえの犯した恐ろしい罪を、まともに見つめよ。

24 おまえは、さかりのついた時期にくんくんと鼻を鳴らす、野ろばそのものではないか。だれが、おまえの欲情を抑えることができようか。雄のほうでは、別におまえを捜す必要はない。なにしろ、おまえのほうで飛んで来るのだから。

25 どうしてそのように労苦もいとわず、ほかの神々の尻を追い回すのか。おまえは言う。「おせっかいはやかないでください。私はこの他国の人に恋をしてしまったのです。今は好きで好きでたまりません。」

26 イスラエルは、どろぼうのように、捕まることだけを恥と考えている。王、指導者、祭司、それに預言者も、この点ではみな同じだ。彼らは木彫りの像を父と呼び、石細工の偶像を母と呼ぶ。ところが、いざ困ったことが起こると、助けてくださいと、わたしに泣きつく。

27 -

28 どうして、手作りの神々に願をかけないのか。危険が近づいたら、彼らに助けてもらえばいい。ユダの町の数ほども神々をかかえているのだから。

29 おまえたちはみな反逆者だ。なぜわたしと言い争うのか。

30 おまえたちの子らを懲らしめてみたが、むだだった。彼らは、いっこうにわたしに従おうとしない。おまえたち自身も、ライオンが獲物を殺すように、わたしの預言者たちを殺した。

31 ああ、わたしの国民よ、神のことばに耳を傾けよ。わたしはイスラエルに、何か不正をしただろうか。彼らにとって、暗やみにおおわれた地のようであっただろうか。なのにどうして、わたしの国民は「これでやっと、神様から自由になれた。神様とは、もう二度とかかわりになりたくない」と言うのか。

32 どうして、こんなにも簡単に神を捨てることができるのか。おとめは、自分のたいせつな宝石を忘れはしない。どんな花嫁も、結婚衣装を隠すようなばかなまねはしない。ところがどうだ。わたしの国民は、最も貴重な宝であるわたしを、長いあいだ忘れたままでいる。

33 おまえたちは恋人を手に入れるためには、なんと念入りで巧みな計画を立てることか。そのやり方は、腕ききの売春婦でさえ、学ぶところが多いというものだ。

34 着ている物には、罪のない貧しい人の血がついている。おまえたちは理由もなしに、ずうずうしくも人殺しをやってのける。

35 しかも、そのあとは口をぬぐい、「神様を怒らせるようなことなど、一つもしていないさ。だから、神様が腹を立てるわけがない」ととぼける。「罪を犯していない」と、あくまでも白を切る以上、わたしはおまえたちをきびしく罰する。

36 おまえたちは、ここかしこと飛び回り、次々と同盟国を乗り換え、助けを求めて歩き回る。だが、そんなことをしてもむだだ。おまえたちの新しい友人であるエジプトは、かつてのアッシリヤのように、おまえたちを見捨てる。

37 わたしがおまえたちの頼りにしている者を退けるので、おまえたちは両手で顔をおおい、失望のあまりしゃがみ込んでしまう。たとい彼らの助けがあったにしても、うまくいくはずはない。

3

1 ある人が妻を離縁し、彼女が再婚した場合、再び彼女を妻にすることはできない、という法律がある。彼女は汚れた者となっているからだ。だが、おまえたちは、わたしを置き去りにして幾人もの恋人と結婚しておきながら、あつかましくも、またわたしのもとへ帰ると言っている。

2 ほかの神々を拝むという姦淫の罪で汚れていない所は、国中どこにもない。おまえたちは売春婦のように道ばたに座り込み、相手が来るのを待っている。砂漠のベドウィン人のように、たった一人で座っている。おまえたちは、赦しがたい淫行の罪で地を汚してしまった。

3 今は春の雨も降らなくなった。それというのも、おまえたちが恥知らずの売春婦だからだ。

4 それでもなお、おまえたちは臆面もなく言う。「神様。あなたは、これまでずっと私の夫でした。だから、こんな小さなことでお怒りになるはずはありません。私の罪など、きれいさっぱり忘れてくださるはずです。」こう言って、相も変わらず、ありとあらゆる悪事を積み重ねている。

5 -

6 ヨシヤ王の時代に、私に次のような神様のお告げがありました。おまえは、イスラエルのしていることを見たか。ほかの男に体を許すみだらな妻のように、イスラエルはすべての丘の、すべての木の下で、ほかの神々を拝んできた。

7 いつかはわたしのもとへ帰り、わたしのものになってくれると思っていたのに、とうとう帰って来なかった。しかも、不真実な妹のユダも、イスラエルがのべつ神に逆らっているのを見た。

8 ユダのほうは、わたしが背信のイスラエルを離縁したのを見ていながら、少しも気にかけなかった。それどころか、自分でもわたしを置き去りにして、淫行に身を委ねてしまった。彼女もまた、ほかの神々を拝んだのだ。

9 しかも、彼女にとって、木や石で作った偶像を拝むことは、三度の食事をとるように簡単なことだった。そのため、国中がひどく汚れた。

10 あとになって、この背信の女は、涼しい顔をしてわたしのところへ帰って来た。彼女の悲しみはただの演技だったのだ。

11 事実、背信のイスラエルのほうが裏切り者のユダより、いくらかはましだ。

12 だから、出かけて行って、イスラエルにこう言え。ああ、罪深いわたしの国民イスラエルよ、もう一度、わたしのもとへ帰って来るがよい。わたしはあわれみ深い。いつまでも怒っているわけではない。

13 ただ、罪を認めよ。神であるわたしに逆らい、すべての木の下で偶像を拝み、わたしに姦淫の罪を犯したことを認めよ。わたしに従おうとしなかったことを告白せよ。

14 ああ、罪深い子らよ、帰って来い。おまえたちの主人であるわたしは、ここから一人、あそこから二人とおまえたちを集め、再びイスラエルの地に連れ戻す。

15 また、わたしの心にかなった指導者を与える。彼は知恵と知識をもって、おまえたちを導く。

16 こうして、イスラエルが再び人でいっぱいになる時、おまえたちは、神の契約の箱があったころの「古き良き時代」がなつかしい、などと言わなくなる。当時のことは思い出されず、契約の箱を作り直すこともない。

17 わたしがおまえたちのうちにいるので、エルサレム全市は神の御座となり、世界中の人がそこへ来てわたしに会い、二度と、以前のような悪くて頑固な思いのままに生活しなくなるからだ。

18 その時、ユダとイスラエルの国民は肩を組み、捕虜として連れて行かれた北の国から、わたしが彼らの先祖に永遠の相続として与えた地へ戻って来る。

19 わたしは、おまえたちがわたしの子らといっしょにこの地にいるのは、どんなにすばらしいことかと考えていた。おまえたちに、世界でいちばん美しいこの国の一部を与えようと思っていた。また、おまえたちがわたしを「父」と呼ぶ日を待ちわび、おまえたちが二度とわたしを離れないものと考えていた。

20 ところが、なんと、おまえたちはわたしを裏切ったのだ。おまえたちはさまよい出て、多くの外国の神々に身を委ね、夫のもとを去る不貞の妻になった。

21 吹きさらしの高い山の上から、泣き叫ぶ声が聞こえる。神に背き、遠くへさまよい出たイスラエルの子らの泣き声だ。

22 わたしの背信の子らよ、もう一度わたしのところへ戻って来い。そうすれば、おまえたちの罪の病気を治してやろう。この神様の呼びかけに、彼らはこう答えます。帰ります、神様。神様は私たちの主だからです。

23 丘の上で偶像を拝んだり、山の上でお祭り騒ぎをするのは、もううんざりです。私たちは悪い夢を見ていました。神様だけに、イスラエルの助けと救いがあるのです。

24 私たちは子供のころから、先祖のものであった羊や牛の群れ、それに息子、娘が、偶像や祭司の食い物になるのを見てきました。

25 私たちは恥と不名誉の中に伏しています。私たちも先祖も、子供のころから神様に罪を犯し、お従いしなかったからです。

4

1 イスラエルよ、本気でわたしのもとへ帰りたければ、偶像を未練もなく捨てよ。

2 もしおまえが、生ける神であるわたしによってだけ誓い、誠実できよく正しい生活を始めるなら、おまえは世界の国々へのあかしとなる。こうして、諸国民はわたしのもとへ来て、わたしの名をあがめるようになる。

3 神様はユダとエルサレムの人たちに、こう告げます。固くなったおまえたちの心を耕せ。そうでないと、良い種がいばらにふさがれて、だめになる。

4 体だけでなく、心と思いもきよめよ。そうでないと、おまえたちの罪のためにわたしの憤りが爆発し、おまえたちを黒こげにしてしまう。だれ一人、その火を消すことはできない。

5 エルサレムとユダに向かって叫べ。国中に響くように警報を鳴らせと言え。「いのちが危ないから、走って逃げるのだ。要塞で固めた町へ逃げ込め。」

6 エルサレムから合図を送れ。「すぐ、逃げ出せ。ぐずぐずするな。」神であるわたしが、北から、途方もなく大きな破滅をもたらそうとしているからだ。

7 ライオンのように国々を滅ぼす者が住みかから出て来て、おまえたちの国へ向かっている。町々は住む者もなく、廃墟となる。

8 喪服を着て、胸も張り裂けんばかりに泣きなさい。神様の激しい怒りが、まだ私たちから去らないからです。

9 「その日には、王や指導者は恐ろしさで震え、祭司と預言者は恐怖に顔をこわばらせる」と、神様は言います。

10 そこで、私は申し上げました。「ですが神様。国民は、あなたのおことばにだまされました。確か、エルサレムに大きな祝福がくるとのお約束だったのに、今になっても剣が住民に突きつけられています。」

11 その時、神様は砂漠から、すさまじい勢いで吹きまくる熱風を送ります。こうして、滅亡の時がきたことを宣告なさるのです。

12 -

13 敵は嵐のように襲いかかります。その戦車は龍巻のようで、その馬はわしよりも速く走ります。ついに滅亡の時がきたのです。ああ、なんという大きな災いでしょう。

14 エルサレムよ、手遅れにならないうちに心をきよめなさい。今ならまだ、悪い思いを捨てれば、救われます。

15 ダンから、エフライムの山から、あなたの滅びが言い渡されました。

16 ほかの国々に知らせてやりなさい。遠い国から敵が来て、喊声をあげながらエルサレムとユダの町々に向かって来ます。

17 彼らは、野獣に立ち向かう羊飼いたちのように、エルサレムを包囲します。「それは、わたしの国民がわたしに背いたからだ」と、神様は言います。

18 あなたの行ないが、この災いを招いたのです。それはあなたにとって苦い薬で、腹の底までしみ渡ります。

19 私は苦痛のため身もだえします。心臓は激しく波打っています。とても黙ってはいられません。敵のラッパの音と雄たけびを聞いてしまったからです。

20 破壊に次ぐ破壊の波が押し寄せ、ついに、国土はすっかり荒れ果ててしまいます。突然、一瞬のうちに、家は一軒残らず押しつぶされます。

21 いつまで、このような状態が続くのでしょう。いつまで、私の回りに戦いと死を見なければならないのでしょう。

22 「わたしの国民が愚かなことをやめるまでだ。彼らは、わたしの言うことを聞こうとしない。頭のにぶい知恵遅れの子で、判断力がない。悪いことをするとなると素早いが、正しいことをする才能など、まるで持ち合わせていない。」

23 彼らの地を見下ろすと、見渡す限りの廃墟で、空は真っ黒です。

24 山々は身震いし、揺れ動いていました。

25 なおもよく見ると、人っ子ひとりおらず、鳥は飛び去っていました。

26 よく肥えた谷間は荒野となり、町という町はことごとく、神様によって破壊され、神様の激しい憤りによって押しつぶされていました。

27 滅ぼせという神様の命令が、全地に行き渡っているのです。しかし、神様は宣言なさいます。「それでも、わたしの国民はほんの少しだけ残る。

28 地は嘆き悲しみ、天は真っ暗になる。わたしが、滅ぼせとの勅令を出したからだ。わたしがいったん決心したことは、絶対に変更しない。」

29 町中の者は近づいて来る軍隊の行進の音におびえ、逃げ出します。草むらに隠れ、山へ逃げます。住民は恐ろしさのあまり、われ先にと逃げるので、町には猫の子一匹いなくなります。

30 どうして晴れ着をまとい、宝石をつけ、めかしこむのですか。そんなことをしても、何の役にも立ちません。同盟軍はあなたがたをばかにし、殺してしまいます。

31 わたしは、初産の女の陣痛のような、大きなうめき声を聞いた。それは、殺そうとする者の前にひれ伏し、あえぎながら助けを請う、わたしの国民の叫びだ。

5

1 エルサレム中の通りを駆け巡れ。高い所も低い所も捜して、正直で公平を愛している者が一人でもいるかどうか、調べてみよ。あらゆる広場を捜して、そのような者がただの一人でもいたら、わたしはこの都を滅ぼさない。

2 彼らは、誓いを立てる時でも嘘をつく。

3 神様。あなたは真実以外のものを受けつけません。神様は罰を加えて、彼らが正直になることを期待したのに、少しも変わりませんでした。彼らを打ったのに、罪から離れようともしませんでした。彼らは、顔を岩のように堅くし、どんなことがあっても悔い改めまいと決心しています。

4 私は思いました。「無知で哀れな者に、いったい何を期待できよう。神の道を知らないのだから、神様に従うことなどできない相談だ」と。

5 今度は、身分の高い人のところへ行って話してみよう。指導者なら、神の道に通じ、罪を犯せばさばきが来ることを知っているだろうから。ところが彼らも、神様に真っ向から反対していたのです。

6 だからこそ、わたしは怒って、彼らに「森のライオン」を送る。「砂漠の狼」は彼らに襲いかかり、「ひょう」が町々の回りをうろつくので、町から一歩でも外に出たら引き裂かれる。彼らの罪は数えられないほど多く、わたしへの背信は、はなはだしいからだ。

7 これでは、どうして赦すことができようか。おまえたちの子供でさえ、わたしに背き、神とは似ても似つかぬものを拝んでいる。彼らが満腹になるまで食べさせてやったのに、そのお返しと言えば、これ見よがしに姦淫の罪を犯し、町の売春宿に押しかけることだった。

8 彼らは丸々と太った、さかりのついた馬で、隣の妻を慕っていななく。

9 このようなことを、わたしが罰しないでおくだろうか。このような国に、報復せずにおくだろうか。

10 ぶどう園へ行き、手あたり次第にぶどうの木を引っこ抜け。だが、ごくわずかの木は残しておけ。枝を切り落とせ。神のものでないからだ。

11 イスラエルとユダの国民は、わたしを踏みつけたと、神様は言います。

12 彼らは平気で嘘をつきました。「神様がわれわれに手を出すはずはない。災いが降りかかるはずはない。ききんも戦争も、あるものか。

13 預言者なんぞは、ことばはいっぱい詰まっているが権威も何もない風の袋だ。連中の言う滅びのご託宣は、われわれにではなく、自分自身に下るのさ。」

14 彼らがこのように言ったので、天の軍勢の主は、ご自分の預言者たちに、こう告げます。わたしは、おまえたちのことばを燃える火とし、彼らを火のついたたきぎのように焼き尽くす。

15 ああ、イスラエルよ。わたしは遠い国の民を連れて来て、おまえを攻めさせる。それは大昔からある強大な国〔古バビロニヤ帝国〕で、おまえには彼らの話すことばが通じない。

16 彼らの武器には恐ろしい威力があり、一人一人は大勇士だ。

17 彼らは、おまえの刈り入れた穀物と子らのパンを略奪し、おまえの羊の群れ、家畜の群れ、ぶどう、それにいちじくを食べ、ここは大丈夫と思っている城壁のある町に侵入し、略奪をほしいままにする。

18 だが、わたしはおまえたちを根絶やしにはしないと、神様は断言なさいます。

19 おまえの同胞が「どうして神様は、こんなことをなさるのか」と尋ねたら、こう答えてやれ。「あなたがたは神様を捨て、自分の国で、ほかの神々に身も心もささげました。だから今度は、その神々の出身地である国々で、外国人の奴隷になる番です。」

20 ユダとイスラエルに告げよ。

21 目があっても見えず、耳があっても聞こえない、愚かで思慮のない者たちよ。

22 よく聞け。おまえたちには、少しでもわたしを尊敬しようという気持ちがないのか。わたしの前に出ても身震いしないとは、いったいどうしたことか。わたしは永遠の命令を出して、世界中の海岸線を決めた。だから、たとい海の波がとどろき、逆巻いても、最後の一線を越えることはない。このような神を、恐れもせず、拝みもしないことが許されるだろうか。

23 ところが、わたしの国民はわたしに背き、偶像礼拝の道に走った。わたしは、年ごとに春と秋には雨を降らせ、刈り入れの時を与える神なのに、彼らはわたしを敬いもせず、恐れもしない。

24 -

25 そこで、このような四季の恵みをいっさい彼らから遠ざけた。何もかも彼らの罪のせいだ。

26 わたしの国民のうちに、人を待ち伏せして血祭りにあげる悪人がいる。彼らは暗がりに隠れている猟師のようで、罠をしかけておく。

27 彼らの家は、鶏がいっぱいいる鳥小屋のように、悪だくみであふれ返る。ところで、その結果はどうなっただろう。いま彼らは名をあげ、金持ちになり、

28 ごちそうをたらふく食べ、回りの人にちやほやされている。彼らの悪事は際限がなく、みなしごを正しく扱わず、貧しい者の権利をないがしろにしている。

29 わたしは腕組みしたままで、手を下さないだろうか。このような国を罰しないでおくだろうか。

30 実に恐ろしいことが、この国に起こっている。

31 祭司はいんちき預言者の意のままになり、しかも国民は、そうなることを喜んでいる。おまえたちは必ず滅びる。その時はどうするつもりだ。

6

1 ベニヤミンの部族よ、走って逃げなさい。エルサレムから逃げ出しなさい。それしか助かる道はありません。テコアで警報を鳴らし、ベテ・ハケレムでのろしを上げなさい。北方の強力な軍隊が、この国を滅ぼそうとして攻めて来たことを、すべての人に知らせなさい。

2 あなたがたはおとめのように美しく、きゃしゃであり、しかも滅びる運命にあります。

3 悪い羊飼いたちが、あなたがたを取り囲みます。彼らは都の回りにテントを張り、自分たちの羊の群れのために牧場を没収します。

4 彼らが戦いの準備をしている様子を見なさい。戦いは正午に始まり、午後いっぱい、夕方まで続きます。

5 彼らは言います。「さあ、夜襲をしかけて、宮殿をこわそう。」

6 実は、天の軍勢の主が、彼らにこう命じたのです。木を切って、城壁を突きくずす槌を作り、それでエルサレムの城壁をくずすのだ。この都は悪に悪を重ねたので、もはや罰を免れることはできない。

7 泉のように悪を吹き出し、通りには暴虐の声が響く。この町の病気と打ち傷は、いつもわたしの前にある。

8 エルサレムよ、これが最後の警告だ。わたしの言うことを聞かないと、この町にだれも住まないようにする。

9 災難に次ぐ災難が襲い、イスラエルに残っているわずかな者さえ、再び刈り取られてしまう。こう天の軍勢の主が告げます。ぶどうの実を摘む者が、摘み残しはないかと一本一本調べて回るように、わたしの国民の残りの者は、もう一度滅ぼされる運命にある。

10 ところが、だれもわたしの警告に耳を傾けない。彼らの耳はふさがれていて、聞こうともしない。わたしのことばは彼らのしゃくにさわり、好ましくないものとなった。

11 彼らへの憤りがわたしのうちにあふれた。それに耐えるのに疲れ果てた。わたしは憤りを、エルサレムにぶちまける。路上で遊んでいる子供にも、若い人の集まりにも、夫や妻や祖父母にも、ぶちまける。

12 敵が彼らの家に住み、畑や妻を横取りする。わたしがこの国民を罰するからだ。

13 彼らは、最も身分の低い者から最も高い者まで、詐欺師の大うそつきだ。預言者や祭司までが、一つ穴のむじなだ。

14 傷などどこにもない、と言ったからとて、傷が治るわけではない。戦争で上を下への大騒ぎだというのに、平和だと言いはる。

15 わたしの国民は、偶像を拝んで、恥ずかしいと思っただろうか。とんでもない。顔を赤らめさえしなかった。それで、彼らは死人の間に転がり、わたしの憤りの下敷きになって死ぬ。

16 ところが、それでもなお、神様はあなたがたに訴えます。ずっと昔おまえたちが歩いていた、神を恐れる幸いな道を探し出し、その道を歩け。そうすれば、たましいに安らぎがくる。だがおまえたちは、「いや、その道は通りたくない」と答える。

17 わたしは見張りを立て、「ラッパの音に注意せよ。危険が近づいた合図だ」と警告した。だがおまえたちは、「いや、そんなものに注意する必要なんかない」と言い返した。

18 だから、今こそ宣言する。全地よ聞け、遠い国々もエルサレムのわたしの国民も聞け。わたしはこの国民に災いをもたらす。というより、むしろ彼ら自身が災いを招いたのだ。わたしの言うことを聞こうとしなかった罰だ。彼らはわたしの戒めをはねつけた。

19 -

20 今になって、シェバの香り高い香をわたしの前でたいても、何の役にも立たない。高価な香はしまっておけ。おまえたちの供え物を受け入れるわけにはいかない。それらのものは、もはやわたしにとって良い香りとはならない。

21 わたしは彼らの道につまずきの石を置く。父や子はつまずき、隣人や友人も共に倒れる。

22 北から攻めて来る軍隊を見よ。それは、おまえたちに襲いかかる強大な国家だ。

23 彼らは血も涙もない残忍な国民で、完全武装し、馬にまたがっている。この軍隊のざわめきは、海のとどろきに似ている。

24 私たちはこの軍隊のうわさを聞いて、恐怖に取りつかれ、すっかり腰抜けになりました。産みの苦しみをする女のような恐怖と苦痛が、私たちを捕らえました。

25 畑に出てはいけません。道を歩いてもいけません。どこもかしこも敵だらけで、人を見たら殺そうと待ちかまえているからです。私たちは、曲がり角に来るたびに、びくびくします。

26 ユダの誇りであるエルサレムよ、喪服を身にまとい、灰の中に座り、ひとり子を亡くした時のように激しく泣きなさい。何もかも滅ぼす軍隊が、あっという間に攻めかかるからです。

27 エレミヤよ、わたしはおまえを金属を試す器具にした。おまえがわたしの国民を試して、どれだけの価値があるかを調べるためだ。彼らの言うことに耳を傾け、彼らがすることに目を留めよ。

28 彼らは最悪の反逆者で、神に逆らうことばだけが口を突いて出る。真鍮のようにあつかましく、鉄のように堅くて残忍だ。

29 ふいごで勢いよく吹き、火の温度をうんと上げても、彼らを精錬することはできない。もともと彼らには、うちに隠されている純粋なものなど少しもない。だから、どんなに時間をかけて精錬してもむだだ。彼らにあるものは、かすだけだ。どんなに火を熱くしても、彼らを悪の道から引き離すことはできない。

30 わたしは彼らに、「不純で使いものにならない銀」というレッテルを張り、捨ててしまった。

7

1 神様はエレミヤに、次のようにお語りになりました。

2 神殿の入口へ行き、そこで人々にこう言え。神のお告げを聞け。ここで礼拝している者はみな、耳を傾けよ。

3 天の軍勢の主であるイスラエルの神は、こう言う。今からでも遅くはない。悪の道を離れさえすれば、おまえたちを国におらせよう。

4 神殿がここにあるのだから、神はエルサレムが破壊されるのを黙って見ているはずはない、と言う者たちのことばにだまされるな。

5 次の条件を満たした時にだけ、ここにいることができる。悪い思いと行ないを捨て、人には公平であり、

6 みなしご、やもめ、それに外国人を食い物にしないこと。人殺しをやめること。今のように、偶像を拝んで自分を傷つけるような、ばかなまねはしないこと。

7 以上の条件にかなった時にだけ、おまえたちの先祖に永遠の相続地として与えたこの地に住める。

8 神殿がここにあるから災いに会うはずはない、と考えているのか。自分をあざむいてはならない。

9 おまえたちは、平気で盗み、人を殺し、姦淫の罪を犯し、うそをつき、バアルをはじめ新しい神々を拝んでいる。

10 しかもここに来て、わたしの宮に入ってわたしの前に立ち、「われわれは救われています」と言い、再び悪事をくり返すことができると、本気で考えているのか。

11 わたしの宮は強盗の巣か?ありとあらゆる悪がはびこって、目もあてられない。

12 わたしが初め、わたしの名にふさわしい町としたシロへ行き、そこで、イスラエル人の悪のために、わたしがどんなことをしたかをよく見て来い。

13 おまえたちの行なったもろもろの悪事のために、ここでも同じことをする。わたしは何度も語りかけ、しきりに呼び続けたのに、おまえたちは聞こうともせず、答えようともしなかった。だから、シロでしたように、この神殿をこわす。おまえたちの心の拠り所である、わたしの名で呼ばれるこの神殿、おまえたちと先祖に与えたこの場所をだ。

14 -

15 しかもおまえたちを、おまえたちの兄弟エフライム人(北のイスラエル王国)のように、捕虜として外国に追い払う。

16 エレミヤよ、二度とこの国民のために祈ってはならない。彼らのために泣くことも、彼らを助けるようにと、わたしに祈ったり、哀願したりすることもならない。わたしは耳をふさぐからだ。

17 彼らがユダの町々、エルサレムの通りで何をしているか、知らないとでも言うのか。

18 わたしがこんなに腹を立てるのも、もっともなことではないか。子供はたきぎを集め、父親は火をたき、女は粉をこね、愛の女神「天の女王」をはじめ、偶像の神々に供えるパン菓子を作っている。

19 彼らが傷つけている相手は、はたしてこのわたしだろうか。実際には自分を傷つけ、自分の恥をさらしているだけではないか。

20 だから、神様である主はこう宣言なさいます。わたしは激しい怒りを、この所に注ぐ。人も家畜も木も穀物も、どんなことをしても消えない、わたしの怒りの火によって焼き尽くされる。

21 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう命じます。おまえたちの供え物といけにえを捨ててしまえ。

22 わたしがおまえたちの先祖をエジプトから連れ出した時、彼らに求めたものは供え物やいけにえではなかった。わたしの戒めの中心点は、そんなものではなかった。

23 わたしが知らせたのは、次のことだ。わたしに従いさえすれば、わたしはおまえたちの神となり、おまえたちはわたしの国民となる。わたしの命令どおりにしさえすれば、あとは何もかもうまくいく。

24 ところが、彼らはわたしの言いつけを聞こうとせず、頑固で悪い思いのままに、したいほうだいのことをした。前進するどころか、後退した。

25 おまえたちの先祖がエジプトを出た日から今日に至るまで、わたしは毎日、預言者を彼らのところに送り出した。

26 ところがどうだ。彼らは耳を傾けるどころか、聞こうとするそぶりさえ見せなかった。手のつけられない頑固者だ。おまけに反抗心がおうせいで、先祖より悪質だ。

27 わたしがこれからすることを、一から十まで知らせても、彼らが聞いてくれると思ってはならない。大声で警告しても、反応を示してくれると甘く考えてはならない。

28 彼らに言ってやれ。おまえたちは、神である主に従うことを拒み、教えられることを拒む国民だ。ひどい偽りの生活を続けている。

29 エルサレムよ、深く恥じて頭をそり、ひとり山の上で泣け。わたしは憤って、この国民を退け、捨てたからだ。

30 それは、ユダの国民がわたしの目の前で罪を犯したからだ。彼らはわたしの神殿に偶像を持ち込み、神殿を汚した。

31 ベン・ヒノムの谷にトフェテという名の祭壇を築き、そこで、幼い息子や娘を神々へのいけにえとして焼き殺している。これは、わたしが思いもよらず、まして命じた覚えなど全くない恐ろしい行為だ。

32 だから、この谷が「トフェテ」でも「ベン・ヒノムの谷」でもなく、「虐殺の谷」と呼ばれる時がくる。あまりにも多くの者が殺され、墓を作る場所がなくなり、遺体をこの谷に投げ捨てるようになるからだ。

33 遺体は鳥や獣のえじきになるが、これを追い払う者は一人もいない。

34 わたしはエルサレムとユダの町々から、楽しそうな歌声や笑い声を消し、花婿や花嫁のはずんだ声を絶やす。この国は廃墟となる。

8

1 神様はこうお語りになります。その時、敵は歴代のユダの王の墓、指導者、祭司、預言者、住民の墓をあばき、

2 骨を掘り出して、わたしの国民が愛して拝んだ太陽や月や星の前にさらす。骨は再び集められて葬られることもなく、肥やしのように地面にばらまかれる。

3 それでもまだ生き残る者は、わたしが追いやる国で生きのびるより、むしろ死ぬことをひたすら願うようになる。こう天の軍勢の主は宣告なさいます。

4 もう一度、わたしの言うことを伝えよ。人は倒れたら、起き上がり、まちがった道を歩いていると気づいたら、もと来た道を引き返す。ところがこの国民は、わたしの警告があるにもかかわらず、悪い道をどんどん進んで行く。

5 -

6 わたしは彼らの会話をじっと聞いていたが、いったいどんなことが耳に入ったと思うか。自分の罪を悔いている者は、一人もいない。「なんと恐ろしいことをしたのだろう」と言う者は、一人もいない。みな、戦場に突進して行く馬のように、罪の道を全速力で走って行く。

7 こうのとりは、生まれ故郷に帰る時を知っている。山鳩、鶴、つばめも同じことで、毎年、神の定めた季節がくると、帰って行く。しかし、わたしの国民はそうではない。彼らは神のおきてを受け入れようとしない。

8 どうしておまえたちは、「われわれは神様のおきてを知っている」と言えよう。なにしろ、教師連中が、そのおきてをひねくり回し、わたしが言ったこともないようなものにしているのだから。

9 このりこうな教師どもは、神のことばを変えた罪のために遠い国へ流され、恥をさらす。その時になっても、相変わらずりこうだと言えるだろうか。

10 わたしは、彼らの妻と畑をほかの者に与える。彼らはみな、身分の高い者も低い者も、預言者も祭司も、人のものを自分のふところに入れることだけを目的に生きてきたからだ。

11 彼らは、実際には平安などどこにもないのに、すべてがうまくいくと保証する。こうして、わたしの国民のひどい傷に、効き目のない薬を塗っている。

12 偶像を拝むことを恥じるどころか、顔を赤らめることさえ知らない。その報いで彼らは死に、倒れた者の間に転がる。

13 いちじくとぶどうは姿を消し、くだものの木は枯れ、わたしが与えたすべての良いものは、すぐになくなる。

14 その時、人々はこう言うだろう。「ここでじっと死を待つ法はない。さあ、城壁のある町へ行って、そこで死のう。神様は、われわれを滅ぼすことに決め、われわれの罪と引き替えに、毒薬を盛った杯を下さったのだ。

15 平和を期待したが、平和はこなかった。健康の回復を待ち望んだが、あるのはただ恐怖だけだ。」

16 戦争の音が北の国境から聞こえる。全地は、恐ろしい軍隊が近づく音に震えおののく。敵が来て、国中の町や住民を滅ぼし尽くすからだ。

17 わたしはおまえたちに、まじないのきかない毒蛇のような敵の軍隊を送り届ける。どんな手段を講じても、彼らはおまえたちにかみついて殺す。

18 あまりの悲しみに、どうしたらよいかわかりません。私の心はすっかり弱り果てました。

19 国中に響き渡る泣き声を聞いてください。「神様、どこにおられるのですか。私たちを置き去りにされるのですか」と、彼らは叫びます。ところが神様は、「どうして彼らは、彫り刻んだ偶像や、外国の悪い習慣をまねて、わたしを怒らせてしまったのか」と答えるのです。

20 「刈り入れは過ぎ、夏も終わった。それなのに、まだ救われない。」

21 傷ついた同胞のことを思うと、涙があふれます。あまりの驚きと悲しみのために、口もきけません。

22 ギルアデには薬がないのですか。医者はいないのですか。どうして神様は、何か手を打たなかったのでしょう。どうして助けてくださらなかったのでしょう。

9

1 ああ、私の目が涙の泉であったら、殺された同胞のために、昼となく夜となく、永久にすすり泣くものを!

2 ああ、どこか遠くへ行って何もかも忘れ、砂漠の掘っ立て小屋に住めたら、どんなに気が楽か!彼らはみな姦淫の罪を犯し、裏切り者になり下がってしまった。

3 「彼らは舌を弓のように曲げ、不真実という矢を射る。正しいことには縁もゆかりもない者で、悪から悪へと進み、わたしのことなどいっこう心に留めない」と、神様は言います。

4 隣人や兄弟に気をつけなさい。だれもかれも互いにつけこもうとし、まことしやかに嘘を並べ立てるからです。

5 彼らは、よく訓練された舌で、互いにだまし合い、罪を犯し続けて、自分をすり減らします。

6 「彼らは悪に悪を、偽りに偽りを積み重ね、絶対にわたしのところへ来ようとしない」と、神様は言います。

7 そのため、天の軍勢の主は、さらにこうつけ加えます。「わたしは彼らを悩みの炉に入れてとかす。彼らを精錬し、金属のように試す。これ以外にどんなことができよう。

8 彼らの舌は毒矢のような嘘を射る。口先ではおじょうずを言うが、心の中では相手を殺そうとたくらむ。

9 この事実に目をつぶり、罰しないで放っておけるだろうか。このような国に復讐しないでおれようか。」

10 私は泣きながら、山や牧場を指さします。なんということでしょう。そこには住む者もなく、すっかり荒れ果てているのです。家畜の鳴き声は絶え、鳥や獣も姿を消しました。

11 「わたしはエルサレムを、瓦礫の山にする。そこを住みかとするのは山犬だけだ。ユダの町々は、だれひとり住む者もない廃墟になる。」

12 このことを悟る知恵者は、どこにいますか。このことを説明してくれる神様の使者は、どこにいますか。どうしてこの国は荒れ地となり、通行人さえいなくなったのですか。

13 「それは、わたしの国民がわたしの戒めを捨て、おきてに従わなかったからだ。

14 それどころか、好き勝手なことばかりして、先祖が伝えたバアルの偶像を拝んだ。

15 そこで、イスラエルの神であるわたしは言う。彼らに苦い物を食べさせ、毒を飲ませる。

16 彼らを世界中に散らし、見知らぬ遠くの国々に追い払う。そこへ行っても、剣に追い回され、ついに根絶やしにされる。

17 わたしは言う。大急ぎで泣き女を呼んで来て、さっそく泣かせよ。涙を滝のように流せ。

18 -

19 エルサレムが絶望しきって泣いているのを聞け。『町はすっかり荒れ果てた。悲劇が私たちを襲った。こうなったら、国も家も見捨てるよりほかない。』」

20 大声をあげて泣く女たちよ、神様のことばに耳を傾けなさい。あなたがたの娘と隣人に、泣き方を教えてやりなさい。

21 死があなたがたの家の窓に忍び込み、若い命をもぎ取ったからです。道ばたで遊ぶ子供の姿はなく、広場にも若者の姿はありません。

22 次のことを話すようにと、神様は言います。死体は肥やしのように、また刈り入れのあとの束のように、あちこちに散らされたままで、だれも埋めてくれない。

23 神様は命じます。知恵のある者は、知恵を見せびらかしてはいけない。力のある者は力を、金持ちは富を誇ってはいけない。

24 誇る者は、わたしをほんとうに知っていること、また、わたしが正義の主であって、その愛は変わらないと知っていることを誇れ。

25 わたしが、体に割礼(男子が生まれて八日目にその生殖器の包皮を切り取る儀式)を受けていても、心に割礼を受けていないエジプト人、エドム人、アモン人、モアブ人、アラブ人、それに、おまえたちユダの国民を罰する時が近づいている。異教の国々の民でも体の割礼は受ける。わたしを愛するという心の割礼を受けなければ、おまえたちの割礼は、異教徒の儀式と少しも変わらない。

26 -

10

1 イスラエルよ、神様のことばを聞きなさい。

2 天宮図を作って、星占いで、自分の運命や将来を読もうとする者のまねをしてはいけない。彼らの予言を聞いておびえてはいけない。そんなものは、うその詰め合わせにすぎない。彼らの生き方はむなしく、ばかげている。彼らは木を切り倒して偶像を刻み、

3 -

4 それを金と銀で飾り、金槌と釘で動かないように打ちつける。

5 畑のかかしのように立っている神は、ものも言えない。歩けないから、だれかが運んでやらなければならない。そんな神は、人に災いを下すことも助けることもできず、わずかの利益を与えることもできないのだから、少しもこわがることはない。

6 神様。あなたのような神はほかにいません。神様は偉大な方で、御名には力があふれています。

7 神様だけが、国々の王と呼ばれるのにふさわしい方です。神様を恐れない者がいるでしょうか。地上の知恵者の中にも、世界の王国の中にも、神様と並ぶ者は一人もいません。

8 どんなに知恵があろうとも、偶像を拝む者はみな、まぬけで、とんまです。

9 彼らはタルシシュから銀の延べ板を、ウファズからは金を運んで来て、偶像を作る熟練した細工人に渡します。それから、でき上がった神々に、仕立ての名人の作った、王の着る紫の衣を着せます。

10 しかし、主はただ一人のまことの神、生ける神、また永遠の王です。ひとたび主が怒れば、全地は震えます。このお方の不興を買えば、世界は御前を離れて隠れます。

11 ほかの神々を拝む者に言ってやりなさい。天と地を造ったのでもない神々は、地上から姿を消す運命にあります。

12 しかし私たちの神様は、ご自分の力と知恵によって世界を造り、すぐれた知性によって星を空間にちりばめ、天を張り広げました。

13 嵐を運ぶ雲から聞こえる雷鳴は、御声の響きです。神様は地からもやを立ちのぼらせ、いなずまを送り、雨を降らせ、倉から風を呼び出します。

14 神様を知らず、偶像に頭を下げる者は、義理にも利口とは言えません。むしろ恥ずかしいことをしています。いのちも力もない、いんちきな神々を作っているからです。

15 そんなものはみな、まるで値打のない、ばかげたものです。刑罰の下る時には粉々にこわされます。

16 しかしイスラエルの神様は、こんなくだらない偶像とは違います。神様はあらゆるものを造ったお方であり、しかもイスラエルは神様に選ばれた国なのです。天の軍勢の主というのが、そのお名前です。

17 神様は命じます。さあ、荷物をまとめよ。もう間もなく攻撃が始まるから、逃げるしたくをせよ。

18 今度こそ、わたしは大きな悩みをもたらし、おまえたちをこの地から放り出す。こうしてやっと、おまえたちはわたしの憤りを肌で感じるようになる。

19 私の傷は重く、悲しみは深い。私は不治の病にかかっていますが、耐えていかなければなりません。

20 家はなくなり、連れ去られた子供たちとは、二度と会えないでしょう。家を建て直す手伝いをしてくれる者は、一人も残っていません。

21 指導者たちは分別を失いました。彼らはもはや神様に従おうとせず、みこころを尋ねようともしません。そのため、彼らは滅び、群れは散り散りになります。

22 北から来る大軍の巻き起こす、すさまじい物音を聞きなさい。ユダの町々は山犬の住みかになってしまいます。

23 神様。人は自分の力で人生の地図をつくり、進路を決めることはできないことを、私は知っています。

24 私をたたき直してください。ただし、どうか、やさしく扱ってください。怒りにまかせて、つらくあたらないでください。そうでないと、私は死んでしまいます。

25 神様に従わない国民に、激しい怒りを注いでください。彼らはイスラエルを破壊し、国を見渡す限りの荒れ地にしたからです。

11

1 神様はまた、エレミヤにお語りになりました。ユダの国民と、エルサレムの全住民に、わたしが彼らの先祖と契約を結んだことを思い出させよ。その契約を守らない者はのろわれる。

2 -

3 -

4 わたしは、エジプトの奴隷だった彼らを助け出した時、わたしの言いつけを守りさえすれば、彼らも子孫も共々にわたしの国民となり、わたしは彼らの神となると言った。

5 だからわたしに従え。そうすれば、誓いどおり、すばらしいことをしてやろう。今日あるとおり、「乳と蜜の流れる地」を与えたいのだ。これを聞いて、私は「神様、ぜひ、そうしてください」と答えました。

6 すると、神様は命じました。以上のことをエルサレムの町中で、大声で伝えよ。国中の町々を巡って、「ご先祖が神様と結んだ契約を思い出し、約束どおりに行なえ」と言え。

7 わたしは、おまえたちの先祖をエジプトから助け出した時から今日まで、口がすっぱくなるほど、「わたしのすべての命令に従え」と言い続けてきた。

8 だがおまえたちの先祖は、従うどころか聞こうとさえせず、頑として、好き勝手に振る舞った。彼らが従うことを拒否したので、わたしは契約の中にある災いをみな下した。

9 神様はまた、私にお語りになりました。わたしは、ユダとエルサレムの住民の間に、わたしに対する陰謀のあることを知った。

10 彼らは先祖の道にあと戻りし、わたしの命令をやぶり、偶像を拝んだ。わたしが彼らの先祖と結んだ契約を破棄したのだ。

11 だから、彼らに災いを下す。それから逃げることはできない。あわれみを叫び求めても、わたしは耳を貸さない。

12 そこで彼らは、偶像の前で香をたいて祈る。だが、そんなことをしても、悩みと絶望からは救われない。

13 ああ、わたしの国民よ。おまえたちの神々は掃いて捨てるほどあり、バアルに香をたく恥の祭壇は、エルサレムのどの通りにもある。

14 だからエレミヤよ、もう、この国民のために祈ってはならない。彼らのために、泣いたり嘆願したりしてはならない。わたしは、彼らが最後の土壇場になって助けを求めてきても、耳をふさぐことに決めた。

15 わたしの国民は、どんな権利があって、わたしの宮に来るのか。おまえたちは裏切り者で、ほかの神々を拝んできた。おまえたちのいろいろな約束やいけにえが、今になって、滅びの運命をいのちと喜びに変えることができようか。

16 わたしはかつて、おまえたちを「おいしい実をたくさんつける、美しい緑のオリーブの木」と呼んだ。ところが今度は、おまえたちを焼き焦がし、丸坊主にするために、敵という火を送り込んだ。

17 イスラエルとユダがバアルに香をたくという悪事を働いたため、木を植えたわたしが滅ぼせと命じたのだ。

18 神様は私に、彼らの計画をぜんぶ知らせ、その悪だくみを教えてくださいました。

19 私は、屠殺場に引かれて行く子羊や牛のように、先にある危険に少しも感づいていませんでした。まさか彼らが私を殺そうとしていようとは、夢にも思わなかったのです。彼らは、「あの男を殺し、口を封じてしまおう。殺して、やつの名を永久に葬り去ろう」と相談し合いました。

20 ああ、天の軍勢の主よ。あなたは正しいお方です。彼らの心と動機とを探り、彼らの企てた悪事に報いてください。私は、神様が正義を行なうのを見守っています。

21 すると、神様はこうお答えになりました。アナトテの町の住民は、おまえを殺そうとしたので罰を受ける。彼らはおまえに、神の名によって預言したら殺してやる、と言うだろう。それで、彼らの若い男たちは戦場で死に、息子、娘は飢えに苦しむ。

22 -

23 こうして、陰謀に加わった者は一人もいなくなる。わたしが大きな災いを下すからだ。彼らの刑罰の時はすでにきた。

12

1 神様。これまでどんな問題を持ち出しても、神様はいつも正義をもって答えてくださいました。今度は苦情を言う番です。どうして、悪人がこんなに栄えているのですか。どうして、心の曲がった者がこんなにも幸福なのですか。

2 神様が彼らを植えると、彼らは根を張り、その事業は発展します。大きな利益をあげ、大金持ちになります。彼らは、口では「神様ありがとうございます」と言いますが、心の中では舌を出しているのです。

3 ところで、神様は私の心をご存じです。私がどんなに神様を慕っているか、ご存じです。それに、私は貧乏です。神様、どうか彼らを、哀れな羊のように、屠殺場に引いて行ってください。ああ神様、彼らをさばいてください。

4 いつまで、神様のものであるこの地は、彼らのなすままになるのですか。野の草でさえ、彼らの悪事のためにうめき、泣いています。野獣や鳥は姿を消し、地は荒れ果てました。それでもなお人々は、「神様がわれわれをさばくはずがない。われわれは全く安全だ」と言います。

5 神様は私に、こう答えました。もしおまえが、このアナトテの住民のような、ただの人間と競走して息を切らせるとしたら、どうして、馬や王、その家来、悪い祭司を相手に競争できるだろうか。平地でつまずき、倒れるとしたら、ヨルダンの密林では、どうなるのか。

6 兄弟や家族の者さえ、おまえに背いたのだ。彼らは、暴徒を呼んでおまえにリンチを加えようとした。だから、彼らがどんなに愛想よく話しかけても、信じてはならない。

7 神様は、続けて言いました。わたしは、わたしの相続財産である国民を見限った。いちばん愛している者たちを、敵の手に渡した。

8 わたしの国民は、密林のライオンのように、わたしに向かってうなり声をあげた。そのため、わたしは彼らを、毛ぎらいしている者のように扱った。

9 わたしの国民は倒れた。わたしは、はげたかと野獣の群れに、その死体の肉を食べさせる。

10 多くの外国の支配者が来て、私のぶどう園を荒らし、ぶどうの木を踏みにじり、美しい地所を草木の生えない荒野にしました。

11 彼らはそこを荒れ地としました。それが痛々しそうに泣いている声が、聞こえます。全地は荒れ果てているのに、だれひとり心に留めようとしません。

12 あらゆるものを破壊する軍隊が、全地を荒らします。神様の剣が国の端から端まで暴れ回るので、だれも逃げることができません。

13 小麦をまいても、刈り取るのはいばらです。どんなに汗水流して働いても、少しの足しにもなりません。ただ恥を刈り取るだけです。激しい神様の怒りが注がれるからです。

14 今度は、ご自分の国民イスラエルに与えた地を包囲する悪い国々への宣告です。わたしはおまえたちを、ユダにしたと同じように、おまえたちの国から引き抜く。

15 だが、あとになって同情を寄せ、おまえたちの相続地である国へ連れ戻す。

16 もし、これらの異教の国々が素早くわたしの国民の生き方を身につけ、イスラエルに輸出したバアルではなく、わたしを神とするなら、わたしの国民のうちでも強いものとなる。

17 だがわたしに従わない国は、もう一度追放され、根絶やしにされる。

13

1 神様は私に、こう命じました。行って、リンネルの帯を買い、それを締めよ。ただし、水で洗ってはいけない。

2 私はさっそく帯を買って、それを締めました。

3 すると、またお告げがありました。

4 その帯を取り、ユーフラテス川に持って行き、岩の割れ目に隠せ。

5 私は言われたとおりにしました。

6 かなりしてから、また命令がありました。もう一度でかけ、あの帯を取り出せ。

7 私はすぐさま出かけ、隠しておいた岩の割れ目から帯を取り出しました。ところが、かびが生えて、ぼろぼろになり、とても使いものになりません。

8 すると、神様がきっぱり言いました。わたしはこのように、ユダとエルサレムの誇りを腐らせる。

9 -

10 この悪い国民は、わたしのことばを聞こうともせず、悪い願望のままに生活して偶像を拝んでいる。だから、この帯のように全く役に立たなくなる。

11 帯を腰に巻きつけるように、わたしはユダとイスラエルをわたしに結びつけた。彼らはわたしの名の栄光を現わすための、わたしの国民である。ところが、彼らはわたしから離れて行った。

12 彼らに告げよ。おまえたちのつぼには、ぶどう酒がいっぱい詰まっている。これを聞いて、彼らは答えるだろう。そんなことぐらい、わかっているさ。われわれがどんなに富んでいるかを、別に教えてもらう必要はない。

13 そこで、こう言ってやれ。おまえたちの性根は腐っている。わたしは、ダビデの王座につく王、祭司、預言者、それに全国民を途方にくれさせる。

14 父と息子をいがみ合わせる。少しもあわれみをかけず、徹底的に滅ぼす。

15 そんなに思い上がり、強情を張るものではありません。神様がお語りになったのだから、素直に聞きなさい。

16 視界ゼロの暗やみを送り込まれる前に、手遅れにならないうちに、神様に栄光をお返ししなさい。その時になれば、あなたがたは暗い山につまずき、倒れます。その時には、光を捜し求めても、あるものは身の毛のよだつ暗やみだけです。

17 それでもなお、耳をふさぐのですか。もしそうなら、私は心を痛め、思い上がったあなたがたのために、一人で嘆き悲しみましょう。神様の国民が奴隷になって連れ去られるのです。とても泣かずにはいられません。

18 王と王母に、王座から降りて、ちりの中に座れと告げよ。その頭上に輝く冠は、奪い取られ、ほかの人に与えられるからだ。

19 エルサレムの南にあるネゲブの町々は、敵襲に備えて門を閉めた。エルサレムは助けにならないので、自分で自分を守らなければならないのだ。それに、ユダの全国民は、奴隷として連れ去られる。

20 北から攻めて来る軍隊を見よ。エルサレムよ、おまえの羊の群れはどこにいるのか。わたしが預けておいた美しい羊の群れはどこか。

21 わたしがおまえの同盟軍をおまえの支配者とする時、おまえはどう思うだろう。さぞかし、子供を産もうとする女のように、身もだえして苦しむことだろう。

22 どうしてこんなことが起こったのか、と聞きただすだろうが、何もかも、おまえの犯した多くの罪のためなのだ。だからこそ、おまえは侵入して来た軍隊に辱しめられ、破壊される。

23 エチオピヤ人は皮膚の色を変えることができようか。ひょうが斑点を消すことができようか。同じように、悪いことをするのに慣れたおまえも、善人になることなどできない。

24 おまえはわたしを忘れ、偽りの神々に頼っているので、砂漠の強い風に吹き飛ばされるもみがらのように散らす。これが、特におまえのために考えておいた運命だ。

25 -

26 おまえの恥を洗いざらいさらけ出す。

27 おまえの背信、わたしへの裏切り、野原や丘の上でのいまわしい偶像礼拝を、いやと言うほど見せつけられた。エルサレムよ。おまえはひどい目に会うぞ。いったい、いつになったらきよくなるのか。

14

1 神様は日照りについて、次のようにエレミヤに説明なさいました。

2 ユダは嘆き悲しむ。いっさいの仕事の手を止め、だれもかれも地にひれ伏す。エルサレムから大きな叫び声があがる。

3 貴族たちは召使に井戸の水をくませようとするが、井戸は干上がっている。しかたなく召使は手ぶらで帰り、悲しみながら頭をかかえこむ。

4 水不足で地面はからからに乾き、あちこちに地割れができる。農夫はおびえきる。

5 どこにも草がなく、鹿は子供を置き去りにする。

6 野ろばは裸の丘に立ち、のどの渇いた山犬のように肩で息をする。目を大きく見開いて草を捜し求めるが、一本の草も見つからない。

7 ああ神様。私たちはひどい罪を犯しました。ですが、神様ご自身の評判のために、私たちを助けてください。

8 イスラエルの望みであるお方、困った時に助けてくださる神様。どうして、一夜の宿を求める旅人のように、この国をあわただしく通り過ぎて行かれるのですか。

9 とまどっておられるのですか。力がないので、救ってくださることができないのですか。神様は私たちの真ん中におられます。だれもが知るとおり、私たちは神様の名をいただいた国民です。どうぞ私たちを見捨てないでください。

10 ところが神様は、こうお答えになりました。おまえたちはわたしを離れてさすらうのを得意とし、わたしの道を歩こうとしなかった。今さら、わたしの国民として受け入れることはできない。わたしは今、おまえたちのしたいっさいの悪を思い出し、おまえたちの罪を罰する。

11 神様はまた、私に命じました。これ以上、この国民を祝福してくれと願ってはならない。二度と彼らのために祈ってはならない。

12 彼らが断食しても、見て見ぬふりをする。供え物やいけにえをささげても、受けつけない。わたしのお返しは戦争とききんと病気だ。

13 そこで、私は申し上げました。神様。彼らの預言者は、戦争もききんもなく、平穏無事だと告げています。神様はまちがいなく平和をもたらし、祝福してくださると伝えています。

14 神様はお答えになりました。預言者どもは、わたしの名をかたって嘘をついている。わたしは彼らを送り出しもせず、何か話すようにと命じもしなかった。彼らは、見たことも聞いたこともない幻と啓示について預言している。口から出まかせに、まやかし事を話す。

15 わたしはこの預言者どもを罰する。戦争もききんも起こらないと言うが、そう言う彼らが、戦争とききんで死ぬ。

16 彼らの預言を聞く者も、ききんと戦争の犠牲となり、遺体はエルサレムの通りに捨てられる。葬る者は一人もいない。夫も妻も息子も娘も、みな姿を消す。罪の罰として、わたしが恐ろしい刑罰を下すからだ。

17 だから、彼らにこう言ってやれ。「私の目からは、夜となく昼となく涙があふれる。同胞が剣で刺され、重傷を負って地面に転がっているので、私は男泣きに泣く。

18 野に出ると、切り殺された者の死体が転がっている。通りを歩くと、飢えや病気で死んだ者の遺体がごろごろしている。ところが預言者や祭司は、おろおろさまよい歩くばかりだ。」

19 神様、ユダをすっかりお見捨てになったのですか。エルサレムを毛ぎらいなさるのですか。これほどの罰を受けても、まだ平和は訪れないのですか。これでやっと傷を治していただける、と思っていましたのに......。ところがどうでしょう。平和になるどころか、どこもかしこも悩みと恐ればかりです。

20 神様、お赦しください。私たちがまちがっていました。

21 御名のために、私たちを憎まないでください。私たちを祝福するという約束を反古にして、神様ご自身と、その栄光の御座を恥さらしにしないでください。

22 どこの国の神が、私たちのために雨を降らせるでしょう。私たちの神様以外に、このようなことのできる神はいません。ですから私たちは、神様が助けてくださるのを待っているのです。

15

1 すると神様は、こう私にお語りになりました。たといモーセとサムエルがわたしの前に立ち、この国民のために嘆願しても、わたしは彼らを助けない。彼らのことなど放っておけ。わたしの目の届かない所へ追っ払え。

2 もし彼らがおまえに、どこへ行ったらいいのかと尋ねたら、わたしがこう言ったと告げてやれ。死に定められた者は死に、剣で殺される運命にある者は剣に、ききんに定められた者はききんに、捕虜になる者は捕虜に。

3 わたしは彼らのために、四種類の殺し屋を決めておく。切り殺す剣、食いちぎる犬、残ったものをきれいに平らげるはげたかと野獣だ。

4 ユダの王、ヒゼキヤの子マナセがエルサレムでなした悪事のために、おまえたちを厳しく罰する。おまえたちの身に起こることは、世界中の人々に、鳥肌が立つほどの恐怖を与える。

5 エルサレムよ。だれが、おまえのために心を痛めて泣くだろうか。だれが、おまえの安否を尋ねるだろうか。

6 おまえはわたしを捨て、わたしに背いた。だからわたしは、おまえを打ちすえようと、こぶしを振り上げる。おまえに立ち直る機会を与えるのには、もう疲れた。

7 おまえを町の門でふるいにかけ、おまえが大切にしているものをみな奪い取る。わたしの国民は悪の道を振り切ってわたしに立ち返ろうとしないので、彼らを滅ぼす。

8 未亡人の数はかぞえきれなくなる。わたしは真昼に若い男を死に渡し、母親を嘆かせる。彼らに突然、苦痛と恐怖を与える。

9 七人の子をもつ母親は、息子がみな死ぬので半狂乱になる。まだ昼だというのに、目の前は真っ暗だ。子供がみな殺されるので、子供がない女となり果て恥をかく。

10 その時、エレミヤはこう言いました。「お母さん、なんてことでしょう。こんな悲しい思いをするくらいなら、生まれてすぐ死んでいたらよかったのに。どこへ行っても、私は憎まれ者です。やかましく返済を迫ったことも、人から借りた物を返さなかったこともないのに、だれもかれも私をのろいます。

11 彼らがのろうままにしておこう。神様。あなたは、敵対する彼らのために私がどんなにとりなし、どんなにその助命を嘆願したかをご存じです。」

12 北の国の鉄や青銅のかんぬきは、どのようにしてもこわれない。同じように、この国民の強情な心も、砕くことはできない。わたしへの罪のために、おまえたちの富と財宝を戦利品として敵に与える。

13 -

14 敵がおまえたちを捕虜とし、おまえたちの知らない国へ連れて行くにまかせる。わたしの怒りは火のように燃え上がり、おまえたちを焼き尽くす。

15 これに答えて、エレミヤが言いました。「神様。私がこんなに苦しんでいるのは、神様のためであることをご存じですね。神様のおことばを伝えたので、人々は私を迫害します。どうか、彼らの手にかかって殺されるようなことがありませんように。私を彼らの強い力から救い出し、彼らにふさわしい罰を加えてください。

16 神様のおことばは、私をしっかり支えます。それは、ひもじい私のたましいにとっての食べ物です。私の重い心に喜びをもたらし、有頂天にさせてくれます。神様。私は、神様の預言者にされたことを誇りに思います。

17 私は、笑いさざめく彼らの宴会に列席しませんでした。神様の御手のもとに一人で座っています。彼らの罪への憤りで、心は張り裂けんばかりです。ところが神様は、いざという時に私を見殺しにしたのです。迫害をやめさせてはくださいませんでした。彼らは、私に害を加える手を、ただのひと時も止めないのでしょうか。神様の助けは、ある時は水があふれ、ある時は干上がってしまう谷川のように、あてになりません。」

18 -

19 神様はこうお答えになりました。「そんな訳のわからないことを言わず、もう少し分別のあることを口にするものだ。おまえが、前のようにわたしに頼るようになれば、わたしの代弁者にしておく。おまえが彼らに影響を与えるべきであって、逆に彼らの影響を受けてはならない。

20 彼らは、高い城壁に向かって攻撃をしかける軍隊のようにおまえと戦うが、どうしても勝てない。わたしが味方につき、おまえを守り、救い出すからだ。

21 わたしはきっと、この悪人どもからおまえを助け出し、彼らの無慈悲な手からおまえを救う。」

16

1 別の機会に、神様はこうもお語りになりました。

2 おまえは妻をめとり、この地で子供をもうけてはならない。

3 この町で生まれる子供も、その両親も、

4 恐ろしい病気にかかって死ぬからだ。彼らのために嘆いたり、埋葬してくれる者は、一人もいない。死体は地面に放り出されたままで腐り、地の肥やしになる。彼らは戦争やききんで死に、死体は、はげたかや野獣につつかれ、引き裂かれる。

5 彼らのために嘆いたり、泣いたりするな。わたしは彼らを保護するのをやめ、平安を取り上げたばかりか、恵みとあわれみをかけることさえやめたからだ。

6 国民は身分の高い者も低い者も、死んでも埋葬してもらえず、悲しんでもらえない。友人でさえ、髪を刈ったり、頭をそったりして悲しみの気持ちを表わそうとしない。

7 だれ一人、悲しむ者に食事を出して慰めず、相手の両親の死を悼むしるしに一杯のぶどう酒を与えようともしない。

8 こんな悲惨なことが待っているのだから、そのしるしとして、宴会やパーティーに二度と顔を出してはならない。彼らと食事を共にすることも許されない。

9 イスラエルの神、天の軍勢の主であるわたしが、こう言うのだ。おまえの生きている間に、しかもおまえの見ている前で、わたしはこの国から笑い声を絶やす。楽しい歌声、結婚の披露宴、それに花婿と花嫁の歌声はとだえる。

10 これらのことを包み隠さずに話すと、彼らはこう聞き返すだろう。「どうして神様は、こんなに恐ろしいことをなさるのか。こんなひどい目に会わせられる覚えはない。いったい私たちが神様に、どんな罪を犯したというのか。」

11 そうしたら、わたしの返事を知らせてやれ。おまえたちの先祖がわたしを捨てたから、こんなことになったのだ。彼らはほかの神々を拝み、それに仕えた。わたしのおきてを守らなかった。

12 そればかりか、おまえたちも、先祖より悪いことをしてきたではないか。自分たちの心のままに悪の道へ走り、わたしの言うことを聞こうとさえしなかった。

13 だから、おまえたちをこの国の外に放り出し、だれも知らない異国の地に追い払う。そこで、好きなだけ偶像を拝むがいい。ただし、わたしは少しも恵みを与えない。

14 しかし、栄光に輝く日がくると、神様は宣言なさいます。その時の話題の中心は、神様がご自分の国民を、みせしめのために奴隷として追いやった北の国々から、連れ戻すということです。その時、おまえたちはもはや、わたしがおまえたちをエジプトから連れ戻した時のことを、なつかしそうに振り返らなくなる。あの時の大きな奇蹟でさえ、ほとんど話の種にならなくなる。わたしがおまえたちを、先祖に与えたこの地に連れ帰るからだ。そう神様は断言なさいます。

15 -

16 わたしは大ぜいの漁師をやり、わたしの憤りから逃げて深い所に隠れているおまえたちを、網で引き上げる。狩人をやって、森の中の鹿や、近づくことのできない断崖の上に立つ野やぎを狩り出すように、おまえたちを低地へ追い立てる。わたしのさばきをのがれて逃げ出しても、必ず見つけ出して罰する。

17 わたしはおまえたちに目を光らせ、一部始終を見ているのだ。すべての罪を心に留めている。わたしから逃げ出すなど、できない相談だ。

18 わたしはおまえたちのすべての罪に対して、二倍の罰を加える。おまえたちがわたしの地を鼻持ちならない偶像で汚し、あらん限りの悪事で満たしたからだ。

19 神様。私の力、私の要塞、悩みの日の私の隠れ家よ。世界中の国民がみもとに来て、こう言うでしょう。「私たちの先祖はほんとうにばかでした。少しも価値のない偶像を拝んでいたからです。

20 神を作ることが人間にできるでしょうか。人間の作る神々は本物の神ではありません。」

21 彼らがこのような気持ちでわたしのところへ来る時、わたしは彼らに力を示し、わたしだけが神であることを悟らせる。

17

1 鉄のペンかダイヤモンドの先端で、石の心と祭壇の端に、悪いおきてが刻み込まれているかのように、わたしの国民は吸い寄せられるようにして罪を犯す。

2 若者でさえ罪を犯すことだけは忘れず、木々の下で偶像を拝み、高い山でも平地でも偶像に仕えている。だから、おまえたちの全財産を、罪に見合う代価として、敵に渡す。

3 -

4 こうして、わたしがおまえたちのために取っておいたすばらしい相続財産は、おまえたちの指の間からすべり落ちる。わたしはまた、おまえたちを奴隷として、遠くの敵国へ売り渡す。それというのも、おまえたちが、いったん燃えたら永久に消えないわたしの憤りに、火をつけたからだ。

5 神様はこう告げます。死んでいく人間を頼りとし、心が神から離れる者は、のろわれる。

6 そのような者には、砂漠のずんぐりした灌木のように、将来の希望など少しもない。古き良き時代から永久に見放された彼は、草木も生えない、塩分の多い荒野に住む。

7 だがわたしを頼りとし、わたしを望みとする者は、祝福される。

8 彼は川の土手に沿って植えられた木のように、深く張った根で川から直接水分を吸収するので、暑さにもしおれず、長いかんばつでも弱らない。葉はいつも青々と茂り、みずみずしくおいしい実をつける。

9 人の心は何ものよりも欺きやすく、芯まで腐っている。それがどんなに悪質なものであるかは、だれにもわからない。

10 ただわたしだけが人の心を知っていて、すみずみまで探り、いちばん奥に隠された動機まで調べ上げる。そして、一人一人にそれぞれの生き方に応じた報いを与える。

11 自分でかえさなかったひな鳥を抱く鳥は、やがて、そのひなに逃げられる。不正な手段で富を手に入れる者も同じだ。遅かれ早かれ富を失い、結局は哀れなおいぼれになる。

12 私たちの逃げ場は、永遠の栄光に輝く、高くあげられた神様の御座です。

13 イスラエルの望みである神様。神様に背く者はみな、面目を失い、恥をかきます。そのような者の名は、地上の名簿には載っていますが、天の名簿には載りません。いのちの泉である神様を見捨てたからです。

14 神様。私を健康にし、救ってくださるのは、神様だけです。ですから、ただ神様だけをほめたたえます。

15 人々は私をあざけります。「おまえがしきりに口にしていた神様のことばとやらは、いったいどうなったんだい。おまえの言っていた脅しが、ほんとうに神様から出たのなら、どうしてそのとおりにならないんだい。」

16 神様。私は人々が恐ろしい災難の下敷きになるのを見たくありません。そのような計画は神様が立てたので、私が立てたのではありません。私が彼らに伝えたのは、神様のおことばであって、私のことばではありません。彼らが滅びるのを見るに忍びません。

17 神様、今になって、私を置き去りにしないでください。神様だけが私の望みです。

18 私を迫害する者に混乱と悩みをもって報いてください。私には平安を与え、彼らには二倍もひどい滅びを与えてください。

19 神様は私にお語りになりました。さあ、エルサレムの門に立て。まず、王の通用門へ行き、次にほかのすべての門へ行って、

20 すべての者にこう言え。ユダの王と国民、それにエルサレムの全住民よ、よく聞け。

21 神はこう言う。おまえたちの生き方に気をつけろ。安息日は身も心もきよく過ごし、不必要な仕事をするな。わたしはこの命令をおまえたちの先祖に伝えた。

22 -

23 ところが、彼らは聞かず、従おうとしなかった。強情を張り、注意深く教えを聞こうとしなかった。

24 だが、おまえたちがわたしに従い、安息日に働くのをやめ、きよい特別な日とするなら、

25 この国はいつまでも繁栄する。エルサレムの王座には、いつもダビデの子孫が座るようになる。いつの時代にも、はなやかに着飾った王や君主が車に揺られて都大路を通る。

26 また人々は、エルサレムの周囲、ユダとベニヤミンの町々、それに南のネゲブとユダの西部にある低地から、完全に焼き尽くすいけにえや、穀物の供え物、香料などを携えて来る。さらに、神殿で神をほめたたえるために、いけにえを引いて来る。

27 しかし、わたしの言うことを聞かず、安息日を汚し、安息日だというのにほかの日と同じように、エルサレムの門の中に商品の荷を運び込むようなことをしたら、わたしはこれらの門に火をつける。火は宮殿にまで燃え広がり、それを灰にする。しかも、燃えさかる炎はだれにも消せない。

18

1 神様からエレミヤに、次のようなお告げがありました。

2 「さあ、陶器を作っている家に行け。そこで、おまえに話そう。」

3 言われたとおりにすると、陶器師はろくろを回している最中でした。

4 ところが、彼は手がけていたつぼが気に入らなかったので、それをつぶして粘土のかたまりにし、初めからやり直しました。

5 その時、神様がお語りになりました。

6 イスラエルよ。この陶器師が粘土にしたのと同じことを、わたしはおまえたちにできないだろうか。陶器師の手の中に粘土があるように、おまえたちもわたしの手の中にある。

7 わたしが、一つの国が引き抜かれて滅ぼされると言った時、

8 もしその国が悪の道を捨てるなら、わたしは予定を変更して、その国を滅ぼさない。

9 また、わたしが、ある国を強くすると言った時、

10 もしその国が途中で考えを変えて悪の道に走り、わたしに従わなくなれば、わたしも考えを変え、祝福の約束を撤回する。

11 だから出かけて行って、ユダとエルサレムの全住民に、こう警告せよ。さあ、神のことばを聞け。わたしは今おまえたちのために、良いことではなく悪いことを計画している。だから悪の道を捨て、正しいことを行なえ。

12 ところが彼らは、こう答えました。「おせっかいはよしてくれ。神様の言われたことを行なう気なんか、これっぽっちもないんだ。だれからも束縛されるものか。こうやって強情を張りとおし、悪を身につけたまま、いつまでも好き勝手な生活をしたいのだ。」

13 その時、神様はこう言いました。たとい異教の国民の間でも、こんなことを聞いた者はいない。考えただけでぞっとするようなことをわたしの国民がしたのだ。

14 レバノン山頂の雪は決してとけず、ヘルモン山から流れ下る冷たい水は、決してかれない。

15 これらのものは、いつもあてにできる。ところがわたしの国民ときたら、全くあてにならない。彼らはわたしを置き去りにして、むなしい偶像のもとに走った。昔からの正しい道をはずれ、罪のどろ沼に迷い込んだ。

16 そのため、国は荒れ果て、そこを通る人は思わず息をのみ、あまりにもすさまじい光景に驚いて頭を振る。

17 わたしはわたしの国民を、東風がちりを巻き上げるように、敵の前でまき散らす。彼らがどんなに悩んでも、知らぬ顔を決め込み、彼らの苦しみを心にかけない。

18 すると、人々はこう相談しました。「さあ、エレミヤを殺してしまおう。われわれには、祭司や学者、それに預言者がついている。やつの忠告なんかいらない。二度とわれわれに不利なことをしゃべり、われわれを苦しめないように、やつの口を封じよう。」

19 ああ神様、私を助けてください。彼らが私にどんなことをしようとしているか、見てください。

20 彼らは、悪をもって善に報いようとするのでしょうか。彼らは私を殺そうと、罠をしかけました。それでも私は、彼らのことをよく言い、何とかして、神様の怒りが彼らに向けられないようにと努力しました。

21 神様、彼らの子供を飢え死にさせてください。彼らを剣にかけてください。彼らの妻を未亡人とし、子供を一人残らず失わせてください。男は伝染病で死なせ、若者は戦場で倒れさせてください。

22 兵士の一隊が不意に襲う時、彼らの家から泣き叫ぶ声が聞こえますように。彼らは私を落とそうとして穴を掘り、私の歩く道に、こっそり罠をしかけたからです。

23 神様。あなたは、私を殺そうとする彼らの計画をご存じです。彼らを赦さないでください。彼らの罪を赦さず、御前で滅ぼしてください。彼らに御怒りをぶちまけてください。

19

1 神様はこうお語りになりました。粘土で作ったつぼを買い、都の南東にある瀬戸のかけらの門に近いベン・ヒノムの谷へ持って行け。長老と先輩の祭司を数人つれて行き、わたしがあなたに伝えることは何でも語れ。

2 -

3 神様は彼らにこう語りかけました。ユダの王とエルサレムの市民よ、わたしのことばを聞け。わたしはイスラエルの神、天の軍勢の主だ。わたしはここに恐ろしい災害をもたらす。それは想像を絶するほど恐ろしいもので、それを聞く者の耳は刺すように痛む。

4 イスラエルがわたしを捨て、この谷を恥と悪のたまり場にしたからだ。この国民は、今の時代の者も先祖も、またユダの諸王も拝んだことのない偶像に香をたき、ここを罪のない子供たちの血で満たした。

5 バアルのために高い祭壇を築き、そこでわが子をいけにえとして焼いたのだ。こんなことは、命じもしなければ考えもしなかったことだ。

6 だから、この谷が「トフェテ」でも「ベン・ヒノム」でもなく、「虐殺の谷」と呼ばれる日がくる。

7 わたしはユダとエルサレムの作戦計画の裏をかき、侵入して来る軍隊にここでおまえたちを殺させ、その死体をはげたかと野獣のえじきとするからだ。

8 また、わたしがエルサレムを地上から一掃するので、そこを通り過ぎる人はみな、わたしがこの町にどんなことをしたかを見て、驚きのあまり息をのむだろう。

9 敵が町を包囲するので食糧はなくなり、閉じ込められた者がわが子や友人の肉を食べるようになる。

10 さて、エレミヤよ。連れの者が見ている前で、持って来たつぼを砕き、

11 天の軍勢の主のお告げだと言って、こう伝えよ。このつぼが粉々になったように、わたしはエルサレムの市民を粉々にする。つぼが元どおりにならないように、彼らも元どおりにならない。殺される人があまりにも多いので、埋葬する場所もなくなり、ついには、死体がこの谷に山積みになる。

12 それと同じことをエルサレムでもするので、そこも死体であふれる。

13 わたしはエルサレムのすべての家を汚す。その中には、ユダ王朝の王宮もあり、屋上で星の神々に香をたき、ぶどう酒を注いだ家々もある。

14 エレミヤは、以上のことをトフェテで伝えたのち、市内に戻り、神殿の前で足を止め、全市民に言いました。

15 イスラエルの神である天の軍勢の主のお告げだ。わたしはこの町と周囲の町々に、約束どおり災いを下す。おまえたちが強情を張り、わたしのことばを聞こうとしなかったからだ。

20

1 神殿を管理する祭司、イメルの子パシュフルは、エレミヤの語ることを聞くと、

2 彼を逮捕してむちで打たせ、神殿に近いベニヤミンの門にある足かせにつなぎました。

3 エレミヤは、一晩中そこにさらされたのです。翌日、パシュフルがやっと釈放すると、エレミヤは言いました。「パシュフル、神様はあなたの名を変えました。これからは『おびえながら生きる者』と呼ばれるようになる、と言っておられます。

4 神様があなたとあなたの友人に、恐怖を与えるからです。あなたは、友人が敵の剣で殺されるのを見るでしょう。神様はこう断言なさいます。わたしはユダをバビロンの王に引き渡す。王はこの国民を奴隷としてバビロンへ連れて行き、そこで殺す。

5 またわたしは、敵にエルサレムを略奪させる。よく知られたこの町の財宝は、王の宝石や金銀ともども、遠くバビロンへと運ばれる。

6 さて、パシュフルよ。おまえと家族、一族郎党はみなバビロンで奴隷となり、そこで死ぬ。おまえをはじめ、万事うまくいくという、うその預言を聞いた者もみな、同じ運命に会う。」

7 その時、私はこう言いました。ああ神様。あなたは、助けてやると約束しておきながら、私を欺きました。神様は私より強い方なので、お告げを伝えないわけにはいきません。ところが今、私は町中の笑い者になり、だれからもばかにされています。

8 神様はただの一度も、私が彼らにやさしいことばをかけてやるのを、お許しになりませんでした。私が話すのは、いつも決まって、災害や恐怖、それに滅亡でした。彼らが私をあざけり、ばかにし、物笑いの種にするのは当然です。

9 ところが、私は神様の使者になるのをやめるわけにはいきません。二度と神様のことを口にしまい、これ以上、神様の名によって語るのは、まっぴらごめんだと言うと、私の心のうちにある神様のことばは、まるで火のように骨の中で燃えます。そのため、苦しくてたまりません。

10 その上、四方八方から脅し声が聞こえるので、私はおじ気づきます。「あいつを訴えてやろう」と、彼らは言います。元の友人でさえ、私をうかがい、私がつまずき倒れるのを今や遅しと待っています。「きっとあいつは、自分でしかけた罠に落ちるだろう。そうしたら、うんと仕返しをしてやるんだ」とてぐすね引いているのです。

11 しかし神様は、大勇士として私のそばに立っています。この力ある恐ろしいお方の前で、彼らは縮み上がります。彼らは私に歯が立ちません。かえって恥をかき、徹底的に屈辱感を味わい、一生、汚名を着せられるようになります。

12 ああ、天の軍勢の主よ。正しい者を見分け、人の心の奥底にある思いを調べるお方よ。私の件については、いっさいお任せしますから、神様が彼らに復讐してください。

13 神様、ありがとうございます。私は神様をたたえ、ほめ歌います。困りきっている哀れなこの私を、迫害する者の手から救い出してくださったからです。

14 とは言うものの、やはり、誕生日をのろいたくなるのだ。

15 父に、男の子が生まれたと報告した人は、のろわれるがいい。

16 神様が少しも手ごころを加えずにくつがえした昔の町々のように、滅ぼされてしまえ。一日中、戦いの叫び声を聞いておじ気づけばいいのだ。

17 私が生まれた時に、私を殺してしまわなかったからだ。母の胎内にいる時に死に、そこが私の墓となっていたら、どんなによかったか!

18 どうして、生まれて来たのか。悩みと悲しみと恥ばかりの一生を送るために。

21

1 次もまた、神様からエレミヤにあったお告げです。ゼデキヤ王は、マルキヤの子パシュフルと、マアセヤの子で祭司のゼパニヤをエレミヤのもとへやり、こう言わせました。「神様がお助けくださるように祈ってくれ。バビロンの王ネブカデネザルが、宣戦布告をしてきたからだ。ひょっとしたら、神様は私たちへの恵みを忘れず、昔のようにすばらしい奇蹟を行なって、王が軍隊を撤退させるように働きかけてくださるかもしれない。」

2 -

3 エレミヤは答えました。「ゼデキヤ王のところへ戻り、イスラエルの神様が、こうお語りになったと伝えなさい。わたしは、バビロンの王と、おまえたちを包囲しているカルデヤ人との前で、おまえたちの武器を役立たずにする。それどころか、敵を町の真ん中に引き入れ、

4 -

5 自らおまえたちを相手に戦う。わたしは真っ赤になって怒っているからだ。

6 その上、恐ろしい伝染病をはやらせるので、人も家畜も共に死ぬ。

7 あげくの果てに、ゼデキヤ王をはじめ、町に残っている者ぜんぶを、バビロンの王ネブカデネザルの手に渡す。彼らは、少しもあわれまれず、家畜のように殺される。

8 この国民に知らせてやれ。そう神様は告げます。生きるか死ぬかの、どちらかを選べ。

9 エルサレムに残り、敵の手にかかって殺されるか、飢えや病気で死ぬほうを取るか、それとも、町を出てカルデヤ軍に降伏し、生きるほうを取るか。

10 わたしはこの町をにらみつけている。この町の敵となり、友とはならない。この町はバビロン王の手に渡され、灰となる。

11 ユダの王に、神様はこう告げます。

12 おまえのしているいっさいの悪のため、おまえを裁くことにした。さあ、急いで公平な裁判をするのだ。わたしの燃える憤りが、だれにも消せない火となっておまえに燃え移る前に、正しいことを始めよ。

13 『われわれは安全だ。ここにいる以上、だれも指一本ふれることはできない』とうそぶいているエルサレムを相手に、わたしは戦う。

14 自ら手を下し、罪を犯した罰としておまえたちを滅ぼす。わたしが森に火を放つので、回りのものは何もかも灰になる。」

22

1 神様は私にお語りになりました。出かけて行って、直接ユダの王に伝えよ。

2 ダビデの王座についているユダ王朝の王と家来たち、それに国民よ、わたしのことばを聞け。

3 これがわたしの命令だ。公平で正しいことを行なえ。正義を求める人を助け、悪いことは即刻やめよ。外国人や移民、それに孤児と未亡人の権利を守り、まちがっても罪のない者を殺すな。

4 もしおまえが、今している恐ろしいことに終止符を打つなら、わたしはこの国を解放し、再びダビデの王座に次々と王をつかせるようにする。しかも、全国民が栄えるようになる。

5 だが、もしおまえがこの警告を聞かないなら、わたしは自分の名にかけて誓うが、この宮殿は必ず、足の踏み場もないほどの廃墟となる。

6 この宮殿については、こう宣告する。おまえは、わたしにとっては豊作の地ギルアデであり、レバノンの緑したたる森林だ。だが、わたしはおまえを滅ぼし、人の住まない、荒れ果てた場所にする。

7 おまえを解体する道具を持った破壊班を召集する。彼らは、木目の美しい杉の木を引き抜き、火に投げ込む。

8 多くの国々の民が、この町の廃墟のそばを過ぎ、口々に言う。「イスラエルの神様はなぜ、このようなことをしたのだろう。なぜ、こんなに大きな都をつぶしたのだろう。」

9 この疑問に、次のような答えが返ってくる。「ここの住民が、神様を忘れ、神様との契約を破ったからだ。彼らは偶像を拝んだのだ。」

10 死んだ人のために泣いてはならない。むしろ、連れて行かれた捕虜のために泣け。彼らは二度と祖国の土を踏めないからだ。

11 また、父ヨシヤの跡を継いで王位にのぼり、捕虜として連れ去られたエホアハズについては、こう宣告する。

12 彼は遠い異国で死に、二度と故国を見ることはできない。

13 エホヤキム王よ。おまえはひどい目に会う。強制労働によって宮殿を建てているからだ。おまえは、賃金を支払わないという不正を宮殿の壁に塗り込み、戸のわくと天井に虐待をはめ込んでいる。

14 そして、こう言っている。「広々した部屋が幾つもあり、窓のたくさんついた、壮大な宮殿を建てよう。香りの高い杉材をふんだんに使い、鮮やかな朱に塗り上げよ。」

15 だが、美しい宮殿ができたからといって、中に住む王の貫祿がつくわけではない。おまえの父ヨシヤは、なぜ長いあいだ王位についていたのか。彼が正しく、すべてのことで公平を第一としたからだ。だからこそ、彼には神の祝福があった。

16 彼は、貧しい人や困っている人に正義と援助の手が差し伸べられるように心を配った。それで、何もかもうまくいったのだ。このようにしてこそ、人は神のそば近くにいることができる。

17 だが、おまえはどうか。自己中心で、貪欲であり、不誠実この上もない。罪のない者を虫けらのように殺し、貧しい者を苦しめ、血も涙もない暴君になり下がっている。

18 だから、父ヨシヤの跡を継いだエホヤキム王に、次の刑罰を下す。彼が死んでも、家族の者はだれも泣かない。家来は、彼が死んだことなど気にもかけない。

19 彼はエルサレムの外に引きずり出され、門の向こうのごみ捨て場に投げ込まれて、死んだろばのように埋められる。

20 頼みの連合軍は姿を消したから、大声をあげて泣け。レバノンに行って彼らを捜し、バシャンで叫べ。アバリムで彼らを尋ねよ。彼らは一人残らず死んでいて、おまえを助けてくれる者は一人も残っていない。

21 おまえが羽振りをきかせていた時、わたしは警告したが、おまえは「干渉しないでください」と言った。子供のころから、わたしのことばを聞いたためしがない。

22 今度は、おまえの連合軍は、ひと吹きの風で姿を消した。友人はみな、奴隷となって連れて行かれる。こうして、いやでも自分の悪を認めざるをえなくなり、赤恥をかく。

23 レバノンの杉の木立の中の、美しい宮殿の中で優雅な生活を送ることは、快適この上もない。だが、まもなくおまえは大声をあげ、陣痛に襲われた産婦のように、うめき苦しむ。

24 それから、ユダ王朝の王エホヤキムの子エコヌヤよ。たとい、おまえがわたしの右手にはめた認印つきの指輪でも、わたしはおまえを抜き取り、おまえが最も恐れているバビロンの王ネブカデネザルと、その強力な軍隊に渡す。

25 -

26 おまえとおまえの母をこの国から放り出す。おまえは異国で死ぬ。

27 慕っている祖国へは決して帰れない。

28 このエコヌヤという男は、こわれて捨てられた皿のようだ。彼も彼の子供も、遠い国に流される。

29 地よ、神様のことばを聞きなさい。

30 神様はこうお語りになります。エコヌヤを、子供のない者として記録しておけ。彼の子供のうち一人も、ダビデの王座につき、ユダを支配することはないからだ。こうして、彼の一生はあぶくのように消える。

23

1 神様は宣告なさいます。わたしは、わたしの国民の羊飼いである指導者に災いを下す。彼らは、めんどうを見なければならない者を滅ぼし、散らしたからだ。

2 おまえたちは、わたしの群れを安全に導くどころか、置き去りにし、滅びへと追いやった。わたしは、おまえたちが彼らになした悪のために刑罰を下す。

3 一方、群れの残りを、わたしが追いやった所から集め、元の牧場に連れ戻す。彼らは再び子を生んで増える。

4 また彼らの上に、責任感の強い羊飼いを立てる。彼らは二度とこわがる必要はなく、四六時中、守られるようになる。

5 やがて、わたしがダビデの王座に、正義の若枝を置く時がくる。彼は知恵と正義をもって治める王となり、地上のどこにも正しさが行き渡るようにする。「神様は私たちの正義」というのが、彼の呼び名だ。その時、ユダは救われ、イスラエルは平和のうちに過ごす。

6 -

7 その日、人々は誓いを立てる時、「イスラエル国民をエジプトから救い出した神様は生きておられる」と言わないで、

8 「ユダヤ人を、追いやられた国々からイスラエルへ連れ戻した神様は生きておられる」と言うようになる。

9 うそで固めた偽預言者たちのことを考えると、心が痛みます。私は恐ろしくなって目を覚まし、酒にのまれた酔っぱらいのようにふらつきます。彼らには、恐ろしい運命が待ちかまえているからです。神様は刑罰を下すと宣告なさいました。

10 この国は姦通罪に満ちて、神様ののろいがかかっています。地そのものが嘆き悲しみ、牧草地は茶褐色になっています。預言者たちは悪に走り、不正を行なうことに精力を注いでいます。

11 祭司も預言者同様、神様を敬わない悪党ばかりです。神様は言います。わたしは神殿の中でさえ下品なことが行なわれるのを見た。

12 そのため、彼らの道は暗くなり、すべりやすくなる。彼らは暗い危険な小道に追いつめられ、倒れる。わたしは彼らに災いを下し、時がきたら、必ずその罪の罰金を全額支払わせる。

13 わたしは、サマリヤの預言者がお話にならないほど悪いことを知った。彼らはバアルによって預言し、わたしの国民イスラエルを罪に引きずり込んだからだ。

14 ところが、エルサレムの預言者はもっと悪い。彼らのしていることは、目もそむけたくなるほどで、姦通罪を犯し、不正を愛している。悪いことをしている者を罪から引き戻すどころか、反対にほめ、励ましている。この預言者たちは、ソドムやゴモラの住民のように、徹底して堕落している。

15 そのため、天の軍勢の主は宣告なさいます。わたしは彼らに苦い物を食べさせ、毒を飲ませる。彼らがいたばかりに、この国に悪がはびこるようになったからだ。

16 これがわたしの国民への警告だと、天の軍勢の主は告げます。むなしい希望を与える偽預言者の言うことを、聞いてはならない。彼らは口から出まかせを言い、わたしのために語ろうとしない。

17 わたしを侮る反逆者たちに、「何も心配することはない。何もかもうまくいくさ」としきりに言う。自分勝手な生活をしている者たちには、「平安があると、神様のお告げがありました」と言っている。

18 だが、神のことばを聞けるほど神に近くいる預言者を、ただの一人でもあげることができようか。彼らのうちの一人でも、神のことばを聞こうと努力しただろうか。

19 このような悪者どもを吹き飛ばすために、わたしは激しいつむじ風を送る。

20 わたしの恐ろしい憤りは、刑罰を余すところなく下すまでは、やまない。後日、エルサレムが敵の手に落ちた時、おまえたちはわたしの言ったことを認めるようになる。

21 わたしはこんな預言者を遣わした覚えはないのに、彼らはわたしのために語っているのだと、大きな口をたたく。わたしは彼らに何も言わなかったのに、自分たちの預言がわたしのものだと言いはる。

22 もし彼らがわたしの預言者なら、わたしの国民を悪の道から立ち返らせようと努力しただろうに。

23 このわたしは一個所だけに閉じ込められていて、彼のしていることが見えないような神だろうか。

24 人はわたしから姿を隠せるだろうか。わたしは、天にも地にも、どこにでもいるではないか。

25 「ゆうべ、神様からの夢を見た。まあ、その話を聞いてくれ」と、彼らは言う。こうして、わたしの名をかたって嘘を並べるのだ。

26 こんなことが、いつまで続くのか。仮に彼らが「預言者」だと言うなら、彼らは偽預言者で、自分たちの言うことをみな発明していることになる。

27 わたしが見せたのでもない夢を得々と説明することによって、バアルの偶像礼拝に転向していった先祖のように、わたしの国民にわたしを忘れさせようとしている。

28 こんないんちき預言者は、夢物語にうつつを抜かすままにしておけ。だがわたしの本物の使者は、わたしのことばを残すところなく忠実に語る。両者の間には、麦ともみがらほどの差がある。

29 わたしのことばは、火のように燃えないだろうか。それは、岩でさえ粉々に砕く巨大なハンマーではないか。

30 わたしは、お互いに語ることを知らせ合っている、これらの「預言者」に立ち向かう。口あたりのよいことを言う預言者どもは、「このお告げは神様からのものだ」と言う。

31 -

32 彼らが知恵をしぼって考え出した夢は、わたしの国民を罪へ誘い込む、まことしやかな嘘で固まっている。わたしは彼らを遣わさなかったし、彼らには、わたしの国民に告げることなど少しもない。

33 国民の一人、または「預言者」か祭司の一人が、「ところでエレミヤさん。きょう神様から聞いたという悲しいニュースって何ですか」と尋ねたら、こう答えてやれ。「どんなニュースを聞きたいのか。おまえたち自身が悲しいニュースだ。なにしろ、神様がおまえたちを捨てたのだから。」

34 「きょうの神様からの悲しいニュース」などと悪ふざけをする偽預言者、祭司、国民がいたら、わたしは彼らとその家族を罰する。

35 「神様はどんなことをお語りになりましたか」と尋ね合うのはよい。

36 だが、「神様からの悲しいニュース」と言ってはならない。悲しいのは、おまえたち自身のこと、おまえたちが平気で嘘をつくことにほかならないからだ。おまえたちはわたしのことばを曲げ、わたしが言いもしない「神様のお告げ」を発明している。

37 おまえたちは、「神様からどんなお告げがありましたか。神様は何と言われましたか」と、尊敬を込めてエレミヤに尋ねるべきだ。

38 だが、わたしの警告を無視して、「きょうの神様からの悲しいニュース」について聞こうとすれば、神であるわたしは、重荷となっているおまえたちを捨てる。おまえたちと、おまえたちの先祖に与えたこの町を、共にわたしの前から放り投げる。

39 -

40 わたしはおまえたちの恥をさらすので、おまえたちの名はいつまでも鼻持ちならないものとなる。

24

1 バビロンの王ネブカデネザルが、エホヤキムの子でユダ王朝の王エコヌヤを捕虜とし、ユダの高官、大工や鍛冶屋などの熟練工とともにバビロンへ連れ去ったのち、神様は次の幻を私に示しました。

2 エルサレムの神殿の前に、いちじくを盛った二つのかごが見えました。一つのかごには、よく熟した取り立てのいちじくがありました。しかし、もう一方のかごのいちじくは、いたんでかびが生え、ひどく腐っていて、とても食べられない代物でした。

3 その時、神様がお尋ねになりました。「エレミヤよ、何が見えるか。」「いちじくです。とてもおいしそうなものもありますし、お話にならないほど悪いものもあります。」

4 「良いいちじくとは、バビロンに移された人のことだ。わたしは彼らのためを思って、彼らを異国に送った。

5 -

6 わたしは、彼らが、行った先で丁重に扱われるように仕向け、またこの地に連れ戻す。彼らを助けこそすれ、傷つけるようなことはしない。彼らを植えて、二度と引き抜かない。

7 彼らに、わたしに対して、打てば響くような心を与える。彼らはわたしの国民となり、わたしは彼らの神となる。彼らは大喜びで、わたしのもとへ帰って来るからだ。

8 一方、腐ったいちじくとは、ユダの王ゼデキヤをはじめ役人連中、それにこの地に残っているエルサレムの住民のことだ。エジプトに住んでいる者も、この中に含まれる。わたしは彼らを、悪くて食べられない、いたんだいちじくのように処分する。

9 彼らを、地上のあらゆる国々から毛虫のように嫌われるようにする。彼らは、わたしが強制的に追いやる地で、あざけられ、ののしられ、のろわれる。

10 わたしが大虐殺とききんと伝染病を送るので、ついに彼らは、わたしが彼らと先祖に与えたイスラエルの地から絶たれる。」

25

1 ユダの全国民にあてられた次のお告げは、ヨシヤの子でユダ王朝の王エホヤキムの治世の第四年に、神様がエレミヤに語ったものです。この年に、バビロンの王ネブカデネザルが即位しました。

2 アモンの子でユダ王朝の王ヨシヤの第十三年から今まで、二十三年間にわたって、神様のお告げが私にありました。私はそのお告げを忠実に伝えてきたのに、あなたがたは聞こうとしませんでした。

3 -

4 神様は何度も、ご自分の預言者をあなたがたのもとへ遣わしたのに、あなたがたは耳をふさぎました。

5 お告げは、いつも次のようなものでした。悪の道から離れ、悪事から足を洗え。そうして初めて、おまえたちは、わたしがおまえたちと先祖に与えたこの地に、いつまでも住むことができる。

6 偶像礼拝という大それたことをして、わたしを怒らせるな。わたしに真実を尽くすなら、害は加えない。

7 だがおまえたちは、わたしのことばを聞こうとしなかった。かえって、まっしぐらに悪の道に進み、偶像のことでわたしを怒らせた。ありとあらゆる災いをこうむる結果を、自ら招いたのだ。

8 そして今、天の軍勢の主である神様は、こう宣告なさいます。おまえたちはわたしのことばを聞かなかったので、わたしの代理人に立てたバビロンの王ネブカデネザルの率いる北方軍団を呼び、この国と住民、それに周囲の国々を攻めさせる。こうして、おまえたちを徹底的に滅ぼし、永久にさげすみの代名詞とする。

9 -

10 おまえたちの喜びと楽しみ、結婚の披露宴を取り除く。事業は失敗に終わり、おまえたちの家庭は無気味な暗やみに閉ざされる。

11 国の全土は見渡す限りの荒れ地となるので、全世界の人は、おまえたちに降りかかった災害を知ってショックを受ける。イスラエルと近隣の諸国は、七十年間バビロン王に仕える。

12 この奴隷の期間が終わったら、わたしはバビロン王とその国民を、彼らの罪のために罰する。カルデヤの地を永久に荒れ果てた所とする。

13 この書の中で約束した恐ろしい災害、エレミヤが国々に宣告した刑罰を全部、この地にもたらす。

14 多くの国々と強い王たちが、ちょうどカルデヤ人がわたしの国民を奴隷にしたように、今度はカルデヤ人を奴隷にする。わたしは彼らを、彼らがわたしの国民をどう扱ったかを基準にして罰する。

15 神様は私に、こうお語りになりました。「わたしの手から、わたしの憤りがなみなみとつがれている、このぶどう酒の杯を取り、わたしがあなたを遣わす、すべての国々の人に飲ませよ。

16 彼らは飲んでふらつき、わたしが下す死の打撃によって頭がおかしくなる。」

17 そこで、私は神様の手から憤りの杯を取り、遣わされたすべての国々の人に飲ませました。

18 私はエルサレムとユダの町々へ行きました。すると、王と長官はその杯から飲んだので、その日から今まで、彼らはみじめになり、憎まれ、のろわれるようになりました。

19 私はまた、エジプトの王とその家来、そして指導者とすべての国民のところへ行きました。彼らもまた、その地に住む外国人ともども、この恐怖の杯から飲みました。ウツの地のすべての王、ペリシテの町々の王、すなわちアシュケロン、ガザ、エクロン、アシュドデの残りの者も、同じようにしました。

20 -

21 私はさらにエドム、モアブ、アモンの国々へ行きました。

22 またツロとシドンのすべての王、海の向こうにある地方の王、

23 デダン、テマ、ブズ、およびそこにいる異教の民、

24 アラビヤのすべての王、砂漠の遊牧民のすべての王、

25 ジムリ、エラム、メディヤのすべての王、

26 北方のすべての王を、近い者も遠い者もひとりひとり訪ね、地上のすべての王国を巡りました。最後には、バビロンの王自身が、神様の憤りを盛ったこの杯から飲みました。

27 彼らにこう言え。「イスラエルの神である天の軍勢の主は言う。酔っ払って、へどを吐き、二度と立てなくなるまで、わたしの憤りを盛ったこの杯から飲め。おまえたちに恐ろしい戦争を送るからだ。」

28 もし杯を受け取らないなら、こう言ってやれ。「天の軍勢の主は、どうしてもこれを飲めと命じている。避けるわけにはいかないのだ。

29 すでに、自分の国民さえ罰し始めているからだ。おまえたちだけ無罪放免になるわけがない。どんなにもがいてみても、刑罰を免れることはできない。わたしは地上の全住民に戦争を呼び寄せる。」

30 だから、彼らに預言せよ。彼らに、神は天の聖所から自分の国民に呼びかけ、全世界の国民に呼びかけると伝えよ。神は、酒ぶねの中でぶどうの実を踏みつぶす者のように、大声を張り上げる。

31 このさばきの叫び声は、地の果てまでも届く。神が全世界の人をさばき、すべての悪者を殺すからだ。

32 天の軍勢の主はこう言う。刑罰が国から国へと渡り歩き、神の憤りの暴風は地の果てまでも吹きつける。

33 その日、神に殺される者は地の果てから果てまで及ぶ。だれも彼らのために嘆き悲しんだり、死体を集めて埋めたりしないので、彼らは地の肥やしとなる。

34 悪い羊飼いよ、泣きわめけ。人民の指導者よ、石に頭を打ちつけよ。おまえたちが虐殺され、散らされる時がきたからだ。おまえたちは弱々しい婦人のように倒れる。

35 しかも、逃げ隠れする場所を捜しても、どこにも見つからない。

36 羊飼いの半狂乱の叫び声、指導者の絶望まじりの叫び声を聞け。わたしは彼らの牧場を荒らしたのだ。

37 今まで平穏無事な生活を送ってきた者も、神の激しい怒りによって切り倒される。

38 神は、獲物を捜すライオンのように、忍び足で出て行った。神の激しい怒りのために、彼らの国は侵入してくる軍隊によって荒れ果てた。

26

1 ヨシヤの子でユダ王朝の王エホヤキムの治世の第一年に、神様からエレミヤに、次のお告げがありました。

2 神殿の前に立って、ユダの各地から参拝に来たすべての人に語れ。わたしの言ったことをぜんぶ知らせよ。わたしが彼らに聞かせたいと思っていることを、ただのひと言でも省略してはいけない。

3 ひょっとしたら、彼らはわたしのことばを聞いて、悪の道から離れるかもしれないからだ。そうしたら、彼らの悪事のために下そうとしている刑罰を、思いとどまる。

4 彼らに、わたしがこう言っていると告げよ。もし、わたしのことばを聞かず、わたしが与えたおきてに従わず、

5 また、わたしのしもべの預言者に聞かないなら、もっとも、何度も預言者をやって警告させたのに、おまえたちは聞こうとしなかったが、

6 この神殿をシロの神殿のようにこわし、エルサレムを全世界ののろいの代名詞とする。

7 神様に告げられたことをみな語り終えた時、祭司と偽預言者、それに神殿の中にいたすべての者がエレミヤに襲いかかり、「殺せっ!殺せっ!」と絶叫しました。

8 -

9 「どんな権威があって、神様がこの神殿をシロの神殿のようにこわすなどと言うのか。エルサレムが破壊され、一人の生き残りもいなくなるとは、いったいどういうことか。」こうして騒ぎは大きくなり、だれもがエレミヤを攻撃しに、神殿へ押しかけました。

10 役人は事の成り行きを聞くと、宮殿から駆けつけ、神殿の入口に座って裁判を開きました。

11 すると、祭司と偽預言者たちは、役人と集まった全員に、「この男は死刑にすべきだ。こいつがどんなにひどい裏切り者かは、お聞きのとおりだ。だいたい今までだって、この都に不利な預言ばかりしてきたのだ」と告訴しました。

12 エレミヤは次のように自分を弁護しました。「神様が、この神殿とこの町に不利な預言をせよと、私にお命じになったのです。私の話したことはみな、神様のおことばです。

13 もし、あなたがたが罪を犯すのをやめ、神様に従うなら、神様はすでに宣告ずみのいっさいの刑罰を思いとどまるでしょう。

14 私は無力で、しかも、あなたがたの手中にあります。煮るなり焼くなり、好きなようにしてください。

15 ただし、ひと言だけいっておきますが、もし私を殺したら、罪のない者のいのちを奪ったことになります。その責任はあなたがたと、この町、またここの全住民がとらなければなりません。というのは、神様は確かに、あなたがたの聞いたことを残らず話すようにと、私にお命じになったからです。」

16 これを聞いて、役人をはじめ人々は、祭司と偽預言者に言いました。「この男は死刑にあたらない。神様の名によって語ったのだから。」

17 その時、知恵のある何人かの老人が立って、全員に話しかけました。

18 「この決定は正しいと思う。以前、モレシェテ人ミカがユダ王朝の王ヒゼキヤの時代に、『神様が、この丘は平地の畑のように耕され、エルサレムの都は石の山となり、いま大きな神殿の建っている山頂は森になると言う』と預言しました。

19 ところで、その彼を、ヒゼキヤ王と国民は殺したでしょうか。反対です。彼らは悪から離れ、神様を拝み、神様のあわれみをひたすら求めました。それで神様は、予告しておいた恐ろしい刑罰を下すことを思いとどまったのです。もし私たちが、神様のお告げを伝えたからというのでエレミヤを殺せば、どんな仕返しをなさるかわかりません。」

20 エレミヤのほかにも、シェマヤの子でキルヤテ・エアリム出身の、ウリヤという本物の預言者がいて、同じ時期に、エルサレムとその住民とをきびしく非難しました。

21 エホヤキム王をはじめ将校、役人もみな、彼のことばを聞きました。ところが王は、人をやって彼を殺そうとしたのです。このことを知ったウリヤは、エジプトへ逃げました。

22 すると王は、アクボルの子エルナタンに数人の者をつけ、ウリヤを捕まえに、わざわざエジプトまで行かせました。

23 彼を逮捕し、王のもとへ連れ帰ると、王は彼を八つ裂きにし、死体を無縁墓地に捨てさせました。

24 しかし、シャファンの子で王室の秘書官アヒカムは、エレミヤの味方になり、彼のいのちをねらう暴徒たちの手に渡さないようにしました。

27

1 ヨシヤの子でユダ王朝の王エホヤキムの治世の初めに、神様からエレミヤに別のお告げがありました。

2 くびきを作り、それを農耕用の牛につけるように、おまえの首に革ひもで結びつけよ。

3 それから、エドムの王、モアブの王、アモンの王、ツロの王、シドンの王に、エルサレム在住の大使を通じてことづてを送れ。

4 それぞれの主人に、イスラエルの神である天の軍勢の主からのお告げだと言わせよ。

5 「わたしは大きな力をもって、地と、全人類と、あらゆる動物を造った。これらのものを、わたしの眼鏡にかなった者に与える。

6 わたしはすでにおまえたちの国々を、わたしの代理人であるバビロンの王ネブカデネザルに与えた。また、おまえたちの家畜をぜんぶ彼のものとした。

7 彼の時がくるまで、すべての国は彼とその子孫に仕える。そのあとで、多くの国民と強い王たちがバビロンを征服し、住民を奴隷とする。

8 今は彼の言いなりになり、彼に仕えよ。おまえたちの首をバビロンのくびきに入れよ。わたしは、彼の奴隷になろうとしない国民を罰する。戦争とききんと伝染病を送るので、その国は彼に征服される。

9 バビロンの王はおまえたちを奴隷にしないと言う、偽預言者、占い師、夢見る者、霊媒、魔術師のことばに耳を傾けるな。

10 彼らはみな嘘つきだ。もし、彼らの助言に従い、バビロンの王に降伏するのを拒むなら、おまえたちを国外へ追放し、遠い地に送って滅ぼす。

11 だが、バビロンの王の意のままになる国民は、今までのように自分の国に住み、その土地を耕す。」

12 エレミヤはこの預言をユダの王ゼデキヤにも伝え、こうつけ加えました。「いのちが惜しかったら、バビロン王に降伏しなさい。

13 なぜ、陛下も国民も、そんなに死に急ぐのですか。なぜ、神様がバビロン王に従わない国々に約束した、戦争とききんと伝染病を選ぶのですか。

14 バビロン王がこの国を征服するはずはないと、しきりに言っている偽預言者のことばを聞いてはなりません。彼らは、とんでもない嘘つきです。

15 『わたしは送り出した覚えもないのに、彼らはわたしの名によって、おまえたちに嘘をついている。どうしても彼らの言うことを聞くというなら、おまえを、偽預言者ともどもこの国から追放して、殺すよりほかはない』と、神様は仰せになります。」

16 私はくり返し、祭司と全国民に告げました。「神様は命じます。神殿から運び出された金の皿はまもなくバビロンから戻ってくる、と言う預言者に、耳を貸すな。そんなことが、あるはずはない。

17 彼らの言うことを聞いてはならない。バビロン王に降伏して生きのびよ。そうでないと、この町はぜんぶ破壊される。

18 もし、彼らがほんとうに神の預言者であるなら、まだ神殿に残っている金の皿や、王宮とエルサレムの宮殿にある金の皿が、おまえたちといっしょにバビロンへ持ち去られないよう、祈るべきではないか。

19 天の軍勢の主は、こう言います。バビロンの王ネブカデネザルが、ユダとエルサレムの重立った人々を、エホヤキムの子でユダ王朝の王エコヌヤとともに連れ去ったとき残しておいた、神殿の前にある青銅の柱、神殿の庭の大きな青銅の水盤、そのほか金属製の台や儀式用具などは、

20 -

21 -

22 みなバビロンに運び去られ、わたしが取り返すまでそこにある。後日、わたしはそれらの物をみな、エルサレムへ持ち帰る。」

28

1 その同じ年、ユダ王朝のゼデキヤ王の治世の第四年の七月のある日、アズルの子でギブオン出身の偽預言者ハナヌヤが、神殿の中で私に挑戦しました。祭司全員と人々が聞いている前で、きっぱり断言したのです。

2 「イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言っています。わたしは、おまえたちの首からバビロン王のくびきをはずした。

3 二年以内に、ネブカデネザルがバビロンへ運び去った神殿の宝物を、ぜんぶ持ち帰る。

4 また、エホヤキムの子でユダ王朝の王エコヌヤと、バビロンに移された捕虜全員を連れ戻す。わたしは必ず、バビロン王がおまえたちの首にかけたくびきをはずす。」

5 これを聞いたエレミヤは、祭司と人々の前で、ハナヌヤに言いました。

6 「アーメン。あなたの預言どおりになりますように。全く、神様があなたの言ったことをぜんぶ実現して、神殿の宝物を、愛する同胞といっしょにバビロンから取り戻してくだされば、それほどけっこうなことはない。

7 しかし今は、ここにいる人たちの前ではっきりさせておこう。

8 昔の預言者たちは、多くの国々に不利なことを話し、いつも決まって、戦争とききんと伝染病の警告をしたものだ。

9 だから、平和を予告する預言者は、ほんとうに神様から遣わされたのかどうか、証明してみせなければならない。預言がそのとおり実現してはじめて、そのことが明らかになるからだ。」

10 ハナヌヤも負けてはいません。エレミヤの首から例のくびきをはずし、それをこわしました。

11 そして、集まっていた人々に、「見ろ、このとおりだ。神様は、二年以内に、今バビロンの王ネブカデネザルの奴隷になっている国々の民を解放する、と約束なさった」と宣言しました。ここまで聞いて、エレミヤは出て行きました。

12 すると間もなく、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

13 ハナヌヤのところへ行き、神がこう言うと伝えよ。おまえは木のくびきをこわしたが、これらの国民は首に鉄のくびきをつけている。

14 イスラエルの神、天の軍勢の主であるわたしが言う。わたしは、これらの国民に鉄のくびきをはめ、むりやりバビロンの王ネブカデネザルの奴隷とした。この運命は、どんなことがあっても変わらない。おまえたちの家畜まで、彼のものになる。

15 そこで、エレミヤは偽預言者ハナヌヤに言いました。「よく聞け、ハナヌヤ。神様はあなたをお遣わしにならなかった。ところが人々は、あなたの嘘を信じ込んでいる。

16 だから、あなたはどうしても死ななければならない。これは神様のお告げだ。今年中に、あなたの寿命は尽きる。神様に逆らった罰だ。」

17 このことばのとおり、二か月後にハナヌヤは死にました。

29

1 エコヌヤ王と王母、宮廷の役人、地方長官、それに技術者たちが、ネブカデネザルによってバビロンへ移されてのち、エレミヤはユダヤ人の長老、祭司、預言者、全国民にあてて手紙を書きました。

2 -

3 この手紙を、ゼデキヤ王の使節としてバビロンの王ネブカデネザルを訪問した、シャファンの子エルアサとヒルキヤの子ゲマルヤの二人に託しました。手紙の文面は次のとおりです。

4 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、エルサレムからバビロンへ移された捕虜全員に、こう告げます。

5 家を建て、長期の滞在計画を立てよ。長年にわたってそこにいることになるから、ぶどう園をつくれ。

6 結婚して、子供をもうけよ。子供には相手を見つけてやり、多くの孫が生まれるようにせよ。人口を減らしてはならない。

7 バビロンの平和と繁栄のために努力し、そのために祈れ。バビロンが平和であれば、おまえたちも平和に過ごせるからだ。

8 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう告げます。おまえたちのうちにいる偽預言者や霊媒にだまされるな。彼らの考え出した夢物語を聞いてはならない。

9 彼らは、わたしの名をかたって嘘の預言をするからだ。わたしは彼らを遣わさなかった。

10 ほんとうのことを言うと、おまえたちは一生バビロンにいる。だが、こうして七十年が過ぎたら、おまえたちを思いやり、約束しておいたいっさいの祝福を与え、故国に連れ戻す。

11 わたしは、おまえたちのために立てた計画をよく知っている。それは災いではなく祝福を与える計画で、ばら色の将来と希望を約束する。

12 その時になったら、おまえたちが祈る時、わたしは聞き耳を立てる。

13 おまえたちが真剣にわたしを探し求めるなら、見つけることができる。

14 そうだ。わたしはおまえたちに見つけられる。わたしはおまえたちを奴隷の身分から解放し、財産を回復し、追いやられた国々から集め、再び故国の土を踏ませる。

15 だが今は、偽預言者の言うことを信じ、神が彼らを遣わしたと言っているので、

16 わたしは、エルサレムに残っているおまえたちの親族とダビデの王座についている王に、戦争とききんと伝染病を送る。彼らは、悪くて食べられない腐ったいちじくのようになる。

17 -

18 しかもわたしは、彼らを世界各地にばらまく。彼らは行った先々の国で、のろわれ、やじられ、あざけられる。

19 わたしが、わたしの預言者をとおして何度も語ったのに、いっこうに言うことを聞こうとしなかったからだ。

20 だから、バビロンにいるすべてのユダヤ人捕虜よ、神様のことばを聞きなさい。

21 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、神の名をかたって嘘をついている、コラヤの子の偽預言者アハブとマアセヤの子ゼデキヤについて、こう告げます。わたしは二人をネブカデネザルの手に渡し、人々の前で処刑させる。

22 彼らの運命は悪いことを表わすことわざとなり、のろいのことばとして、「神様がおまえを、バビロンの王に焼き殺されたゼデキヤやアハブと、同じ目に会わせるように」と言われるようになる。

23 彼らはわたしの国民の間で恐ろしいことをした。隣人の妻と姦通し、わたしの名をかたって嘘をついた。わたしは彼らのすることをぜんぶ見てきたので、その行動の一部始終を知っている。

24 その名のとおり夢見る者、ネヘラム人シェマヤには、次のように言え。

25 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう告げます。おまえはマアセヤの子の祭司ゼパニヤに手紙を書き、その写しをほかの祭司とエルサレムの全住民に送った。

26 おまえは手紙の中でこう書いた。「神様は、祭司エホヤダの代わりに、あなたをエルサレムの祭司に任命しました。ですから、預言者だと自称する狂った男を捕まえ、足かせと首かせをはめる責任があります。

27 それなのにどうして、アナトテ出身の偽預言者エレミヤを放っておくのですか。

28 彼はバビロンにいる私たちに、捕虜になる期間は長いので、しっかりした家を建て、長期の滞在計画を立て、くだものの木を植えるようにと指図しました。私たちがこれから先ずっとここにいて、その木の実を食べることになるとぬかすのです。」

29 ゼパニヤは、この手紙をエレミヤのところへ持って行き、読んで聞かせました。

30 すると、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

31 バビロンに流された者全員に開封の手紙を出し、こう伝えよ。わたしは任命した覚えがないのに、ネヘラム人シェマヤは勝手におまえたちに「預言」し、嘘を信じ込ませようとした。

32 わたしは彼とその家族を罰する。彼の子孫はだれ一人、わたしの国民のために用意してある祝福を見ない。彼がおまえたちに、わたしに背くようにと教えたからだ。

30

1 これは、神様からエレミヤにあった別のお告げです。

2 イスラエルの神様はこう命じます。わたしがおまえに語ったことをみな、記録に残しておけ。

3 わたしの国民イスラエルとユダを、元どおり、先祖に与えたこの地へ連れ戻す時がくるからだ。彼らはこの地を所有し、再び住みつく。

4 また、わたしがイスラエルとユダについて語った次のことばも、書き留めておけ。

5 「平和はどこにあるのだ。あるのは恐怖とおののきだけだ。

6 男が子供を産むだろうか。そんなことはありえないのに、どうして彼らは、真っ青な顔をして、産婦のように腰に手をあてて立っているのか」と、彼らは悲鳴をあげる。

7 ああ、今までの歴史の中で、やがてくる日のような恐怖の時があったでしょうか。それは、同胞イスラエルの苦しみの時で、今までに一度も経験したことのないものです。しかし、神様は彼らを救い出してくださいます。

8 天の軍勢の主は、こう約束なさるのです。その日になると、わたしは彼らの首のくびきをこわし、体に巻きついている鎖を断ち切る。外国人は二度と彼らの主人にならない。

9 彼らは、わたしと、わたしが彼らのために立てる王ダビデに仕えるようになる。

10 わたしのしもべヤコブよ、こわがることはない。イスラエルよ、うろたえなくてもいい。わたしがおまえを遠い国から連れ戻し、おまえの子孫を、流されて行った先から連れ戻すからだ。彼らは自分の国でゆったりくつろぎ、だれも彼らを脅かさなくなる。

11 わたしがそばについていて救うからだ。たといおまえの寄留先の国々を全滅させても、おまえは根絶やしにしない。もちろん、全く罰を免れるというわけではないが......。

12 おまえの罪は、どうしても治らない打ち傷のようで、ひどく痛む。

13 助ける者はなく、傷口に包帯を巻く者もいない。どんな薬も効き目がない。

14 恋人はみな、おまえを置き去りにし、二度とめんどうを見てくれない。わたしが、まるで敵ででもあるかのように、おまえをひどく傷つけたからだ。血も涙もない敵のように、容赦なく痛めつけた。おまえの罪があまりにも多く、とががあまりにも大きかったからだ。

15 なぜ抗議するのか。当然の刑罰ではないか。おまえの罪は目もあてられないほど醜いので、悲しみはいつまでも終わらない。こんなにも懲らしめるのは、おまえのとがが途方もなく大きいからだ。

16 だがいつか必ず、おまえを滅ぼす者はみな滅ぼされ、おまえの敵はみな奴隷となる。おまえから略奪する者は略奪され、おまえを攻撃する者は、逆に攻撃される。

17 わたしはおまえの傷を治し、元の健康体にする。今は、おまえは「捨てられた者」「だれも欲しがらないエルサレム」と呼ばれている。

18 しかし、神様は約束なさいます。わたしがおまえたちを捕虜になっていた地から連れ帰り、元の状態に戻す時、エルサレムは廃墟の上に再建される。宮殿は以前のように建て直され、

19 町には喜びと感謝の声があふれる。わたしの国民は増え、名誉ある偉大な国民となる。

20 彼らの子孫は、ダビデが王位についていたころのように栄える。国民はわたしの前に堅く立てられ、わたしは彼らに危害を加える者を罰する。

21 彼らは再び指導者をいただく。しかも、外国人ではない指導者を。わたしが彼を、わたしの祭壇に仕える祭司にするために招くと、彼はわたしに近づく。招かれないのに近づく者はいない。

22 おまえたちはわたしの国民となり、わたしはおまえたちの神となる。

23 何もかも吹き飛ばす神のつむじ風が突然おこり、狂ったように悪者どもを直撃する。

24 わたしは、計画しておいた恐ろしい破壊を完了するまでは、激しい憤りをおさめない。のちになって、おまえたちはわたしの言ったことを理解する。

31

1 その時、イスラエルの全家族はわたしを神と認める。彼らは、わたしの国民として振る舞うようになる。

2 昔わたしが、エジプトから逃げて来たイスラエル人に、荒野であわれみをかけ、休息を与えた時のように、彼らをいたわり、めんどうを見る。

3 それというのも、ずっと前に、イスラエルにこう言ったからだ。わたしの国民よ。わたしは永遠の愛をもっておまえを愛してきた。あわれみの綱でおまえを引き寄せてきた。

4 イスラエルのおとめよ。わたしは、おまえの国を再建する。おまえは元のように幸せになり、タンバリンをたたいて陽気に踊る。

5 もう一度サマリヤの山の上にぶどう園をつくり、その実を食べるようになる。

6 エフライムの丘に立つ見張りが大声を張り上げ、「さあ、シオン(エルサレム)に上って、神様のもとへ行こう」と言う日がくる。

7 神様はこう言います。地上で最も偉大な国イスラエルに、わたしがどんなことをするかを知って、喜び歌え。「神様は、イスラエルの残りの民であるご自分の国民を救った」と、賛美と喜びをもって大声で言いふらせ。

8 わたしが彼らを、北から、また地の果てから連れ戻すからだ。盲人や足の不自由な人、赤ん坊を連れた若い母親、お産まぢかの女には、特別に目をかける。彼らは大きな集団となって帰る。

9 だれの頬にもうれし涙が伝わる。わたしは彼らを、こわれ物を運ぶように注意して連れ帰る。彼らは静かに流れる川のほとりを歩き、つまずくことはない。イスラエルにとってわたしは父であり、エフライムはわたしの長男だからだ。

10 世界の国々よ、神様からの次のお告げを聞き、言い広めなさい。神様はご自分の国民を散らしたが、再び集め、羊飼いがその群れを飼う時のように見守ります。

11 イスラエルを、とても歯が立たない敵の手から救い出すのです。

12 彼らは帰国して、シオンの丘で喜びの歌をうたいます。豊作の穀物、麦とぶどう酒と油、健康そのものの羊と家畜の群れという神様の恵みに浴して、彼らの顔は喜びに輝きます。彼らのたましいは潤った園のようになり、悲しみは一つ残らず逃げ去ります。

13 娘たちは喜びのあまり踊りだし、男たちは、年寄りも若者も陽気にはしゃぎます。「わたしは彼らの嘆きを喜びに変え、彼らを慰め、楽しませる。苦しいことだらけの捕虜の時代は、もう過去のこととなった。

14 わたしは祭司たちを、神殿に運ばれる山のような供え物で、再びもてなす。わたしの国民がすっかり満足するまで、たらふく食べさせる」と、神様は約束なさいます。

15 神様は私に、再びお語りになりました。ラマ(バビロンの捕虜となったユダヤ人が集合させられた場所)で激しい泣き声が聞こえる。ラケル〔ヤコブの妻。イスラエル王国の母として象徴的に言われている〕は子供のために身もあられもなく泣いているが、どうしても慰めることはできない。それもそのはず、子供がいなくなったからだ。

16 しかし、神様は約束なさいます。もう、泣かなくていい。確かにおまえの祈りを聞いた。おまえはまた子供に会える。彼らは遠い敵の国から、おまえのふところへ帰って来る。

17 おまえの将来には希望がある。おまえの子供は生まれ故郷へ帰って来る。

18 私はエフライムのうめき声を聞きました。「神様は私をひどく罰しました。子牛がくびきを負う訓練をさせられるように、私にも懲らしめが必要だったのです。私を神様のもとに立ち返らせ、元どおりにしてください。神様。ただあなただけが主だからです。

19 私は神様に背きましたが、後悔しました。なんとばかな人間だったのだろうかと反省し、ももの肉をつねりました。若かったころにしたことを考えると、穴があったら入りたいくらいです。」

20 神様のお答えはこうです。エフライムは今でもわたしの子だ。目に入れても痛くない子であることに、変わりはない。罰を加えないわけにはいかないが、それでもなお、彼を愛している。いとおしくてたまらないので、きっとあわれみをかけてやる。

21 捕虜として遠い国へ引かれて行く時、イスラエルに帰る目じるしとなる道しるべを、あちこちに立てておけ。通った道をしっかり頭に入れておけ。おとめイスラエルよ。やがて、おまえは自分の町町に帰って来ることになる。

22 気まぐれ娘よ。いつまで、どっちつかずでいるのか。わたしは、今までに聞いたこともないような新しいことをする。その時イスラエルは、わたしを尋ね求めるようになる。

23 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。わたしが彼らを連れ戻す時、彼らはユダとその町々で、次のように言うだろう。「義の本家よ。きよい山よ。神様があなたを祝福されるように。」

24 町の住民も、農夫も、羊飼いも、ともどもに平和で幸福な暮らしをするようになる。

25 わたしは疲れた者には休息を、悲しむ者には喜びを与えるからだ。

26 ここでエレミヤは目を覚まし、「こんな眠りなら、とてもあと味がよい」と言いました。

27 神様はこう言います。わたしが、このイスラエルで人口をうんとふやし、家畜を増し加える時がくる。

28 以前この国を性懲りもなくこわしたが、今度は注意して築き上げる。

29 人々は二度と、「父親の罪のあとしまつを子供がさせられる」ということわざを、口にしなくなる。

30 だれもが自分の罪のために死ぬようになるからだ。ほかでもない、すっぱいぶどうを食べた本人の歯が浮くのだ。

31 神様は言います。わたしがイスラエルおよびユダの国民と、新しい契約を結ぶ日がくる。

32 それは、わたしが彼らの先祖の手をとってエジプトから導き出した時、結んだようなものではない。彼らがそれを破ったので、やむなく、わたしは彼らを見捨てた。

33 新しい契約とはこうだ。わたしは、わたしのおきてを彼らの心に刻みつける。そのため彼らは、わたしをあがめたいという気持ちになる。こうして、彼らは文字どおりわたしの国民となり、わたしは彼らの神となる。

34 その時はもう、互いに神を知るようにと忠告する必要はなくなる。身分の高い者も低い者も、だれもがわたしを心底から知るようになるからだ。わたしは彼らの罪を赦すだけでなく、それをすっかり忘れる。

35 日中は太陽の光を与え、夜を明るくするために月と星を与え、海をかき立てて大波を起こす天の軍勢の主は、こう言います。

36 もし、これらの自然界の法則がなくなるものなら、わたしはわたしの国民イスラエルを見限るだろう。

37 宇宙のすみずみまで正確に測られ、地中深くに埋めてある基礎が現われない限り、罪を犯したからといって、わたしが彼らを捨てることなどありえない。

38 神様は言います。エルサレムの町全体が、わたしのために再建される時がくる。北東の端にあるハナヌエルの塔から、北西にある隅の門まで、また南西にあるガレブの丘から、南東にあるゴアに至るまで、すべて建て直される。

39 -

40 墓地と谷にある灰捨て場を含め、全市が、わたしにとってきよいものとなる。キデロン川に至るまでの畑ぜんぶ、そこから町の東側にある馬の門に至るまでの地区も、きよいものとなる。これからは、二度と敵に踏みにじられたり、占領されたりはしない。

32

1 ネブカデネザル王の第十八年にあたる、ユダ王朝のゼデキヤ王の第十年に、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

2 そのころ、エレミヤは王宮の地下牢に閉じ込められており、一方、バビロンの軍隊はエルサレムを包囲していました。

3 ゼデキヤ王が彼をそこに閉じ込めたのは、彼があくまで、エルサレムはバビロンの王に占領され、

4 ゼデキヤ王も捕まり、捕虜としてバビロンの王の前に連れ出され、裁かれると預言し続けたからです。

5 「彼は陛下をバビロンへ連れて行き、死ぬまで牢に入れておきます。どうして、この事実を素直に認めないのですか。勝てるはずはありません。今、降伏しなさい。」エレミヤは口をすっぱくして言いました。

6 その時、神様からエレミヤに次のお告げがありました。まもなく、シャルムの子ハナムエルが来て、アナトテにある畑を買ってくれと頼む。おまえはいとこで、法律によると、それを買う優先権があるからだ。

7 -

8 はたしてハナムエルは、そのとおり、牢にいるエレミヤを訪ね、こう頼みました。「ベニヤミンの地のアナトテにある、私の畑を買ってくれないか。法律によると、君にそれを買う優先権があるんだ。」私は、彼の言うことがまちがいなく主から出たことを知りました。

9 そこで畑を買うことにし、ハナムエルに銀貨十七枚を払いました。

10 ちゃんと証人の前で契約書に署名した上で封印し、支払いをすませたのです。

11 それから、さまざまの規約を記した封印された証書と、封印されていない写しを受け取り、

12 いとこのハナムエルと証書に署名した証人との前で、看守に見守られながら、その証書をマフセヤの子ネリヤの子であるバルクに渡しました。

13 それから、全員の聞いている前でこう指示しました。

14 「イスラエルの神様である天の軍勢の主の命令です。封印してある証書と封印のない写しを、つぼに入れて長く保管しておけ。

15 やがてこの証書に価値の出る時がくる。そのうちにきっと、人々は再びこの国に土地を持ち、家やぶどう園や畑を売り買いするようになる。」

16 証書をバルクに渡すと、私は祈りました。

17 「ああ神様。神様は大きな力をもって天と地をお造りになりました。神様にとって、難しいことは何一つありません。

18 神様は愛と恵みに満ちたお方です。しかし、父親が罪を犯したら、その子供を苦しめるお方でもあります。偉大な全能の神、天の軍勢の主です。

19 あらゆる知恵をたくわえ、目をみはるような大きな奇蹟をなさいます。神様の視線は人のすべての道に注がれており、それぞれの生き方と行為に従って、一人一人に報いるのです。

20 あのエジプトの国では、信じられないようなことをなさいました。それらのことはみな、今日でも、私たちの記憶に残っています。しかも、イスラエルばかりか全世界で、今も大きな奇蹟を行ない続けておられます。こうして、ご自分の名を今日のように偉大なものとなさいました。

21 神様は、目をみはる奇蹟と、大きな力、大きな恐れをもって、イスラエル人をエジプトから連れ出しました。

22 ずっと以前に先祖に約束したこの国を、お与えになりました。まことにそれは、乳と蜜の流れる地です。

23 私たちの先祖はこの地を占領し、ここに住みつくようになりました。ところが、彼らは神様に従わず、神様のおきてを守りませんでした。神様に命じられたことを、ただの一つも行なおうとしませんでした。だからこそ、この恐ろしい災いが下ったのです。

24 ご覧ください。町の城壁沿いに、とりでが築き上げられました。バビロニヤ人がこの町を、剣とききんと伝染病によって攻め取ろうとしています。何もかも、お告げのとおりになりました。

25 まもなくこの町が敵の手に渡るというのに、神様は私に、畑を買い、証人たちの前で大金を払えとお命じになるのです。」

26 すると、エレミヤにこのようなお告げがありました。

27 わたしは、全人類の神、主だ。わたしにとって、ただの一つでも不可能なことはない。

28 わたしは必ず、この町をバビロニヤ人とバビロンの王ネブカデネザルの手に渡す。彼がここを占領する。

29 また、いま城壁の外にいるバビロニヤ人は、市内に侵入して町に火をつける。屋上で香をたき、ほかの神々にぶどう酒を注いで、わたしの激しい怒りを買う原因となった家々を焼き払うのだ。

30 イスラエルとユダは、若いころから悪いことばかりしてきた。彼らは、ありとあらゆる悪でわたしを激怒させた。

31 この町は、建てられた時から今日まで、わたしを怒らせることばかりしてきた。だから、わたしはこの町を滅ぼす。

32 イスラエルとユダの罪がわたしの顔を逆なでする。

33 彼らはわたしに背いたまま、いっこうに立ち返ろうとしない。わたしは毎年、くる日もくる日も正しいことと悪いことの区別を教えるのに、彼らは聞こうとも、言いつけを守ろうともしない。

34 神殿の中でさえ憎むべき偶像を拝み、そこを汚した。

35 それでも足りず、ヒノムの谷にバアルの高い祭壇を築いた。そこで自分の子供を焼き、モレクへのいけにえとした。こんなことは、命じた覚えもなければ、考えもしなかったことだ。ユダに大きな罪を犯させる原因となったこの罪は、けたはずれに大きなものだ。

36 だから今、イスラエルの神であるわたしは、この町が戦争とききんと伝染病によってバビロン王の手に落ちると断言する。

37 しかしわたしは、わたしの国民を、憤って散らした国々から連れ戻す。この町に連れ帰って、安らかに住まわせる。

38 こうして、彼らはわたしの国民となり、わたしは彼らの神となる。

39 また、わたしは彼らと彼らの子孫のためを考えて、彼らに、わたしを永久に拝む心と思いを与える。

40 わたしは、二度と彼らを見限ることはなく、恵みだけを与える約束として、彼らと永遠の契約を結ぶ。彼らの心に、わたしを拝もうという願いを入れるので、どんなことがあってもわたしから離れなくなる。

41 わたしは心から喜んで彼らを幸福にし、この地に再び植える。

42 これらの恐怖と災いを送ったように、その時は、約束しておいたすべての祝福を注ぐ。

43 今はバビロニヤ人に荒らされ、人も家畜も姿を消したこの国で、再び畑が売買されるようになる。

44 ベニヤミンの地でも、ここエルサレムでも、ユダの町々でも、山地でも、平野でも、ネゲブでも、もう一度、証書に署名し、封印し、証人を立てて、畑を売買するようになる。わたしはいつか必ず、土地を彼らに返すからだ。

33

1 まだエレミヤが牢につながれていた時、神様は二度目のお告げを彼に伝えました。

2 主という名の、天と地の造り主である神様は、こう言います。

3 わたしに尋ねよ。そうすれば、この地に起ころうとしている、とても信じられないような不思議なことを教える。

4 たとい、この町の家々と王の宮殿をこわし、敵のとりでに対抗するため、城壁を補強する材料にしたとしても、

5 バビロニヤ人は侵入して来る。この町の男たちは、すでに死んだも同然だ。わたしが、激しい怒りをもって殺そうと決めているからだ。彼らのひどい悪のために、わたしは彼らを見捨てた。たとい助けを呼び求めても、あわれまない。

6 とは言うものの、わたしがエルサレムの損害を補償し、繁栄と平和を与える時がくる。

7 ユダとイスラエルの町々を再建し、彼らの財産を元どおりにして返す。

8 彼らのすべての罪をきよめ、赦す。

9 その時、この町はわたしにとっての名誉となる。また、わたしの喜びとなり、地上のすべての国々の間で、わたしをあがめ、わたしの栄光を現わす中心地となる。世界中の人は、わたしがわたしの国民にどんな祝福を与えたかを知って、恐れに取りつかれ、身震いする。

10 花婿と花嫁の楽しさいっぱいの声、わたしに感謝の供え物を運んで来る人の喜びの歌が、再び、この破滅を宣告された地で聞けるようになる。人々は、「神様をほめたたえよう。神様は恵み深く、そのあわれみは永遠にすたれない」と歌うようになる。わたしはこの地を、前よりも幸福にし、栄えさせる。

11 -

12 今は住民ぜんぶと家畜の滅亡が決まっているものの、もう一度、羊や子羊を導く羊飼いの姿を見るようになる。

13 山地の村々、平野部の東にある町々、ネゲブのすべての町々、ベニヤミンの地、エルサレム近郊、それにユダのすべての町々でも、再び羊の群れが増える。

14 イスラエルとユダに、わたしが約束しておいたすべての祝福の実現する日がくる。

15 その時、わたしはダビデのほんとうの子を王にする。彼は正義をもって支配する。

16 その日、ユダとエルサレムの人たちは安心して住み、「神様は私たちの正義」という標語を掲げる。

17 それからは、ダビデの世継ぎが永久にイスラエルの王座につくようになる。

18 さらに、いつもレビ人が、完全に焼き尽くすいけにえをはじめ、その他のいけにえや供え物を、神にささげるようになる。

19 その時、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

20 わたしが昼および夜と結んだ契約を破り、きちんと決まった時間に、昼や夜がこないようにできるか。もしできたら、わたしがわたしのしもべダビデと結んだ契約も破られ、彼の王座につく子孫はいなくなる。このように、神に仕えるレビ人の祭司たちと結んだわたしの契約も、決して破棄されない。

21 -

22 星が数えきれず、海辺の砂が量りきれないように、わたしのしもべダビデの子孫と、わたしに仕えるレビ人の子孫は増える。

23 神様は再び、エレミヤにこう語りかけました。

24 おまえは人々が何と言っているか、聞かなかったのか。彼らは、神はユダとイスラエルを選んでおきながら、見捨ててしまった、と言っている。イスラエルはもはや国家としての価値がなくなったと言い、あざ笑っている。

25 だが、わたしはこう答えよう。わたしが昼と夜、天と地の法則を変えないように、わたしの国民を捨てるはずはない。わたしは決して、ユダヤ人とわたしのしもべダビデとを見限らない。また、ダビデの子がいつかはアブラハム、イサク、ヤコブの子孫を支配するという計画を変えない。それどころか、彼らにあわれみをかけ、その財産を元どおりにする。

26 -

34

1 バビロンの王ネブカデネザルと、その支配下の国々の軍隊が一つになって、エルサレムとユダの町々を攻めている時、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

2 ユダの王ゼデキヤに、神がこう言うと伝えよ。わたしはこの町をバビロン王に渡すので、彼は町を焼く。

3 おまえは逃げられない。捕虜になってバビロン王の前に引き出され、有罪を宣告される。そしてバビロンへ連れて行かれる。

4 だがユダの王ゼデキヤよ、次のことをよく聞け。おまえは戦争や虐殺に巻き込まれて死ぬようなことはなく、

5 人々に囲まれて安らかに死ぬ。皆、おまえの先祖にしたように、おまえを記念して香をたく。おまえのために、「ああ、王様が死んでしまった」と泣いてくれる。このことを確かに言っておく。

6 そこでエレミヤは、そのとおりゼデキヤ王に知らせました。

7 ちょうどその時、バビロン軍はエルサレムとラキシュ、アゼカを包囲中でした。ユダでまだ残っている城壁のある町は、これだけだったのです。

8 ゼデキヤ王が、エルサレムにいる奴隷を全員解放したのちに、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

9 王は全住民に、ヘブル人(イスラエル人)の奴隷は男女を問わず自由の身にするようにと命じたのです。ユダヤ人は兄弟同士だから、奴隷にしてはいけないというわけです。

10 高官や住民はみな王の命令に従い、奴隷を自由の身にしましたが、それは一時的なことでした。

11 あとで心変わりして、使用人を再び奴隷にしました。

12 それで、次のお告げがエルサレムにあったのです。

13 イスラエルの神様は、こう言います。わたしは、奴隷だったおまえたちの先祖をエジプトから連れ出した時、彼らと契約を結んだ。

14 わたしは彼らに、ヘブル人の奴隷は例外なしに、六年の年季があけたら自由の身にしなければならない、と念を押した。だが、このことは実行されなかった。

15 ところが最近になって、おまえたちは、わたしが命じたとおりの正しいことをして、奴隷を自由の身とした。きっと命じられたとおりにしますと、神殿で、おごそかに約束した。

16 ところがどうだ。今になって急に態度を変え、誓いを破ってわたしの顔に泥を塗り、いったん自由にした人たちを再び奴隷にした。

17 結局おまえたちはわたしの言うことを聞こうとせず、奴隷を解放しないので、戦争とききんと伝染病でおまえたちを殺す。流浪の民として世界中にばらまく。

18 おまえたちは契約を守らなかったので、わたしはおまえたちを、誓いを確かなものとするために牛を二つに断ち切ってその間を通る儀式にならい、真っ二つにする。高官であろうが、宮廷の役人であろうが、祭司であろうが、一般の市民であろうが、誓いを破った以上は、家畜のように殺す。

19 -

20 わたしがおまえたちを敵の手に渡すので、敵はおまえたちを血祭りにあげる。おまえたちの死体は、はげたかや野獣のえじきとなる。

21 わたしはまた、ユダのゼデキヤ王と部下である役人たちを、いったんこの町から遠のいたバビロン王の軍勢に引き渡す。

22 わたしが呼び戻すので、バビロン軍は再びこの町を攻撃して占領し、火をつける。必ずユダの町々を、見る影もなくこわし、猫の子一匹いない荒れ跡にする。

35

1 ヨシヤの子のエホヤキムがユダ王朝の王であった時、神様はエレミヤに、こうお語りになりました。

2 「レカブの家系の人たちが住んでいる所へ行き、神殿へ連れて来い。奥の一室に案内して、ぶどう酒をすすめよ。」

3 そこで私は、ハツィヌヤの子エレミヤの子ヤアザヌヤのところへ行き、レカブ家を代表する彼と、その兄弟、息子たちを連れて、

4 神殿へ行き、イグダルヤの子で預言者のハナンの息子たちにあてがわれている部屋に入りました。その部屋は、宮殿の役人が使う部屋の隣で、神殿の入口を守るシャルムの子マアセヤの部屋の真上にありました。

5 私は彼らの前にぶどう酒の入ったつぼとコップを置き、「さあ飲みなさい」とすすめました。

6 ところが、彼らは断わったのです。「私たちはぶどう酒を飲みません。先祖レカブの子ヨナダブが、子々孫々、永久にぶどう酒を飲んではならない、と命じたからです。

7 また、家を建てたり、作物を植えたり、ぶどう園をつくったり、畑を所有したりせず、いつもテントに住むようにと言いつけました。言われたとおりにして、自分の地で、満ち足りた長寿を全うするためです。

8 私たちは、あらゆる点でヨナダブの言いつけを守りました。ぶどう酒を一滴も口にしませんでしたし、家族の者も、同じようにしてきました。

9 家を建てたり、畑を所有したり、作物を植えたりもしませんでした。

10 テントに住み、先祖ヨナダブが命じたことをみな忠実に守ってきました。

11 ところが、バビロンの王ネブカデネザルがこの国に攻め上った時、こわくなってエルサレムへ引っ越すことに決めました。それで今、ここにいるのです。」

12 その時、神様はエレミヤにお語りになりました。

13 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。ユダとエルサレムへ行って、レカブ家の人たちから教訓を学べ。

14 彼らは先祖の命令を守り、ぶどう酒を飲まない。ところが、おまえたちはどうだ。わたしが耳にたこができるほど語ったのに、聞こうとも従おうともしない。

15 わたしは次々に預言者を送り、悪の道から離れ、ほかの神々を拝むのをやめるようにと言わせた。わたしのことばに従うなら、おまえたちと先祖に与えたこの地で、平和に暮らせるようにすると言わせた。だがおまえたちは、聞こうとも従おうともしなかった。

16 レカブ家の人たちは先祖の言いつけを守ったというのに、おまえたちはわたしの言うことを聞こうとしなかった。

17 だから、イスラエルの神であるわたしは言う。おまえたちはわたしのことばに耳を傾けず、呼んでもそっぽを向いているので、ユダとエルサレムに、前々から言っておいたすべての災いを下す。

18 エレミヤはレカブ家の人たちに振り向いて、こう言いました。「イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。おまえたちはあらゆる点で先祖の命令に従ったので、おまえたちの家系には、わたしを拝む者が絶えない。」

19 -

36

1 ヨシヤの子でユダ王朝のエホヤキム王の第四年に、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

2 「巻物を取り、わたしがイスラエル、ユダ、その他の国々について語ったことをみな書きつけよ。まず、ヨシヤの時代に語ったことから始め、わたしのことばを残らず書き留めるのだ。

3 ひょっとしたら、ユダの国民は、わたしがこれからしようとしている恐ろしいことが文字になっているのを見て、悔い改めるかもしれない。そうすれば、彼らを赦す。」

4 そこでエレミヤは、ネリヤの子バルクを呼びました。バルクはエレミヤの口述どおり、全部の預言を筆記しました。

5 書き終わったあと、エレミヤはバルクに言いました。「私は囚人の身だから、

6 次の断食の日、私の代わりに神殿でこれを読み上げなさい。その日は、人々がユダ全国から上って来る。

7 ひょっとしたら、彼らは悪の道を離れ、手遅れにならないうちに神様に赦しを求めるかもしれない。もっとも、ここに書かれている神様ののろいは、すでに宣告ずみだがね。」

8 バルクは言われたとおり、神殿で、神様のことばをひと言ももらさず人々の前で読みました。

9 このことは、ヨシヤの子エホヤキム王の第五年にあたる十二月の断食日に起こりました。その日、ユダ全国から人々が、神殿での儀式に参列するため上って来ました。

10 バルクは巻物を読むため、シャファンの子の書記ゲマルヤの事務所へ行きました。この事務所は新しい門の入口に近く、境内の奥の集会所のそばにありました。

11 シャファンの子ゲマルヤの子ミカヤは、お告げを聞くと、

12 宮殿の会議室へ報告に行きました。ちょうど、役人たちが待っています。そこにいたのは、書記官エリシャマをはじめ、シェマヤの子デラヤ、アクボルの子エルナタン、シャファンの子ゲマルヤ、ハナヌヤの子ゼデキヤのほかに、同じ職務につく人たちでした。

13 ミカヤが事情を伝えると、

14 役人たちはクシの子シェレムヤの子ネタヌヤの子エフディを使いに出して、バルクに、自ら出向いて神様のお告げを語るようにと言わせました。バルクは同意しました。

15 -

16 彼が読み終えると、一同はおびえきって言いました。「ぜひ陛下のお耳に入れなければ......。

17 何はともあれ、このお告げはどこから手に入れたのかね。エレミヤが口述したのか?」

18 バルクは、エレミヤの口述どおり書き写したと説明しました。

19 役人たちはバルクに忠告しました。「さあ、二人とも身を隠しなさい。居場所をだれにも知らせてはいけない。」

20 それから、巻物を書記官エリシャマの部屋に隠し、王に報告するために出かけました。

21 報告を聞いた王は、さっそくエフディに、その巻物を取って来させました。エフディはそれを書記官エリシャマのところから持って来て、王とおそばの者たちの前で読みました。

22 ちょうど十二月で寒かったため、王は宮殿の暖房設備のある部屋にいて、暖炉の前に座っていました。

23 エフディが三、四段読むたびに、王はナイフでその部分を切り裂き、火に投げ入れたので、とうとう巻物はぜんぶ灰になってしまいました。

24 ところが、エルナタンとデラヤ、それにゲマルヤのほかは、だれも抗議もしません。この三人は、巻物を焼かないようにと訴えましたが、王は耳を貸しませんでした。そのほかの家来は、王のひどい仕打ちを見ても、感情を外に出しませんでした。

25 -

26 王は王子エラフメエルとアズリエルの子セラヤ、それにアブデエルの子シェレムヤに命じて、バルクとエレミヤを逮捕させようとしました。しかし、神様は二人を隠したのです。

27 王が巻物を焼いたのち、神様はエレミヤに命じました。

28 別の巻物を手に入れ、前のように、わたしの言ったことをすべて書き、

29 その上で王に言え。「神様は、こう宣告なさいます。前の巻物には、バビロン王がこの国を荒らし、何もかもこわすと書いてあったので、おまえは怒って焼いた。

30 そこで、ユダ王朝のエホヤキム王について、次の一項目をつけ加える。彼には、ダビデの王座につく者がいなくなる。彼の死体は捨てられ、太陽の炎熱と夜の霜にさらされる。

31 わたしは彼とその家族、それに家来たちを、それぞれの罪のゆえに罰する。彼らに、またユダとエルサレムの全住民に、かねて予告しておいたすべての災いを下す。わたしの警告を聞こうとしなかったからだ。」

32 エレミヤは、もう一つの巻物を取り、先に言ったことをみなバルクに口述しました。ただし、今度は、前にはなかったこともつけ加えてありました。

37

1 バビロンの王ネブカデネザルは、エホヤキムの子エコヌヤの代わりにヨシヤの子ゼデキヤを、ユダの新しい王に選びました。

2 ところが、ゼデキヤ王も、家来も、国に残っている民も、神様がエレミヤをとおしてお語りになったことを、聞きませんでした。

3 にもかかわらず、王は、シェレムヤの子エフカルとマアセヤの子の祭司ゼパニヤをエレミヤのもとへやり、自分たちのために祈ってくれと言わせたのです。

4 そのころ、エレミヤはまだ牢に入れられていなかったので、自由に出入りできました。

5 エジプト王の軍隊が、包囲されたエルサレムを救援するためユダの南の国境に現われたので、バビロン軍は一戦を交えるため、エルサレムから退却していました。

6 その時、神様からエレミヤに次のお告げがありました。

7 「イスラエルの神が、こう言う。これから先どうなるかを聞くため、使いをよこした王に、エジプト王の軍隊はおまえたちを助けに来たものの、やがてエジプトへ逃げ帰る、と言ってやれ。バビロニヤ人が彼らを破って、もと来た所に押し返す。

8 一方、バビロニヤ人はこの町を占領し、すっかり灰にする。

9 バビロニヤ人がもう来ないと考えて、自分をごまかすな。そんなはずはないからだ。

10 万が一にもバビロン軍を負かし、生き残りのわずかな兵が重傷を負ってテントに横たわったとしても、彼らははい出して来ておまえたちを破り、この町に火をつける。」

11 バビロン軍がエジプトと戦うためにエルサレムの囲いを解いた時、

12 エレミヤは町を出てベニヤミンの地へ行き、自分の買った土地がどうなっているかを見ようとしました。

13 ところが、ベニヤミンの門を出ようとした時、歩哨に見つかり、バビロニヤ人に通じる裏切り者として捕らえられたのです。その歩哨というのは、ハナヌヤの孫でシェレムヤの子のイルイヤでした。

14 「とんでもない誤解だ。味方を裏切るつもりは少しもない」と、エレミヤは抗議しました。しかし、イルイヤは聞こうともしないで、役人たちの詰め所に連れて行きました。

15 彼らが怒ったのは言うまでもありません。さんざんに笞でたたいたあげく、書記官ヨナタンの家を改造してこしらえた地下牢に閉じ込めました。エレミヤは長い間そこにいました。

16 -

17 さて、ゼデキヤ王は彼のところへ使いをやり、こっそり宮殿に呼び寄せました。神様からのことばが最近あったかと尋ねたかったのです。エレミヤは、「はい、ありました。陛下はバビロン王に負けます」と答えました。

18 続いてエレミヤは、牢に入れられたことに話題を変えました。「牢に入れられるようなことは何もしていません。いったいどんな罪を犯したというのですか。もし私が、陛下やご家来方、それに一般の民衆に何か悪いことをしたというのなら、それを教えてください。

19 御前で、バビロン王は来ないと断言した預言者たちは、今、どこにいるのですか。

20 陛下、お願いでございます。どうか私を、あの地下牢に送り返さないでください。あそこにいたら、死んでしまいます。」

21 そこでゼデキヤ王は、エレミヤを地下牢に戻さないよう手配し、代わりに宮殿付属の牢に入れて、町にパンがある限りは、毎日、焼き立てのパンを一個ずつ与えるようにと命じました。こうして、エレミヤは宮殿付属の牢にとどまることになりました。

38

1 しかし、マタンの子シェファテヤ、パシュフルの子ゲダルヤ、シェレムヤの子ユカル、それにマルキヤの子パシュフルは、エレミヤが人々に次のように言うのを聞いていました。

2 「エルサレムに残っている者はみな、剣かききんか伝染病で死ぬ。しかし、バビロニヤ人に降伏する者は助かる。

3 エルサレムの町は、まちがいなくバビロニヤ人に占領されるのだ。」

4 これを聞いた四人は王のところへ行き、こう進言しました。「陛下、あいつを生かしておくわけにはまいりません。あんなことを言われたら、わずかしか残っていない兵士と民衆の士気は、くじかれてしまいます。あいつは大の裏切り者です。」

5 王は同意しました。「よろしい。おまえたちの好きなようにせよ。反対するわけにもいくまい。」

6 そこで彼らはエレミヤを牢から連れ出し、ロープでゆわえて、構内にある空の井戸につり降ろしました。この井戸は王子マルキヤのものでした。中に水はありませんでしたが、泥がたっぷりたまっていたので、エレミヤはその中に沈みました。

7 王の信任の厚い役人でエチオピヤ人のエベデ・メレクは、エレミヤが井戸に閉じ込められたと聞くと、

8 王が裁きの座についているベニヤミンの門に駆けつけました。

9 「陛下。あの四人は、エレミヤを井戸につり降ろすという、大それたことをしました。町にはもう、パンはほとんどありません。このままだと、彼は飢え死にします。」

10 すると王は、エベデ・メレクに、三十人を連れて行き、エレミヤが死なないうちに引き上げるようにと命じました。

11 エベデ・メレクはさっそく三十人の男たちを連れ、使い古した衣料が保管してある宮殿の倉庫へ行きました。そこで見つけたぼろきれや着物をかかえ、エレミヤのいる井戸へ行き、綱に結びつけてつり降ろしました。

12 エベデ・メレクは、大声でエレミヤに言いました。「ぼろきれをわきの下にはさみ、その上に綱を巻きつけなさい。」エレミヤがそのとおりにすると、

13 彼らは引き上げ、元いた宮殿の牢に帰しました。

14 ある日、ゼデキヤ王は使いを出して、エレミヤを神殿の通用門に呼びました。王は言いました。「ぜひとも聞きたいことがある。何事も隠し立てはならんぞ。」

15 「ほんとうのことを申し上げたら、陛下は私を殺すに決まっております。いずれにしても、陛下は私のことばに耳を貸すはずがございません。」

16 王は、彼の造り主である全能の神様を指して、絶対にエレミヤに手をかけたり、そのいのちをねらう者に引き渡したりしないと誓いました。

17 そこでエレミヤは、王に言いました。「イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう告げます。もしおまえがバビロン軍に降伏するなら、おまえもおまえの家族も生きのび、しかも町は焼かれずにすむ。

18 だが、降伏することを拒むなら、町はバビロンの兵士によって焼き払われ、おまえは恐ろしい運命をたどる。」

19 「だがな、余は降伏するのがこわいのだ。バビロニヤ人は、先に投降したユダヤ人に余を引き渡すだろうし、そうなったら、どうなることかわかったものではないからな。」

20 ためらう王に、エレミヤは答えました。「神様に従いさえすれば、彼らの手に落ちるようなことはありません。おいのちは助かり、万事がうまく運びます。

21 しかし、あくまで降伏を拒むなら、王宮にいる婦人たちはみな引き出され、バビロン軍の将校たちのものになります。婦人たちは、陛下を恨み、口ぎたなくののしるでしょう。『陛下はエジプト人という、すてきな友人をお持ちですこと。ご覧なさいませ、彼らはみごと裏切り、陛下を悲惨な運命に渡してくれましたわ』というふうに。

22 -

23 ご家族はみな、バビロニヤ人の前に引き出されます。陛下ご自身も同じ目に会います。陛下はバビロン王に捕らえられ、町は焼け野原になります。」

24 これを聞いた王は、エレミヤに言いました。「たとい口が裂けても、いま余に言ったことをだれにも話すな。

25 家来どもが、会見のことを知って、話の内容を教えなければ殺すと脅したら、こう言うのだ。

26 ヨナタンの地下牢にいたら死ぬに決まっているので、そこへ送り返されないよう、王に嘆願したまでです、とな。」

27 王の推測どおり、まもなく町の役人たちが押しかけ、なぜ王は彼を呼び出したのかと尋ねました。エレミヤは、王に言われたとおり答えたので、だれにも本当のことはわからずじまいでした。王との会見を立ち聞きした者はいなかったからです。

28 エレミヤは、エルサレムがバビロニヤ人の手に落ちるまで、牢に閉じ込められたままでした。

39

1 ユダ王朝のゼデキヤ王の第九年の十二月末、ネブカデネザルの率いる軍隊は再びエルサレムの攻撃にかかり、町を包囲しました。

2 それから二年後の六月末、ついに彼らは城壁を破り、町を占領しました。

3 バビロン軍の将校はみな入城して、中央の門に座り、戦勝祝賀会を開きました。そこにいたのは、ネルガル・サル・エツェル、サムガル・ネブ、サル・セキム、指揮官のネルガル・サル・エツェル、そのほか大ぜいでした。

4 ゼデキヤ王とその護衛兵たちは、町が落ちたのを見て、夜の間に抜け出し、王宮の庭のうしろにある二重の城壁の間にある門を通り、ヨルダンの渓谷に向かって野原を横切ろうとしました。

5 ところが、バビロニヤ人は王を追いかけてエリコの草原で捕まえ、ハマテの地リブラにいたネブカデネザルのところへ引き立てました。ゼデキヤを裁判にかけようというのです。

6 バビロン王はゼデキヤの目の前で、彼の子供と、ユダの貴族全員を殺しました。

7 そのあとで彼の両眼をえぐり出し、鎖につないで、奴隷としてバビロンへ引いて行ったのです。

8 一方、エルサレムの町は王宮もろとも焼き払われ、城壁は無残な姿をさらすばかりでした。

9 親衛隊長ネブザルアダンとその部下は、町に残っている住民と、投降した者をバビロンへ連れて行きました。

10 しかし、ごく貧しいわずかの人たちは、そのままユダの各地に残しておき、畑とぶどう園を与えました。

11 一方、ネブカデネザル王はネブザルアダンに、エレミヤを捜し出すよう命じました。「あの男が無事かどうか、見て来い。十分めんどうを見てやって、欲しいものは何でも与えるのだ。」

12 -

13 そこで、親衛隊長ネブザルアダン、宦官の長ネブシャズ・バン、指揮官ネルガル・サル・エツェル、そのほかの将校たちは、王の命令を実行に移す相談をしました。

14 まず兵士たちをやってエレミヤを牢から連れ出し、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤにあずけ、無事に家へ帰らせることにしました。こうしてエレミヤは、国に残っている人々とともに、故国で暮らすことになったのです。

15 ところで、バビロン軍が来る前、エレミヤがまだ牢に閉じ込められていた時、神様から次のお告げがありました。

16 「エチオピヤ人エベデ・メレクに、こう伝えよ。イスラエルの神である天の軍勢の主は言う。わたしはこの国民に、予告した災いをすべて下す。この町をおまえの見ている前で滅ぼすが、

17 おまえは救い出す。おまえがひどく恐れている者の手にかかって殺されるようなことはないから、安心するがいい。

18 わたしに信頼したほうびとして、いのちを助け、危害を受けないように守ってやるのだ。」

40

1 親衛隊長ネブザルアダンは、バビロンへ引いて行かれるエルサレムとユダの捕虜といっしょに、エレミヤをラマまで連れて行き、そこで彼を釈放しました。

2 隊長はエレミヤを呼んで言いました。「あなたの神様は、かねてからの預言どおり、この国に災いをお下しになりました。ユダの国民が神様に罪を犯したので、こうなったのです。

3 -

4 さあ、鎖をはずして、あなたを自由の身としましょう。私といっしょにバビロンへ来るなら、それもけっこうです。責任をもって、あなたの生活が十分に保証されるように取り計らいましょう。もちろん、帰ってもかまいません。あなたの自由です。好きな所へ行きなさい。

5 もし、自分の国にいたければ、バビロン王がユダの総督に任命したゲダルヤのもとへ帰り、残っている人たちといっしょに生活しなさい。いずれにしても、あなたの気持ちしだいです。好きなようにしなさい。」ネブザルアダンは、食糧と贈り物を与えた上でエレミヤを去らせました。

6 エレミヤはゲダルヤのもとへ帰り、国に残っている人たちといっしょに暮らしました。

7 さて、田舎にいたユダヤのゲリラ隊の隊長たちは、バビロン王が国民全員をバビロンへ連れて行ったわけでなく、ゲダルヤを総督に任命して、あとに残った貧民を治めさせていることを聞きました。

8 そこで彼らは、総督府のあるミツパに来て、ゲダルヤに面会しました。隊長たちの名は次のとおりです。ネタヌヤの子イシュマエル、カレアハの子ヨハナンとヨナタン、タヌフメテの子セラヤ、ネトファ人エファイの子ら、マアカ人の子エザヌヤ。ほかに部下もいっしょでした。

9 ゲダルヤは、バビロン軍に降伏するのがいちばん安全だ、と説得しました。「ここにいて、バビロン王に仕えなさい。そうすれば、何もかもうまくいきます。

10 私はミツパにいて、行政指導に来るバビロニヤ人たちに、あなたがたのことを口添えしましょう。好きな町に落ち着いて、この国で生活しなさい。ぶどうと夏のくだもの、それにオリーブの実を取って、たくわえておきなさい。」

11 モアブや、アモン人のところ、エドム、その他の近くの国々にいたユダヤ人たちは、ユダにはわずかながらもまだ人々が住んでいること、バビロン王は全員を連れて行かなかったこと、ゲダルヤが総督になったことなどを聞きました。

12 彼らはみな、亡命先の国々からユダに帰って来ました。まず、ミツパに足を止め、ゲダルヤと善後策を講じてから、ほったらかしの畑へ行き、ぶどう酒用のぶどうをはじめ、多くの作物を集めました。

13 このことがあってから間もなく、カレアハの子ヨハナンとほかのゲリラ隊長らがミツパに来て、アモン人の王バアリスがネタヌヤの子イシュマエルに、ゲダルヤを暗殺させようとしていると知らせました。ところが、ゲダルヤは信じようとしません。

14 -

15 しかたなく、ヨハナンはゲダルヤとひそかに相談することにしました。だれにもわからないようにイシュマエルを殺す役を、買って出ようというのです。ヨハナンは言いました。「彼があなたを殺すのを、おめおめ見ていられますか。そんなことにでもなったら、わざわざ国へ帰って来たユダヤ人は、どうなるのですか。残っている人たちが散り散りになって滅んでも、いいのですか。」

16 しかし、ゲダルヤは答えました。「そんなことは、絶対してはならない。でたらめを言うのも、いいかげんにしろ。」

41

1 十月に入って、王族の一人、エリシャマの子ネタヌヤの子イシュマエルは、十人の部下を連れてミツパに来ました。ゲダルヤは一行を食事に招きました。

2 ところが食事の最中に、イシュマエルと、仲間の者は、急に立ち上がって剣を抜き、ゲダルヤを殺したのです。

3 そのあと出かけて行って、ミツパでゲダルヤのそばにいたユダヤ人の役人、バビロンの兵士をも虐殺しました。

4 次の日、外部の人がこの出来事をまだ知らないうちに、

5 シェケム、シロ、サマリヤから、神殿に参拝するために、八十人の者がミツパに来ました。めいめいひげをそり、着ている物を裂き、体に傷をつけて、供え物や香を運んでいました。

6 イシュマエルは、わざと泣きながら町の外へ出て、彼らを見ると言いました。「さあ、いっしょに来て、ゲダルヤがどうなったか見てください。」

7 こうして、全員が町に入ると、イシュマエルと部下たちは、十人を別として残り全員を殺し、死体を穴に放り込みました。

8 助かった十人は、隠しておいた小麦、大麦、油、それに蜜を必ず持って来るから、いのちだけは助けてくれと、イシュマエルに頼んだのです。

9 死体を投げ込んだ穴は大きなもので、アサ王がイスラエル王朝のバシャ王を恐れて、ミツパの防備を固めた時に掘ったものでした。

10 イシュマエルは、王女たちと、親衛隊長ネブザルアダンがゲダルヤに任せた人たちとを捕虜にし、すぐさまアモン人の国へ旅立ちました。

11 カレアハの子ヨハナンをはじめとするゲリラ隊長たちは、イシュマエルのしたことを聞くと、

12 部下を引き連れてあとを追い、ギブオンの近くの池のそばで、一行を見つけました。

13 捕虜になっていた人たちは、ヨハナンとその部下たちの姿を見ると、歓声をあげて走って来ました。

14 -

15 一方、イシュマエルは八人の部下とともに、アモン人の地へ逃げのびました。

16 さて、ヨハナンとその部下は、救い出した兵士、婦人、子供、宦官などを引き連れて、ベツレヘム近郊のゲルテ・キムハムという村へ行き、そこでエジプトに脱出する準備を始めました。

17 -

18 イシュマエルが、バビロン王の立てた総督ゲダルヤを殺したというニュースが伝わったら、バビロニヤ人はどんな報復に出るかわかったものじゃない、と恐れたのです。

42

1 ヨハナン、ホシャヤの子イザヌヤ、将校たちをはじめ、身分の高い者も低い者も、そろってエレミヤのところへ行き、

2 こう頼みました。「どうか、あなたの神様に祈ってください。よくご存じのように、私たちはあとに残った、ほんのひと握りの仲間です。

3 あなたの神様が私たちに、どうしたらいいか、またどこへ行ったらいいかを教えてくださるよう、頼んでみてください。」

4 「いいですとも。神様に尋ねてみましょう。神様のお語りになることは、包み隠さずお知らせしますよ。」

5 「もし、私たちが神様のお語りになったことに背くようだったら、のろわれてもかまいません。

6 お告げが気に入ろうが、気に入るまいが、神様に従います。従いさえすれば、何もかもうまくいくからです。」

7 それから十日して、神様の返事がエレミヤにありました。

8 彼はヨハナンと、その下にいる隊長たち、それに身分の高い者も低い者もみな呼んで、

9 こう言いました。「あなたがたは私を代わりに立て、イスラエルの神様に尋ねさせました。これが神様からの返事です。

10 この地にとどまれ。そうすれば、おまえたちを祝福する。だれひとり危害を加える者はいない。わたしは、おまえたちに刑罰を下したことを後悔している。

11 これ以上バビロン王をこわがるな。わたしがついている。必ず彼の手からおまえたちを助け出してやる。

12 気の毒なおまえたちのために、彼に同情心を起こさせるので、彼はおまえたちを殺したり、奴隷にしたりせず、かえって、これまでどおり国におられるように取り計らってくれる。

13 しかし、神様に逆らって、『ここにいるのはいやだ』と言い、戦争や飢えや危険のない別世界だと考えているエジプトへ、どうしても行こうとするなら、

14 -

15 イスラエルの神様は、きっぱり断言なさいます。ユダの残りの者よ。どうしてもエジプトへ行くと言ってきかないなら、

16 おまえたちの恐れている戦争とききんが、すぐうしろからくっついて行き、おまえたちを滅ぼす。

17 これが、エジプトに住もうと言いはる者の運命だ。おまえたちはまちがいなく剣と、ききん、それに伝染病で死ぬ。エジプトでわたしが下す災いを免れる者は、一人もいない。

18 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう断言なさいます。わたしの怒りと憤りは、エルサレムの住民に注がれたように、エジプト入りした者にも注がれる。おまえたちは侮られ、憎まれ、のろわれ、ののしられる。しかも、二度と祖国を見ることはできない。

19 なぜなら、わたしは『ユダの残りの者よ、エジプトへ行ってはならない』と、はっきり命じたからだ。」こう言うと、エレミヤは話をしめくくりました。「私がきょう警告したことを、決して忘れてはなりません。

20 もし、それでも行くなら、いのちはありません。あなたがたが私を代わりに立てて神様に祈らせ、『神様のお語りになるとおりを知らせてください。私たちは従いますから』と言ったことは、真っ赤なうそになるからです。

21 きょう私は、神様のご命令を、そのとおり伝えました。ところがあなたがたは、いつものように、やっぱり従おうとしません。

22 だから、このことを頭にたたき込んでおきなさい。あなたがたは、どうしても行くのだと言ってきかないエジプトの地で、剣とききんと伝染病によって死にます。」

43

1 エレミヤが、神様のことばをすべての人に語り終えた時、

2 ホシャヤの子アザルヤと、カレアハの子ヨハナン、その他の思い上がった者が、エレミヤをきめつけました。「うそだ。神様が、エジプトへ行ってはならないなどと言うはずがない。ネリヤの子バルクが陰謀を企て、そう言わせたに違いない。われわれをこの地に残して、バビロニヤ人に殺させたり、奴隷としてバビロンに連れて行かせたりするためにな。」

3 -

4 このように、ヨハナンをはじめ、ゲリラ隊長たち、それに残っていた者はみな、神様の命令に従ってユダにとどまることを拒みました。

5 こうして、亡命先の近くの国々から帰って来た人も含めて、すべての者が、ヨハナンや他の隊長とともに、エジプトめざして出発しました。

6 その中には、男、女、子供、王女たち、それに親衛隊長ネブザルアダンがゲダルヤに託したすべての人がいました。彼らは、エレミヤとバルクも力ずくで連れて行き、

7 エジプトのタフパヌヘスに着きました。彼らは神様のことばに従わなかったのです。

8 タフパヌヘスで、神様は再びエレミヤに語りかけました。

9 「ユダの人たちを呼び集めよ。彼らの見ている前で、このタフパヌヘスにあるエジプト王の宮殿の入口にある敷石の間に、大きな石を埋めるのだ。

10 それから、皆にこう言ってやれ。イスラエルの神様である天の軍勢の主は言います。わたしはまちがいなく、わたしの意のままに動くバビロンの王ネブカデネザルを、このエジプトに連れて来る。彼の王座を、いま隠した石の上にすえる。彼は、その石の上に王の天蓋を張る。

11 彼はエジプトに来て荒らし、わたしが殺そうと思っている者をみな殺し、わたしが捕虜にしようと思っている者を捕虜にする。また、多くの者が伝染病にかかって死ぬ。

12 彼はエジプトの神々の神殿に火をつけ、偶像を焼き、人々を奴隷にして連れ去る。彼はまた、羊飼いが着物についた虱をつぶすように、エジプトを踏みつぶし、しかも無傷で去る。

13 ヘリオポリスにある偶像の記念塔はこわされ、エジプトの神々の神殿も焼き払われる。」

44

1 エジプト北部のミグドル、タフパヌヘス、メンピスの町々、それにエジプト南部に住む全ユダヤ人について、次のお告げがエレミヤにありました。

2 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。おまえたちは、わたしがエルサレムとユダのすべての町にしたことを見た。それらの町々は、はなはだしい悪のために灰になり、廃墟となって、今は猫の子一匹も住んでいない。自分も先祖も知らなかったような神々を拝んで、わたしの怒りを買ったからだ。

3 -

4 わたしはわたしのしもべである預言者を送って、わたしの憎む、このような恐ろしいことをしないようにと、何度も警告し、説得してきた。

5 それなのに、少しも言うことを聞かず、悪の道を捨てなかった。性懲りもなく、神々にいけにえをささげ続けた。

6 そのため、わたしの憤りは爆発し、火のようにユダの町々とエルサレム市内に燃え移り、現在のような廃墟としたのだ。

7 イスラエルの神様であり、天の軍勢の主でもある神様は、あなたがたに尋ねます。なぜおまえたちは、好んでいのちを絶とうとしているのか。ユダから逃げてこの地に来た者は、男、女、子供はもちろん、抱かれている乳飲み子さえ、一人として死を免れることはできない。

8 おまえたちは、エジプトへ来てまで偶像を拝み、香をたいて、わたしの怒りをかき立てている。だから、おまえたちをとことんまで滅ぼし、全世界の国々ののろいとし、鼻つまみものとする。

9 おまえたちは、ユダとエルサレムでの先祖の罪、ユダの王と王妃たちの罪、おまえたち自身の罪、それにおまえたちの妻の罪を忘れてしまったのか。

10 今の今まで、申しわけないことをしましたとわびた者は、だれもいない。一人として、わたしに立ち返ろうとせず、わたしがおまえたちの先祖に与えたおきてに従おうとしない。

11 そのため、イスラエルの神様である天の軍勢の主は言います。わたしは怒りで全身が熱くなった。おまえたちを一人残らず滅ぼしてやる。

12 エジプトに来ることを強く主張した、この生き残りのユダヤ人を皆殺しにする。彼らはここエジプトの地で倒れ、ききんと剣でいのちを落とし、身分の高い者も低い者も、一人残らず死ぬ。彼らはさげすまれ、忌みきらわれ、のろわれる。

13 わたしは、エルサレムの住民を剣とききんと伝染病で罰したように、エジプトにいる彼らを罰する。

14 ここに来たことを悔い、ほかの者と別行動をとって故国に帰る者のほかは、ただの一人も、わたしの憤りから逃げることはできない。

15 そこに居合わせた女たちと、妻が偶像に香をたいていることを知っている男たちは、声を一つにして言い返しました。エジプト南部には、おびただしい数のユダヤ人がいたのです。

16 「そんな偽のお告げには、同意できません。

17 私たちの好きなようにさせてください。ご先祖や、王たち、重立った人たちが、ユダの町々やエルサレムでいつもしていたように、思いきり『天の女王』に香をたきたいのです。あのころは、食べ物がどっさりあり、しあわせいっぱいでした。

18 ところが、『天の女王』に香をたいて拝むのをやめてからというもの、災い続きで、剣とききんにたたられどおしです。」

19 女たちも、負けずに口をはさみました。「私たちはちゃんと夫に相談してから、『天の女王』を拝み、それにぶどう酒を注ぎ、女王に象ったケーキを作ったのですよ。黙って内緒でなんかするものですか。」

20 それでもエレミヤは、簡単には引っ込みません。

21 「あなたがたや、あなたがたの先祖、王、重立った人たち、それに全国民が、ユダの町々とエルサレムで偶像に香をたいていたことを、神様がご存じないとでも思うのですか。

22 神様があなたがたの悪に我慢できなくなったので、祖国は今のように荒れ果て、お話にならないほど破壊され、のろわれ、人っ子ひとり住まなくなったのです。

23 こんな恐ろしい運命に見舞われたそもそもの原因は、あなたがたが香をたき、神様に罪を犯し、神様に従うことをやめたところにあります。」

24 さらにエレミヤは、女たちも含め、全員に言いました。「エジプトに住むすべてのユダヤ人は、神様のおことばを聞きなさい。

25 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こうお語りになります。おまえたちも妻も、『天の女王』にいけにえをささげることを絶対にやめない、と言った。しかも、このことを態度で証明してきた。それなら、『天の女王』に誓ったことを果たすがいい。

26 だがいいか、エジプトに住むすべてのユダヤ人よ。わたしの言うことをよく聞け。これからは、『神様、どうか助けてください』と言って、わたしの助けと祝福を求めても手遅れだ。

27 おまえたちに目は留めるが、祝福のためではない。災いがもろに襲うようにするのだ。だから、おまえたちは戦争とききんで倒れ、ついには死に絶える。

28 ユダに帰るほんのひと握りの者だけが、わたしの憤りに会わない。だが帰国を拒んで、エジプトに居すわる者はみな、ほんとうのことを言っているのがわたしであるか、それとも彼らであるかを、いやと言うほど思い知るのだ。

29 わたしが前々から警告していたことはみな実現し、わたしはこの地でおまえたちを罰する。これが、わたしのことばが正しいという証拠だ。

30 わたしは、ユダ王朝のゼデキヤ王をバビロンの王ネブカデネザルに渡したように、エジプトの王ホフラを、彼のいのちをねらう者の手に渡す。」

45

1 ヨシヤの子エホヤキム王が即位して四年目に、バルクはエレミヤの口述するままに、神様のことばを書きつけました。そののち、エレミヤは彼に言いました。

2 バルクよ。イスラエルの神様が、あなたにこう言います。

3 おまえはこう言ったな。私は実にみじめな人間だ。もう十分に苦しんできたのに、神様は、なおも苦しみをお加えになった。出るのはため息ばかりで、ゆっくり休むことさえできない。

4 こう言うバルクに、次のように答えてやれ。わたしは、わたしの建てたこの国をこわし、わたしの築いたものを引き抜く。

5 おまえは、自分のために特別なことを求めてはならない。わたしはこの国民に大きな災いを下すが、おまえには報いとして、どこへ行っても守ってやることにする。

46

1 ほかの国々についてエレミヤが聞いた神様のお告げを、次に書き留めておきます。エジプト人について

2 ヨシヤの子でユダ王朝のエホヤキム王が即位して四年目に、エジプトの王ネコの率いる軍隊が、ユーフラテス川のほとりで、バビロンの王ネブカデネザルに敗れたカルケミシュの戦闘の時、エジプトについて次のお告げがありました。

3 エジプト人はよろいに身を固め、戦いに出て行け。

4 馬に鞍をつけ、いつでも乗れるようにしておけ。かぶとをかぶり、槍の穂先をみがき、よろいを着よ。

5 だがどうしたわけか、エジプトの軍勢は恐れに取りつかれて逃げて行く。人一倍の武勇を誇る兵士さえ、うしろを振り向きもせず、一目散に逃げる。恐れが四方八方から彼らを取り囲む。

6 どんなに足の速い者も、どんな勇士も、逃げることはできない。北のユーフラテス川のほとりで、彼らはつまずき倒れる。

7 洪水の時期のナイル川のようにわき上がり、各地にあふれていくこの強大な軍隊は、どこの国のものか。

8 それは、すべての国々を洪水のようにおおい、すべての敵を破るとうそぶく、エジプトの軍隊だ。

9 馬と戦車、それに無敵を誇るエジプト兵たちよ、さあ、来い。盾を取り、弓を引きしぼるエチオピヤ、プテ、ルデの人たちも来い。

10 きょうこそ、天の軍勢の主の日、わたしが敵に復讐する日だ。剣はおまえたちの血を十分に吸い、これ以上一滴も飲めないというまで働く。きょう、天の軍勢の主であるわたしに、北の地ユーフラテス川のほとりで、いけにえがささげられるからだ。

11 エジプトの娘よ、薬を捜しにギルアデに上れ。だが、そうしても、おまえの傷は治らない。どんなに薬を使っても、元の健康には戻らない。

12 国々はおまえの恥を聞いた。地はおまえの絶望と敗北の叫び声で満ちる。おまえの勇士は鉢合わせして、共に倒れる。

13 次に神様は、バビロンの王ネブカデネザルがエジプトを攻撃することについて、こうお語りになりました。

14 エジプトで、バビロン軍の来襲を大声で伝えよ。ミグドル、メンピス、タフパヌヘスの町の人々に言い広めよ。滅びの剣が周囲を食い尽くすから、兵士を集めて戦いの準備をせよ。

15 なぜ、おまえたちの雄牛の神アピスは、真っ青になって逃げたのか。神様が敵の前で、彼を打ちのめしたからだ。

16 数えきれないほどの人が倒れ、死人の山ができる。その時、ユダヤ人の残った者は言う。「さあ、生まれ故郷のユダへ帰ろう。こんな恐ろしい虐殺の現場から遠ざかろう。」

17 エジプトの王ホフラの名を、「力はないが、実に騒がしい男」と変える。

18 天の軍勢の主である王は、こう言います。タボル山か海に突き出たカルメル山のように背の高い者が、エジプトに襲いかかる。

19 エジプトの住民は、荷物をまとめ、捕虜になって連れて行かれるしたくをせよ。メンピスの町は根こそぎにされ、一人も生き残らないからだ。

20 エジプトは若い雌牛のように肌がつややかだ。だが、北からあぶが飛んで来て、彼女を追い回す。かの名高い傭兵たちも、おびえきった子牛のようになり、回れ右して逃げる。エジプトに徹底した罰が下り、大災害の見舞う時がきたからだ。

21 -

22 エジプトは、蛇が身をくねらせて姿を消すように、音もなく逃げる。代わりに、侵略軍が入って来て、数えきれないほどの兵士が、森の木立を切り払うきこりのように、人々をなで切りにする。

23 -

24 この北から来た国民の前では、エジプトは少女のように無力だ。

25 イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。わたしはテーベの神アモン、その他のエジプトの神々を罰する。また、エジプト王と、王を頼りとするすべての者を罰する。

26 彼らを、彼らを殺すのを生きがいとするバビロンの王ネブカデネザルと、その軍隊の手に渡す。しかし後日、エジプトは戦争の荒廃から立ち直る。

27 だが、祖国に帰るわたしの国民よ、こわがったり、うろたえたりするな。わたしは遠くにいるおまえたちを救い、おまえたちの子孫を遠くの国から連れ戻すからだ。イスラエルは帰って来て平穏無事に住み、何ものにもおびえない。

28 わたしのしもべヤコブよ、恐れるな。わたしがついている。わたしは、おまえの寄留していたすべての国々を滅ぼすが、おまえには手をかけない。懲らしめはするが、それもおまえの曲がった性根をまっすぐにするためだ。

47

1 ガザがエジプト軍に占領される前に、この町のペリシテ人について神様がエレミヤに語ったことばは、次のとおりです。

2 神様はこう言います。北から洪水が押し寄せて、ペリシテ人の地にあふれようとしている。それは、町々とその中にあるものを何もかも破壊する。強い男たちでも恐れて悲鳴をあげ、国中の民が泣きわめく。

3 遠くから聞こえるひづめの音と、地響きを立てる戦車の車輪の音を聞け。父親は、泣き叫ぶわが子には目もくれず、一目散に逃げる。

4 すべてのペリシテ人と、ツロおよびシドンの同盟軍の滅ぼされる時が、ついにきたのだ。神様が、カフトル(クレテ島周辺)からの開拓者であるペリシテ人を滅ぼすのだ。

5 ガザとアシュケロンの町は、跡をとどめないまでに破壊され、廃墟となる。アナク人の子孫は、どれほど嘆き悲しまなければならないことか。

6 神様の剣は、いつになったら休むつもりでしょう。元のさやに納まって、静かに休みなさい。

7 しかし、いったん神様が使命を与えたからには、じっとしていることはできません。アシュケロンの町と、海岸沿いの住民は、どうしても殺されなければならないのです。

48

1 モアブについて、イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。ネボの町はひどい目に会い、跡形もなくこわされる。キルヤタイムの町は占領され、それを守る要塞はつぶされる。

2 もう、だれもモアブのことを鼻にかける者はいない。その命はつけねらわれているからだ。すでにヘシュボンでは、モアブを破壊する手はずが整った。「さあ、あの国を滅ぼして、地上から抹殺しよう」と、彼らは言う。マデメンはひっそり静まり返っている。一方、ホロナイムには戦いの物音が近づく。こうして、モアブは全滅し、その叫び声はツォアルにまで響く。

3 -

4 -

5 泣きながらルヒテの坂を上る避難民の耳には、下に見える町からの、恐怖の叫びが聞こえる。

6 いのちが助かるために逃げ、荒野に身をひそめよ。

7 おまえたちは自分の腕を頼みとし、富を誇ったので、滅びる。おまえたちの神ケモシュは、祭司や重立った人たちとともに、遠い国へ連れ去られる。

8 村も町も、高台にあると谷間にあるとの区別なく、すべて滅びる。わたしがそう言ったからだ。

9 モアブに羽が生えてどこかへ飛んで行けたら、どんなにいいだろうに。この国の町々には、いのちある者は一人もいなくなるからだ。

10 モアブの血を流すのをいとい、剣を抜くのをひかえる者は、のろわれよ。わたしが与えた仕事に手をつけない者は、のろわれよ。

11 モアブは建国以来、外敵から守られ平穏無事に過ごしてきた。この国は、びんからびんに移し変えられないぶどう酒のようで、香りがよく、口あたりがなめらかだ。だが今度は、捕虜として外に注ぎ出される番だ。

12 乱暴者が来て、つぼからつぼへ荒々しく移し変え、しかも、そのつぼを粉々に砕く時がすぐにくる。

13 その時になってはじめて、ベテルでイスラエルが子牛の偶像を恥ずかしいと思ったように、モアブは自分の偶像ケモシュを恥ずかしく思うようになる。

14 あなたがたは、「われわれは英雄だ。歴戦の勇士だ」とうぬぼれていたころのことを覚えていますか。

15 しかし今、「モアブは滅ぼされようとしている。滅ぼす者が近づいている。えり抜きの若者も血祭りにあげられる」と、天の軍勢の主である王が言います。

16 大きな災害が足早にモアブに近づいています。

17 モアブの友人たちよ、モアブのために大声で泣きなさい。力と美しさを誇ったこの国は、粉々に砕かれました。

18 ディボンの人たちよ、栄光の座を降り、ちりの中に座りなさい。モアブを滅ぼす者はディボンも荒らし、すべての塔を倒すからです。

19 アロエルの住民よ、道のそばに立って、モアブから逃げて来る人たちに、「いったい何が起こったのですか」と聞いてみなさい。

20 彼らは答えるでしょう。「モアブは焼け野原になりました。大声で泣きなさい。アルノン川の土手で、モアブは滅びたと伝えなさい。」

21 平地にあるすべての町は廃墟になりました。神様の刑罰は、これらの町ぜんぶに下されたのです。ホロンも、ヤハツ、メファアテも、

22 ディボン、ネボ、ベテ・ディブラタイムも、

23 キルヤタイム、ベテ・ガムル、ベテ・メオンも、

24 キルヨテ、ボツラも、それに、モアブの国の遠くや近くにあるすべての町々も、同じ運命に会いました。

25 モアブは角を切り取られ、両腕を折られ、すっかり骨抜きになりました。

26 酔っぱらいのようにふらつき、倒れるままにしておきなさい。神様に背いた罰です。モアブは自分の吐いたへどの中で転げ回り、すべての人にさげすまれます。

27 それというのも、イスラエルをさげすんで強奪し、それが倒れた時、手を打って喜んだからです。

28 モアブの人たちよ、町を捨てて逃げ、岩の裂け目に巣を作る鳩のように、ほら穴に住みなさい。

29 モアブの思い上がりは度はずれのものだったので、私たちの耳にまで達しました。その、他人を見下す横柄な態度、思い上がった心を、私たちは知っています。

30 「わたしはモアブの思い上がりを知っている」と、神様は言います。しかし、そのうぬぼれは根拠のないもので、から威張りにすぎません。

31 私はモアブのために泣き、私の心は、キル・ヘレスの人々のことを思って痛みます。

32 ぶどうのお陰で富んでいるシブマ(良質のぶどうの産地)の人よ。私はヤゼルの人以上に、あなたがたのために泣きます。滅ぼす者が来て、よく伸びたあなたがたのつるを切り、ぶどうと夏のくだものを横取りしたからです。そのため、あなたがたは丸裸になりました。

33 実り豊かなモアブから、喜びと楽しみの声が消え、酒ぶねに入れるぶどうもなく、喜びの声をあげてぶどうを踏む者もいません。なるほど、叫び声は聞こえますが、それは歓声ではありません。

34 恐怖と苦痛の、身の毛もよだつ叫び声が、ヘシュボンからエルアレとヤハツ、ツォアルからホロナイムとエグラテ・シェリシヤに渡る国中に響きます。ニムリム川沿いの牧草地は、今ではすっかり荒れ地になりました。

35 「わたしは、モアブが偽の神々を拝み、偶像に香をたくのをやめさせた」と、神様は言います。

36 私は、モアブとキル・ヘレスのために嘆き悲しみます。彼らのせっかくの富も消えうせたからです。

37 彼らは苦しみもだえて頭の毛とひげをそり、手に傷をつけ、袋を作る荒布を身にまといます。

38 どのモアブ人の家からも、路上からも、泣き悲しむ声が聞こえます。「わたしがモアブを、だれも見向きもしない古いびんのように割ったからだ」と、神様は言います。

39 なぜこわされたのでしょう。泣きわめく声を聞き、モアブの恥に目を留めなさい。モアブは今、周囲の人たちにとって、恐怖とさげすみのしるしとなっています。

40 「モアブの上空を、不吉の使者のはげたかが輪を描いて飛んでいる」と、神様は言います。

41 町々は攻め取られ、要塞はつぶされます。大の勇士も、産みの苦しみをする女のように、恐れに取りつかれて弱くなります。

42 モアブは、もはや国ではありません。神様に大きな口をたたいたからです。

43 「モアブよ、恐れと罠と裏切りが、おまえの分け前になる。

44 逃げる者は落とし穴に落ち、そこからやっとはい上がったかと思うと、今度は罠に足をはさまれる。わたしは、おまえがどんなにもがいても脱出できないように、目を光らせる。おまえの刑罰の時がきたのだ」と、神様は言います。

45 彼らは、やっとの思いでヘシュボンまで逃げのびますが、それ以上は行けません。シホンの先祖の土地であるヘシュボンから火が出て、国の端から端までなめ尽くし、反逆者たちをみな焼き殺します。

46 ああ、モアブよ。恐ろしい運命があなたを待ち受けています。ケモシュの神を拝む人々は滅びました。あなたの息子と娘は、奴隷として連れ去られます。

47 「だが、後日、わたしはモアブの国を再建する」と、神様は言います。モアブについての預言は、これで終わりです。

49

1 おまえたちは、ここで何をしているのか。なぜユダヤ人の町に住んでいるのか。そこはユダヤ人だけの住みかであり、彼らがわたしから受け継いだ所ではないか。それなのに、ミルコムの神を拝むおまえたちが、なぜガドとその町々を占領したのか。

2 このため、わたしはおまえたちを罰し、おまえたちの町ラバを破壊する。そこは人の住まないごみの山となり、近くの町々も焼き払われる。そのあとイスラエルが来て、おまえたちの手から国を取り戻し、失ったものを奪い返す。こう神様は言います。

3 ヘシュボンよ、アイが滅びたのだから、泣きわめくがいい。ラバの娘よ、喪服を着け、垣根に身を隠し、ぞんぶんに泣け。おまえの神ミルコムが、重立った人や祭司とともに、遠い国へ連れて行かれるからだ。

4 おまえは、よく肥えた谷間の地を自慢にしているが、それはまもなく荒れ地になる。根性の曲がった娘よ。おまえは自分の財産を心の拠り所とし、手出しする者はだれもいないと考えていた。

5 だが、見ているがいい。わたしはおまえに恐怖を送る。天の軍勢の主である神様が、こう言います。隣人たちはおまえをおまえの国から追い出し、おまえが捕虜になって連れ去られるのを横目で見ながら、逃げて行く。

6 だが、後日、わたしはアモン人の国を元どおりに繁栄させる。エドム人について

7 天の軍勢の主はこう言います。昔いた賢い連中はどこへ行ったのか。テマンには、もう知恵者は一人もいないのか。

8 デダン〔隊商で栄えた、アラビヤ北部の町〕の人よ、砂漠のいちばん奥まで逃げて行け。わたしはエドムを罰する時に、おまえたちをも罰するからだ。

9 ぶどうを収穫する者は、貧しい者のことを考えて少しは残しておく。どろぼうでさえ、いっさいがっさい盗んで行くようなことはしない。だが、わたしがエドムを丸裸にするので、隠れる所はどこにもない。子供も、兄弟も、隣人も、一人残らず殺され、おまえ自身も滅びる。

10 -

11 だがわたしは、生き残ったみなしごたちを守り、未亡人たちがわたしを頼りとするようにする。

12 神様はエドムに言います。罪のない者さえ苦しむとしたら、おまえは、どれほど苦しまなければならないことか。罰を受けずにすむはずはない。どうしても、このさばきの杯を飲まなければならない。

13 ボツラは荒れ果て、のろいとあざけりを受けるようになると、わたしは自分の名にかけて誓ったのだ。その町々は永遠の廃墟となる。

14 私は神様から、次の知らせを聞きました。神様はエドムを滅ぼす同盟軍を起こすため、国々に呼びかける使者を送り出しました。

15 神様は言います。わたしはこの国を弱くし、周囲の国々にさげすまれるようにする。

16 おまえはペトラの山々に住み、岩の裂け目に住んで、自分の名声と思い上がりにだまされてきた。だが、わしのように高い峰に住んでいても、わたしはおまえを引きずり降ろす。

17 エドムは非常に恐ろしい目に会う。そこに近づく者はみな、あまりにも悲惨な光景に背筋が凍り、息の止まる思いがする。

18 おまえの町々は、ソドムとゴモラやその近くの町々のように静まり返る。二度とそこに住む者はいない。

19 わたしが彼らのもとに、ヨルダンの密林から出て、囲いの中の羊に忍び寄るライオンのような侵略者を送るので、一瞬のうちにエドムは滅びる。そのあとで、わたしの選んだ者をエドム人の上に立てよう。わたしのような者がいるだろうか。だれがわたしを呼びつけて、報告を求めることができよう。どこの羊飼いが、わたしに反抗できよう。

20 次のことを心に留めておきなさい。神様はまちがいなくエドムとテマンの住民に、小さな子供さえ奴隷になって引きずられて行く光景を見せます。それは、見るに耐えない悲惨なことです。

21 エドムが倒れる音で地は揺れ動きます。人々の叫び声は紅海にまで聞こえます。

22 襲いかかる者は、はげたかのように速く飛んで来て、ボツラに向かって翼を広げます。それを見て、大勇士の勇気もくじけ、産みの苦しみをする女のようになります。ダマスコについて

23 ハマテとアルパデの町々は、恐れに取りつかれた。彼らの運命がどうなるかを聞いたからだ。彼らの心は、嵐の荒れ狂う海のように、ざわめき立っている。

24 ダマスコはすっかりおじ気づき、住民はみな逃げた。恐れと苦しみと悲しみが、産婦に取りつくように、ダマスコに取りついた。

25 ああ、名の知れた町、喜びの町よ。どうしておまえは、今になって見捨てられたのか。

26 若者たちは、死体となって路上に横たわっている。おまえの軍隊は、ただの一日で蹴散らされてしまう。そう天の軍勢の主は言います。

27 わたしはダマスコの城壁に火をつける。その火で、ベン・ハダデの宮殿は焼け落ちる。ケダルとハツォルについて

28 次の預言は、ケダルとハツォル〔どちらも、パレスチナ東方の荒野に住むアラブ遊牧民〕の王国についてのものです。これらの王国は、神様の命令を受けたバビロンの王ネブカデネザルによって、まもなく滅ぼされようとしています。

29 神様は言います。彼らの羊の群れもテントも、家庭用品ともどもに奪い取られる。らくだも連れ去られ、「われわれは包囲された。いよいよ最期だ」という恐怖にひきつった叫び声が、あちこちから聞こえる。

30 いのちが助かるために逃げよ。ハツォルの人たちは砂漠の奥へ隠れよ。バビロンの王ネブカデネザルが陰謀をめぐらし、おまえたちを根絶やしにしようと手はずを整えているからだ。

31 神様はネブカデネザル王に、こう言いました。「さあ、のん気そのもので、砂漠に孤立して住んでいる金持ちのベドウィン族に襲いかかれ。彼らは、だれの力も借りずにやっていけるとうぬぼれ、城壁も門もいらないと大口をたたいている。

32 彼らのらくだと家畜はみなおまえのものになる。わたしはこのアラブ人を吹き散らし、四方八方から災難を呼び寄せる。」

33 ハツォルは砂漠の野獣の住みかになります。人も住まない、永遠の荒れ地となるのです。エラムについて

34 ユダの王ゼデキヤの治世の初めに、エラムについてのお告げが、エレミヤにありました。

35 天の軍勢の主はこう言います。わたしはエラムの軍隊を破る。

36 また、四方からの風でエラムの住民を吹き散らす。そのため、彼らは世界中の国々に流れ着く。

37 わたしは激しく怒ってエラムに大きな災いを下し、敵がこの地の住民を一掃するように仕向ける。

38 わたしはわたしの王座をエラムに置き、王と重立った者たちを滅ぼす。

39 だが、後日、わたしはエラム人を呼び戻す。

50

1 次は、神様が預言者エレミヤをとおして、カルデヤ人の国バビロンについて語ったことばです。

2 全世界の人に、バビロンは滅びると告げよ。この国の神であるメロダクは赤恥をかく。

3 北から一つの国が攻め上り、この地を二度と人が住めないほど徹底的に荒らすからだ。人も家畜も逃げる。

4 その時、イスラエルとユダの国民は、泣きながら、彼らの神であるわたしを尋ね求める。

5 シオン(エルサレム)に通じる道を尋ね、故国をめざして帰る。「二度と破ったりしない永遠の誓いを立て、神様にしっかり結びつこう」と、彼らは言う。

6 わたしの国民は迷った羊だ。羊飼いたちはとんでもない方角に彼らを連れて行き、山の中に置き去りにした。彼らは道に迷い、どうしたら元の場所へ帰れるかと途方にくれた。

7 彼らを見つけた者は彼らをさんざん食い物にし、「こいつらを好きなように料理しよう。この連中は、正義の神であり、彼らの先祖の望みであった神様に罪を犯したのだから」と言った。

8 しかし今度は、カルデヤ人の国バビロンから逃げ出せ。わたしの国民を故国に連れ帰れ。

9 わたしは北方の強い国々の軍隊を奮い立たせ、バビロンに敵対させるからだ。バビロンは滅びる。敵の矢は的をめがけて飛んで来て、一本もはずれない。

10 バビロンはすっかり丸裸になる。

11 わたしの国民から身ぐるみはぎ取ったカルデヤ人よ。おまえたちは喜び、みずみずしい草の茂る放牧地の牛のように肥え太り、種馬のようにいなないても、

12 おまえたちの母は赤恥をかいて顔を伏せる。おまえたちはいちばん弱い国となり、荒野となり、乾ききった砂漠となるからだ。

13 わたしの怒りによって、バビロンはさびれた荒れ地となる。そこを通り過ぎる者は血の気を失い、そのすべての傷を見てあざける。

14 回りを取り囲むすべての国々よ、バビロンと戦う準備をせよ。弓を引く者は、バビロンめがけて矢を放て。彼は神に逆らって罪を犯したのだから、矢を惜しまず、容赦なく射かけるのだ。

15 四方から、いっせいにときの声をあげよ。城壁はくずれ、バビロンは降伏する。わたしはとうとう復讐した。バビロンがしたとおりのことを、お返ししてやれ。

16 畑で働く外国人は、みな逃げろ。敵の軍勢が攻めて来るから、自分の国に走って帰れ。

17 イスラエル人はライオンに追われる羊のようだ。初めはアッシリヤの王がその肉を食い、次にはバビロンの王ネブカデネザルが、骨までしゃぶった。

18 そこで、イスラエルの神である天の軍勢の主は、こう言います。わたしは今度は、アッシリヤを罰したように、バビロンの王とその国に罰を加える。

19 わたしはイスラエル人を故国に連れ戻す。彼らはカルメルとバシャンで草を食べ、もう一度、エフライムとギルアデの山々でしあわせに暮らすようになる。

20 その日には、イスラエルにもユダにも、罪は一つも見あたらなくなる。わたしは残った者たちを赦すからだ。

21 わたしの勇士たちよ。メラタイム〔南部バビロニヤ〕とペコデ〔東部バビロニヤ〕に攻め上れ。わたしがさばこうとしている反逆の国バビロンに、威勢よく進撃せよ。命令しておいたとおり、彼らを根絶やしにせよ。

22 国中に戦いの雄たけび、大きな破滅の叫びがあがるように。

23 地上のすべての国々を打った強力な金槌は折られ、粉々になった。バビロンは国々の中で、荒れ果てた地となった。

24 バビロンよ。わたしがおまえに罠をしかけ、おまえを捕まえたのだ。おまえがわたしに戦いをいどんだからだ。

25 わたしは兵器庫を開き、敵に怒りをぶちまけようと武器を取り出した。バビロンに降りかかった恐怖は、天の軍勢の主であるわたしが指図したものだ。

26 遠くから来てバビロンに攻めかかれ。穀物倉に押し入り、城壁と家々をこわして高く積み上げ、とことん荒らすのだ。めぼしいものは何一つ残すな。

27 家畜にまで、のろいが下るように。それを一頭残らず殺せ。バビロンの荒廃の時がきたからだ。

28 だが、わたしの国民は逃げ出す。彼らは故国に逃れ、彼らの神であるわたしが怒りに狂い、神殿をこわした者たちに仕返ししたと報告する。

29 弓を引く者をバビロンに呼び集めよ。この都を包囲し、蟻一匹はい出るすきもないようにするのだ。バビロンがほかの国々にしたとおりに仕返ししてやれ。彼らはイスラエルのきよい神であるわたしに大きな口をたたき、公然と反抗したからだ。

30 若者は路上に倒れて死に、勇士は皆殺しになる。

31 天狗になっている者たちよ。わたしはおまえたちの敵になる。おまえたちのさばきの日が、ついにきたのだ。

32 高ぶる国よ。おまえはつまずいて倒れるが、だれも起こしてくれない。わたしが町々に火をつけ、何もかも灰にするからだ。

33 天の軍勢の主はこう言います。捕虜になったイスラエルとユダの国民は虐待されている。主人どもは彼らを釈放しようとしない。

34 だが、彼らを救い出す者は強く、その名は天の軍勢の主だ。わたしは彼らの訴えを聞き、彼らが自由の身となり、再びイスラエルの地で静かに暮らせるように取り計らう。だが、バビロンの住民に安息はない。

35 破滅の剣がカルデヤ人に切りかかる。それはバビロンの住民を、重立った者も知恵のある者も区別なしに切りまくる。

36 賢い助言者も薄ばかになり、何ものをも恐れない勇士もあわてふためく。

37 戦いが起こって、馬も戦車ものみ尽くす。同盟を結んだほかの国々の者らは、女のように腰抜けになり、財宝はみな略奪される。

38 そればかりか、水の補給さえなくなる。どうして、このようになるのだろうか。国中に神々の像が立ち、国民は狂わんばかりに偶像を慕っているからだ。

39 バビロンの都は、だちょうや山犬、砂漠の野獣の住みかとなり、人は二度と住みつかない。永久に荒れ果てた地となる。

40 わたしは、ソドムとゴモラとその近くの町々を滅ぼしたように、バビロンをも滅ぼす。これらの町々に人が住まなくなったように、バビロンにも人が寄りつかなくなる。

41 北から大軍が押し寄せて来ます。神様が多くの国から呼び集めた王たちが、この軍隊を指揮しています。

42 彼らは完全武装していて、残忍で血も涙もありません。その雄たけびは、海辺に打ち寄せる波のように響き渡ります。バビロンよ。彼らは戦いのしたくを整え、馬に乗って攻めかかります。

43 バビロンの王は、敵が来たという報告を受けると、肩を落としました。産みの苦しみをしている女のように、恐怖の苦痛に取りつかれたのです。

44 ヨルダンの密林から出て、草を食べている羊に飛びかかるライオンのような侵略者を、わたしは彼らに突然おそいかからせる。彼らを守る者たちを追い払い、わたしの気に入った指導者を立てる。わたしのような者がいるだろうか。わたしの決めたことに盾をつく支配者が、どこにいるだろうか。だれがわたしを呼びつけて、説明を求めることができようか。

45 カルデヤ人の国バビロンへの、わたしの計画を聞け。小さな子供たちでさえ、奴隷になって引かれて行く。身の毛もよだつほど恐ろしいことではないか。

46 バビロンの倒れる地響きで、全地は揺れ動く。その断末魔の叫びは、世界のすみずみに届く。

51

1 神様はこう言います。わたしは、カルデヤ人の住むバビロンをすみずみまで滅ぼす者たちを、勇気づける。

2 ふるい分ける者たちが来て、バビロンをふるいにかけ、吹き飛ばす。彼らは、災いの日に四方八方から来て、攻め立てる。

3 敵の矢はバビロンの射手を倒し、勇士のよろいを貫く。生きのびる者は一人もいない。若者も老人もみな、いのちを落とす。

4 カルデヤ人の地に倒れ、めった切りにされて路上で息絶える。

5 わたしは、イスラエルとユダを見捨てたわけではなく、いぜんとして彼らの神である。だがカルデヤ人の地は、イスラエルのきよい神に対する罪で満ちている。

6 バビロンから逃げ出し、自分のいのちを救いなさい。罠にかかってはいけません。そのまま残ったら、神様がバビロンのすべての罪に報復なさる時、巻き添えを食います。

7 バビロンは、神様の御手にある金の杯のようでした。すべての国々はこれから飲んで、酔いつぶれました。

8 ところが今度は、突然、そのバビロンが倒れたのです。この国のために泣きなさい。薬を与えなさい。ひょっとしたら、元どおりになるかもしれません。

9 できることなら助けたいのです。しかし今となっては、どんな手を打っても救えません。この国を見捨てて、故国へ帰りなさい。神様がこの国に天罰を下しているからです。

10 神様は私たちの顔を立ててくださいました。さあ、エルサレムで、神様のなさったすべてのことを言い広めましょう。

11 矢じりをとぎ、盾を高く掲げなさい。神様はメディヤ人の王たちを勇気づけてバビロンに乗り込ませ、これを滅ぼすことに決めたからです。これが、神様の国民を虐待し、神殿を汚した者たちへの報復です。

12 バビロンよ、守備を固め、城壁に見張りを大ぜい立て、伏兵を隠しておきなさい。神様は宣言したことをみな実行するからです。

13 商業の中心地である繁栄した港よ。いのちの糸が切られる最期の時がきました。

14 天の軍勢の主はご自分の名にかけて、こう誓いました。おまえの町々は、無数のばったが群がる畑のように、敵兵であふれ返る。彼らは、天にも届けとばかり、勝ちどきをあげる。

15 神様は力と知恵をもって地をお造りになりました。すぐれた知性をもって天を張り広げました。

16 神様が口を開くと大空に雷がとどろき渡ります。神様は大地から水蒸気をのぼらせ、ご自分の倉から、雨と風を伴ういなずまを取り出します。

17 神様に比べたら、人間は知能の低い獣で、一かけらの知恵もありません。金細工人は偶像を作るたびに、ますます良心が鈍くなります。偶像には、いのちのしるしである息がないのに、それを作るたびに神様ができたと言って、うそをつくからです。

18 偶像は、毒にも薬にもならない、むなしいものです。神様が来てそれをみな滅ぼす時が、近づいています。

19 イスラエルの神様は偶像ではありません。この神様があらゆるものを造り、イスラエルをご自分の国民となさいました。その名は天の軍勢の主です。

20 バビロンは神様のための戦いの斧であり、また剣です。神様は言います。わたしは国々を木端微塵に砕き、多くの王国を滅ぼすためにおまえを用いる。

21 おまえを使って軍勢を蹴散らし、馬と乗り手を倒し、戦車とそれに乗っている者をひっくり返す。

22 おまえを使って、年寄りも若者も、若い男も若い女も、

23 羊飼いも羊の群れも、農夫も牛も、指揮官も総督も倒す。

24 わたしはイスラエルの目の前で、バビロンとカルデヤ人に報いる。彼らがわたしの国民に加えたすべての悪に仕返しするのだ。

25 全世界を破壊する大きな山、バビロンよ。わたしはおまえを攻める。おまえにこぶしを振り上げ、高い所から突き落とし、おまえを焼けただれた山にする。

26 おまえは永久に荒れ地となり、おまえの石さえも、建築用として再生されない。おまえは地上から完全に一掃されるのだ。

27 多くの国々に合図して、バビロンを攻める兵士を集めなさい。雄たけびをあたりに響かせなさい。アララテ、ミニ、アシュケナズの軍隊を呼びなさい。指揮官を決め、長蛇の列をなして馬を進めなさい。

28 バビロンめざして、メディヤ人の王たちと将軍たち、その支配下の国々の軍隊を攻め上らせなさい。

29 バビロンは震え、苦痛で身もだえします。神様がこの国について計画したことはみな、少しも変更されないからです。バビロンは、人っ子ひとり住まない荒れ地となります。

30 大勇士でも、戦う気力を失い、仮小屋に引きこもります。腰抜けになり、女のようになるのです。侵略者たちは家々を焼き、町の門をこわしました。

31 伝令が四方八方から王のもとへ駆けつけ、何もかも失われたと報告します。

32 退路はすべて断たれ、とりでは焼き払われ、兵士たちは大混乱に陥っています。

33 イスラエルの神様である天の軍勢の主が、こう言ったからです。バビロンは打ち場に積まれた麦のようだ。もうすぐ、からざおで打たれる。

34 バビロンのユダヤ人たちは訴えます。「バビロンの王ネブカデネザルは、私たちを食い物にし、踏みつけ、骨なしにしました。怪物のように私たちをのみ込み、私たちの財宝で腹を満たし、私たちをイスラエルから追放しました。バビロンに、このすべての悪事の報いを刈り取らせ、その手で流した私たちの血を完全に償わせてください。」

35 -

36 それに対して、神様はこうお答えになります。わたしはおまえたちの弁護士となり、おまえたちのために報復する。バビロンの川を干上がらせ、その水の補給を断つ。

37 こうしてバビロンは、石くれの山となり、山犬が住みつき、人っ子ひとりいない、見るも恐ろしい地となる。

38 バビロニヤ人は無礼講を開いてしたたかに飲み、ライオンのようにほえる。

39 彼らがありったけのぶどう酒を飲んで気持ちが大きくなっている時、わたしは彼らのために別の宴会を設け、彼らが意識を失って倒れ、永遠の眠りにつくまで飲ませる。

40 彼らを子羊のように、また雄羊や雄やぎのように、屠殺場に引いて行く。

41 全世界の人のあこがれの的だった、あの偉大なバビロンは、なぜ倒れたのか。世界は、バビロンが倒れるのを見て、わが目を疑う。

42 海がせり上がってバビロンを包むと、それは波におおわれた。

43 町町は廃墟となった。バビロンは、人っ子ひとり住まず、旅人さえ寄りつかない、乾ききった荒れ地となる。

44 わたしはバビロンの神であるベルを罰し、その口から、彼がのみ込んだ物を取り出す。諸国民は二度と彼を拝まない。バビロンの城壁は倒れてしまった。

45 わたしの国民よ、バビロンを脱出し、わたしの激しい怒りから自分を救え。

46 外国の軍隊が近づいて来るといううわさを聞いても、うろたえるな。うわさは、いつになっても絶えないものだ。だが、この国に内戦が起こり、各州の総督が互いに戦う時がくる。

47 わたしがこの大都市とこの国のすべての偶像を罰する時が、きっとくる。そうなれば、町中に死人がごろごろ転がるようになる。

48 バビロンを攻める強力な軍勢が北から来るので、天も地もこおどりして喜ぶ。そう神様は言います。

49 かつてイスラエルの国民を殺したように、今度はバビロンが殺される番です。

50 剣から逃れた者は、立ち止まって、あたりの様子を見ていてはいけません。力の限り逃げなさい。神様を思い出して、はるかかなたのエルサレムへ帰って行きなさい。

51 「バビロンから来た外国人たちの手で神殿が汚されたので、私たちはとても恥ずかしい思いをしました。」

52 「そのとおりだ」と、神様は言います。しかし、バビロンの偶像がこわされる時が近づいています。国中に、傷ついた人のうめき声が聞こえます。

53 「たとい、バビロンが天のように高くなり、その力が信じられないほど増し加わったとしても、必ず死ぬ」と、神様は言います。

54 カルデヤ人の支配する地、バビロンにあがる断末魔の叫びを聞きなさい。

55 神様はバビロンの息の根を止めます。その大きな声も、やがては大波にのまれて消えます。

56 すべてのものを破壊する軍勢が攻めて来て、勇士たちを血祭りにあげます。武器という武器は、どれもこれも、まるで役に立ちません。神様がバビロンに与えるものは、当然の刑罰だけです。

57 わたしは、この国の重立った者、知恵のある者、支配者、指揮官、それに勇士たちを酔いつぶす。彼らは深い眠りに落ち、二度と目を覚まさない。こう天の軍勢の主である王が言います。

58 バビロンの厚い城壁はくずれて平らになり、高い城門も無残に焼け落ちます。多くの国から呼び集められた建築士は、造った物が火で焼かれるため、むだ骨を折ったことに気づきます。

59 ゼデキヤ王の治世の第四年に、エレミヤをとおして、次のお告げがマフセヤの子のネリヤの子セラヤにありました。それは、主計長セラヤがユダの王ゼデキヤとともに捕まり、バビロンへ流される、というものでした。

60 エレミヤは、先に書いたような、神様がバビロンに下そうとしているすべての災害を巻物に書き留め、

61 その巻物をセラヤに渡して言いました。「バビロンに着いたら、私の書いたことを読み、次のように言いなさい。『神様。あなたはバビロンを滅ぼし、そこを猫の子一匹いない、永遠に見捨てられた所にする、とお語りになりました。』

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63 読み終えたら、石を結びつけてユーフラテス川に投げ込み、こう言いなさい。『このように、バビロンは沈み、二度と浮かび上がらない。わたしがこの国に災いを招くからだ。』」これで、エレミヤのことばは終わります。

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1 ゼデキヤは二十一歳で王となり、十一年間エルサレムで王座につきました。彼の母はリブナ出身のエレミヤの娘で、名をハムタルといいました。

2 ところが彼は、先代のエホヤキムのように悪名の高い王でした。

3 悪事の限りを尽くす王に、神様はとうとう怒りを燃やし、バビロン王に反逆するよう仕向けたのです。こうして王とイスラエル国民は、神様の前から追放され、エルサレムとユダをあとにして、遠くバビロンへ捕虜として連れ去られました。

4 ゼデキヤが即位して九年目の、十二月二十五日(ユダヤ暦では十月十日)に、バビロンの王ネブカデネザルは全軍を率いてエルサレムを攻め、周囲にとりでを築き、

5 二年間この町を包囲しました。

6 六月二十四日(ユダヤ暦では四月九日)になって、町ではききんがひどくなり、ついに最後の食糧も底をついたので、

7 住民は城壁に穴をあけ、また兵士たちもみな夜のやみにまぎれ、王の庭園の近くにある二重の城壁の間にある門を通って、町の外へ逃げました。町はカルデヤ人にすっかり囲まれていたからです。人々は野原を横切り、アラバめざして急ぎました。

8 しかし、カルデヤ兵はあとを追い、エリコに近い野原で、護衛兵に逃げられて孤立しているゼデキヤ王を捕まえました。

9 兵士たちは、ハマテのリブラという町にいるバビロン王のところへ彼を引き立てて行き、そこで軍事裁判にかけました。

10 ゼデキヤは、目の前で、息子をはじめユダの重立った人たちが虐殺されるのを見せつけられたあと、

11 両眼をえぐり出され、鎖につながれてバビロンへ引いて行かれ、死ぬまで牢に閉じ込められていました。

12 バビロンの王ネブカデネザルが即位して十九年目の七月二十五日(ユダヤ暦では五月十日)に、親衛隊長ネブザルアダンがエルサレムに乗り込んで、

13 神殿と王宮、それにすべての邸宅を焼き、

14 兵士たちに、町の城壁をいっせいに取りこわすように命じました。

15 それから、貧民の一部、町がこわされた時に生き残っていた者、ゼデキヤを見限ってバビロン軍に投降した者、それにまだ残っていた交易商人を、捕虜としてバビロンへ連れて行きました。

16 しかし貧民の一部は残して、ぶどう園の手入れをさせたり、畑を耕させたりしました。

17 バビロニヤ人は、神殿の入口に立つ二本の大きな青銅の柱と、牛の形をした青銅の台と、その上にすえてある青銅の洗盤を取りはずして、バビロンへ運びました。

18 また、すべての青銅のつぼと湯わかし、祭壇で使う十能、芯切りばさみ、そのほか神殿で使ういっさいの器具を差し押さえました。

19 さらに、火皿、純金と純銀の燭台、茶わん、鉢も奪いました。

20 途方もなく大きな二本の柱、洗盤、それに十二の青銅の牛の目方は、大へんなものでした。とても量りようがありません。みな、ソロモン王の時代に作られたものです。

21 柱はそれぞれ高さ九メートル、周囲六メートル、厚さ八センチで、中は空洞でした。

22 柱の頭の部分二・五メートルは、青銅のざくろを彫刻した網目模様になっていました。

23 回りには九十六のざくろがあり、周囲の網細工には、さらに百のざくろがありました。

24 親衛隊長はまた、主席祭司セラヤと次席祭司ゼパニヤ、三人の神殿警備隊長、軍の参謀、町の中で見つかった王の特別補佐官七人を捕まえました。さらに、ユダヤ軍の徴兵指揮官と、隠れていた六十人の高官も捕まえました。

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26 そのあと、彼らを、リブラにいるバビロン王のところへ連れて行ったのです。

27 彼らは王の命令によって、一人残らず死刑になりました。こうしてユダの国民は、捕虜となって故国をあとにすることになったのです。

28 ネブカデネザルが即位して七年目に、捕虜としてバビロンへ連れ去られた人々の数は、三千二十三人でした。

29 それから十一年後には、八百三十二人が加わりました。

30 さらに五年後、王の命令を受けた親衛隊長ネブザルアダンは、七百四十五人を連れて来ました。結局、合計で四千六百人です。

31 ユダ王朝のエホヤキン王が、バビロンの牢に入って三十七年目の三月十日(ユダヤ暦では十二月二十五日)に、その年バビロン王となったエビル・メロダクは、エホヤキンに親切にし、彼を牢から出しました。

32 しかも、親しみを込めて彼に話しかけ、バビロンのどの総督よりも高い位を与え、

33 新しい衣服をあてがい、生涯、いつも王の料理係りの作る物を食べさせました。

34 エホヤキンは死ぬ日まで、生活費を王から支給されました。